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第九章 大いなる秘密
第271話 爆弾発言
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王族が登場する。すると、さっきまで歓談していたのが嘘のように静まり返る。上から登場する王族は、クリアテス国王、ブランシェード女王、シルヴァノ王子殿下、そして隣国モスグリネ王国のペイル王子殿下の四人である。その雰囲気に会場の誰もが息を飲んだ。
バルコニーの下には左側にアイスフィールド公爵家とマルーン侯爵家、右側にはマゼンダ侯爵家とコーラル伯爵家の面々が並んでいた。会場が一層騒めく。
「静粛に! 国王陛下からお言葉がある。心して聞くがよい!」
宰相ブラウニルの声が響き渡り、子どもも含めて会場はより一層静かになった。
「諸君、本日はよく集まってくれた。皆の者が無事に年末を迎えられた事を喜ばしく思うぞ」
会場は静まり返ったまま、国王の言葉に聞き入っている。
「さて、今宵の宴を始める前に、今年活躍のあった者たちへ褒賞を与えねばならぬ。名を呼ばれた者は出てくるがよい。私が直々に褒美を渡そうぞ」
国王がこう宣えば、会場内からは「おおおっ!」という声が上がる。国中の貴族の前で国王から直接褒美がもらえるなど、最高の栄誉と言えるからだ。
というわけで、ブラウニルが名を読み上げては順番に褒賞を与えていく。ひと通り終えるだけでもかなりの時間がかかった。
「最後に、マゼンダ侯爵、コーラル伯爵」
ヴァミリオとプラウスの名が呼ばれる。二人は国王の前へと移動する。
「マゼンダ商会の功績は大きい。この度の宴でも大いに役に立っておる」
国王が二人に声を掛ける。すると、二人は首を横に振る。
「我々など、ほとんど何もしておりませぬ。すべては我が子たちの力によるものでございます」
と謙虚な姿を見せる。一様に観衆からは驚きの声が上がっている。ところが、これを見ていたロゼリアたちは、
(白々しいわね)
(ええ、どう見ても私たちに話を振るための小芝居ね)
すぐさま意図を見抜いて呆れていた。
ちらりと隣に立つカーマイルを見るロゼリア。その視線が鋭かったせいか、カーマイルは一瞬酷く驚いたように見えた。
「そして、今この場で喜ばしい事を発表しよう」
ヴァミリオ、プラウスへの褒賞授与が終わると、国王は更に言葉を続けた。
「我が息子、シルヴァノの婚約者が正式に決まった。既に知る者もおるやも知れんが、この場にて発表致す」
この国王の言葉で、初耳になる貴族たちを中心にざわつき始める。
「シルヴァノの婚約者となったのは、ペシエラ・コーラル伯爵令嬢だ」
国王が間髪入れずに発表した名前に、歓声が上がる。驚きの声はあるものの、反対の声はほぼ皆無だった。おそらく学園に通う学生とその親族たちが多いからだろう。
「知っての通り、特例でサンフレア学園に入学した才能あふれる令嬢だ。聞けば、魔法を使えば魔物の群れ百匹を一瞬で消し去り、剣術もシルヴァノが余裕で負けるほどらしいからな。息子に関しては鍛えてきたつもりではあったが、手も足も出んと聞いて驚いておる」
(なに勝手な情報まで披露してるんですか、陛下!)
国王の熱弁に、心でツッコミを入れるペシエラ。その横で、チェリシアもよく分からない表情をしていた。それくらいの困惑である。
それは、集まっている貴族たちも同じようである。
ところが、国王はそんな困惑を無視して話を続ける。
「これに関連して、マゼンダ侯爵家嫡男カーマイルとコーラル伯爵家令嬢チェリシアの婚約も発表する。国への貢献の多い両家同士の婚約は、私としても大変喜ばしく思う」
(ちょっとぉ?! 予想はしてましたけど、ここで言いますか!)
チェリシアが内心悲鳴を上げている。よく見れば、国王の横で女王が深く頷いている。つまり、国家公認の婚約という事になるのだ。……呆れて物も言えない。
ちなみにこの婚約、チェリシアも悪くはないとは思っている。だが、発表された場が問題なのだ。
ところがどっこい、これで終わらないのが今年の年末パーティー。国王はもう一つ特大の爆弾を投下してきた。
「そして、私の隣に居る、隣国モスグリネの王太子であるペイルの婚約者も本人承諾の下、我が国から推薦する事となった」
ペイルの婚約者の話だ。もうロゼリアたちは諦めている。出てくる名前は、もう一人しか居ないのだから。
「ロゼリア・マゼンダ侯爵令嬢、彼女をペイル・モスグリネ王子の婚約者として推薦する」
会場にはどよめきの声があふれかえった。
バルコニーの下には左側にアイスフィールド公爵家とマルーン侯爵家、右側にはマゼンダ侯爵家とコーラル伯爵家の面々が並んでいた。会場が一層騒めく。
「静粛に! 国王陛下からお言葉がある。心して聞くがよい!」
宰相ブラウニルの声が響き渡り、子どもも含めて会場はより一層静かになった。
「諸君、本日はよく集まってくれた。皆の者が無事に年末を迎えられた事を喜ばしく思うぞ」
会場は静まり返ったまま、国王の言葉に聞き入っている。
「さて、今宵の宴を始める前に、今年活躍のあった者たちへ褒賞を与えねばならぬ。名を呼ばれた者は出てくるがよい。私が直々に褒美を渡そうぞ」
国王がこう宣えば、会場内からは「おおおっ!」という声が上がる。国中の貴族の前で国王から直接褒美がもらえるなど、最高の栄誉と言えるからだ。
というわけで、ブラウニルが名を読み上げては順番に褒賞を与えていく。ひと通り終えるだけでもかなりの時間がかかった。
「最後に、マゼンダ侯爵、コーラル伯爵」
ヴァミリオとプラウスの名が呼ばれる。二人は国王の前へと移動する。
「マゼンダ商会の功績は大きい。この度の宴でも大いに役に立っておる」
国王が二人に声を掛ける。すると、二人は首を横に振る。
「我々など、ほとんど何もしておりませぬ。すべては我が子たちの力によるものでございます」
と謙虚な姿を見せる。一様に観衆からは驚きの声が上がっている。ところが、これを見ていたロゼリアたちは、
(白々しいわね)
(ええ、どう見ても私たちに話を振るための小芝居ね)
すぐさま意図を見抜いて呆れていた。
ちらりと隣に立つカーマイルを見るロゼリア。その視線が鋭かったせいか、カーマイルは一瞬酷く驚いたように見えた。
「そして、今この場で喜ばしい事を発表しよう」
ヴァミリオ、プラウスへの褒賞授与が終わると、国王は更に言葉を続けた。
「我が息子、シルヴァノの婚約者が正式に決まった。既に知る者もおるやも知れんが、この場にて発表致す」
この国王の言葉で、初耳になる貴族たちを中心にざわつき始める。
「シルヴァノの婚約者となったのは、ペシエラ・コーラル伯爵令嬢だ」
国王が間髪入れずに発表した名前に、歓声が上がる。驚きの声はあるものの、反対の声はほぼ皆無だった。おそらく学園に通う学生とその親族たちが多いからだろう。
「知っての通り、特例でサンフレア学園に入学した才能あふれる令嬢だ。聞けば、魔法を使えば魔物の群れ百匹を一瞬で消し去り、剣術もシルヴァノが余裕で負けるほどらしいからな。息子に関しては鍛えてきたつもりではあったが、手も足も出んと聞いて驚いておる」
(なに勝手な情報まで披露してるんですか、陛下!)
国王の熱弁に、心でツッコミを入れるペシエラ。その横で、チェリシアもよく分からない表情をしていた。それくらいの困惑である。
それは、集まっている貴族たちも同じようである。
ところが、国王はそんな困惑を無視して話を続ける。
「これに関連して、マゼンダ侯爵家嫡男カーマイルとコーラル伯爵家令嬢チェリシアの婚約も発表する。国への貢献の多い両家同士の婚約は、私としても大変喜ばしく思う」
(ちょっとぉ?! 予想はしてましたけど、ここで言いますか!)
チェリシアが内心悲鳴を上げている。よく見れば、国王の横で女王が深く頷いている。つまり、国家公認の婚約という事になるのだ。……呆れて物も言えない。
ちなみにこの婚約、チェリシアも悪くはないとは思っている。だが、発表された場が問題なのだ。
ところがどっこい、これで終わらないのが今年の年末パーティー。国王はもう一つ特大の爆弾を投下してきた。
「そして、私の隣に居る、隣国モスグリネの王太子であるペイルの婚約者も本人承諾の下、我が国から推薦する事となった」
ペイルの婚約者の話だ。もうロゼリアたちは諦めている。出てくる名前は、もう一人しか居ないのだから。
「ロゼリア・マゼンダ侯爵令嬢、彼女をペイル・モスグリネ王子の婚約者として推薦する」
会場にはどよめきの声があふれかえった。
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