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第九章 大いなる秘密
第261話 チェリシアはやはり変だった
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ペシエラの命は救った。マゼンダ商会の国外進出も準備できた。
しかし、チェリシアにはまだもう一つ野望があった。
「ねえ、ケットシーさん。大豆はありますか?」
「大豆かね? あるにはあるよ」
ケットシーからの返答を聞いて、チェリシアはガッツポーズを決める。
「これで、味噌と醤油が作れるわ」
「おや、味噌と醤油を知っているのかい?」
「ケットシーさんは、私の出自を知っているでしょう?」
「あっ、そうだったね。失礼した」
味噌と醤油という単語に反応したチェリシアへ、ケットシーはうっかり失言をしてしまったようだ。チェリシアが世界の渡り子だというのを知っているのだから、前世の世界の事にも少しは知見があるはずだからだ。
「あとは、豆腐と油揚げとおから。ふっふっふっ、料理の幅が広がるわ~」
大豆と聞いて、チェリシアは完全に舞い上がっている。前世日本人であるなら、大体はそうなってしまう傾向にあるようだ。
「ま、まあ、後で大豆を取り扱う工房に連れて行ってあげるよ」
これを聞いたチェリシアは「やったあ!」と声を上げていた。そのあまりの喜びようは、ケットシーがドン引きさせるほどだった。
「やれやれ、チェリシアは相変わらずのようですね」
「おとなしいイメージしかないが、知識に対しては貪欲なところもある感じだよな」
「そうですね。妹のペシエラとの対比のせいでおとなしく見えるけど、結構活動的なんですよね」
内装の家具を選んでいる様子を眺めている二人の王子は、その光景を微笑ましく見ている。
「君は誰を選ぶのかな? とはいっても、ペシエラはあげませんよ。私の婚約者ですからね」
ロゼリアたちを見ているペイルに、シルヴァノはちょっと突っついてみる。すると、
「そうだな。俺もそろそろ婚約者を選ばないといけないからな。だが、国内の令嬢たちはどうもパッとしない。そっちの国でも同じような傾向だ。……ペシエラの周囲を除けばな」
ペイルは影をまとったような表情を見せる。やはり一国の王子が十代の早いうちに婚約者が決まらないのは、問題だという事なのだろう。
「確かに、ペシエラ周りはにぎやかですね。とはいえ、プラティナもシェイディアも婚約者は居ますよ。居ないのはロゼリア、チェリシア、それとアイリスくらいという感じですね」
「そうか。だが、妻にするとなるとなかなか悩むものだな」
「まぁそうですね。君はまだ一年サンフレア学園での生活を残していますし、そこで見極めればいいんじゃないでしょうか。焦ってもろくな事はないものですから」
「ああ、そうだな」
二人は会話を終えると、ロゼリアたちを見る。すると、組合が苦労して運んできた家具を、購入を終えた物から順番に収納魔法にしまい込むチェリシアの姿があった。横ではお金を預かったロゼリアとペシエラが支払いをしており、従者三人はやる事が無くて周囲を警戒するだけという奇妙な光景が展開されていた。
「……まったく、やはり飽きないな、あの面々は」
「そうですね」
その不思議な光景を見つつ、シルヴァノとペイルは笑っていた。
「いやぁ、長年商売をしてますが、これだけのスピード決済というのはなかなかありませんなぁ」
取引が終わってホクホクのケットシーは、少し高笑いをしている。
「夕方まで時間がございますし、どうです、醤油工房だけでも見学しませんかな?」
「えっ、いいの?」
「はい、ヴィフレアの中にありますから近いですよ。大豆関連でヴィフレアにないのは味噌の工房だけですからね」
「行く行く、見せて見せて!」
ケットシーの提案に、チェリシアが乗り気すぎる。ロゼリアとペシエラは、顔に手を当てて首を振って呆れている。従者三人も苦笑い。とはいえ、味噌と醤油はサブメインの目的だと確認し合っていたので、仕方なくケットシーの誘いに乗る事にした。
その夜、醤油工房を見学した上にたくさんの大豆製品を購入して満足げに鼻歌を歌うチェリシアの姿に、モスグリネ城の人間たちがドン引きしていたのは言うまでもなかった。
しかし、チェリシアにはまだもう一つ野望があった。
「ねえ、ケットシーさん。大豆はありますか?」
「大豆かね? あるにはあるよ」
ケットシーからの返答を聞いて、チェリシアはガッツポーズを決める。
「これで、味噌と醤油が作れるわ」
「おや、味噌と醤油を知っているのかい?」
「ケットシーさんは、私の出自を知っているでしょう?」
「あっ、そうだったね。失礼した」
味噌と醤油という単語に反応したチェリシアへ、ケットシーはうっかり失言をしてしまったようだ。チェリシアが世界の渡り子だというのを知っているのだから、前世の世界の事にも少しは知見があるはずだからだ。
「あとは、豆腐と油揚げとおから。ふっふっふっ、料理の幅が広がるわ~」
大豆と聞いて、チェリシアは完全に舞い上がっている。前世日本人であるなら、大体はそうなってしまう傾向にあるようだ。
「ま、まあ、後で大豆を取り扱う工房に連れて行ってあげるよ」
これを聞いたチェリシアは「やったあ!」と声を上げていた。そのあまりの喜びようは、ケットシーがドン引きさせるほどだった。
「やれやれ、チェリシアは相変わらずのようですね」
「おとなしいイメージしかないが、知識に対しては貪欲なところもある感じだよな」
「そうですね。妹のペシエラとの対比のせいでおとなしく見えるけど、結構活動的なんですよね」
内装の家具を選んでいる様子を眺めている二人の王子は、その光景を微笑ましく見ている。
「君は誰を選ぶのかな? とはいっても、ペシエラはあげませんよ。私の婚約者ですからね」
ロゼリアたちを見ているペイルに、シルヴァノはちょっと突っついてみる。すると、
「そうだな。俺もそろそろ婚約者を選ばないといけないからな。だが、国内の令嬢たちはどうもパッとしない。そっちの国でも同じような傾向だ。……ペシエラの周囲を除けばな」
ペイルは影をまとったような表情を見せる。やはり一国の王子が十代の早いうちに婚約者が決まらないのは、問題だという事なのだろう。
「確かに、ペシエラ周りはにぎやかですね。とはいえ、プラティナもシェイディアも婚約者は居ますよ。居ないのはロゼリア、チェリシア、それとアイリスくらいという感じですね」
「そうか。だが、妻にするとなるとなかなか悩むものだな」
「まぁそうですね。君はまだ一年サンフレア学園での生活を残していますし、そこで見極めればいいんじゃないでしょうか。焦ってもろくな事はないものですから」
「ああ、そうだな」
二人は会話を終えると、ロゼリアたちを見る。すると、組合が苦労して運んできた家具を、購入を終えた物から順番に収納魔法にしまい込むチェリシアの姿があった。横ではお金を預かったロゼリアとペシエラが支払いをしており、従者三人はやる事が無くて周囲を警戒するだけという奇妙な光景が展開されていた。
「……まったく、やはり飽きないな、あの面々は」
「そうですね」
その不思議な光景を見つつ、シルヴァノとペイルは笑っていた。
「いやぁ、長年商売をしてますが、これだけのスピード決済というのはなかなかありませんなぁ」
取引が終わってホクホクのケットシーは、少し高笑いをしている。
「夕方まで時間がございますし、どうです、醤油工房だけでも見学しませんかな?」
「えっ、いいの?」
「はい、ヴィフレアの中にありますから近いですよ。大豆関連でヴィフレアにないのは味噌の工房だけですからね」
「行く行く、見せて見せて!」
ケットシーの提案に、チェリシアが乗り気すぎる。ロゼリアとペシエラは、顔に手を当てて首を振って呆れている。従者三人も苦笑い。とはいえ、味噌と醤油はサブメインの目的だと確認し合っていたので、仕方なくケットシーの誘いに乗る事にした。
その夜、醤油工房を見学した上にたくさんの大豆製品を購入して満足げに鼻歌を歌うチェリシアの姿に、モスグリネ城の人間たちがドン引きしていたのは言うまでもなかった。
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