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第九章 大いなる秘密
第255話 ヴィフレア商業組合
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というわけで、午後はヴィフレアの見学のために、ロゼリアたちは城から移動する。行きにはゆっくり見れなかったヴィフレアの街に、主にチェリシアが心躍らせていた。
「醤油があるって事は大豆があるのよね。オーロさんから聞いてたけど本当だったのね」
ルンルン気分でスキップをするチェリシア。あまりにも浮かれすぎているので、
「お姉様、はしたないのでやめて下さらない?」
ペシエラに思いっきり注意されていた。第一、貴族令嬢は街中の大通りでスキップなんかしませんよ。
城下町の散策は、ロゼリアたち女性六人とペイルが付けてくれた護衛の男性兵士三人の計九人で行っている。ペシエラがいくら強くてアイヴォリーの王子の婚約者とはいえ、モスグリネでは無名なのだ。余計なトラブルを回避するために、男性の兵士を付けてくれたのである。
今日の主な目的は、マゼンダ商会ヴィフレア支店を出すにあたっての場所の選定である。豆や醤油はとりあえずおまけ。場所の理想としては、とにかく大通り沿いを押さえたい。そのための軍資金も(チェリシアの収納魔法に)しっかりと用意してきている。
そういうわけで、ヴィフレアの商業組合へとまずは足を運んだ。そこで、商会を構えるのに最適な場所を探すのだ。
「いらっしゃいませ。あら、お嬢さんたち、何のご用ですか?」
対応した受付の人物は、ロゼリアたちがまだ子どもと見ると、明らかに舐めた態度を取ってきた。
「私、隣国アイヴォリー王国で展開するマゼンダ商会の商会長マゼンダ・ロゼリアと申します。親の爵位は侯爵です」
ロゼリアがこう言うと、受付の眉がぴくりと動く。
(この子どもが商会長だと?!)
まさに意外だという反応だった。だが、受付の驚きはこれだけでは終わらなかった。
「モスグリネ国王から商会の支店を出す許可を頂きました。空いている建物はございますかしら」
「こ、こ、国王陛下の許可証?!」
ロゼリアが国王の許可証を見せると、受付の男性が椅子から飛び上がって後ずさる。その反応に、商業組合のロビーは騒然となった。
(あー、大ごとにしてくれましたわね……。でしたら)
騒ぎにも冷静なペシエラは、何かを思いついたようだ。
「失礼致しますわ」
「はは、はい、何でしょう」
「私、マゼンダ商会副商会長のペシエラ・コーラルと申しますわ。これでもコーラル伯爵の第二令嬢で、アイヴォリー王国第一王子シルヴァノ殿下の婚約者でしてよ」
「な、何ですと?!」
ペシエラが隣国の王子の婚約者と名乗れば、商業組合内は更なる混乱に発展した。この状況の中、ペシエラは落ち着き払っており、咳払いをする。
「落ち着いて下さりませんこと? こうもうるさくされては話ができませんわよ?」
「あ、ああ。すまない」
ペシエラが呆れていると、受付の男性は素直に謝った。そして、周りを見回して小声で話し掛けてきた。
「申し訳ございませんが、お客様たちはここで話するわけにはいかないようでして、組合長の部屋までお通しさせて頂きます」
打って変わって丁寧な口調だった。国王の許可証と隣国の王族との婚約者のダブルパンチで、丁重に取り扱う方が吉だと踏んだようである。この受付の反応の際、ロゼリアとチェリシアがペシエラを見ると、ペシエラにしては珍しくドヤ顔を決めていた。護衛に付けられた兵士は驚いていたが、アイリスたち従者組三人はいつもの通りだと冷静だった。
しばらくすると、組合長との面会は可能だとの返事が来たので、許可を取りに行った職員についてロゼリアたちは移動する事になった。その間、組合のロビーはずっと騒がしいままだった。最後方はペイルから派遣された兵士が警備にあたって、ロゼリアたちは組合長の部屋へと移動する。
アイヴォリー王国の隣国モスグリネの商業の中核である商業組合の組合長を務める人物とは一体どんな人物なのだろうか。ロゼリアたちは気になって仕方なかった。その時、案内役の職員が声を掛ける。
「あの、組合長にお会いになられても、決して驚かないで下さいね」
「それはどういう?」
「いえ、とにかくお会いになれば分かりますから」
案内役の職員はこうだけ言うと、再び押し黙ってしまった。
あまりにも気になる言葉を残されてしまったので、俄然楽しみになってしまうロゼリアたち。モスグリネの商業組合の組合長とは一体どんな人物なのだろうか。
「醤油があるって事は大豆があるのよね。オーロさんから聞いてたけど本当だったのね」
ルンルン気分でスキップをするチェリシア。あまりにも浮かれすぎているので、
「お姉様、はしたないのでやめて下さらない?」
ペシエラに思いっきり注意されていた。第一、貴族令嬢は街中の大通りでスキップなんかしませんよ。
城下町の散策は、ロゼリアたち女性六人とペイルが付けてくれた護衛の男性兵士三人の計九人で行っている。ペシエラがいくら強くてアイヴォリーの王子の婚約者とはいえ、モスグリネでは無名なのだ。余計なトラブルを回避するために、男性の兵士を付けてくれたのである。
今日の主な目的は、マゼンダ商会ヴィフレア支店を出すにあたっての場所の選定である。豆や醤油はとりあえずおまけ。場所の理想としては、とにかく大通り沿いを押さえたい。そのための軍資金も(チェリシアの収納魔法に)しっかりと用意してきている。
そういうわけで、ヴィフレアの商業組合へとまずは足を運んだ。そこで、商会を構えるのに最適な場所を探すのだ。
「いらっしゃいませ。あら、お嬢さんたち、何のご用ですか?」
対応した受付の人物は、ロゼリアたちがまだ子どもと見ると、明らかに舐めた態度を取ってきた。
「私、隣国アイヴォリー王国で展開するマゼンダ商会の商会長マゼンダ・ロゼリアと申します。親の爵位は侯爵です」
ロゼリアがこう言うと、受付の眉がぴくりと動く。
(この子どもが商会長だと?!)
まさに意外だという反応だった。だが、受付の驚きはこれだけでは終わらなかった。
「モスグリネ国王から商会の支店を出す許可を頂きました。空いている建物はございますかしら」
「こ、こ、国王陛下の許可証?!」
ロゼリアが国王の許可証を見せると、受付の男性が椅子から飛び上がって後ずさる。その反応に、商業組合のロビーは騒然となった。
(あー、大ごとにしてくれましたわね……。でしたら)
騒ぎにも冷静なペシエラは、何かを思いついたようだ。
「失礼致しますわ」
「はは、はい、何でしょう」
「私、マゼンダ商会副商会長のペシエラ・コーラルと申しますわ。これでもコーラル伯爵の第二令嬢で、アイヴォリー王国第一王子シルヴァノ殿下の婚約者でしてよ」
「な、何ですと?!」
ペシエラが隣国の王子の婚約者と名乗れば、商業組合内は更なる混乱に発展した。この状況の中、ペシエラは落ち着き払っており、咳払いをする。
「落ち着いて下さりませんこと? こうもうるさくされては話ができませんわよ?」
「あ、ああ。すまない」
ペシエラが呆れていると、受付の男性は素直に謝った。そして、周りを見回して小声で話し掛けてきた。
「申し訳ございませんが、お客様たちはここで話するわけにはいかないようでして、組合長の部屋までお通しさせて頂きます」
打って変わって丁寧な口調だった。国王の許可証と隣国の王族との婚約者のダブルパンチで、丁重に取り扱う方が吉だと踏んだようである。この受付の反応の際、ロゼリアとチェリシアがペシエラを見ると、ペシエラにしては珍しくドヤ顔を決めていた。護衛に付けられた兵士は驚いていたが、アイリスたち従者組三人はいつもの通りだと冷静だった。
しばらくすると、組合長との面会は可能だとの返事が来たので、許可を取りに行った職員についてロゼリアたちは移動する事になった。その間、組合のロビーはずっと騒がしいままだった。最後方はペイルから派遣された兵士が警備にあたって、ロゼリアたちは組合長の部屋へと移動する。
アイヴォリー王国の隣国モスグリネの商業の中核である商業組合の組合長を務める人物とは一体どんな人物なのだろうか。ロゼリアたちは気になって仕方なかった。その時、案内役の職員が声を掛ける。
「あの、組合長にお会いになられても、決して驚かないで下さいね」
「それはどういう?」
「いえ、とにかくお会いになれば分かりますから」
案内役の職員はこうだけ言うと、再び押し黙ってしまった。
あまりにも気になる言葉を残されてしまったので、俄然楽しみになってしまうロゼリアたち。モスグリネの商業組合の組合長とは一体どんな人物なのだろうか。
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