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第九章 大いなる秘密
第254話 マゼンダ商会の交渉
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「お待たせ致しましたわ」
王族が食事を取る部屋へとペシエラたちは到着した。モスグリネの王族たちやシルヴァノはすでに着席して待機している。ところが、
「なんだ、その魔法は」
いきなりダルグがペシエラの使っている魔法に声を上げた。
「それは、私たちが移動で使ったエアリアルボードですね」
ダルグの大声に続いて、シルヴァノが反応する。さすが冷静だ。
「はい、その通りです。料理を運ぶためだけに応用して小型化、複数層化してみたんです」
魔法を使っているのはペシエラだが、説明はチェリシアがしている。
「それでは、今から配膳します」
チェリシアが合図をすると、ペシエラは魔法を操ってテーブルの近くまでエアリアルワゴンを移動させる。
「ペシエラ、魔法を使って大丈夫なのですか?」
ペシエラが魔法を操作した事に気が付いたシルヴァノが声を上げる。ペシエラはそれに答えるように笑顔を作る。
「ええ、あの儀式が成功したようで、もうすっかり大丈夫ですわよ」
「そ、そうか。だが、あまり無茶をしないでほしい」
「もちろんですわ」
ペシエラとシルヴァノのこの受け答えの間に、アイリス、キャノル、ライの三人がてきぱきと配膳していく。アイリスとキャノルは暗殺者として培った動きが活かされているようで、音は静かだし動作も早い。その働きに、ライはちょっと不機嫌そうだった。上級の魔物としてのプライドでもあるのだろうか。
「陛下がご覧になられていたように、こちらの料理の加熱調理についてはすべて魔石を使った魔道具を使用しております。そろそろ配膳も終わるようですので、ぜひともご賞味下さいませ」
ロゼリアは料理について説明している。フォレストバードの肉を使った炒め物やグラタンについても、チェリシアから聞いた説明をすらすらと発表している。態度も実に堂々としており、さすがは侯爵令嬢といったところである。
配膳を終えたところで、精霊の森にも同行していた王宮魔術師が鑑定魔法で毒見を行う。信頼している人物からであっても、この毒見を行うのは通例の事となっているので誰からも文句は出ない。王族が慎重になるのは仕方ない事なのだ。これが終わると、ダルグが自ら音頭をとって昼食が始まった。
料理自体は好評だった。火を使っていないにも関わらず、ちゃんと火は通っているし、焦げ目だってついていた。魔石を使ったコンロやオーブンもそうだが、ロゼリアたちの料理の腕前にも唸らざるを得なかった。
「いやはや恐れ入ったぞ、アイヴォリーの者たちよ」
ダルグはかなり食べていたので、満足そうにしている。
「しかし、その魔石コンロやオーブンは購入する事は可能か?」
魔道具に興味津々のご様子だ。
「魔石コンロは結構手頃な材料で作れますので、金貨一枚を下回ります。ただ、魔石オーブンの方はほとんど全体がアルタンという希少金属を用いていますので、どんなに頑張っても金貨三十枚は下りません」
「なんと、アルタンか……。それは確かに無茶というものだな。コンロだけで諦めよう」
オーブンの価格を聞いて、ダルグはがくりとしていた。持ち運びができるとなれば、出先でも柔らかいパンが食べられるのだから分からなくはない話だ。
ただ、アルタンとまではいかなくても丈夫な金属での代替が可能で、そちらだと金貨十枚を下回れると聞いて、ダルグは再び考え込み始めた。この国王、よっぽど気に入ったと思われる。ただ、重量がアルタン製のものに比べて三倍くらいと聞いて、更に頭を悩ませているようだった。なにせ大きさもあるので、持ち運びのしやすさは重要である。
「ぐぬぬ……。惜しいが今は諦めよう……」
どうやら国家予算との関係で、断腸の思いで諦めたようである。悔しさが表情に出まくっている。
「父上、そこまで……」
珍しい父親の姿に、ペイルがかなりショックを受けていた。
結局のところ、万年筆を百本と魔石コンロ十個の受注を得たマゼンダ商会。アイリスの蒼鱗魚を通じて、アイヴォリーの王都に居るルゼに連絡がすぐ回る。実に便利な能力である。
今回の一件でマゼンダ商会の有用性を認めたダルグは、ヴィフレア内に支店を出す事を許可するのであった。
王族が食事を取る部屋へとペシエラたちは到着した。モスグリネの王族たちやシルヴァノはすでに着席して待機している。ところが、
「なんだ、その魔法は」
いきなりダルグがペシエラの使っている魔法に声を上げた。
「それは、私たちが移動で使ったエアリアルボードですね」
ダルグの大声に続いて、シルヴァノが反応する。さすが冷静だ。
「はい、その通りです。料理を運ぶためだけに応用して小型化、複数層化してみたんです」
魔法を使っているのはペシエラだが、説明はチェリシアがしている。
「それでは、今から配膳します」
チェリシアが合図をすると、ペシエラは魔法を操ってテーブルの近くまでエアリアルワゴンを移動させる。
「ペシエラ、魔法を使って大丈夫なのですか?」
ペシエラが魔法を操作した事に気が付いたシルヴァノが声を上げる。ペシエラはそれに答えるように笑顔を作る。
「ええ、あの儀式が成功したようで、もうすっかり大丈夫ですわよ」
「そ、そうか。だが、あまり無茶をしないでほしい」
「もちろんですわ」
ペシエラとシルヴァノのこの受け答えの間に、アイリス、キャノル、ライの三人がてきぱきと配膳していく。アイリスとキャノルは暗殺者として培った動きが活かされているようで、音は静かだし動作も早い。その働きに、ライはちょっと不機嫌そうだった。上級の魔物としてのプライドでもあるのだろうか。
「陛下がご覧になられていたように、こちらの料理の加熱調理についてはすべて魔石を使った魔道具を使用しております。そろそろ配膳も終わるようですので、ぜひともご賞味下さいませ」
ロゼリアは料理について説明している。フォレストバードの肉を使った炒め物やグラタンについても、チェリシアから聞いた説明をすらすらと発表している。態度も実に堂々としており、さすがは侯爵令嬢といったところである。
配膳を終えたところで、精霊の森にも同行していた王宮魔術師が鑑定魔法で毒見を行う。信頼している人物からであっても、この毒見を行うのは通例の事となっているので誰からも文句は出ない。王族が慎重になるのは仕方ない事なのだ。これが終わると、ダルグが自ら音頭をとって昼食が始まった。
料理自体は好評だった。火を使っていないにも関わらず、ちゃんと火は通っているし、焦げ目だってついていた。魔石を使ったコンロやオーブンもそうだが、ロゼリアたちの料理の腕前にも唸らざるを得なかった。
「いやはや恐れ入ったぞ、アイヴォリーの者たちよ」
ダルグはかなり食べていたので、満足そうにしている。
「しかし、その魔石コンロやオーブンは購入する事は可能か?」
魔道具に興味津々のご様子だ。
「魔石コンロは結構手頃な材料で作れますので、金貨一枚を下回ります。ただ、魔石オーブンの方はほとんど全体がアルタンという希少金属を用いていますので、どんなに頑張っても金貨三十枚は下りません」
「なんと、アルタンか……。それは確かに無茶というものだな。コンロだけで諦めよう」
オーブンの価格を聞いて、ダルグはがくりとしていた。持ち運びができるとなれば、出先でも柔らかいパンが食べられるのだから分からなくはない話だ。
ただ、アルタンとまではいかなくても丈夫な金属での代替が可能で、そちらだと金貨十枚を下回れると聞いて、ダルグは再び考え込み始めた。この国王、よっぽど気に入ったと思われる。ただ、重量がアルタン製のものに比べて三倍くらいと聞いて、更に頭を悩ませているようだった。なにせ大きさもあるので、持ち運びのしやすさは重要である。
「ぐぬぬ……。惜しいが今は諦めよう……」
どうやら国家予算との関係で、断腸の思いで諦めたようである。悔しさが表情に出まくっている。
「父上、そこまで……」
珍しい父親の姿に、ペイルがかなりショックを受けていた。
結局のところ、万年筆を百本と魔石コンロ十個の受注を得たマゼンダ商会。アイリスの蒼鱗魚を通じて、アイヴォリーの王都に居るルゼに連絡がすぐ回る。実に便利な能力である。
今回の一件でマゼンダ商会の有用性を認めたダルグは、ヴィフレア内に支店を出す事を許可するのであった。
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