逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第九章 大いなる秘密

第240話 つじつま合わせ?

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「オリジン様にお会いしたい? 本気で言っているの?」
 ピンクの妖精は驚いている。
「もちろんよ。すべての根源たる妖精王であられるオリジン様なら、ペシエラを助けられると思って。お願いできないかしら」
 ロゼリアは目の前の妖精をじっと見ている。その表情の真剣さに、妖精は戸惑っている。
「んー……、私じゃどうする事もできないわ。オリジン様は私たちのような下の者にはあまりお会いして下さらないもの」
 伏し目がちに妖精はそう答える。表情も態度も、どうやら嘘ではないと示していた。せっかく妖精たちに会えたというのに、肝心のオリジンにお目通しが叶いそうにないのでは意味がない。ロゼリアは悩んだ。
 その後ろでは、ライと数人の妖精がわいわいと盛り上がっている。堕妖精がまともに振舞っている理由が気になったからのようだ。ライが経緯を説明しているが、妖精たちは信じられないような反応をしていた。
「それよりも、私の呪いってどういう事なのですの?」
 ロゼリアと話をする妖精に、ペシエラがやって来て話し掛ける。
「呪いは呪いよ。掛けたのは誰か分からないけど、かなり強力なものよ。私たちじゃ解けやしないくらいのね」
 どうやら妖精は、呪いが掛けられている事が分かるだけで、その詳細までは分からないようだ。
「……その呪いのせいで、魔法を使おうとすると激痛が走るのね。まったく、姑息な真似をしてくれるわね」
「やっぱり激痛が走るのね、ペシエラ」
「話してたとおりね。ルゼもライも予想で話してたし、なにより主人の主人であるペシエラを攻撃する理由はないわ」
 険しく鋭い目つきで毒を吐くペシエラ。その様子を見ながら、ロゼリアとチェリシアは予想が合っていた事を確認していた。
「ペシエラにだけそんな呪いを掛けるなんて、一体誰がそんな事を……」
 チェリシアは、ペシエラを見ながらおどおどとしている。
「……心当たりがあると言えば、あるかも知れないわね」
 ロゼリアは顎に手を当ててしばらく考えていたが、思いついた推測があるというような口ぶりを見せる。
「それはどういう?」
「逆行前にはペシエラは居ない存在だったのよ? それに……」
 チェリシアが尋ねるので、ロゼリアはそれに答え始める。
「それに?」
「チェリシアの前世であったゲームにも、ペシエラは居なかったのでしょう?」
「うん、語られてないだけかも知れないけど、居なかったよ」
 確認するようにロゼリアが聞けば、チェリシアは肯定して頷く。
「今更ながらに、そのゲームの強制力みたいなのを発動してきた可能性があるわね。チェリシアはペシエラを溺愛してるような節があるから、ここでペシエラを消せば、シナリオ通りに私と仲違いできるとでも踏んだんでしょう」
「なんだと?!」
 ロゼリアが推測を述べれば、大声で反応したのはチェリシアでもペシエラでもなく、シルヴァノとペイルだった。
「しかし、そのゲームとやらは何なんだ?」
「さぁ? チェリシアの前世の世界には、私たちが登場するゲームなるものがあったらしいわ。そこではヒロインと呼ばれる主人公がチェリシアで、私は敵対する悪役令嬢というものらしいの」
 二人の王子に聞かれてしまったので、埒が明かないと判断したロゼリアは、チェリシアの事も全部打ち明けてしまった。チェリシアも了承したとはいえ、その本人はどこか恥ずかしそうにしていた。
「なるほど、そのゲームとやらではペシエラは居ない存在だから、今更ながらにつじつまを合わせようとして呪いを掛けたと、そういう推理なわけか」
「世の中不思議な事がたくさんありますから、そういう事も考えられなくはないですね」
 ペイルもシルヴァノも、意外とあっさり受け入れたようだ。
「ですが、そんなくだらない理由で私の婚約者を亡き者にされては困ります。その姿があるというのなら、気の済むまでその身に恐怖を叩きこんでやりたいですね」
 何かシルヴァノが怖い事を言っている。シルヴァノはこんなキャラだっただろうかと、ロゼリアもチェリシアも首を傾げている。その横ではペシエラが、口論している妖精を鷲掴みにしたまま頬を赤くしていた。
「はっはっはっ、なかなか心強い事を言ってくれるな」
 突如として、聞いた事のあるような声が響き渡った。
「オリジン様?」
 ペシエラに掴まれていた妖精が叫ぶ。どうやら声の主は、精霊王であるオリジンのようだった。
 次の瞬間、ロゼリアの前に現れたのは、ロゼリアたちのよく知る人物だった。
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