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第九章 大いなる秘密
第238話 精霊の森に到着
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「ここが精霊の森なのね」
許可を貰ったら即行動。
ロゼリアたちはエアリアルボードを使って、ヴィフレアから二日で精霊の森にたどり着いていた。後ろでモスグリネの王宮魔術師が疲れているように見せかけて、未知の魔法に目を輝かせてはしゃいでいた。いい年した人が何をしているのか。ちなみに三十歳くらいの男性だ。
精霊の森は、見た感じは普通の森である。少々、木々が多いくらいである。
ところが、森に近付くにつれて、さすがに出身だと言い張るライの表情に緊張が見られるようになっていた。堕ちた妖精というのが、彼女には一番引っ掛かっている点なのだろう。ロゼリアたちが、何かあったら守るからと言い聞かせていたが、ライの表情から不安は消える事はなかった。
(まあ、無理もありませんわね。一度は魔物に堕ちた身ですもの。他の精霊に認められるとは思えませんものね)
ライの側に立つペシエラは、ライを見ながらそう感じていた。
そういった緊張を見せる面々が居る一方、
「ここにレイニのような精霊や、ライのような妖精がたくさん住んでるのね」
チェリシアのテンションは爆上がり中だった。
「お姉様、落ち着いて下さい。失礼をしてしまえば、話どころではありませんのよ? いくら神獣使いのアイリスが居るからといっても、一度機嫌を損ねたら大変なのですから」
一番大変な状態であるペシエラが、実は一番落ち着いていた。
「ふっ、精霊の森。いかにもって場所がねえか」
「不思議な感じがする場所ですね。サファイア湖とはまた違った感じですよ」
王子二人も、心なしか高揚している。こんな調子で大丈夫なのか、ちょっと心配になってくる。
精霊の森は、モスグリネの王都ヴィフレアの北部に存在する広大な森である。ここはモスグリネ王家の直轄地になっており、特別の許可がないと王族とその関係者以外は立ち入れない場所となっていた。
モスグリネは自然豊かな土地ではあるが、その中でもひときわ不思議な雰囲気をまとった広大な森は、精霊の森と名付けられて、こと厳重に守られてきた土地である。この地に王族以外が足を踏み入れるのは、本当にどれくらいぶりであろうか。
「ところで、ペシエラの話は本当なのですか?」
森を移動していると、シルヴァノがロゼリアとチェリシアに尋ねてきた。
「何がです?」
「命が危ないという話です」
このやり取りに、ペシエラがぐっと胸を押さえる。本人はよく分かっていると見られる。
「ええ。ルゼとライの言葉を合わせた推測ですけれど、七歳にして魔法を使ったペシエラは、魔法を使うたびに魔力とともに命も削っていると推測されるわ。それが、十歳以前に魔法を使う事の代償だと思うの」
「命を?」
「ええ、しかも、年を追うごとにその比重が変わってきていると推測されるの。だから、この間の武術大会の時にあれほどの魔法が使えたと考えられるのです」
ロゼリアとチェリシアがそれぞれに推測する。
特にチェリシアがそういう結論に至ったのも理由がある。なぜなら、本来は同一人物であり、チェリシアは転生の恩恵でさらに魔力が高いはずである。
だが、実際のところは、ペシエラの魔法がチェリシアを大きく凌駕している。つまり、魔力以外の何かを魔法に使っていると分かってしまったのである。
「私たち二人も八歳で魔法を使っているので、同じような状況だとは想像できますが、使っている魔法の規模が違いますからね」
ロゼリアは歩きながら付け足す。
「それに、私たちはある意味世界の理から外れてますから、適応されてないかも知れませんけど」
「それはどういう?」
そこへ付け加えたチェリシアの発言に、シルヴァノが反応する。
「ここに来たついでですし、みなさんには共有してもいいかも知れませんね。そこの王宮魔術師とペイル殿下の従者は、くれぐれもご内密に」
全員の方をくるりと振り向いたロゼリアは、唇に人差し指を当てながら怪しげに微笑んだ。その様子に、そろいもそろって大きく息を飲む。
「私とペシエラは、未来から死に戻ってきましたのよ」
「なっ!」
「そして、私チェリシアは、別の世界からこちらに転生してきた人間なんです」
二人からの衝撃的な発言で、全員がその場に立ち尽くす事となってしまった。
許可を貰ったら即行動。
ロゼリアたちはエアリアルボードを使って、ヴィフレアから二日で精霊の森にたどり着いていた。後ろでモスグリネの王宮魔術師が疲れているように見せかけて、未知の魔法に目を輝かせてはしゃいでいた。いい年した人が何をしているのか。ちなみに三十歳くらいの男性だ。
精霊の森は、見た感じは普通の森である。少々、木々が多いくらいである。
ところが、森に近付くにつれて、さすがに出身だと言い張るライの表情に緊張が見られるようになっていた。堕ちた妖精というのが、彼女には一番引っ掛かっている点なのだろう。ロゼリアたちが、何かあったら守るからと言い聞かせていたが、ライの表情から不安は消える事はなかった。
(まあ、無理もありませんわね。一度は魔物に堕ちた身ですもの。他の精霊に認められるとは思えませんものね)
ライの側に立つペシエラは、ライを見ながらそう感じていた。
そういった緊張を見せる面々が居る一方、
「ここにレイニのような精霊や、ライのような妖精がたくさん住んでるのね」
チェリシアのテンションは爆上がり中だった。
「お姉様、落ち着いて下さい。失礼をしてしまえば、話どころではありませんのよ? いくら神獣使いのアイリスが居るからといっても、一度機嫌を損ねたら大変なのですから」
一番大変な状態であるペシエラが、実は一番落ち着いていた。
「ふっ、精霊の森。いかにもって場所がねえか」
「不思議な感じがする場所ですね。サファイア湖とはまた違った感じですよ」
王子二人も、心なしか高揚している。こんな調子で大丈夫なのか、ちょっと心配になってくる。
精霊の森は、モスグリネの王都ヴィフレアの北部に存在する広大な森である。ここはモスグリネ王家の直轄地になっており、特別の許可がないと王族とその関係者以外は立ち入れない場所となっていた。
モスグリネは自然豊かな土地ではあるが、その中でもひときわ不思議な雰囲気をまとった広大な森は、精霊の森と名付けられて、こと厳重に守られてきた土地である。この地に王族以外が足を踏み入れるのは、本当にどれくらいぶりであろうか。
「ところで、ペシエラの話は本当なのですか?」
森を移動していると、シルヴァノがロゼリアとチェリシアに尋ねてきた。
「何がです?」
「命が危ないという話です」
このやり取りに、ペシエラがぐっと胸を押さえる。本人はよく分かっていると見られる。
「ええ。ルゼとライの言葉を合わせた推測ですけれど、七歳にして魔法を使ったペシエラは、魔法を使うたびに魔力とともに命も削っていると推測されるわ。それが、十歳以前に魔法を使う事の代償だと思うの」
「命を?」
「ええ、しかも、年を追うごとにその比重が変わってきていると推測されるの。だから、この間の武術大会の時にあれほどの魔法が使えたと考えられるのです」
ロゼリアとチェリシアがそれぞれに推測する。
特にチェリシアがそういう結論に至ったのも理由がある。なぜなら、本来は同一人物であり、チェリシアは転生の恩恵でさらに魔力が高いはずである。
だが、実際のところは、ペシエラの魔法がチェリシアを大きく凌駕している。つまり、魔力以外の何かを魔法に使っていると分かってしまったのである。
「私たち二人も八歳で魔法を使っているので、同じような状況だとは想像できますが、使っている魔法の規模が違いますからね」
ロゼリアは歩きながら付け足す。
「それに、私たちはある意味世界の理から外れてますから、適応されてないかも知れませんけど」
「それはどういう?」
そこへ付け加えたチェリシアの発言に、シルヴァノが反応する。
「ここに来たついでですし、みなさんには共有してもいいかも知れませんね。そこの王宮魔術師とペイル殿下の従者は、くれぐれもご内密に」
全員の方をくるりと振り向いたロゼリアは、唇に人差し指を当てながら怪しげに微笑んだ。その様子に、そろいもそろって大きく息を飲む。
「私とペシエラは、未来から死に戻ってきましたのよ」
「なっ!」
「そして、私チェリシアは、別の世界からこちらに転生してきた人間なんです」
二人からの衝撃的な発言で、全員がその場に立ち尽くす事となってしまった。
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