逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

文字の大きさ
上 下
235 / 431
第九章 大いなる秘密

第232話 次の目的地

しおりを挟む
 ロゼリアは慌ただしくライの居る場所へと向かう。今日はアイリスについて行って、キャノルと一緒に王宮に居る予定となっている。
「ロゼリア、そんなに強く引っ張らないで」
「落ち着いていられないわよ。私だって八歳で魔法を使っているのだから、他人事ひとごとじゃないわ」
 そう、ロゼリアが慌てる理由はここにもあったのだ。ロゼリアもチェリシアの案で塩を作る際に魔法を使っている。それが八歳の時なのだから、魔法の使用頻度と規模ではペシエラに及ばないものの、何らかの代償を負っている可能性があるのだ。
「あ……、私のせいで……」
「チェリシア、魔法を使ったのは私の意思よ。あなたはそこまで気負う必要はないわ。でも、どうしても気にするのだったら、方法を探すのに付き合いなさい」
「うん。友人と妹のためだものね」
 ロゼリアの言い分に同意したチェリシア。そうこうしているうちに、二人は王宮へとやって来た。だが、入るための用事が思いつかなったのか、二人は門の前で立ち往生していた。
「おや、ロゼリア嬢とチェリシア嬢ではないですか。ペシエラ嬢をお迎えに来たのですか?」
 そこに通りかかったのはチークウッド。それと、
「ロゼリア、こんな所で何をしているんだ」
「お兄様!」
 カーマイルだった。
「あの、私の侍女であるキャノルやライを呼びに来たんですけれど、王宮にその程度の用事で入っていいのか迷ってまして……」
 チェリシアが両手の人差し指を突きながら、恥ずかしそうに言うと、
「外に呼んで来てもらうわけにはいかないのか?」
 カーマイルがさも当然と言わんばかりにそう言う。まぁ真っ当な意見ではあるが。
「ちょっと内密な話をしたいので、あまり目立つ場所いうわけにはまいりませんの」
 それに食い掛ったのはロゼリアだった。
「だったら、私たちについてくればいいよ。ちょうど話がしたくて呼んだとでも言えば大丈夫だから」
 二人の態度に何かを察したのか、チークウッドがそう提案してきた。ロゼリアたちはこれに乗っかった。
 チークウッドの協力で、無事に王宮の中に入ったロゼリアとチェリシアは、キャノルとライの居る部屋まで案内される。
「この部屋に居るみたいだから、ゆっくり気の済むまで話をするといいよ」
「ありがとうございますわ、チークウッド様」
「相変わらず、可愛いが可愛げのない妹だな」
「お兄様、もう少し素直になってはいかがですか?」
「私はいつも素直だが?」
「おいおい、兄妹げんかを王宮の廊下でするのはやめてくれ。カーマイル、私たちは報告に戻らないと、な」
 チークウッドに礼を言うロゼリアに不機嫌になるカーマイル。そのせいか、ロゼリアに愚痴を言ってけんかになりかけるも、チークウッドの仲裁でとりあえず収まった。
「じゃあ、私たちはこれで失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
 手を振って歩いていくチークウッドを、ロゼリアとチェリシアは頭を下げて見送った。チークウッドの隣ではカーマイルが不機嫌そうにしていたが、ロゼリアはそれを知らないふりしておいた。
「さて、参りましょう、チェリシア」
「え、ええ」
 改めて二人になったところで、ロゼリアが扉を叩いて合図する。
「どちら様ですか?」
 中から聞き慣れない壮年女性の声が聞こえてくる。
「マゼンダ侯爵家ロゼリアとコーラル伯爵家チェリシアでございます。私どもの侍女がこちらに居ると伺いまして、尋ねさせて頂きました」
 ロゼリアが問い掛けに返答する。
「そうですか、ちょうど一段落したところですのでよいでしょう。お入りなさい」
「失礼致します」
 中に入ったロゼリアたちは、ぎょっと驚いた。部屋の中ではキャノルとライが息を上げているのに、アイリスだけが平然と立っていたのだ。
「これはロゼリア様とチェリシア様。このような場所に何の御用ですか?」
 教育係と思われる女性は、邪魔と言わんばかりに刺々しい物言いをしてくる。いくらなんでも、王子の婚約者の姉と友人に対する態度ではない。
「あら、お邪魔でしたかしら。ですが、早急にこちらの者たちと話をしなければならない用件がありましてね。ええ、ペシエラの事に関してですけれど、あなたは席を外してもらえないかしら」
 カチンときたのか、ロゼリアは言い回しを変えて、「部外者は消えなさい」と伝える。すると、教育係はぐっと言葉を詰まらせながら、
「分かりました。まだ今日の教育は終わっておりませんので手短にお願いします」
 と、抵抗してみせた。
「あら、残念ですけれど、重要な案件ですのでそうは参りませんわ。宰相様の許可も得ております」
 ロゼリアがさらに切り返せば、教育係は完全に沈黙して部屋を出て行った。
 この時点では宰相の許可は噓ではあるが、チークウッドから話は行くはずなので事後承認となるだろう。
 落ち着いたところで、ロゼリアはチェリシアに防護と防音の魔法を部屋に掛けさせる。そして、改めてアイリスたちを見た。
「さて、あなたたちに聞きたい事があるの」
 そう言って、ロゼリアは話を切り出したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...