223 / 543
第八章 二年次
第220話 決着は一瞬で
しおりを挟む
学園の訓練場。ペシエラたちは魔物を牽制するも倒す事ができず、苦戦を強いられていた。倒せば新たな魔物が召喚陣から現れる。召喚される数に上限がある事が分かったが故の対応である。
しかし、それも突如として終わりを告げる。
「ペシエラ、ライが魔力供給の元を絶ったそうだ。陣が壊せるぞ」
「ありがとう、インフェルノ」
そう、パープリアの屋敷にあった魔力供給の元となったデーモンハートを、ライが壊したのである。これで遠慮なく魔物を叩けるというものだ。
「さあ、覚悟なさい。この地に出てきた事を不運に思うといいですわ」
ペシエラは怒り心頭だった。
どかーんと極大範囲魔法を落として、あっという間に召喚陣ごと魔物を倒してしまった。相当にストレスが溜まっていたようだった。逆行前はロゼリアに一方的に恨みを溜めていたペシエラだったが、今回は割と脳筋に傾倒していたようだ。
チェリシアたちが駆けつけた時には、既にすべてが終わっていた。
「えっ、これ……」
「あら、遅かったですわね、お姉様」
魔物の残骸の上に堂々と立つペシエラ。その姿はまるで覇王。圧倒的なペシエラの姿を見たチェリシアは、驚きのあまりに固まってしまった。ペシエラの傍には、共闘していたはずのロゼリアも呆然と佇んでいる。
「ロゼリア?」
あまりにも放心状態が酷かったので、チェリシアは心配になって声を掛ける。
「えっ、あっ、チェリシア。観客たちは無事かしら」
ボーッとしていたので、ロゼリアはワンテンポ、ツーテンポ遅れて反応する。チェリシアの後ろでは避難誘導に付き合っていたシルヴァノとペイル、それとチークウッドが苦笑いをしている。
「ロゼリアが呆然とするのも、分かる気がするけれどもね……」
訓練場内の惨状を見て、チェリシアは顔を引き攣らせている。夥しいまでの魔物の死骸が会場内に散乱しているからだ。ラルクとトルフもあまりのペシエラの攻撃魔法に、壁際にまで避難していた。
「うむ、以前も見たが、これほどまで殲滅力が高いとは。トルフ、早めに避難して正解だったな」
「わ、わうっ……」
凶暴極まりないと言われるライトニングウルフのトルフが、すっかりと怯え切っている。それほどまでにペシエラは規格外すぎるという事である。
呆然とする会場内だったが、観客席から声がする。
「ところで、こいつはどうする? 一応、生きてはいるみたいだ」
カーマイルだ。彼が抱えるのは、術の発動者である学生だった。どうやら召喚陣を発動する時に魔力をゴッソリ持って行かれたようで、顔面蒼白で力無く全身を投げ出していた。
「回復させて尋問ですわね。召喚陣を仕込んだ宝珠を、一体どこから手に入れたのか吐かせねばなりません」
ペシエラの表情は怒りに満ちていた。なにせ、召喚陣の発動にパープリアの屋敷の人間を犠牲して、アイリスの母親を危険な目に遭わせたのだ。
この事件を仕組んだのは、間違いなくパープリア男爵だ。今回の学生の事を考えると、おそらく逆行前のペシエラは、パープリア男爵の駒として利用されたのだろうという事は、今のペシエラであれば容易に想像がつく。もはや、ペシエラにとって、パープリア男爵は憎いだけの相手であった。
積もり積もった恨み、ここで晴らさねばならない。ペシエラは積年の恨みのせいで、まるで鬼神のごとき表情で笑っていた。
「ペ、ペシエラ。とりあえず先にこの場を収めましょう? これだけ魔物の死骸が転がっているのを放置しておくわけにはいかないわよ」
「それもそうですわね」
チェリシアの提案を、ペシエラはあっさりと受け入れて、いつもの強気な表情に戻る。その姿を見て、ロゼリアとチェリシアはどこかほっとしていた。
「レイニ、居ますかしら」
「ほいほい、ボクに何の用かな?」
落ち着いたペシエラがレイニを呼ぶと、すっと姿を現した。
「パープリア男爵邸に行って、ライとアイリスの母親の保護を頼みますわ。あのまま屋敷に置いておくと危険ですから」
「了解。コーラル邸に連れて来ればいいかい?」
「ええ、それでいいですわ」
ペシエラが頼むと、レイニはすっとその場から姿を消した。
どうやら、すぐにでもパープリア男爵との決着をつける必要がありそうだ。ロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人は、そろってそう強く思うのだった。
しかし、それも突如として終わりを告げる。
「ペシエラ、ライが魔力供給の元を絶ったそうだ。陣が壊せるぞ」
「ありがとう、インフェルノ」
そう、パープリアの屋敷にあった魔力供給の元となったデーモンハートを、ライが壊したのである。これで遠慮なく魔物を叩けるというものだ。
「さあ、覚悟なさい。この地に出てきた事を不運に思うといいですわ」
ペシエラは怒り心頭だった。
どかーんと極大範囲魔法を落として、あっという間に召喚陣ごと魔物を倒してしまった。相当にストレスが溜まっていたようだった。逆行前はロゼリアに一方的に恨みを溜めていたペシエラだったが、今回は割と脳筋に傾倒していたようだ。
チェリシアたちが駆けつけた時には、既にすべてが終わっていた。
「えっ、これ……」
「あら、遅かったですわね、お姉様」
魔物の残骸の上に堂々と立つペシエラ。その姿はまるで覇王。圧倒的なペシエラの姿を見たチェリシアは、驚きのあまりに固まってしまった。ペシエラの傍には、共闘していたはずのロゼリアも呆然と佇んでいる。
「ロゼリア?」
あまりにも放心状態が酷かったので、チェリシアは心配になって声を掛ける。
「えっ、あっ、チェリシア。観客たちは無事かしら」
ボーッとしていたので、ロゼリアはワンテンポ、ツーテンポ遅れて反応する。チェリシアの後ろでは避難誘導に付き合っていたシルヴァノとペイル、それとチークウッドが苦笑いをしている。
「ロゼリアが呆然とするのも、分かる気がするけれどもね……」
訓練場内の惨状を見て、チェリシアは顔を引き攣らせている。夥しいまでの魔物の死骸が会場内に散乱しているからだ。ラルクとトルフもあまりのペシエラの攻撃魔法に、壁際にまで避難していた。
「うむ、以前も見たが、これほどまで殲滅力が高いとは。トルフ、早めに避難して正解だったな」
「わ、わうっ……」
凶暴極まりないと言われるライトニングウルフのトルフが、すっかりと怯え切っている。それほどまでにペシエラは規格外すぎるという事である。
呆然とする会場内だったが、観客席から声がする。
「ところで、こいつはどうする? 一応、生きてはいるみたいだ」
カーマイルだ。彼が抱えるのは、術の発動者である学生だった。どうやら召喚陣を発動する時に魔力をゴッソリ持って行かれたようで、顔面蒼白で力無く全身を投げ出していた。
「回復させて尋問ですわね。召喚陣を仕込んだ宝珠を、一体どこから手に入れたのか吐かせねばなりません」
ペシエラの表情は怒りに満ちていた。なにせ、召喚陣の発動にパープリアの屋敷の人間を犠牲して、アイリスの母親を危険な目に遭わせたのだ。
この事件を仕組んだのは、間違いなくパープリア男爵だ。今回の学生の事を考えると、おそらく逆行前のペシエラは、パープリア男爵の駒として利用されたのだろうという事は、今のペシエラであれば容易に想像がつく。もはや、ペシエラにとって、パープリア男爵は憎いだけの相手であった。
積もり積もった恨み、ここで晴らさねばならない。ペシエラは積年の恨みのせいで、まるで鬼神のごとき表情で笑っていた。
「ペ、ペシエラ。とりあえず先にこの場を収めましょう? これだけ魔物の死骸が転がっているのを放置しておくわけにはいかないわよ」
「それもそうですわね」
チェリシアの提案を、ペシエラはあっさりと受け入れて、いつもの強気な表情に戻る。その姿を見て、ロゼリアとチェリシアはどこかほっとしていた。
「レイニ、居ますかしら」
「ほいほい、ボクに何の用かな?」
落ち着いたペシエラがレイニを呼ぶと、すっと姿を現した。
「パープリア男爵邸に行って、ライとアイリスの母親の保護を頼みますわ。あのまま屋敷に置いておくと危険ですから」
「了解。コーラル邸に連れて来ればいいかい?」
「ええ、それでいいですわ」
ペシエラが頼むと、レイニはすっとその場から姿を消した。
どうやら、すぐにでもパープリア男爵との決着をつける必要がありそうだ。ロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人は、そろってそう強く思うのだった。
1
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-
牛一/冬星明
ファンタジー
神様に気に入られた悪女令嬢が好きな少女は眷属神にされた。
どう見ても人の言う事を聞かなそうな神様の下で働くなって絶対嫌だった。
少女は過労死で死んだ記憶がある。
働くなら絶対にホワイトな職場だ。
神様のスカウトを断った少女だったが、人の話を聞かない神様が許す訳もない。
少女は眷属神の卵として転生を繰り返す。
そいて、ジュリアーナ・マジク・アラルンガルはこの世界に転生された。
だが、神々の加護を貰えないジュリアーナはすぐに捨てられた。
この可哀想な神様の卵に幸はあるのだろうか?

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる