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第八章 二年次
第218話 二重の罠
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「はぁっ!」
ペシエラは湧き続ける魔物を次々と斬り捨てていく。
「さすがはペシエラ様、お強いですな」
ラルクやトルフも唸るペシエラの剣捌きである。
「魔物の相手ばかりしてられませんけれどもね。召喚陣を潰そうにも、隙がありませんのよね」
雑魚ばかりではあるが、湧きが早く、無詠唱の魔法であるにも関わらず発動が防がれ、召喚陣を破壊するに至らなかった。
「むう、仕方ありませんわね。ラルク、トルフ、一瞬でも隙を作れませんこと?」
「ペシエラ様が仰るのでしたら、できる限りやってみましょう」
「わうっ!」
溢れ出る魔物を捌きながら、ペシエラたちは作戦を練る。それにしても、とめどなく獰猛な魔物が湧き続けるとは、今回の召喚陣は今までとはかなり違うものだった。
「うおおっ!!」
「がるるるるっ!!」
ラルクとトルフが、召喚陣の一つに群がる魔物を殲滅する。ペシエラはその瞬間を逃さない。
パキンッ!
召喚陣の一つをようやく破壊する。
しかし、これが悪い方向に働いた。
破壊された召喚陣が、魔物へと変貌していったのだ。
そこに現れたのは、一つ目の巨人サイクロプスだった。
「嘘でしょ……。伝説級の魔物だなんて」
人の背丈の十倍はある巨体。さすがにこんな体で暴れられてはひとたまりもない。さすがのペシエラも心が折れ掛ける。
だが、その時、
「インフェリアル・ブレイズ!」
獄炎がサイクロプスを包み込んだ。
それと同時に、他の魔物も風魔法で切り刻まれていく。
「ペシエラ、無事かしら」
「まったく、主人の主人ながら迂闊よな」
「ロゼリア! それに、インフェルノ!」
「主人が俺に呼び掛けるものだから何だとは思ったが、これは愉快な事になっておるな」
インフェルノが楽しそうに笑っている。
「しかし、なかなかに厄介な物を仕込んでおるな」
かと思えば、途端にインフェルノの表情が険しくなる。
「どういう事ですの?」
「この召喚陣は、他人の魔力を食って発動しておる。それこそ、その人物が死ぬまで食い続けるという禁法ぞ」
「なんですって?!」
インフェルノの説明にペシエラが驚く。
「召喚陣を破壊すれば、その分更に魔力を食って、さっきのような奴を生み出す。言ってしまえば生贄というやつだ」
「形振り構わない、ある意味執念というやつか」
インフェルノの言葉に反応したのはカーマイルだった。
「こいつも、その駒の一人にすぎないというわけか」
カーマイルの隣には、先ほど捕まえた男がぐったりとしていた。非常に顔色が悪い。
「なんて酷い……。それで、魔力の供給元は?」
ペシエラが叫ぶ。
「蒼鱗魚から連絡が入った。どうやら、パープリアの屋敷のようだな。屋敷の主人と筆頭使用人の二人は不在……か。身内を贄に使いおったな」
「なんて奴らなの!」
「ああ、まったくだな。それでは我ら魔物と大差ないですな」
ペシエラが怒りのあまり叫ぶと、応戦するラルクが反応する。魔物であるラルクにまでこう言われるとは、もはや人間なのかを疑いたくなってしまう。
しかし、今はそれどころではない。このまま放っておいては魔物がどんどんと数を増やしていくし、かといって召喚陣を破壊すれば、より強力な魔物が呼び出される。そして何より、召喚陣によって罪のない人間が犠牲になっているのだ。どうすればいいのか、ペシエラにはまったく思いつかなかった。
「インフェルノ、ライと連絡は取れまして?」
「奴なら心配ない。『任しといて~』と言っておったからな。おそらく、魔力の流れを断つ行動は起こしておるだろう」
インフェルノの言葉に、ペシエラは安心する。
「となれば、この魔物たちをここに留まらせる事に集中ですわね」
「そういう事ね」
ペシエラの隣には、いつの間にかロゼリアが立っていた。ペシエラが驚いた顔をするが、ロゼリアはそれに構わず自分たちの状況を説明する。
「避難が終われば、チェリシアたちもこちらに来るはず。チークウッド様にお願いしておきましたから」
「オフライト様たちも誘導に加わってますものね。アイリスとキャノルもついてますし、私たちはこちらをどうにかしましょう」
ペシエラとロゼリアの二人はお互い頷き、湧き続ける魔物へと集中を深めた。
ペシエラは湧き続ける魔物を次々と斬り捨てていく。
「さすがはペシエラ様、お強いですな」
ラルクやトルフも唸るペシエラの剣捌きである。
「魔物の相手ばかりしてられませんけれどもね。召喚陣を潰そうにも、隙がありませんのよね」
雑魚ばかりではあるが、湧きが早く、無詠唱の魔法であるにも関わらず発動が防がれ、召喚陣を破壊するに至らなかった。
「むう、仕方ありませんわね。ラルク、トルフ、一瞬でも隙を作れませんこと?」
「ペシエラ様が仰るのでしたら、できる限りやってみましょう」
「わうっ!」
溢れ出る魔物を捌きながら、ペシエラたちは作戦を練る。それにしても、とめどなく獰猛な魔物が湧き続けるとは、今回の召喚陣は今までとはかなり違うものだった。
「うおおっ!!」
「がるるるるっ!!」
ラルクとトルフが、召喚陣の一つに群がる魔物を殲滅する。ペシエラはその瞬間を逃さない。
パキンッ!
召喚陣の一つをようやく破壊する。
しかし、これが悪い方向に働いた。
破壊された召喚陣が、魔物へと変貌していったのだ。
そこに現れたのは、一つ目の巨人サイクロプスだった。
「嘘でしょ……。伝説級の魔物だなんて」
人の背丈の十倍はある巨体。さすがにこんな体で暴れられてはひとたまりもない。さすがのペシエラも心が折れ掛ける。
だが、その時、
「インフェリアル・ブレイズ!」
獄炎がサイクロプスを包み込んだ。
それと同時に、他の魔物も風魔法で切り刻まれていく。
「ペシエラ、無事かしら」
「まったく、主人の主人ながら迂闊よな」
「ロゼリア! それに、インフェルノ!」
「主人が俺に呼び掛けるものだから何だとは思ったが、これは愉快な事になっておるな」
インフェルノが楽しそうに笑っている。
「しかし、なかなかに厄介な物を仕込んでおるな」
かと思えば、途端にインフェルノの表情が険しくなる。
「どういう事ですの?」
「この召喚陣は、他人の魔力を食って発動しておる。それこそ、その人物が死ぬまで食い続けるという禁法ぞ」
「なんですって?!」
インフェルノの説明にペシエラが驚く。
「召喚陣を破壊すれば、その分更に魔力を食って、さっきのような奴を生み出す。言ってしまえば生贄というやつだ」
「形振り構わない、ある意味執念というやつか」
インフェルノの言葉に反応したのはカーマイルだった。
「こいつも、その駒の一人にすぎないというわけか」
カーマイルの隣には、先ほど捕まえた男がぐったりとしていた。非常に顔色が悪い。
「なんて酷い……。それで、魔力の供給元は?」
ペシエラが叫ぶ。
「蒼鱗魚から連絡が入った。どうやら、パープリアの屋敷のようだな。屋敷の主人と筆頭使用人の二人は不在……か。身内を贄に使いおったな」
「なんて奴らなの!」
「ああ、まったくだな。それでは我ら魔物と大差ないですな」
ペシエラが怒りのあまり叫ぶと、応戦するラルクが反応する。魔物であるラルクにまでこう言われるとは、もはや人間なのかを疑いたくなってしまう。
しかし、今はそれどころではない。このまま放っておいては魔物がどんどんと数を増やしていくし、かといって召喚陣を破壊すれば、より強力な魔物が呼び出される。そして何より、召喚陣によって罪のない人間が犠牲になっているのだ。どうすればいいのか、ペシエラにはまったく思いつかなかった。
「インフェルノ、ライと連絡は取れまして?」
「奴なら心配ない。『任しといて~』と言っておったからな。おそらく、魔力の流れを断つ行動は起こしておるだろう」
インフェルノの言葉に、ペシエラは安心する。
「となれば、この魔物たちをここに留まらせる事に集中ですわね」
「そういう事ね」
ペシエラの隣には、いつの間にかロゼリアが立っていた。ペシエラが驚いた顔をするが、ロゼリアはそれに構わず自分たちの状況を説明する。
「避難が終われば、チェリシアたちもこちらに来るはず。チークウッド様にお願いしておきましたから」
「オフライト様たちも誘導に加わってますものね。アイリスとキャノルもついてますし、私たちはこちらをどうにかしましょう」
ペシエラとロゼリアの二人はお互い頷き、湧き続ける魔物へと集中を深めた。
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