逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

文字の大きさ
上 下
210 / 473
第八章 二年次

第207話 二年次学園祭、開始前

しおりを挟む
 そんなこんなで、二年次の学園祭の日がやって来た。普通二年目というのは、いろいろとイベントが起きて濃いはずなのに、夏の合宿の事件以外は特に何も起きずに平和なものだった。まあ、ゲームの方は合宿と学園祭と年末の三回、ロゼリアたちの前回も学園祭と年末しか、これといった事は起きなかった。
 しかし、いろいろと双方とも乖離が著しい今回は、もう何が起こるのか分からないので、ロゼリアたちは常に警戒をしていた。それが故に、今回はとても平和なものであった。
 忙しかったのは、女王教育を受ける事になったペシエラとその従者のアイリスくらいで、ロゼリアとチェリシアの二人は、学園祭への出店の準備をマイペースに行なっていた。
「クラスのみんなには手伝いに行けないって言っちゃって、ちょっと気まずかったかな」
「仕方ないわよ。こっちはこっちで忙しいわけだし、掛け持ちできる余裕なんてないのは普通よ」
 申請したスペースで、カウンターに座るロゼリアとチェリシア。ペシエラは今年も武術大会のトップバッターらしく、手伝えない事を嘆いていた。様子はアイリスに報告してもらおう。
 ロゼリアとチェリシアの後ろでは、シアンとキャノルの二人が忙しく準備をしている。肉や野菜、魚に乳製品など、刻んでは盛り付けていく。
 去年は焼き魚を振る舞ったが、今年はピザや瓶詰めなど盛りだくさんだ。缶詰は仕様の関係で危険(縁で手を切るなど)と判断してやめた。小型調理窯七台をフル稼働で対応し、カウンターには保温装置も用意している。さあ、どこからでもかかってこい。チェリシアは意気込んでいた。
 さて、食材はオーカー商会が頑張った。ロゼリアに挑発され、チェリシアに餌で釣られたブローゼンは、威信に賭けて発注された食材を王国中、いや、隣国にまで足を伸ばしてかき集めた。更には、チェリシアが開発した大型保冷庫も役に立っていた。これによって新鮮なまま、この学園まで無事に届けられたのである。なにせ金貨うん十枚という大金が動く仕事だ。手を抜けるはずもなかったのである。
「やあ、準備大変そうですね」
「ロイエールくん」
 ロゼリアとチェリシアの元に、ドール商会のロイエールがやって来た。今回はドール商会の出し物は地味なもので、ルゼとリードとストンが頑張りまくった結果、武具や生活用品がずらりと並ぶ展示会となっていた。うん? どこが地味なのか?
「いやー、あのルゼさんのおかげで、僕のところの職人が張り切っちゃいましてね。んですよ」
 あー、なるほど。チェリシアは直感した。
 つまるところ、ルゼの能力で希少な金属も手に入れやすくなったから、新しい金属につい舞い上がってしまったというわけだ。魔道具を作るチェリシアは、とても共感を覚えた。
「数はあるものの、種類的にはいつもと変わりありませんから、と言っているだけなんですよ」
「そういう事なのね」
 ロイエールの言い分に、ロゼリアは納得した。
「お二人の展示も楽しみにしてますよ。もう開始時間になっちゃうので、僕は自分の持ち場に戻りますね」
「ええ、お互い頑張りましょう」
「はいっ」
 ロゼリアとチェリシアは、手を振ってロイエールを見送った。
「さーて、今年の学園祭は忙しくなりそうよ。準備はいい?」
 ロゼリアが気合いたっぷりに後ろを振り返る。
「もちろんですとも、ロゼリア様」
「こういう表舞台は慣れないが、あたいも頑張るぜ」
 シアンとキャノルは気合い十分だった。その後ろで、チェリシアは黙々とピザを作り続けている。それ以外にも、マゼンダ商会とオーカー商会から料理人が何人か作業をしている。特にオーカー商会の料理人は、特別報酬が出ると聞いて、更に気合いが入っていた。
 カウンターの上には、ピザが焼き上がるまでの映像を映し出す投影用の魔石まで配置されている。
 ……さあ、準備は万端だ。いくらでもかかってきなさい。
 ロゼリアとチェリシアはそう息巻きながら、学園祭の開始の時を迎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...