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第八章 二年次
第200話 アルタンという金属
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「ちょっと待て、なんでそれが分かる? これを知るのは暗器を専門に作ってる鍛冶のおっさんだけだぞ。本人はたまたま作れたって言ってたからな」
チェリシアの驚きの反応に、キャノルも驚いている。
「お姉様、そのチタン、アルミニウム合金って何ですの?」
それを無視して、ペシエラはチェリシアに尋ねる。
「そのままよ。金属のチタンとアルミニウムを適切な分量で混ぜ合わせた合金、……合成金属なの。両方の金属の性質を持ち合わせている事が多いわね。それによって単体の弱点を補い合えるのよ。チタンは軽くて強いけど、単体での加工がしづらい。アルミニウムは軽くて加工はしやすいけど、柔らかくて強度に難があるの」
チェリシアの説明で、ペシエラはなんとなく分かったようである。
「なるほど、軽くて丈夫で加工がしやすいようにした金属って事ね」
「そういう事。両方の金属とも、王都では流通してないから、ストンさんも用意できなかったのね」
チェリシアは調理窯を触りながら話している。
「それでしたら、ルゼに言えばどうにでもなるのでは?」
黙って聞いていたアイリスが、手を挙げながら進言する。
「あっ、そっか。ルゼさん、メタルゼリーで世界中の金属食べてたって言ってたものね」
アイリスの言葉で、チェリシアは思い出したかのように言う。
「め、メタルゼリー?! あんたら、魔物とも知り合いなのか?」
「ルゼは私の従魔です。私は神獣使いというものらしくて、魔物も眷属にする力があるようですよ」
キャノルにとって、驚きの連続だった。アイリスの事を一緒に仕事をした事のある可愛い妹だと思ったら、魔物すらも従えられるとんでもない人物だったのだ。驚くなという方が無理である。
「いや待て。もしかして、あたいは今、とんでもない事に巻き込まれてないか?」
「私どもの命を狙った時点で、既にとんでもない事です。諦めなさい」
ようやく事態の重さに勘付いたキャノルだったが、去年の時点で“時、既に遅し”である。シアンから「今さら何を」と突っ込まれるのであった。
というわけで、ドール商会に先触れを出して、チェリシアたちはドール商会に向かう。
「さっき言ってたルゼってのは、ドール商会に居るのか」
「ええ。ドール商会は金属を扱っているからね。あなたの武器を作ってくれてた職人さんにも、悪い話じゃないと思うわ」
「いやー、あのおっさんは表舞台で有名になるのは嫌がると思うけどな」
チェリシアの言葉に、キャノルは頭を掻きながら困惑した表情で言っている。
まあ、それは十分に理解できる。裏稼業相手に商売をしているのなら尚更だ。しかし、腕のいい職人を闇に埋もれさせておくのは、国としても損失になりうる話なので、特にペシエラがその職人に興味を示していた。
「あれ、主人様、ペシエラ様、チェリシア様。どうされたのです?」
チェリシアたちは、ドール商会では真っ先にルゼに会った。商会長一家は揃って留守だったので仕方ない。
「久しぶりね、ルゼ。早速だけど、これ見てもらえる?」
「何ですか、これは」
ペシエラに見せられた金属の針を見せられて、ルゼはすぐに固まる。
「ちょっと、これ、なんでこの金属が存在してるんですか?」
慌てたように言うルゼ。どうやら知っているようだ。
「知ってるのね」
「知ってるも何も、これ、アルタンっていう金属ですよ。人間界に存在してるんですか?!?!」
思いっきり混乱している。
「私の前世の世界じゃ、天然なり人工なり、そこそこ存在してるんだけど? というか、アルミニウムとチタンが存在するなら、可能性はあるでしょう」
チェリシアは両手を腰に当てて、ため息混じりに言っている。ルゼは相変わらず混乱している。
「えええ、人工的に作れる? 本当ですか? これ、魔法銀と似てますけど、あれと違って魔法はかなり遮断しちゃう金属なんですよ」
なんか口調が崩れている。驚きすぎて、素が出てるのかも知れない。
「固い喋り方って演技だったのですわね」
ペシエラに突っ込まれて、ルゼはハッとする。
「えへへ、いや、最近雰囲気変えてみただけです。淡々とするよりこっちの方が親しみやすいかなって」
照れ照れと可愛らしく笑うルゼ。金属スライムという無機質感など、もはやそこには存在していなかった。
そこへ、チェリシアが収納魔法から小型の調理窯を取り出して、ルゼに見せる。
「ルゼさん、そのアルタンでこれを作れないかな?」
そう、調理窯の軽量化作戦の始まりだった。
チェリシアの驚きの反応に、キャノルも驚いている。
「お姉様、そのチタン、アルミニウム合金って何ですの?」
それを無視して、ペシエラはチェリシアに尋ねる。
「そのままよ。金属のチタンとアルミニウムを適切な分量で混ぜ合わせた合金、……合成金属なの。両方の金属の性質を持ち合わせている事が多いわね。それによって単体の弱点を補い合えるのよ。チタンは軽くて強いけど、単体での加工がしづらい。アルミニウムは軽くて加工はしやすいけど、柔らかくて強度に難があるの」
チェリシアの説明で、ペシエラはなんとなく分かったようである。
「なるほど、軽くて丈夫で加工がしやすいようにした金属って事ね」
「そういう事。両方の金属とも、王都では流通してないから、ストンさんも用意できなかったのね」
チェリシアは調理窯を触りながら話している。
「それでしたら、ルゼに言えばどうにでもなるのでは?」
黙って聞いていたアイリスが、手を挙げながら進言する。
「あっ、そっか。ルゼさん、メタルゼリーで世界中の金属食べてたって言ってたものね」
アイリスの言葉で、チェリシアは思い出したかのように言う。
「め、メタルゼリー?! あんたら、魔物とも知り合いなのか?」
「ルゼは私の従魔です。私は神獣使いというものらしくて、魔物も眷属にする力があるようですよ」
キャノルにとって、驚きの連続だった。アイリスの事を一緒に仕事をした事のある可愛い妹だと思ったら、魔物すらも従えられるとんでもない人物だったのだ。驚くなという方が無理である。
「いや待て。もしかして、あたいは今、とんでもない事に巻き込まれてないか?」
「私どもの命を狙った時点で、既にとんでもない事です。諦めなさい」
ようやく事態の重さに勘付いたキャノルだったが、去年の時点で“時、既に遅し”である。シアンから「今さら何を」と突っ込まれるのであった。
というわけで、ドール商会に先触れを出して、チェリシアたちはドール商会に向かう。
「さっき言ってたルゼってのは、ドール商会に居るのか」
「ええ。ドール商会は金属を扱っているからね。あなたの武器を作ってくれてた職人さんにも、悪い話じゃないと思うわ」
「いやー、あのおっさんは表舞台で有名になるのは嫌がると思うけどな」
チェリシアの言葉に、キャノルは頭を掻きながら困惑した表情で言っている。
まあ、それは十分に理解できる。裏稼業相手に商売をしているのなら尚更だ。しかし、腕のいい職人を闇に埋もれさせておくのは、国としても損失になりうる話なので、特にペシエラがその職人に興味を示していた。
「あれ、主人様、ペシエラ様、チェリシア様。どうされたのです?」
チェリシアたちは、ドール商会では真っ先にルゼに会った。商会長一家は揃って留守だったので仕方ない。
「久しぶりね、ルゼ。早速だけど、これ見てもらえる?」
「何ですか、これは」
ペシエラに見せられた金属の針を見せられて、ルゼはすぐに固まる。
「ちょっと、これ、なんでこの金属が存在してるんですか?」
慌てたように言うルゼ。どうやら知っているようだ。
「知ってるのね」
「知ってるも何も、これ、アルタンっていう金属ですよ。人間界に存在してるんですか?!?!」
思いっきり混乱している。
「私の前世の世界じゃ、天然なり人工なり、そこそこ存在してるんだけど? というか、アルミニウムとチタンが存在するなら、可能性はあるでしょう」
チェリシアは両手を腰に当てて、ため息混じりに言っている。ルゼは相変わらず混乱している。
「えええ、人工的に作れる? 本当ですか? これ、魔法銀と似てますけど、あれと違って魔法はかなり遮断しちゃう金属なんですよ」
なんか口調が崩れている。驚きすぎて、素が出てるのかも知れない。
「固い喋り方って演技だったのですわね」
ペシエラに突っ込まれて、ルゼはハッとする。
「えへへ、いや、最近雰囲気変えてみただけです。淡々とするよりこっちの方が親しみやすいかなって」
照れ照れと可愛らしく笑うルゼ。金属スライムという無機質感など、もはやそこには存在していなかった。
そこへ、チェリシアが収納魔法から小型の調理窯を取り出して、ルゼに見せる。
「ルゼさん、そのアルタンでこれを作れないかな?」
そう、調理窯の軽量化作戦の始まりだった。
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