逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第八章 二年次

第184話 後始末は大変

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 合宿終了後、王都に戻ってきた頃にはカーボニル子爵家の処分が決定していた。
 実行犯のダルクとデプスの二人は死罪。家族ももはや更生の余地なしと見られ、爵位と財産を剥奪の上、鉱山送りとなった。
 この国の鉱山は極寒地にあるので、犯罪者の流刑地としてよく使われている。普段は労働力として扱われているが、鉱山でやらかそうものなら、隙間風の吹く頑丈で薄い壁の小屋に移される。
 この鉱山での扱いに、貴賤男女の差はない。
 この過酷な環境で長く耐えられる者はそう居ない。カーボニルの一族もこれで終わりである。

 カーボニル元子爵家の処罰の内容は、マゼンダ侯爵家やコーラル伯爵家にも伝えられた。双方の親は自分の娘の耳に入れるかどうか、慎重になったようである。とはいえ、娘たちも当事者であるので、意を決して伝える事にした。
 結果として、チェリシアが少しショックを受けていたようだが、ロゼリアとペシエラは、「当然ね」というような顔をしていた。まだ子どもだというのに、その辺は割り切れるようである。
 だが、この反応は当たり前と言えば当たり前である。
 逆行前は断罪されて処刑されたロゼリア。
 逆行前はロゼリアの処刑を目撃し、国家間の戦争で殺し合いまでしたペシエラ。
 この二人が処刑やら流刑やらで動じるわけもないのだ。
 ただ、前世日本人でそういった事に無縁の生活をしてきたチェリシアだけは、どうしても現実として受け入れられるはずもなかった。顔色を悪くして少し俯いている。
「お姉様はお優しいですものね。相手が犯罪者とあっても、人が死ぬのをよしとしないのですから」
 その日は、ずっとペシエラとアイリスがそばについていた。
 翌日、チェリシアはなんとか立ち直っていた。ひと晩、三人で一緒に寝た事で、気持ちが落ち着いたのだろう。
 その日は朝食の後、ロゼリアと合流して、王宮に向かう事になった。
「人為的な魔物氾濫の事もですが、アイリスの従魔たちの事を報告しませんとね」
 ロゼリアとペシエラが、難しそうな顔をしている。逆行前では敵対関係にあったが、今ではすっかり同志である。二人はどことなく性格が似ている。そのせいか、一種の同族嫌悪のようなものに陥っていたのだろう。……ペシエラチェリシアからの一方的なものだったが。
 それはさておき、四人は王宮にやって来ていた。もう何度目になるだろうか。見慣れた風景である。異世界人であるチェリシアでさえ、もう緊張感も何もなくなっていた。
「……慣れって怖いわね」
「……まったくですね」
 チェリシアのぼやきに、アイリスが相槌を打った。
 今回もいつものように人払いを済ませた謁見の間へ通される。だが、従魔たちは魔物の姿のままなので、それはもう街中から目立ちまくってたので、今更秘匿の話と言っても、なんとも説得力に欠けている。なので、もうどうとでもなれである。
 今回の謁見の間、国王と女王以外には宰相、騎士団長、騎士副団長、それにシルヴァノとペイルまで揃っていた。それでも、最低人数である。
「おや、従魔は六体と聞いていたが、一体居らんな」
 国王がアイリスの方を見て、すぐさま気が付いて言う。
「はい、別の任務を与えておりまして、そちらに早速出向いております。ここに居らぬ事はご容赦願います」
 口ぶりはしっかりしているが、体は恐怖で震えているアイリスである。
「分かった。ペシエラから聞いておるから心配せんでよい。ただの確認だ」
 アイリスはホッとため息をついて、ペシエラを見る。ペシエラはにこりと微笑んだ。
「して、残りの面々はどうするつもりだ。従魔とはいえ、そもそもは魔物だ。自由にさせては、住民が恐怖するやも知れん。ここで待遇を決めてしまうぞ」
「……承知致しました」
 国王の言葉に、アイリスは従う。
 最初に決まったのは、トルフ。ペイルが気に入っているし、お互いに気が合うようだからだ。
 残りのうち、タウロ、ラルク、アックスの三体は、騎士団に所属させて、王族領の守護などを任せる事になった。蒼鱗魚の能力を使えば、いつでも連絡は取れるので問題はないだろう。三体とも戦えれば気にはならないと言っているし、おそらく大丈夫だろう。
 さて、残るルゼだが、これは本人の方が予想外な事を言い出した。
「主人様、確か王都にあるもう一つの大きな商会が、金属を扱っていると仰ってましたよね?」
「えっ、ええ。ドール商会の事ですね」
「だったら、私はそこに行くわ。こう見えても世界中の金属を食べた事があるの。いわば金属のエキスパートなのよ」
 ドヤ顔を決めるルゼ。そして、体の一部から複数の金属を取り出した。
「金、銀、白金、それと魔法銀に魔鉄鉱。私の能力を使えば、埋まってる場所は分かるし、加工技術も持ち合わせてる。それを使えばタウロ様たちも更に強くなるわ」
 ルゼは悪い顔をしている。しかし、その有用性は、国王たちも一瞬で理解した。そして、
「分かった。ドール商会にてその能力を遺憾なく発揮せよ。ドール商会にも通達は出しておく」
 ルゼのドール商会への派遣が決まったのであった。
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