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第八章 二年次
第180話 対魔物戦、決着
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「たありゃああっ!!」
ペシエラは残った強力な魔物を、一体一体斬り捨てていく。先程の殲滅のための魔法で、魔力がかなり持っていかれたらしく、しばらく魔法が使いづらくなっているようなのだ。
(しくじりましたわね。おそらくあの“タウロ”という存在のせいでしょう……)
ペシエラは、ちらりとインフェルノとタウロの方を見る。
そう、変異個体であるタウロが居たせいで、魔力が余計に消耗させられてしまったのだ。そのせいで、残った魔物との戦いでは、苦戦を強いられてしまっている。さすがに分が悪かった。
徐々に追い詰められていくペシエラだったが、その時、誰かがペシエラに襲い掛かる魔物の攻撃を振り払った。
「ペシエラ様、わたくしも戦いますわ」
「そうですよ。主人を見捨てたとあっては、従者失格です」
プラティナとアイリスだった。
プラティナの先程の剣筋は、目を見張るものがあった。魔物氾濫が起きる前とは比べ物にならないくらい、剣筋に鋭さがあったのだ。どうやらペシエラの危機に、思わず能力が発揮されたのだろう。ペシエラは笑うしかなかった。
「まだ余裕そうですね」
プラティナがペシエラを見る。ペシエラがこう言われるのも仕方がない。思わず笑っていたのだから。
「さすがの私もいっぱいいっぱいですわ。一番厄介な相手をインフェルノが相手してくれているだけでも、ずいぶん助かってますのよ」
「お役に立てたなら光栄です。せっかくペシエラ様に拾われた命です、役に立てなくて何が従者ですか」
この状況の中で、アイリスは胸を張ってドヤ顔を決めている。それを見たペシエラは、一瞬呆けた後、思い切り笑う。
「ペ、ペシエラ様?」
「いや、以前の様子から考えると、ずいぶんと使用人らしくなってしまったようで、ついおかしくて」
笑い終えると、ペシエラは再び剣を構えて魔物に向く。
「私たちの話の間、待っていて下さるなんて、ずいぶんと紳士的な魔物たちですわね」
そして、魔物に向けて鋭い眼光を向けた。
鋭い視線を向けられた魔物たちは、その明確な敵意に一気に荒れ狂った。
「さあ、来ますわよ」
「了解です!」
ペシエラが剣を振るい魔物を斬る。アイリスは右手に持った短剣で牽制しながら、左手で暗器や魔法を投げて応戦している。そして、プラティナもしっかり剣を持ち、魔物を斬りつけていく。さすがにここまで残っていた魔物ともなれば、一撃では終わらず、一体倒すのにかなりの手数を要した。
それでも、残るは五体というところまで三人で頑張った。
ところがだ。残りの五体はどうにもさっきまでとは違い、攻撃してくる気配がすっかり無くなっていた。一体どういう事なのか、まったくもって分からなかった。
だが、その答えはすぐに分かった。
「ふっ、腕を上げたが、まだまだ俺には及ばないようだな、タウロよ」
「くっ……、お前にはやはり勝てぬというのか……」
インフェルノとタウロの戦いに決着がついていたのだ。タウロは息の上がった状態で、インフェルノに頭を踏まれていた。耐火性があるのか、インフェルノが調整しているのか、タウロは燃える事なく無事なようである。
つまり、魔物の群れで最も強いタウロが敗北した事で、残った魔物は勝ち目がないと諦めたのだ。さすがに強くなってくると、生き延びるための知恵が働くようである。
残った五体はペシエラたちの前に並び、服従の意思を示す。この魔物たちの行動に、ペシエラたちは驚きを隠せなかった。
『おやおや、私らが通訳しようかえ』
アイリスから水の渦が飛び出して、蒼鱗魚たちが現れた。その蒼鱗魚たちを見て、魔物たちは更に頭を下げた。五体だけとはいえ、魔物に跪かれる様子は、まるで魔王にでもなった気分である。
蒼鱗魚の通訳を経て、タウロを含めて六体の魔物がアイリスの配下に加わった。
紳士的で智略もできる屈強な騎士、オークジェネラル。素早い動きで相手を翻弄、通った跡には雷が迸るライトニングウルフ。多彩な魔法を操る高位妖精だが、悪戯癖が玉に瑕のハイスプライト。あらゆる鉱石を食らった孤高のグルメ、メタルゼリー。振るう戦斧は全てを砕く剛腕のトカゲ、アックスリザード。
「これ、どう説明したらいいのかしら……」
魔物たちを目の前に、ペシエラは困っていた。
「心配なら俺が説明しよう。こいつらは俺の事をボスのように思っている。俺が言えば暴れる事もあるまい」
タウロがこう言うので、対応に困っていたペシエラたちはその提案を受け入れる。
「では、お姉様たちの居る、アクアマリン子爵の別荘に戻りましょう。あの中に、この魔物氾濫の犯人が居る可能性がありますわ」
「分かりました」
ペシエラたちはインフェルノと六体の魔物を引き連れて、アクアマリン子爵の別荘へと急いだのだった。
ペシエラは残った強力な魔物を、一体一体斬り捨てていく。先程の殲滅のための魔法で、魔力がかなり持っていかれたらしく、しばらく魔法が使いづらくなっているようなのだ。
(しくじりましたわね。おそらくあの“タウロ”という存在のせいでしょう……)
ペシエラは、ちらりとインフェルノとタウロの方を見る。
そう、変異個体であるタウロが居たせいで、魔力が余計に消耗させられてしまったのだ。そのせいで、残った魔物との戦いでは、苦戦を強いられてしまっている。さすがに分が悪かった。
徐々に追い詰められていくペシエラだったが、その時、誰かがペシエラに襲い掛かる魔物の攻撃を振り払った。
「ペシエラ様、わたくしも戦いますわ」
「そうですよ。主人を見捨てたとあっては、従者失格です」
プラティナとアイリスだった。
プラティナの先程の剣筋は、目を見張るものがあった。魔物氾濫が起きる前とは比べ物にならないくらい、剣筋に鋭さがあったのだ。どうやらペシエラの危機に、思わず能力が発揮されたのだろう。ペシエラは笑うしかなかった。
「まだ余裕そうですね」
プラティナがペシエラを見る。ペシエラがこう言われるのも仕方がない。思わず笑っていたのだから。
「さすがの私もいっぱいいっぱいですわ。一番厄介な相手をインフェルノが相手してくれているだけでも、ずいぶん助かってますのよ」
「お役に立てたなら光栄です。せっかくペシエラ様に拾われた命です、役に立てなくて何が従者ですか」
この状況の中で、アイリスは胸を張ってドヤ顔を決めている。それを見たペシエラは、一瞬呆けた後、思い切り笑う。
「ペ、ペシエラ様?」
「いや、以前の様子から考えると、ずいぶんと使用人らしくなってしまったようで、ついおかしくて」
笑い終えると、ペシエラは再び剣を構えて魔物に向く。
「私たちの話の間、待っていて下さるなんて、ずいぶんと紳士的な魔物たちですわね」
そして、魔物に向けて鋭い眼光を向けた。
鋭い視線を向けられた魔物たちは、その明確な敵意に一気に荒れ狂った。
「さあ、来ますわよ」
「了解です!」
ペシエラが剣を振るい魔物を斬る。アイリスは右手に持った短剣で牽制しながら、左手で暗器や魔法を投げて応戦している。そして、プラティナもしっかり剣を持ち、魔物を斬りつけていく。さすがにここまで残っていた魔物ともなれば、一撃では終わらず、一体倒すのにかなりの手数を要した。
それでも、残るは五体というところまで三人で頑張った。
ところがだ。残りの五体はどうにもさっきまでとは違い、攻撃してくる気配がすっかり無くなっていた。一体どういう事なのか、まったくもって分からなかった。
だが、その答えはすぐに分かった。
「ふっ、腕を上げたが、まだまだ俺には及ばないようだな、タウロよ」
「くっ……、お前にはやはり勝てぬというのか……」
インフェルノとタウロの戦いに決着がついていたのだ。タウロは息の上がった状態で、インフェルノに頭を踏まれていた。耐火性があるのか、インフェルノが調整しているのか、タウロは燃える事なく無事なようである。
つまり、魔物の群れで最も強いタウロが敗北した事で、残った魔物は勝ち目がないと諦めたのだ。さすがに強くなってくると、生き延びるための知恵が働くようである。
残った五体はペシエラたちの前に並び、服従の意思を示す。この魔物たちの行動に、ペシエラたちは驚きを隠せなかった。
『おやおや、私らが通訳しようかえ』
アイリスから水の渦が飛び出して、蒼鱗魚たちが現れた。その蒼鱗魚たちを見て、魔物たちは更に頭を下げた。五体だけとはいえ、魔物に跪かれる様子は、まるで魔王にでもなった気分である。
蒼鱗魚の通訳を経て、タウロを含めて六体の魔物がアイリスの配下に加わった。
紳士的で智略もできる屈強な騎士、オークジェネラル。素早い動きで相手を翻弄、通った跡には雷が迸るライトニングウルフ。多彩な魔法を操る高位妖精だが、悪戯癖が玉に瑕のハイスプライト。あらゆる鉱石を食らった孤高のグルメ、メタルゼリー。振るう戦斧は全てを砕く剛腕のトカゲ、アックスリザード。
「これ、どう説明したらいいのかしら……」
魔物たちを目の前に、ペシエラは困っていた。
「心配なら俺が説明しよう。こいつらは俺の事をボスのように思っている。俺が言えば暴れる事もあるまい」
タウロがこう言うので、対応に困っていたペシエラたちはその提案を受け入れる。
「では、お姉様たちの居る、アクアマリン子爵の別荘に戻りましょう。あの中に、この魔物氾濫の犯人が居る可能性がありますわ」
「分かりました」
ペシエラたちはインフェルノと六体の魔物を引き連れて、アクアマリン子爵の別荘へと急いだのだった。
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