181 / 531
第八章 二年次
第178話 名持ちの魔物
しおりを挟む
ロゼリアが犯人を指摘している頃、ペシエラとアイリスは魔物をどんどんと倒していた。そんな中、プラティナも負けじと二人がわざと討ち漏らした魔物を相手にしている。漏らした魔物は比較的弱い魔物だ。プラティナもなんとか戦えている。
「アイリス、プラティナ様の援護を頼みますわ」
「ペシエラ様は?」
「雑魚は一掃しますわ。……どうやら桁違いな魔物が紛れているようですから」
「畏まりました。どうかご無事で」
敵を倒しながら、ペシエラとアイリスは会話をする。そして、ある程度周りの魔物が片付いたところで、アイリスをプラティナの援護に回し、ペシエラは一気に魔力を解き放った。
「雑魚は消えなさい!」
扱える六属性の複合魔法を、広範囲に展開する。
「ギャアアアッ!!」
力の弱い魔物は、その魔法力に焼かれて次々と消し飛んでいく。素材や魔石がもったいないが、数が多すぎるので邪魔だから仕方がない。
(いや、魔石だけはちゃんと確保しますわよ?)
どうやら力の加減はしていたようで、弱い魔物はすべて魔石に変わってその場に落ちていった。
「……あと、三十体ほどですか」
ペシエラは残った魔物の群れを睨む。
それにしても、千体以上居たはずの魔物が数えられる程度までに減るとは、さすがはチート級の魔力の持ち主である。
「ほう、骨のある小娘が相手か。なかなかな実力者と見える」
残った魔物の一体が、驚いた事に言葉を喋った。喋る魔物など、なかなか居るものではない。
「驚きましたわね。まさか、知性を携えた魔物をこの目で見る事になるとは思いませんでしたわ」
ペシエラは、額に汗を浮かべながら驚きを隠そうとしなかった。ペシエラほどの腕の持ち主が汗を浮かべる。これがどれほどの事なのか、アイリスとプラティナは分かっていなかった。
実のところ、今の状況はペシエラが汗を浮かべるほど、危険な状態に陥っていたのだ。ペシエラの魔法に耐えた魔物だけが残り、その中に言葉を話せるほどの知能を備えた者が居る。つまり、魔物の精鋭が、統率を持って動ける事を示す。これほど危険な状況があるだろうか。
ペシエラが愛用のサーベルを握り締めると、喋る魔物が口を開いた。
「そこな娘どもは、また面白い能力を持っているな。くくくっ、実に興味深い」
人型をしているが、どう見ても牛の頭部。ミノタウロスの変異種と思われる魔物は、実に楽しそうに笑った。
「そうだな。小娘が我々に勝てたなら、そこの短剣を持った娘と契約してもよいぞ。そういった能力を持っているようだからな」
「えっ?!」
ミノタウロスは、アイリスを指差して確かに言った。どうやら神獣使いだという事に気が付いているようだ。
「そこまで見抜いているとは、……なかなかに侮れませんわね」
ペシエラが更に身構えると、ミノタウロスは不敵な笑みを浮かべる。
「くっくっくっ、俺をそこいらの魔物と同じに見てもらっては困る。まったく、どこの誰かは知らんが、俺をあの地獄から解き放ってくれた事を嬉しく思うぞ」
「地獄?」
「ふっ、気になるか。聞きたければ俺を倒す事だな!」
ミノタウロスはドヤ顔を決め、上半身を仰け反らせて武器を持たない左手でペシエラたちを挑発する。
しかし、そんな挑発で簡単に激昂するようなペシエラたちではない。とはいえ、アイリスでも残った魔物の相手は厳しいし、プラティナは論外の状態。実質、ペシエラしか戦力にならなさそうであった。
「主人よ、俺が力を貸そう」
困ったところだったが、どこからともなく声が響く。そして、突如として火柱が上がった。
「インフェルノ!」
「ふっ、蒼鱗魚のやつがうるさいのでな。主人の危機に馳せ参じたというわけよ」
現れたのは全身が炎の毛並みに覆われた神獣インフェルノのだった。
「なっ、神獣だと?!」
「ほう、誰かと思えば、名持ちの魔物か。久しいな、タウロ」
インフェルノは、ミノタウロスを指して名を呼んだ。
「名持ち……。だから、知能があるのですわね」
「そうだ。なにせ奴に名をつけたのは俺だからな」
「はっ?!」
ペシエラが納得していると、インフェルノが驚愕の事実をぶち込んできた。
「アイリス、プラティナ様の援護を頼みますわ」
「ペシエラ様は?」
「雑魚は一掃しますわ。……どうやら桁違いな魔物が紛れているようですから」
「畏まりました。どうかご無事で」
敵を倒しながら、ペシエラとアイリスは会話をする。そして、ある程度周りの魔物が片付いたところで、アイリスをプラティナの援護に回し、ペシエラは一気に魔力を解き放った。
「雑魚は消えなさい!」
扱える六属性の複合魔法を、広範囲に展開する。
「ギャアアアッ!!」
力の弱い魔物は、その魔法力に焼かれて次々と消し飛んでいく。素材や魔石がもったいないが、数が多すぎるので邪魔だから仕方がない。
(いや、魔石だけはちゃんと確保しますわよ?)
どうやら力の加減はしていたようで、弱い魔物はすべて魔石に変わってその場に落ちていった。
「……あと、三十体ほどですか」
ペシエラは残った魔物の群れを睨む。
それにしても、千体以上居たはずの魔物が数えられる程度までに減るとは、さすがはチート級の魔力の持ち主である。
「ほう、骨のある小娘が相手か。なかなかな実力者と見える」
残った魔物の一体が、驚いた事に言葉を喋った。喋る魔物など、なかなか居るものではない。
「驚きましたわね。まさか、知性を携えた魔物をこの目で見る事になるとは思いませんでしたわ」
ペシエラは、額に汗を浮かべながら驚きを隠そうとしなかった。ペシエラほどの腕の持ち主が汗を浮かべる。これがどれほどの事なのか、アイリスとプラティナは分かっていなかった。
実のところ、今の状況はペシエラが汗を浮かべるほど、危険な状態に陥っていたのだ。ペシエラの魔法に耐えた魔物だけが残り、その中に言葉を話せるほどの知能を備えた者が居る。つまり、魔物の精鋭が、統率を持って動ける事を示す。これほど危険な状況があるだろうか。
ペシエラが愛用のサーベルを握り締めると、喋る魔物が口を開いた。
「そこな娘どもは、また面白い能力を持っているな。くくくっ、実に興味深い」
人型をしているが、どう見ても牛の頭部。ミノタウロスの変異種と思われる魔物は、実に楽しそうに笑った。
「そうだな。小娘が我々に勝てたなら、そこの短剣を持った娘と契約してもよいぞ。そういった能力を持っているようだからな」
「えっ?!」
ミノタウロスは、アイリスを指差して確かに言った。どうやら神獣使いだという事に気が付いているようだ。
「そこまで見抜いているとは、……なかなかに侮れませんわね」
ペシエラが更に身構えると、ミノタウロスは不敵な笑みを浮かべる。
「くっくっくっ、俺をそこいらの魔物と同じに見てもらっては困る。まったく、どこの誰かは知らんが、俺をあの地獄から解き放ってくれた事を嬉しく思うぞ」
「地獄?」
「ふっ、気になるか。聞きたければ俺を倒す事だな!」
ミノタウロスはドヤ顔を決め、上半身を仰け反らせて武器を持たない左手でペシエラたちを挑発する。
しかし、そんな挑発で簡単に激昂するようなペシエラたちではない。とはいえ、アイリスでも残った魔物の相手は厳しいし、プラティナは論外の状態。実質、ペシエラしか戦力にならなさそうであった。
「主人よ、俺が力を貸そう」
困ったところだったが、どこからともなく声が響く。そして、突如として火柱が上がった。
「インフェルノ!」
「ふっ、蒼鱗魚のやつがうるさいのでな。主人の危機に馳せ参じたというわけよ」
現れたのは全身が炎の毛並みに覆われた神獣インフェルノのだった。
「なっ、神獣だと?!」
「ほう、誰かと思えば、名持ちの魔物か。久しいな、タウロ」
インフェルノは、ミノタウロスを指して名を呼んだ。
「名持ち……。だから、知能があるのですわね」
「そうだ。なにせ奴に名をつけたのは俺だからな」
「はっ?!」
ペシエラが納得していると、インフェルノが驚愕の事実をぶち込んできた。
1
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

王女、豹妃を狩る
遠野エン
ファンタジー
ベルハイム王国の王子マルセスは身分の差を超えて農家の娘ガルナと結婚を決意。王家からは驚きと反対の声が上がるが、マルセスはガルナの自由闊達な魅力に惹かれ押し切る。彼女は結婚式で大胆不敵な豹柄のドレスをまとい、周囲をあ然とさせる。
ガルナは王子の妻としての地位を得ると、侍女や家臣たちを手の平で転がすかのように振る舞い始める。王宮に新しい風を吹かせると豪語し、次第に無茶な要求をし出すようになる。
マルセスの妹・フュリア王女はガルナの存在に潜む危険を察知し、独自に調査を開始する。ガルナは常に豹柄の服を身にまとい人々の視線を引きつけ、畏怖の念を込めて“豹妃”というあだ名で囁かれるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる