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第八章 二年次
第175話 魔力の可能性
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翌日もよく晴れている。
この日もプラティナとペシエラは、他の面々とは離れての別メニューだ。
特訓の内容は昨日と同じ。ペシエラの作り出した木偶人形をひたすら斬るというもの。あえて話していないが、これは魔法の訓練も兼ねていたりする。その理由はこの木偶人形だ。純粋に力任せに斬りかかれば、その力を跳ね返す性質を与えてある。魔力を織り交ぜて斬りかかれば、柔よく剛を制すという感じに、素直に刃が通るようになっているのだ。
なぜそんな意地悪な事を仕込んでいるのかというと、プラティナがペシエラを見ていたように、ペシエラもまたプラティナの事は見ていた。
あの忙しい中で、ペシエラは王国貴族の事をかなり頭に詰め込んでいた。その中でスノーフィールド公爵家の力は、侮れないものがあったのだ。その中で、プラティナは剣と魔法の両方を扱えるとあって、自分とタイプが似ているという事もあり、ペシエラは興味を持っているのだ。
目の前のプラティナだが、全然刃が通らずに焦るかと思われたが、次第に冷静になり始めていた。どうやら昨夜のペシエラの言葉を思い出しているようだった。
『自分の魔力を剣に乗せて振るう』
プラティナの頭の中に、この言葉が残っているのだ。
これは、言ってしまえば魔法剣の一種になるだろう。しかし、明確な属性を纏わせる魔法剣とは違い、ペシエラのこの言葉は闘気とも言われる純粋な魔力で剣を覆う事を指していた。つまり、剣を自分の体の一部のように扱うという事だ。
実はこれ、熟練の剣士であれば比較的誰でも行っている事である。大概は無意識だが。
ついでに言えば、乙女ゲームでもペイルにはこの能力があり、武器攻撃力が十%上乗せされるという仕様があった。そのせいで、ペイルルートの戦闘がだいぶ楽だったという報告があるくらいだ。
ペシエラはこの能力をプラティナに身に付けさせようとしているわけである。ペシエラの見立てでは、プラティナは筋がいい。しかし、根が真面目で真っ直ぐなために、剣筋が素直すぎるのだ。だからこそ動きが読めてしまう。
昨日、木剣を砕いてしまった理由もそこにあった。剣筋どころか、回避や防御の行動もとても読みやすい。だから、プラティナの持つ木剣を寸分違わず同じ場所を打ちつけて砕いたのである。つまり、偶然折ったのではなく、狙って折ったのだ。どんだけハイスペックなのか、この逆行ヒロイン女王様。
そのペシエラが見守る中、プラティナはめげずに木偶人形に木剣を打ち込んでいる。相変わらず弾かれ続けているが、その目に諦めの色はなかった。
(さすがはプラティナ様。基礎はしっかりしていますから、コツさえ掴めればあっという間に闘気をものにできるはずですわ)
ペシエラは確信している。
その時だった。突如として地鳴りのような音が聞こえてきた。
「こ、これは?」
「ペシエラ様、たった今、ニーズヘッグから報告がございまして、この揺れはどうやら奴らの襲撃のようです!」
揺れを感じて動揺するペシエラに、アイリスが叫んで知らせる。
「なんですって?」
ペシエラは叫ぶ。アイリスが奴らと叫んだので、これがパープリア男爵一派の仕業と理解した。すると、さっきまでの動揺が嘘のように落ち着く。敵襲と判れば、落ち着かずにはいられない。これが戦争を経験した女王の強みなのだ。
「奴らは何を仕掛けたのかしら」
「どうやら、去年と同じで魔物の召喚陣を仕込んでいたようです。この感じは私も身に覚えがありますから」
アイリスの報告に、ペシエラは一つ深呼吸をする。そして、キリッとした目つきでアイリスを見る。
「お姉様とロゼリアに伝えて、学生を全員まとめて防護壁で守るようにと」
「はっ! ペシエラ様は?」
ペシエラの指示に返事をするアイリス。だが、ペシエラの事が気になって仕方がないアイリスは、同時にペシエラに問い掛けた。
「私は、その魔物を全部倒すわ。諦めが悪い上に、随分と舐めてくれてるみたいですもの」
ペシエラが当然と言わんばかりに、この上ない笑みを浮かべて答える。そして、プラティナを見る。
「どうやら、都合よく実践できる場ができたみたいですわね」
プラティナはペシエラの笑顔に恐怖を感じたが、きゅっと口を結んで頷く。
「さあ、参りますわよ。アイリス、案内を頼みます」
「畏まりました」
アイリスの案内の下、ペシエラとプラティナは魔物との戦いへと赴くのだった。
この日もプラティナとペシエラは、他の面々とは離れての別メニューだ。
特訓の内容は昨日と同じ。ペシエラの作り出した木偶人形をひたすら斬るというもの。あえて話していないが、これは魔法の訓練も兼ねていたりする。その理由はこの木偶人形だ。純粋に力任せに斬りかかれば、その力を跳ね返す性質を与えてある。魔力を織り交ぜて斬りかかれば、柔よく剛を制すという感じに、素直に刃が通るようになっているのだ。
なぜそんな意地悪な事を仕込んでいるのかというと、プラティナがペシエラを見ていたように、ペシエラもまたプラティナの事は見ていた。
あの忙しい中で、ペシエラは王国貴族の事をかなり頭に詰め込んでいた。その中でスノーフィールド公爵家の力は、侮れないものがあったのだ。その中で、プラティナは剣と魔法の両方を扱えるとあって、自分とタイプが似ているという事もあり、ペシエラは興味を持っているのだ。
目の前のプラティナだが、全然刃が通らずに焦るかと思われたが、次第に冷静になり始めていた。どうやら昨夜のペシエラの言葉を思い出しているようだった。
『自分の魔力を剣に乗せて振るう』
プラティナの頭の中に、この言葉が残っているのだ。
これは、言ってしまえば魔法剣の一種になるだろう。しかし、明確な属性を纏わせる魔法剣とは違い、ペシエラのこの言葉は闘気とも言われる純粋な魔力で剣を覆う事を指していた。つまり、剣を自分の体の一部のように扱うという事だ。
実はこれ、熟練の剣士であれば比較的誰でも行っている事である。大概は無意識だが。
ついでに言えば、乙女ゲームでもペイルにはこの能力があり、武器攻撃力が十%上乗せされるという仕様があった。そのせいで、ペイルルートの戦闘がだいぶ楽だったという報告があるくらいだ。
ペシエラはこの能力をプラティナに身に付けさせようとしているわけである。ペシエラの見立てでは、プラティナは筋がいい。しかし、根が真面目で真っ直ぐなために、剣筋が素直すぎるのだ。だからこそ動きが読めてしまう。
昨日、木剣を砕いてしまった理由もそこにあった。剣筋どころか、回避や防御の行動もとても読みやすい。だから、プラティナの持つ木剣を寸分違わず同じ場所を打ちつけて砕いたのである。つまり、偶然折ったのではなく、狙って折ったのだ。どんだけハイスペックなのか、この逆行ヒロイン女王様。
そのペシエラが見守る中、プラティナはめげずに木偶人形に木剣を打ち込んでいる。相変わらず弾かれ続けているが、その目に諦めの色はなかった。
(さすがはプラティナ様。基礎はしっかりしていますから、コツさえ掴めればあっという間に闘気をものにできるはずですわ)
ペシエラは確信している。
その時だった。突如として地鳴りのような音が聞こえてきた。
「こ、これは?」
「ペシエラ様、たった今、ニーズヘッグから報告がございまして、この揺れはどうやら奴らの襲撃のようです!」
揺れを感じて動揺するペシエラに、アイリスが叫んで知らせる。
「なんですって?」
ペシエラは叫ぶ。アイリスが奴らと叫んだので、これがパープリア男爵一派の仕業と理解した。すると、さっきまでの動揺が嘘のように落ち着く。敵襲と判れば、落ち着かずにはいられない。これが戦争を経験した女王の強みなのだ。
「奴らは何を仕掛けたのかしら」
「どうやら、去年と同じで魔物の召喚陣を仕込んでいたようです。この感じは私も身に覚えがありますから」
アイリスの報告に、ペシエラは一つ深呼吸をする。そして、キリッとした目つきでアイリスを見る。
「お姉様とロゼリアに伝えて、学生を全員まとめて防護壁で守るようにと」
「はっ! ペシエラ様は?」
ペシエラの指示に返事をするアイリス。だが、ペシエラの事が気になって仕方がないアイリスは、同時にペシエラに問い掛けた。
「私は、その魔物を全部倒すわ。諦めが悪い上に、随分と舐めてくれてるみたいですもの」
ペシエラが当然と言わんばかりに、この上ない笑みを浮かべて答える。そして、プラティナを見る。
「どうやら、都合よく実践できる場ができたみたいですわね」
プラティナはペシエラの笑顔に恐怖を感じたが、きゅっと口を結んで頷く。
「さあ、参りますわよ。アイリス、案内を頼みます」
「畏まりました」
アイリスの案内の下、ペシエラとプラティナは魔物との戦いへと赴くのだった。
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