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第八章 二年次
第166話 意外な共通点
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チェリシアが求めていた豆が、モスグリネ王国にある。そう聞いたチェリシアは、オーロに早速取り寄せを持ち掛ける。とりあえず十キロずつ、欲しい種類を絵と文字で伝えた。
「ふむ、すべてありますね。分かりました。早くてひと月は待ってもらう事になりますが、よろしいですか?」
「ええ、もちろんです。代金もちゃんと支払います」
チェリシアは全身で喜んでいる。
「しかし、豆をたくさん購入して、何を作るおつもりで?」
オーロは疑問をぶつけてみる。
「調味料だったり料理だったりします。出来上がったら試食にお呼びしますので、楽しみにしていて下さい」
具体的な事は言わず、にこにこと返すチェリシア。今までに見た事ないくらいの笑顔である。
「いやー、元日本人としたら、味噌と醤油に餡子は外せないもの」
ついつい浮かれて言ってしまうチェリシア。気が付いたロゼリアが慌てて止める。
「チェリシア!」
その声に驚いたチェリシアだったが、うっかりしていた事に気が付いて口を塞いだ。
おそるおそるオーロを見ると、驚いた様子はなく、むしろ怖い顔をしている。一体どうしたというのだろうか。
「むむむ……、やはり“世界の渡り子”か」
オーロが呟いた言葉に、ロゼリアとチェリシアはきょとんと目を丸くする。
「いや、私の先祖も“世界の渡り子”なのですよ。まさか、自分が会う事になろうとは」
驚愕の事実を告げられた。
しかし、ロゼリアたちはまだピンと来なかったが、ロゼリアが何かを思い出したかのように叫んだ。
「あっ、どこかで聞いた事があると思ったら、レイニが言っていた単語だわ」
これを聞いて、チェリシアもようやく思い出した。
「えっ? という事はオーロ商会長は異世界人の子孫という事?」
「そういう事になりますな」
この時、二人に走った衝撃は計り知れない。
オーロは、チェリシアのように異世界へと渡った人間の子孫だと言うのだ。
「我々の持つ金髪がその証なのです。そして、金物細工を得意としてらしく、その技術で財を成してこの商会を立ち上げたと伝えられておるのです」
オーロが言うには、金髪というものはこの世界になかった髪色らしい。つまり、今存在している金髪やそれに近しい髪色を持つ人間は、すべてその世界渡りの子孫という事になるそうだ。
そして、その時の人物の持つ手先の器用さが受け継がれており、金物どころか木工、土木、服飾などその道のエキスパートとして君臨しているらしい。ドール商会の職人も、多くは血筋もしくは指導を受けた人物の子孫なのだそうだ。
「しかし、これでマゼンダ商会の躍進の理由が分かりましたよ。見た事のない調味料や料理、それに魔道具の数々、異世界の知識ならではというわけですな」
オーロは一人で勝手に納得して頷いている。
「あぁ、商売敵ではありますが、何も恨みなどありませんよ。わざわざ、商売の取り扱いの分類が重ならないように配慮している事は、分かっております。重なる可能性がある時は、こうやって相談を持ち掛けて下さってますからね」
何度となく会ってきていたものの、この時ほどチェリシアにオーロに対する親近感が湧いた時はない。そこで、
「では、醤油や味噌などが完成した際には、販売時の保存容器の発注をしますね」
「ええ、その時はぜひ」
ドール商会に発注を掛けておいた。容量や形状などの注文は忘れない。そして、醤油や味噌、餡子などの情報も少し教えて、取引を詰めていった。
取引の結果、調味料の販売はマゼンダ商会から行い。その売り上げの一部を容器代金としてドール商会に支払う。そういった形で決着した。
「子どもたちもあなた方とは良い付き合いをさせて頂いてますからね。ライバルと思わず、長く付き合って参りたいですな」
商談が終わった時に、オーロはそう語っていた。そして、お茶受けにマゼンダ領の果物で作ったドライフルーツを堪能して、この商談は終わったのであった。
ちなみにこのドライフルーツは評判となり、販売を始めると一気に人気商品になったとか。それはまた別のお話。
「ふむ、すべてありますね。分かりました。早くてひと月は待ってもらう事になりますが、よろしいですか?」
「ええ、もちろんです。代金もちゃんと支払います」
チェリシアは全身で喜んでいる。
「しかし、豆をたくさん購入して、何を作るおつもりで?」
オーロは疑問をぶつけてみる。
「調味料だったり料理だったりします。出来上がったら試食にお呼びしますので、楽しみにしていて下さい」
具体的な事は言わず、にこにこと返すチェリシア。今までに見た事ないくらいの笑顔である。
「いやー、元日本人としたら、味噌と醤油に餡子は外せないもの」
ついつい浮かれて言ってしまうチェリシア。気が付いたロゼリアが慌てて止める。
「チェリシア!」
その声に驚いたチェリシアだったが、うっかりしていた事に気が付いて口を塞いだ。
おそるおそるオーロを見ると、驚いた様子はなく、むしろ怖い顔をしている。一体どうしたというのだろうか。
「むむむ……、やはり“世界の渡り子”か」
オーロが呟いた言葉に、ロゼリアとチェリシアはきょとんと目を丸くする。
「いや、私の先祖も“世界の渡り子”なのですよ。まさか、自分が会う事になろうとは」
驚愕の事実を告げられた。
しかし、ロゼリアたちはまだピンと来なかったが、ロゼリアが何かを思い出したかのように叫んだ。
「あっ、どこかで聞いた事があると思ったら、レイニが言っていた単語だわ」
これを聞いて、チェリシアもようやく思い出した。
「えっ? という事はオーロ商会長は異世界人の子孫という事?」
「そういう事になりますな」
この時、二人に走った衝撃は計り知れない。
オーロは、チェリシアのように異世界へと渡った人間の子孫だと言うのだ。
「我々の持つ金髪がその証なのです。そして、金物細工を得意としてらしく、その技術で財を成してこの商会を立ち上げたと伝えられておるのです」
オーロが言うには、金髪というものはこの世界になかった髪色らしい。つまり、今存在している金髪やそれに近しい髪色を持つ人間は、すべてその世界渡りの子孫という事になるそうだ。
そして、その時の人物の持つ手先の器用さが受け継がれており、金物どころか木工、土木、服飾などその道のエキスパートとして君臨しているらしい。ドール商会の職人も、多くは血筋もしくは指導を受けた人物の子孫なのだそうだ。
「しかし、これでマゼンダ商会の躍進の理由が分かりましたよ。見た事のない調味料や料理、それに魔道具の数々、異世界の知識ならではというわけですな」
オーロは一人で勝手に納得して頷いている。
「あぁ、商売敵ではありますが、何も恨みなどありませんよ。わざわざ、商売の取り扱いの分類が重ならないように配慮している事は、分かっております。重なる可能性がある時は、こうやって相談を持ち掛けて下さってますからね」
何度となく会ってきていたものの、この時ほどチェリシアにオーロに対する親近感が湧いた時はない。そこで、
「では、醤油や味噌などが完成した際には、販売時の保存容器の発注をしますね」
「ええ、その時はぜひ」
ドール商会に発注を掛けておいた。容量や形状などの注文は忘れない。そして、醤油や味噌、餡子などの情報も少し教えて、取引を詰めていった。
取引の結果、調味料の販売はマゼンダ商会から行い。その売り上げの一部を容器代金としてドール商会に支払う。そういった形で決着した。
「子どもたちもあなた方とは良い付き合いをさせて頂いてますからね。ライバルと思わず、長く付き合って参りたいですな」
商談が終わった時に、オーロはそう語っていた。そして、お茶受けにマゼンダ領の果物で作ったドライフルーツを堪能して、この商談は終わったのであった。
ちなみにこのドライフルーツは評判となり、販売を始めると一気に人気商品になったとか。それはまた別のお話。
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