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第八章 二年次
第157話 新年次を迎える
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ロゼリアたちは無事に二年次に昇級した。アイリスも含めて全員が魔法科に進んだ。
魔法科になると、全員が魔法の制御を目的とした魔法具を持つ事になるのだが、ロゼリアたちには必要の無い物である。アイリスですら要らない。
アイリス自身の魔法の能力は知れているのだが、なにせ神獣使いという特殊な立場である。魔法が使えないと、割とシャレにならない立場なのだ。
ロゼリアたちは充実した生活を送っているのだが、婚約者予定のシルヴァノはそうとはいかなかった。
十三歳となって学園に入ってから、国王を継ぐための勉強がより一層厳しくなった。あまりに座学が多くて、体を動かしたくなる時があった。
つまり、武術大会に出たのは、実は羽休めでもあった。しかし、ペイルと本気でやり合ってしまった上に、倒れたその後に事件が発生。己の至らなさを痛感する事態となってしまった。
そういう事もあり、シルヴァノは冬季休暇の間はずっと鍛錬に打ち込んでいた。
ちなみに、これはペイルも同じだった。自国ではなかったとはいえ、自らの失態で動けなかったなど、情けないにも程があると猛省していた。シルヴァノ同様に、ペイルも冬の間は国に戻らず、アイヴォリーの兵士相手に一層鍛錬に励んでいた。
一国を担う者同士、そして、同じ女性に気のあるあたり、性格は違えどどこか似通った点のある二人。だが、実際にはライバル視している事もあって、会えば嫌味を言い合う仲のようだ。
進級した最初の登校日も、下校の時間になるとシルヴァノとペイルの二人は、揃ってどこかへと行こうとしていた。
それに気が付いたロゼリアが、チェリシアとペシエラ、それとアイリスを誘って尾行しようと持ちかけてきた。ペシエラはため息をついたが、チェリシアはノリノリである。
そうしてやって来た場所は、武術大会の行われた場所だった。普段は武術や魔法の実践で使われる訓練場である。
シルヴァノとペイルは、お互いに黙ったまま模擬剣を持つと向かい合った。
次の瞬間、互いに踏み込み剣をぶつけ合う。模擬剣ではあるが、凄まじいまでの金属音が訓練場に響き渡っている。
「あらあら、青春だわ~」
チェリシアが陶酔しながら、その様子を見ている。他の三人はチェリシアの様子に少し引きながらも、シルヴァノとペイルの戦いの様子を見守っている。
二人の戦いは、武術大会の時より進化している。そして、その時同様にとても均衡していた。
逆行前のこの時点では、シルヴァノはまだまだ剣術どころか精神的にもお子様だったというのに、えらい違いである。その表情は何かを決意した男のものであり、ペイルにも劣らぬ剣技を披露している。
「何があったのか、すごく興味がありますわね」
真剣な表情で観戦しながら、ペシエラは小さく呟いた。
二人とも魔法が使えるのだが、まったく使う気配はない。おそらく、剣と魔法を同時に使う事はまだまだできないのだろう。もしくは、魔法の制御が未熟なのかも知れない。
対人戦であれば、それもそれでいいだろう。誤って殺してしまってはいけない時だってある。
だが、それは魔物相手では話が変わってくる。魔物相手ではやるかやられるかの世界だ。パープリア男爵は今のところおとなしいが、いつまた魔物の襲撃があるか分かったものではない。
ペシエラは我慢できずに、気が付けば訓練場の武台の近くに降り立っていた。
「ペシエラ?」
突如として現れたペシエラに、二人の動きが止まる。その反応はどことなくぎこちなさがあった。これに対して、遠目で見るロゼリアたちは顔を押さえていたが、チェリシアだけは違った反応を見せていた。
「ふーん、そっか、あの二人ってそういう事なのね」
まったく、意味深な反応を示している。
さて、武台に上がったペシエラ。二人の息の上がり具合を確認すると、まだまだ余裕があると判断。そして、とんでもない事を言い放つ。
「さて、ここからは稽古に私も混ぜて下さいな」
ペシエラはそう言うと、魔法で模擬剣を作り出して構えるのであった。
魔法科になると、全員が魔法の制御を目的とした魔法具を持つ事になるのだが、ロゼリアたちには必要の無い物である。アイリスですら要らない。
アイリス自身の魔法の能力は知れているのだが、なにせ神獣使いという特殊な立場である。魔法が使えないと、割とシャレにならない立場なのだ。
ロゼリアたちは充実した生活を送っているのだが、婚約者予定のシルヴァノはそうとはいかなかった。
十三歳となって学園に入ってから、国王を継ぐための勉強がより一層厳しくなった。あまりに座学が多くて、体を動かしたくなる時があった。
つまり、武術大会に出たのは、実は羽休めでもあった。しかし、ペイルと本気でやり合ってしまった上に、倒れたその後に事件が発生。己の至らなさを痛感する事態となってしまった。
そういう事もあり、シルヴァノは冬季休暇の間はずっと鍛錬に打ち込んでいた。
ちなみに、これはペイルも同じだった。自国ではなかったとはいえ、自らの失態で動けなかったなど、情けないにも程があると猛省していた。シルヴァノ同様に、ペイルも冬の間は国に戻らず、アイヴォリーの兵士相手に一層鍛錬に励んでいた。
一国を担う者同士、そして、同じ女性に気のあるあたり、性格は違えどどこか似通った点のある二人。だが、実際にはライバル視している事もあって、会えば嫌味を言い合う仲のようだ。
進級した最初の登校日も、下校の時間になるとシルヴァノとペイルの二人は、揃ってどこかへと行こうとしていた。
それに気が付いたロゼリアが、チェリシアとペシエラ、それとアイリスを誘って尾行しようと持ちかけてきた。ペシエラはため息をついたが、チェリシアはノリノリである。
そうしてやって来た場所は、武術大会の行われた場所だった。普段は武術や魔法の実践で使われる訓練場である。
シルヴァノとペイルは、お互いに黙ったまま模擬剣を持つと向かい合った。
次の瞬間、互いに踏み込み剣をぶつけ合う。模擬剣ではあるが、凄まじいまでの金属音が訓練場に響き渡っている。
「あらあら、青春だわ~」
チェリシアが陶酔しながら、その様子を見ている。他の三人はチェリシアの様子に少し引きながらも、シルヴァノとペイルの戦いの様子を見守っている。
二人の戦いは、武術大会の時より進化している。そして、その時同様にとても均衡していた。
逆行前のこの時点では、シルヴァノはまだまだ剣術どころか精神的にもお子様だったというのに、えらい違いである。その表情は何かを決意した男のものであり、ペイルにも劣らぬ剣技を披露している。
「何があったのか、すごく興味がありますわね」
真剣な表情で観戦しながら、ペシエラは小さく呟いた。
二人とも魔法が使えるのだが、まったく使う気配はない。おそらく、剣と魔法を同時に使う事はまだまだできないのだろう。もしくは、魔法の制御が未熟なのかも知れない。
対人戦であれば、それもそれでいいだろう。誤って殺してしまってはいけない時だってある。
だが、それは魔物相手では話が変わってくる。魔物相手ではやるかやられるかの世界だ。パープリア男爵は今のところおとなしいが、いつまた魔物の襲撃があるか分かったものではない。
ペシエラは我慢できずに、気が付けば訓練場の武台の近くに降り立っていた。
「ペシエラ?」
突如として現れたペシエラに、二人の動きが止まる。その反応はどことなくぎこちなさがあった。これに対して、遠目で見るロゼリアたちは顔を押さえていたが、チェリシアだけは違った反応を見せていた。
「ふーん、そっか、あの二人ってそういう事なのね」
まったく、意味深な反応を示している。
さて、武台に上がったペシエラ。二人の息の上がり具合を確認すると、まだまだ余裕があると判断。そして、とんでもない事を言い放つ。
「さて、ここからは稽古に私も混ぜて下さいな」
ペシエラはそう言うと、魔法で模擬剣を作り出して構えるのであった。
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