逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第七章 一年次・後半

第148話 一年次、冬の計画

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「はぁ~~……、終わったー」
 チェリシアは机に突っ伏していた。その顔は、まるで燃え尽きたかのように真っ青になっていた。
「お疲れ様。あとは結果を待つだけよ」
「うう……、いまいち自信がない……」
 ロゼリアの労いに、チェリシアは表情が冴えなかった。
「落第点さえ取らなければ大丈夫よ。それより、シアンから報告があったわ」
 ガタガタと体を起こすチェリシア。横には既にペシエラも待機していた。
「ちょっと待ちなさい。ここで話す事じゃないから、とりあえず商会に行きましょう」
 ロゼリアの言葉で、チェリシアとペシエラはおとなしく下校の準備をする。そして、そのままマゼンダ商会の自室へと向かった。

「シアンによれば、王都のパープリア男爵邸には素性の知れない怪しい人物がたくさん出入りしてるみたい。しかも、人目を忍ぶかのように、裏口から」
 紅茶を飲みながら、ロゼリアが報告内容を話す。暗殺や闇討ちに裏取引など、裏家業を得意としているらしい男爵に気付かれず、よくシアンは情報を集めてこれたものである。
 ロゼリアにしても、情報を聞いた時にはどうやって集めたのか聞いたくらいだ。しかし、シアンは、「秘密でございます」と言って方法をはぐらかしていた。
「それにしても、やはりアイリスの母方の一族に攻撃を仕掛けてたのね」
「ええ、アイリスの母親も、やはり毒を盛られていたみたいだし、アイリスの事がバレてると見てよさそうね」
 ロゼリアたちがこう結論づけているのも理由がある。
 シアンから得た情報と、フェンリルから伝えられた情報を擦り合わせたのだ。そしたらパープリア男爵邸に出入りする人物と、フェンリルが追い返した人物の特徴が一致したのだ。
 しかし、この情報をもってしても、パープリア男爵を成敗するには至らないだろう。やはり、現行犯などの言い逃れできない証拠を押さえるしかないのだ。
「それからもう一つ」
 ロゼリアは話題を切り替える。
「アクアマリン子爵邸に、幻獣や神獣の事がまとめられた書物があったわ」
 これは、シアンに相談を持ち掛けて、子爵に手紙を送って、その直後の商会の取引の際に買い取らせた書物の話である。
「さすがは魔法の扱いに長けたアクアマリン子爵家ですわね。幻獣や神獣に書かれた本まであるなんて」
 ペシエラも驚いて、ロゼリアの差し出した本を見ている。
「で、他の幻獣や神獣の居場所は分かったのかしら」
「ええ、私のお父様の領地にも居るらしい事が分かりましたわ。しかも、神獣と幻獣が一体ずつ」
「ええっ?!」
 ロゼリアの調べた結果に、チェリシアは大きく驚いていた。
「ですから、冬の休みはマゼンダ領に向かおうと思うわ。一年次は特にこれといった行事はありませんし、あるとしても年末の王族主催のパーティーだけですからね」
 ロゼリアの中では、もう決定事項のようである。
「だったら、こっちの事は我に任せてもらおう」
 突然の声に、ロゼリアたちは一斉に振り向く。そこに立っていたのは、アイリスとニーズヘッグだった。
「申し訳ございません、ノックもせずに勝手に入ってしまいました」
 アイリスが謝罪しているが、驚いたのはそこだけではない。
「いや、鍵も掛けてたし、防壁も張ってたのよ? どうやって入ってきたのよ」
「そんなもの、本気の我にかかれば造作もない。鍵は主人に開けてもらい、我が防壁に一時的に穴を開けて通った」
 声を上げるロゼリアに、ニーズヘッグは淡々と答えた。チェリシアとペシエラも驚きを隠せていない。それにしても、アイリスって錠前破りできたのか……。
「これも父親から教わった技術です。裏家業とか褒められたものではないですが、罪滅ぼしができるのなら、お役に立ちますよ」
 この短期間で、アイリスはだいぶ精神的に落ち着いていた。従者としての心構えなのか、無茶苦茶な主人に苦労したからなのかは分からないが、ずいぶん頼り甲斐が出てきていた。……年次末試験では真っ白になっていたのに、えらく様子が違うものだ。
 とまあ、勝手に入ってきた二人だが、ロゼリアたちからすればちょうどよかった。これから呼びに行こうとしたところだったのだから。
 というわけで、冬季休暇の間の予定を、二人にも話す事にした。
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