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第七章 一年次・後半
第140話 早く出すべきでしょ
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第六戦、第七戦とも、地味な戦いで終わった。モブ先輩の戦いは雑な扱いだ。
そして、第八戦。一回戦最後の試合が行われる。
ブロードソードを扱うモスグリネ王国王子ペイルの相手は、双剣を扱う六年次先輩だ。まさかの最上級生相手だ。
「モスグリネの王子様が相手とあっても、手加減は無しだ。アイヴォリーの国力の方が上だと、思い知らせてくれる」
何と言うか負けフラグを立ててくれる。
「ほう、その自慢の国力を存分に見させてもらおうか」
ペイルも負けじと煽る煽る。
二人の睨み合いが最高潮になったところで、試合開始の合図がされる。
結果から言うと、ペイルの圧勝だった。煽られて冷静さを欠いた六年次先輩は、攻撃が単調化。入学直後にペシエラの相手をしたペイルからすれば、余裕で躱せるものだった。
「ペイル殿下も、逆行前より強くなってますわ。私は実際に、逆行前と今回の入学直後の二回も剣を交えていますが、殺気立った剣筋ではなく、楽しんでいるように見えましたわね」
「よく見ているわね、ペシエラ」
ペシエラはとても冷静に分析している。チェリシアは感心して、無意識に頭を撫でていた。
「お姉様、いちいち子ども扱いしないで下さいます?」
「あっ、ごめん」
ペシエラが拗ねたように言えば、チェリシアはパッと頭から手を退けた。
「本当に仲の良い姉妹ですよね、二人とも」
ロゼリアがツッコミを入れれば、ペシエラはどこか不満で、チェリシアはにへらと顔を緩ませている。
「しかし、ペイル殿下は、どこか不機嫌ですわね。相手をあそこまで煽らなくても、楽勝でしたでしょうに……」
ペシエラは顎に手を添えて難しい顔をする。ロゼリアとチェリシアは、ペイルの不機嫌の理由がなんとなく分かったが、あえてこの場で言う事はしなかった。
さて、順調にトーナメントは進んでいく。警戒していた工作は無いようだが、一応気は抜かない。
「オフライト様が決勝進出ですわ」
「さすがは騎士団副団長のご子息ですね」
「相手に同情したくなる強さね」
予想通り、オフライトが決勝まで勝ち進んだ。これで相手は、もう一つの準決勝の勝者となるのだが、その組み合わせは注目の的である。
「さて、シルヴァノ殿下とペイル殿下の対決ね。これはできれば動画で残したいわね」
チェリシアはこんな事を言って、収納魔法から何やら取り出した。
「前世にあった、動画を撮影できるビデオカメラというものを再現してみたんですよ。基本的な構造はカメラと同じで、アイリスの髪飾りに仕込んだ撮影魔法を魔石に仕込んでみたんです」
チェリシアは満面の笑みでとんでもない事を言っている。
「ただ、自動的にすべてを記録するわけじゃなくて、カメラと同じように、このスイッチで撮影状態のオンオフができるんですよ」
「お姉様……、いつの間に作ってたんですの?」
あまりに唐突な新製品に、ペシエラが頭を抱える。ロゼリアも開いた口が塞がらない。
「こっちの世界は便利ね。組み込む魔法を変えるだけで、同じ構造で別の物が作れるんだから」
ウキウキしているチェリシア。
「ところで、私とオフライト様の試合は、撮影しましたの?」
顔を上げたペシエラが、チェリシアを睨むようにして尋ねる。この質問に、チェリシアは顔を青ざめさせる。
「……ごめんね。ペシエラの事が心配なあまりに、……忘れてたの」
「お姉様のお馬鹿っ!」
しどろもどろに言うチェリシアを、ペシエラは思いっきり怒鳴りつけた。
「なんて事……、その映像があれば、オフライト様との試合の反省会ができましたのに……」
ペシエラは額に手を当て、天を仰いだ。
ところが、いつまでもそうはしていられない。
「二人とも、そろそろシルヴァノ殿下とペイル殿下の試合が始まりますわ。愚痴なら後にして下さい」
ロゼリアの言葉で、二人は我に返る。
「やはり、美形が剣を構えると、とても絵になるわね……」
ビデオカメラを構えながら、チェリシアは何か言っている。
「チェリシア、あなたって本当に面食いなのね」
ロゼリアは呆れる。
「お姉様たち、審判が出てきましたわ。黙って下さいませ」
そして、二人揃ってペシエラに一喝される。すると、ロゼリアとチェリシアは肩をすくめて笑い合うと、「そうね」と武台へと目線を落とした。
シルヴァノとペイルが剣を構え合い、態勢が整う。そして、
「始めっ!」
試合開始の合図が放たれた。
そして、第八戦。一回戦最後の試合が行われる。
ブロードソードを扱うモスグリネ王国王子ペイルの相手は、双剣を扱う六年次先輩だ。まさかの最上級生相手だ。
「モスグリネの王子様が相手とあっても、手加減は無しだ。アイヴォリーの国力の方が上だと、思い知らせてくれる」
何と言うか負けフラグを立ててくれる。
「ほう、その自慢の国力を存分に見させてもらおうか」
ペイルも負けじと煽る煽る。
二人の睨み合いが最高潮になったところで、試合開始の合図がされる。
結果から言うと、ペイルの圧勝だった。煽られて冷静さを欠いた六年次先輩は、攻撃が単調化。入学直後にペシエラの相手をしたペイルからすれば、余裕で躱せるものだった。
「ペイル殿下も、逆行前より強くなってますわ。私は実際に、逆行前と今回の入学直後の二回も剣を交えていますが、殺気立った剣筋ではなく、楽しんでいるように見えましたわね」
「よく見ているわね、ペシエラ」
ペシエラはとても冷静に分析している。チェリシアは感心して、無意識に頭を撫でていた。
「お姉様、いちいち子ども扱いしないで下さいます?」
「あっ、ごめん」
ペシエラが拗ねたように言えば、チェリシアはパッと頭から手を退けた。
「本当に仲の良い姉妹ですよね、二人とも」
ロゼリアがツッコミを入れれば、ペシエラはどこか不満で、チェリシアはにへらと顔を緩ませている。
「しかし、ペイル殿下は、どこか不機嫌ですわね。相手をあそこまで煽らなくても、楽勝でしたでしょうに……」
ペシエラは顎に手を添えて難しい顔をする。ロゼリアとチェリシアは、ペイルの不機嫌の理由がなんとなく分かったが、あえてこの場で言う事はしなかった。
さて、順調にトーナメントは進んでいく。警戒していた工作は無いようだが、一応気は抜かない。
「オフライト様が決勝進出ですわ」
「さすがは騎士団副団長のご子息ですね」
「相手に同情したくなる強さね」
予想通り、オフライトが決勝まで勝ち進んだ。これで相手は、もう一つの準決勝の勝者となるのだが、その組み合わせは注目の的である。
「さて、シルヴァノ殿下とペイル殿下の対決ね。これはできれば動画で残したいわね」
チェリシアはこんな事を言って、収納魔法から何やら取り出した。
「前世にあった、動画を撮影できるビデオカメラというものを再現してみたんですよ。基本的な構造はカメラと同じで、アイリスの髪飾りに仕込んだ撮影魔法を魔石に仕込んでみたんです」
チェリシアは満面の笑みでとんでもない事を言っている。
「ただ、自動的にすべてを記録するわけじゃなくて、カメラと同じように、このスイッチで撮影状態のオンオフができるんですよ」
「お姉様……、いつの間に作ってたんですの?」
あまりに唐突な新製品に、ペシエラが頭を抱える。ロゼリアも開いた口が塞がらない。
「こっちの世界は便利ね。組み込む魔法を変えるだけで、同じ構造で別の物が作れるんだから」
ウキウキしているチェリシア。
「ところで、私とオフライト様の試合は、撮影しましたの?」
顔を上げたペシエラが、チェリシアを睨むようにして尋ねる。この質問に、チェリシアは顔を青ざめさせる。
「……ごめんね。ペシエラの事が心配なあまりに、……忘れてたの」
「お姉様のお馬鹿っ!」
しどろもどろに言うチェリシアを、ペシエラは思いっきり怒鳴りつけた。
「なんて事……、その映像があれば、オフライト様との試合の反省会ができましたのに……」
ペシエラは額に手を当て、天を仰いだ。
ところが、いつまでもそうはしていられない。
「二人とも、そろそろシルヴァノ殿下とペイル殿下の試合が始まりますわ。愚痴なら後にして下さい」
ロゼリアの言葉で、二人は我に返る。
「やはり、美形が剣を構えると、とても絵になるわね……」
ビデオカメラを構えながら、チェリシアは何か言っている。
「チェリシア、あなたって本当に面食いなのね」
ロゼリアは呆れる。
「お姉様たち、審判が出てきましたわ。黙って下さいませ」
そして、二人揃ってペシエラに一喝される。すると、ロゼリアとチェリシアは肩をすくめて笑い合うと、「そうね」と武台へと目線を落とした。
シルヴァノとペイルが剣を構え合い、態勢が整う。そして、
「始めっ!」
試合開始の合図が放たれた。
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