141 / 543
第七章 一年次・後半
第139話 躍進の王子
しおりを挟む
さてさて、観客席に戻ってきた三人は武台に目を向ける。ちょうど三戦目が始まるところのようだ。二戦目は見逃したようで、ペシエラがちょっと残念そうにする。
三戦目もあっという間に終わり、四戦目。シルヴァノ王子の登場である。王子としてまじめに取り組んでいるらしく、かなり王宮内では慕われているらしい。逆行前では考えられなかった話である。
王政に剣術、魔法など、現在のシルヴァノはどれにおいても真剣に向き合っている。次期国王として、誇れるほどになっていた。
そのシルヴァノの相手は、四年次生の棒術使いである。リーチならば相手に分がある。だが、シルヴァノには余裕の表情が見て取れる。
「殿下、だいぶ落ち着いてるわね。前回も一年次から参加されてたけど、予選敗退だったから成長してるわね」
ロゼリアが感想を漏らしている。
「そうね。前回の今頃は、私と学園祭巡りしてましたわ。とは言っても、私が無理やりついて行っただけですけれど」
「ペシエラ、そんな事してたの?」
「ええ、最初から殿下と仲良くしようとしてましたから。裏工作は大事ですわよ」
ペシエラのさらっとした告白に、ロゼリアはとても驚いている。しかし、こういった行動が、あの断罪シーンに繋がっていったのだから、裏工作という単語には納得がいった。
だが、今はシルヴァノの試合だ。
シルヴァノの使う武器は、ペシエラと同じサーベルだ。それにしても、顔立ちの整った王子が剣を構えると、どうしてこうも絵になるのだろうか。チェリシアとペシエラは、揃ってカメラで撮っている。
「なんで持ってるの、二人とも」
「収納魔法に押し込んでたのよ」
ロゼリアの驚きに、チェリシアは淡々と答えた。ちなみにこのカメラ、武術大会の実行委員にも二台提供している。改良が進んで扱いやすくなったので、こっそりとモニターをお願いしたのだ。さすが抜け目がない。
「攻略対象の試合もだけど、こうやって撮っておけば、不正云々の時の証拠にできるのよ。このカメラの能力は売り込んだ時に証明してるし、驚かれたけど大変気に入ってもらえたわ」
「ちなみに、魔石一個で数百枚は余裕で撮れますわ」
チェリシアとペシエラが口々に言う。いつの間にこんな事をしていたのか、知らなかったロゼリアは口を開けて呆然とした。
あと、値段の事はまったく話していなかったが、付けるとするなら金貨百枚以上はするだろう。それくらい画期的な物なのである。
カメラの話をしている間に、シルヴァノの試合が始まった。対戦相手は王子相手にも遠慮なく攻撃を仕掛ける。試合なのだから当然ではあるが、棒術使いである学生はシルヴァノの正面から突きを放ってきた。
ところが、シルヴァノは動じない。冷静に棒を剣でいなすと、勢いそのままに突っ込んできた相手の脇腹に剣の柄を思いっきり打ち付ける。相当に思いっきり入ったらしく、相手はそのままその場に苦しみながら膝をついた。
圧勝だった。
相手も予選を勝ち抜いたので、それなりの腕を持つ者のはずだが、シルヴァノは冷静に対応してみせた。今武台の上に居るシルヴァノは、逆行前のシルヴァノとは確実に違う。王位を継ぐ者としてふさわしい雰囲気を纏っていた。
シルヴァノの圧勝に、会場は大いに沸く。そして、王子様スマイルを発動すれば、会場の女子たちがもうメロメロである。強さを兼ね備えてタラシになったよ。
なにこれ、何を見せられているのだろう?
ロゼリアはあまりのギャップに、目を点にさせていた。
「私に剣の事を聞きに来た時は驚きましたわよ。逆行前に夫婦となった仲なので、悪い気はしませんでしたが、こうも意欲的な殿下は初めて見ましたわ」
ペシエラも、あまりの王子の成長ぶりには驚かされたらしい。
しかし、シルヴァノのこれほどの活躍を見せられては、黙っていない者が一名居た。
「順当に行けば、準決勝で当たるか……。シルヴァノ王子、相手にとって不足なし!」
第八戦で登場する、隣国モスグリネ王国王子のペイルだった。
三戦目もあっという間に終わり、四戦目。シルヴァノ王子の登場である。王子としてまじめに取り組んでいるらしく、かなり王宮内では慕われているらしい。逆行前では考えられなかった話である。
王政に剣術、魔法など、現在のシルヴァノはどれにおいても真剣に向き合っている。次期国王として、誇れるほどになっていた。
そのシルヴァノの相手は、四年次生の棒術使いである。リーチならば相手に分がある。だが、シルヴァノには余裕の表情が見て取れる。
「殿下、だいぶ落ち着いてるわね。前回も一年次から参加されてたけど、予選敗退だったから成長してるわね」
ロゼリアが感想を漏らしている。
「そうね。前回の今頃は、私と学園祭巡りしてましたわ。とは言っても、私が無理やりついて行っただけですけれど」
「ペシエラ、そんな事してたの?」
「ええ、最初から殿下と仲良くしようとしてましたから。裏工作は大事ですわよ」
ペシエラのさらっとした告白に、ロゼリアはとても驚いている。しかし、こういった行動が、あの断罪シーンに繋がっていったのだから、裏工作という単語には納得がいった。
だが、今はシルヴァノの試合だ。
シルヴァノの使う武器は、ペシエラと同じサーベルだ。それにしても、顔立ちの整った王子が剣を構えると、どうしてこうも絵になるのだろうか。チェリシアとペシエラは、揃ってカメラで撮っている。
「なんで持ってるの、二人とも」
「収納魔法に押し込んでたのよ」
ロゼリアの驚きに、チェリシアは淡々と答えた。ちなみにこのカメラ、武術大会の実行委員にも二台提供している。改良が進んで扱いやすくなったので、こっそりとモニターをお願いしたのだ。さすが抜け目がない。
「攻略対象の試合もだけど、こうやって撮っておけば、不正云々の時の証拠にできるのよ。このカメラの能力は売り込んだ時に証明してるし、驚かれたけど大変気に入ってもらえたわ」
「ちなみに、魔石一個で数百枚は余裕で撮れますわ」
チェリシアとペシエラが口々に言う。いつの間にこんな事をしていたのか、知らなかったロゼリアは口を開けて呆然とした。
あと、値段の事はまったく話していなかったが、付けるとするなら金貨百枚以上はするだろう。それくらい画期的な物なのである。
カメラの話をしている間に、シルヴァノの試合が始まった。対戦相手は王子相手にも遠慮なく攻撃を仕掛ける。試合なのだから当然ではあるが、棒術使いである学生はシルヴァノの正面から突きを放ってきた。
ところが、シルヴァノは動じない。冷静に棒を剣でいなすと、勢いそのままに突っ込んできた相手の脇腹に剣の柄を思いっきり打ち付ける。相当に思いっきり入ったらしく、相手はそのままその場に苦しみながら膝をついた。
圧勝だった。
相手も予選を勝ち抜いたので、それなりの腕を持つ者のはずだが、シルヴァノは冷静に対応してみせた。今武台の上に居るシルヴァノは、逆行前のシルヴァノとは確実に違う。王位を継ぐ者としてふさわしい雰囲気を纏っていた。
シルヴァノの圧勝に、会場は大いに沸く。そして、王子様スマイルを発動すれば、会場の女子たちがもうメロメロである。強さを兼ね備えてタラシになったよ。
なにこれ、何を見せられているのだろう?
ロゼリアはあまりのギャップに、目を点にさせていた。
「私に剣の事を聞きに来た時は驚きましたわよ。逆行前に夫婦となった仲なので、悪い気はしませんでしたが、こうも意欲的な殿下は初めて見ましたわ」
ペシエラも、あまりの王子の成長ぶりには驚かされたらしい。
しかし、シルヴァノのこれほどの活躍を見せられては、黙っていない者が一名居た。
「順当に行けば、準決勝で当たるか……。シルヴァノ王子、相手にとって不足なし!」
第八戦で登場する、隣国モスグリネ王国王子のペイルだった。
1
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-
牛一/冬星明
ファンタジー
神様に気に入られた悪女令嬢が好きな少女は眷属神にされた。
どう見ても人の言う事を聞かなそうな神様の下で働くなって絶対嫌だった。
少女は過労死で死んだ記憶がある。
働くなら絶対にホワイトな職場だ。
神様のスカウトを断った少女だったが、人の話を聞かない神様が許す訳もない。
少女は眷属神の卵として転生を繰り返す。
そいて、ジュリアーナ・マジク・アラルンガルはこの世界に転生された。
だが、神々の加護を貰えないジュリアーナはすぐに捨てられた。
この可哀想な神様の卵に幸はあるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる