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第七章 一年次・後半
第137話 決勝トーナメント開始
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予想通りに大混雑を極めた喫茶店だったが、なんとか用意した食材を切らす事はなかった。しかし、客数が多いので売上はとんでもない額である。ちなみに売上の保管はチェリシアの収納魔法に任せてある。
そして迎えた最終日。
武術大会は決勝トーナメントが行われる。この席には国王陛下と女王陛下、それに騎士団の団長副団長が揃い踏みだ。将来の有望な騎士の発掘に余念がなく、予選から国王と騎士団の副団長の二人はずっと観戦していた。
「今年はいつになく盛り上がっておるな。やはりペシエラの存在が大きいようだな」
国王が言えば、全員が頷く。
十歳にして剣と魔法を、歴戦の騎士顔負けの腕前で操る少女だ。国として見守らないわけにはいかなかった。
ペシエラもそうなのだが、決勝トーナメントに残ったのは八組十六人のうち、一年次の学生は四人。ペシエラ以外はシルヴァノ、ペイル、そしてオフライトである。忖度などなく、全員が自力である。そのせいか、この決勝の見物客はいつもより多い。こういう時こそ、賊は紛れ込みやすい。なので、ロゼリアとチェリシアも、出し物の喫茶店をクラスメイトに任せて万一に備えているのだ。
アイリスとニーズヘッグ、それとシアンも警備についている。逆行前は何も事件は無かったし、そこまで気を揉む必要はないのだが、今回はどうにも落ち着かないのである。女の直感だろうか。
一回戦。最初に出てきたのはペシエラとオフライトだ。いきなりこの二人の試合で幕開けとは、注目度が高い。
「おい、あの幼女がトップで出てきたぞ」
「相手は騎士団副団長の息子か。いくらなんでも相手が悪いな」
「俺に勝ったんだから、ペシエラちゃんには勝ってもらいたい」
「そういや、お前、振り回された挙句負けてたな」
どうやらペシエラの予選の相手も居たようだ。“ちゃん”付けするほどには気に入っている模様。
とまぁ、多くの観客が注目する中、武術大会決勝トーナメントの最初の試合が始まる。
「年下だからって手加減はしないぞ」
「ええ、それで結構。模擬剣とはいえ、ここは戦場と同じと見て頂いた方が助かりますわ」
オフライトとペシエラは、お互い睨み合って言葉を交わす。
そして、満を持して、審判からこの言葉が放たれる。
「始めっ!!」
この声と同時に、二人は駆け出して剣をぶつけ合う。
ペシエラは相変わらずのサーベル。一方のオフライトはロングソードだ。体格差はペシエラの最初のモブ君ほどにある。この状態で剣をぶつけ合えば、ペシエラの腕は痺れ、剣を持てなくなるはずである。
それがどうだろうか。やはりペシエラはしっかりと剣を握りしめている。ペイルの時もそうだったが、この小さな体のどこにそんな力があるというのだろう。
「やはり一撃では決められないか。これが十歳とは末恐ろしいな」
「舐めてもらっては困りますわ。私には護りたいものがありますから、そのための努力は惜しみませんわよ」
「はっ、騎士みたいな事を言うとは……、面白いっ!」
二人は少し会話を交わすと、再び剣をぶつけ合う。
「……っ!」
オフライトの一撃が重かったのか、ペシエラの顔が一瞬歪む。
「さすがに力任せにされると、私には不利ですわね。少し、魔法を使わせてもらいますわ」
「ほう、まったく魔法を使ってなかったのか」
「ええ、身体強化すら使ってませんわ」
「言ってくれる!」
隙を与えまいと、オフライトはすぐに攻撃を仕掛ける。
ガキーーンッ!!
今までで一番大きな音が響き渡る。
しかし、剣が吹き飛んだわけではない。ペシエラはしっかりとオフライトの一撃を受け止めていた。
「知ってました? 魔法を使うのに一秒も要りませんのよ?」
ペシエラが笑う。
対してオフライトも笑みを浮かべ、二人は更に剣を交えていく。
これが最初の戦いなのか。あまりの剣戟の嵐に、観客全員が息を飲んだ。
ところが、戦いはそう長く続かなかった。
「はあはあ……、魔法で補っても、さすがに体力は、持ちませんわね」
「……まったく、とんだ十歳のお嬢様だよ」
「褒めても、何も出ませんわよ?」
「ははっ、これだけの戦いをさせてもらえただけで十分だ」
ペシエラの体力が尽きた。剣を持つ腕は、もはやぶら下がっているだけ。肩で息をするくらいには疲れ果てていた。
「それはよかったですわ。……降参ですわよ」
ペシエラの降参宣言が聞こえると、会場は割れんばかりの歓声に包まれたのだった。
そして迎えた最終日。
武術大会は決勝トーナメントが行われる。この席には国王陛下と女王陛下、それに騎士団の団長副団長が揃い踏みだ。将来の有望な騎士の発掘に余念がなく、予選から国王と騎士団の副団長の二人はずっと観戦していた。
「今年はいつになく盛り上がっておるな。やはりペシエラの存在が大きいようだな」
国王が言えば、全員が頷く。
十歳にして剣と魔法を、歴戦の騎士顔負けの腕前で操る少女だ。国として見守らないわけにはいかなかった。
ペシエラもそうなのだが、決勝トーナメントに残ったのは八組十六人のうち、一年次の学生は四人。ペシエラ以外はシルヴァノ、ペイル、そしてオフライトである。忖度などなく、全員が自力である。そのせいか、この決勝の見物客はいつもより多い。こういう時こそ、賊は紛れ込みやすい。なので、ロゼリアとチェリシアも、出し物の喫茶店をクラスメイトに任せて万一に備えているのだ。
アイリスとニーズヘッグ、それとシアンも警備についている。逆行前は何も事件は無かったし、そこまで気を揉む必要はないのだが、今回はどうにも落ち着かないのである。女の直感だろうか。
一回戦。最初に出てきたのはペシエラとオフライトだ。いきなりこの二人の試合で幕開けとは、注目度が高い。
「おい、あの幼女がトップで出てきたぞ」
「相手は騎士団副団長の息子か。いくらなんでも相手が悪いな」
「俺に勝ったんだから、ペシエラちゃんには勝ってもらいたい」
「そういや、お前、振り回された挙句負けてたな」
どうやらペシエラの予選の相手も居たようだ。“ちゃん”付けするほどには気に入っている模様。
とまぁ、多くの観客が注目する中、武術大会決勝トーナメントの最初の試合が始まる。
「年下だからって手加減はしないぞ」
「ええ、それで結構。模擬剣とはいえ、ここは戦場と同じと見て頂いた方が助かりますわ」
オフライトとペシエラは、お互い睨み合って言葉を交わす。
そして、満を持して、審判からこの言葉が放たれる。
「始めっ!!」
この声と同時に、二人は駆け出して剣をぶつけ合う。
ペシエラは相変わらずのサーベル。一方のオフライトはロングソードだ。体格差はペシエラの最初のモブ君ほどにある。この状態で剣をぶつけ合えば、ペシエラの腕は痺れ、剣を持てなくなるはずである。
それがどうだろうか。やはりペシエラはしっかりと剣を握りしめている。ペイルの時もそうだったが、この小さな体のどこにそんな力があるというのだろう。
「やはり一撃では決められないか。これが十歳とは末恐ろしいな」
「舐めてもらっては困りますわ。私には護りたいものがありますから、そのための努力は惜しみませんわよ」
「はっ、騎士みたいな事を言うとは……、面白いっ!」
二人は少し会話を交わすと、再び剣をぶつけ合う。
「……っ!」
オフライトの一撃が重かったのか、ペシエラの顔が一瞬歪む。
「さすがに力任せにされると、私には不利ですわね。少し、魔法を使わせてもらいますわ」
「ほう、まったく魔法を使ってなかったのか」
「ええ、身体強化すら使ってませんわ」
「言ってくれる!」
隙を与えまいと、オフライトはすぐに攻撃を仕掛ける。
ガキーーンッ!!
今までで一番大きな音が響き渡る。
しかし、剣が吹き飛んだわけではない。ペシエラはしっかりとオフライトの一撃を受け止めていた。
「知ってました? 魔法を使うのに一秒も要りませんのよ?」
ペシエラが笑う。
対してオフライトも笑みを浮かべ、二人は更に剣を交えていく。
これが最初の戦いなのか。あまりの剣戟の嵐に、観客全員が息を飲んだ。
ところが、戦いはそう長く続かなかった。
「はあはあ……、魔法で補っても、さすがに体力は、持ちませんわね」
「……まったく、とんだ十歳のお嬢様だよ」
「褒めても、何も出ませんわよ?」
「ははっ、これだけの戦いをさせてもらえただけで十分だ」
ペシエラの体力が尽きた。剣を持つ腕は、もはやぶら下がっているだけ。肩で息をするくらいには疲れ果てていた。
「それはよかったですわ。……降参ですわよ」
ペシエラの降参宣言が聞こえると、会場は割れんばかりの歓声に包まれたのだった。
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