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第七章 一年次・後半
第135話 喫茶店で合流
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ペシエラの予選、残り三試合も実に圧倒的なものであった。ちなみに最初の一戦を含めても、ペシエラはまったく魔法を使っていない。それに加えて、武術大会という場にいつも着ている制服で参加しているので、スカートとブーツという間違いなく動きにくい格好。それなのに、相手となる男子学生をまるで子ども扱い。軽い身のこなしと華麗な剣捌きで、ペシエラの人気は鰻登りである。
観客席では、チェリシアが割れんばかりの歓声を上げて、ペシエラの勝利を喜んでいた。
「すげえ、あれで十歳とか信じられない」
「まるで踊っているような感じでしたわ」
「はぁ、幼女最高……」
観客たちも、ペシエラのレベルの違う戦いに、酔いしれているようだった。
予選を楽に突破したペシエラは、チェリシアと合流して自分たちのクラスへと向かう。自分たちの考案した料理の並ぶ喫茶店、その状況を確認するためである。
武術大会の会場を後にする際、ペシエラはちょっと不穏な空気を感じた。さすがに年下の少女に一方的にやられたのでは、騎士を目指す男子たちにとって屈辱でしかない。その感情を、ペシエラは感じたのである。
「お姉様、ちょっと今日の対戦相手たちに会ってきますわね」
「えっ? ええ、気を付けてね」
ペシエラはそう言って控室へと歩いていく。この時、チェリシアは心配になったのだが、それは杞憂だった。
数分後、ペシエラの組の対戦はすべて終わっていたので、ペシエラは対戦相手全員を連れて戻ってきた。これにはチェリシアは驚いた。
「一方的に恨みを買うつもりはありませんからね。食事をしながらお話でもと思っただけですわ」
逆行前に波瀾万丈の人生を送ったペシエラの肝は、確かに据わっていた。自分より年上で体格のいい男四人を相手にしても、怯むどころか堂々としている。
とまぁ、対戦相手を引き連れたペシエラは、チェリシアと共にクラスに戻ってきた。
「あっ、チェリシア様、ペシエラ様」
二人に気が付いたクラスメイトが声を上げると、部屋の中に居た全員の視線が、一斉に入口に向いた。そして、話題の人物の登場に歓声が上がる。
「ちび、すげえ人気だな」
「殿下の婚約者候補というのも、頷ける人気ですね」
室内の盛り上がりを見て、対戦相手だった四人はそれぞれに反応を見せる。この人気っぷりのせいで、妬みの気持ちはすっかり吹き飛んでしまったようだ。
「すみませんね、皆さん。武術大会に出る事にしたので、クラスの手伝いができなくて」
席に着くなり、ペシエラから出たのは謝罪だった。素直に謝るなんて事は、逆行前から考えてもあり得ない行動なのだが、ペシエラも成長したのである。
「あの、ペシエラ様、そちらの方々は?」
「こちらの方々は、予選で私と戦いました方々ですわ。さすが、武術大会に出てこられる方々ですから、筋がよろしいですわよ」
結果はペシエラの一方的なものだったのだが、そこには触れず、四人の腕を誉めている。強者の余裕だろうか。チェリシアも空気を読んで、一方的だった事は黙っている。
「嘘仰い。あなたの腕前からすれば、相手にもならなかったでしょうに。相手を立てたようでしょうけど、困惑してますよ」
奥から出てきたロゼリアが、まるで見てきたかのように言う。長い付き合いだからこそ分かるのだ。
「ロゼリア様、殿方を立てるようにと言ってらっしゃるではございませんか」
ペシエラの反撃に、ロゼリアはぐっと口籠る。
「た、確かにそうですけれど、ペシエラの実力からしたら、魔法無しで圧倒するのは目に見えてしまうものなのよ」
なんとか発したロゼリアの言葉に、周りはペシエラを見る。
「た、確かに、ペシエラ様は魔法はまったく使われてませんでした」
「そういえばそうだったな」
今更ながらに対戦相手の四人は青ざめる。年下のちっちゃい少女が、魔法も無しに動きづらい格好で自分たちを圧倒したのだ。
「ペシエラ様だものね」
「うん、一撃で魔物百体以上沈める子だもん」
「こんな天才と同じ時間を過ごせるなんて幸せだよ」
クラスメイトたちも、口々にペシエラを褒め称える。
「ちょっと、は、恥ずかしいですわよ!」
あまりに崇拝にも似た言い方をされたので、ペシエラは耳まで真っ赤にして言い返す。
その慌てた様子に、部屋の中は笑いが溢れたのだった。
観客席では、チェリシアが割れんばかりの歓声を上げて、ペシエラの勝利を喜んでいた。
「すげえ、あれで十歳とか信じられない」
「まるで踊っているような感じでしたわ」
「はぁ、幼女最高……」
観客たちも、ペシエラのレベルの違う戦いに、酔いしれているようだった。
予選を楽に突破したペシエラは、チェリシアと合流して自分たちのクラスへと向かう。自分たちの考案した料理の並ぶ喫茶店、その状況を確認するためである。
武術大会の会場を後にする際、ペシエラはちょっと不穏な空気を感じた。さすがに年下の少女に一方的にやられたのでは、騎士を目指す男子たちにとって屈辱でしかない。その感情を、ペシエラは感じたのである。
「お姉様、ちょっと今日の対戦相手たちに会ってきますわね」
「えっ? ええ、気を付けてね」
ペシエラはそう言って控室へと歩いていく。この時、チェリシアは心配になったのだが、それは杞憂だった。
数分後、ペシエラの組の対戦はすべて終わっていたので、ペシエラは対戦相手全員を連れて戻ってきた。これにはチェリシアは驚いた。
「一方的に恨みを買うつもりはありませんからね。食事をしながらお話でもと思っただけですわ」
逆行前に波瀾万丈の人生を送ったペシエラの肝は、確かに据わっていた。自分より年上で体格のいい男四人を相手にしても、怯むどころか堂々としている。
とまぁ、対戦相手を引き連れたペシエラは、チェリシアと共にクラスに戻ってきた。
「あっ、チェリシア様、ペシエラ様」
二人に気が付いたクラスメイトが声を上げると、部屋の中に居た全員の視線が、一斉に入口に向いた。そして、話題の人物の登場に歓声が上がる。
「ちび、すげえ人気だな」
「殿下の婚約者候補というのも、頷ける人気ですね」
室内の盛り上がりを見て、対戦相手だった四人はそれぞれに反応を見せる。この人気っぷりのせいで、妬みの気持ちはすっかり吹き飛んでしまったようだ。
「すみませんね、皆さん。武術大会に出る事にしたので、クラスの手伝いができなくて」
席に着くなり、ペシエラから出たのは謝罪だった。素直に謝るなんて事は、逆行前から考えてもあり得ない行動なのだが、ペシエラも成長したのである。
「あの、ペシエラ様、そちらの方々は?」
「こちらの方々は、予選で私と戦いました方々ですわ。さすが、武術大会に出てこられる方々ですから、筋がよろしいですわよ」
結果はペシエラの一方的なものだったのだが、そこには触れず、四人の腕を誉めている。強者の余裕だろうか。チェリシアも空気を読んで、一方的だった事は黙っている。
「嘘仰い。あなたの腕前からすれば、相手にもならなかったでしょうに。相手を立てたようでしょうけど、困惑してますよ」
奥から出てきたロゼリアが、まるで見てきたかのように言う。長い付き合いだからこそ分かるのだ。
「ロゼリア様、殿方を立てるようにと言ってらっしゃるではございませんか」
ペシエラの反撃に、ロゼリアはぐっと口籠る。
「た、確かにそうですけれど、ペシエラの実力からしたら、魔法無しで圧倒するのは目に見えてしまうものなのよ」
なんとか発したロゼリアの言葉に、周りはペシエラを見る。
「た、確かに、ペシエラ様は魔法はまったく使われてませんでした」
「そういえばそうだったな」
今更ながらに対戦相手の四人は青ざめる。年下のちっちゃい少女が、魔法も無しに動きづらい格好で自分たちを圧倒したのだ。
「ペシエラ様だものね」
「うん、一撃で魔物百体以上沈める子だもん」
「こんな天才と同じ時間を過ごせるなんて幸せだよ」
クラスメイトたちも、口々にペシエラを褒め称える。
「ちょっと、は、恥ずかしいですわよ!」
あまりに崇拝にも似た言い方をされたので、ペシエラは耳まで真っ赤にして言い返す。
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