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第六章 一年次・夏
第123話 懐かしのカイス
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翌日、シェリアの町長をはじめとした大勢に見送られながら、ロゼリアたちはカイスへ向けてエアリアルボードでの移動を始める。
エアリアルボードでの移動は快適そのものだ。チェリシアとペシエラの魔力量は多いので、常時防壁を展開しながら半日飛び続ける事ができるので、飛来物や天気を気にする事なく長距離の移動ができる。
たまに魔物が出てくる事があるが、それもロゼリアがさっさと撃退して、魔石などの素材も回収している。道中は実に快適である。
シェリアからカイスまでの間には、高低差二百メートルの坂……じゃなかった、四十メートルほどの切り立った崖があり、そこに無理やり道を通したので、地味に入り組んだ地形となっている。しかも、隙を与えぬ二段構え。シャレにならなかった。
そのために馬車での移動は、うねうねとした蛇行を繰り返し、実に二日を要する面倒な場所なのだ。
だがしかし、エアリアルボードならそんな面倒な事をせず、軽くショートカットできてしまうのだ。馬車で十日の場所を、たった一日半で過ぎてしまう。エアリアルボード様々である。
そういった安全な空の旅なので、結構雑談にも花が咲く。今のところは攻略対象にもその婚約者たちにも変わったところはない。妙な動きがあれば、シアンから何かしらの連絡が家に入るようにはしてある。
それに、攻略対象たちには、外部からのあらゆる攻撃を防ぐアクセサリーを常に身に着けてもらっている。相当に強力な攻撃を何度も受けなければ、その防御は突破されない。剥がされなければ問題はない。
とにかく、パープリア男爵の動きは今後も要注意である。
シェリアを発った翌日の夕方、カイスの村に到着した。村の周囲には簡単な柵が設けられており、村には三ヶ所の出入口となる門が設置されていた。
「これはこれは、チェリシア様、ペシエラ様、よくおいで下さいました。ご友人方もどうぞお入り下さい」
門を警備する村人から声を掛けられ、ロゼリアたちは村長の村へと赴いた。
村長の家に着くなり、村長が出迎える。過去貧困に喘いでいた村とは思えないくらい、今現在は潤っている。村長もさっきの守衛もだが、村人は血色がかなり良くなっていた。
「よくぞお越し下さいました、チェリシアお嬢様、ペシエラお嬢様。急なお越しでしたのでろくに片付いてはおりませんが、立ち話もなんです。どうぞお入り下さい」
お言葉に甘えて、ロゼリアたちは村長の家へと入っていった。
カイスの村は近くに出現した水源のおかげで、あっという間に農業の盛んな土地となった。水源のおかげで海からの熱波が和らげられたのが大きい。
その上、チェリシアが作り出した光魔法の防壁での農業も順調であり、あの時の厄災の暗龍の魔石が未だに現役なのだから驚きである。
あと、ここでは小麦や大豆といった作物も作っており、シェリアの塩と合わせて味噌や醤油といった調味料の研究も進んでいる。ただ、発酵がなかなか上手くいかず、失敗しては肥料となっていたのだった。
この日の夕食は、チェリシアたちの恩恵を受けて確立された農業の賜物で作られた料理が出された。本当に不毛の大地だったのかと思わされるほど、作物の種類が豊富になっており、味もまた絶品であった。
食卓に並んだ料理を見て、チェリシアは三年前に魔物氾濫を抑えた事を思い出した。辛くてきつかったけど、被害もなく済ませられてよかったと、心の底から思った。
翌日の予定は、午前中は村長から村の現状を聞いて、村の散策を行う。必要に応じて取引の交渉を行う事となった。
「劇的に変わったとは聞き及んでいましたが、これが万年不毛と言われたコーラル領だとは、とても信じられませんね」
ブラッサは用意された部屋の中で、そのように驚きを漏らしていた。
しかし、豊かになるのは分かっていたものの、チェリシアたちもまさかここまでとは思っておらず、初訪問の面々と同じように驚いていた。
何にしても、自分たちが救ったカイスの村の現状がどうなっているのか。ロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人はとても明日を心待ちにするのだった。
エアリアルボードでの移動は快適そのものだ。チェリシアとペシエラの魔力量は多いので、常時防壁を展開しながら半日飛び続ける事ができるので、飛来物や天気を気にする事なく長距離の移動ができる。
たまに魔物が出てくる事があるが、それもロゼリアがさっさと撃退して、魔石などの素材も回収している。道中は実に快適である。
シェリアからカイスまでの間には、高低差二百メートルの坂……じゃなかった、四十メートルほどの切り立った崖があり、そこに無理やり道を通したので、地味に入り組んだ地形となっている。しかも、隙を与えぬ二段構え。シャレにならなかった。
そのために馬車での移動は、うねうねとした蛇行を繰り返し、実に二日を要する面倒な場所なのだ。
だがしかし、エアリアルボードならそんな面倒な事をせず、軽くショートカットできてしまうのだ。馬車で十日の場所を、たった一日半で過ぎてしまう。エアリアルボード様々である。
そういった安全な空の旅なので、結構雑談にも花が咲く。今のところは攻略対象にもその婚約者たちにも変わったところはない。妙な動きがあれば、シアンから何かしらの連絡が家に入るようにはしてある。
それに、攻略対象たちには、外部からのあらゆる攻撃を防ぐアクセサリーを常に身に着けてもらっている。相当に強力な攻撃を何度も受けなければ、その防御は突破されない。剥がされなければ問題はない。
とにかく、パープリア男爵の動きは今後も要注意である。
シェリアを発った翌日の夕方、カイスの村に到着した。村の周囲には簡単な柵が設けられており、村には三ヶ所の出入口となる門が設置されていた。
「これはこれは、チェリシア様、ペシエラ様、よくおいで下さいました。ご友人方もどうぞお入り下さい」
門を警備する村人から声を掛けられ、ロゼリアたちは村長の村へと赴いた。
村長の家に着くなり、村長が出迎える。過去貧困に喘いでいた村とは思えないくらい、今現在は潤っている。村長もさっきの守衛もだが、村人は血色がかなり良くなっていた。
「よくぞお越し下さいました、チェリシアお嬢様、ペシエラお嬢様。急なお越しでしたのでろくに片付いてはおりませんが、立ち話もなんです。どうぞお入り下さい」
お言葉に甘えて、ロゼリアたちは村長の家へと入っていった。
カイスの村は近くに出現した水源のおかげで、あっという間に農業の盛んな土地となった。水源のおかげで海からの熱波が和らげられたのが大きい。
その上、チェリシアが作り出した光魔法の防壁での農業も順調であり、あの時の厄災の暗龍の魔石が未だに現役なのだから驚きである。
あと、ここでは小麦や大豆といった作物も作っており、シェリアの塩と合わせて味噌や醤油といった調味料の研究も進んでいる。ただ、発酵がなかなか上手くいかず、失敗しては肥料となっていたのだった。
この日の夕食は、チェリシアたちの恩恵を受けて確立された農業の賜物で作られた料理が出された。本当に不毛の大地だったのかと思わされるほど、作物の種類が豊富になっており、味もまた絶品であった。
食卓に並んだ料理を見て、チェリシアは三年前に魔物氾濫を抑えた事を思い出した。辛くてきつかったけど、被害もなく済ませられてよかったと、心の底から思った。
翌日の予定は、午前中は村長から村の現状を聞いて、村の散策を行う。必要に応じて取引の交渉を行う事となった。
「劇的に変わったとは聞き及んでいましたが、これが万年不毛と言われたコーラル領だとは、とても信じられませんね」
ブラッサは用意された部屋の中で、そのように驚きを漏らしていた。
しかし、豊かになるのは分かっていたものの、チェリシアたちもまさかここまでとは思っておらず、初訪問の面々と同じように驚いていた。
何にしても、自分たちが救ったカイスの村の現状がどうなっているのか。ロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人はとても明日を心待ちにするのだった。
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