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第六章 一年次・夏
第119話 コーラル領へご招待
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ところがどっこい、翌々日のこと。
ロゼリアたちは、プラティナやブラッサ、グレイアを誘って、王都の門の外に居た。男たちは知らない。女だけの親睦会である。
「それでは、これから皆さんを、コーラル伯爵領のシェリアとカイスにご案内します。どちらも二泊ずつ、全体で二週間くらいの旅行になります。夏季休暇の最終日に戻ってくる計算ですので、ご安心を」
チェリシアが高らかに宣言する。それにしても、全員のテンションが低い!
ちなみに、お付きの侍女にも今回はご同行頂いている。ただ、シアンは別の要件があるのでお留守番。なので、プラティナとブラッサの侍女とアイリスを加えた、全部で九人という催行人数である。
「合宿から全然気が休まらなかったので、気分転換です。そのついでで、皆さんに生まれ変わったコーラル領を見てもらおうと考えました」
「まぁ、確かに気分転換がしたいですわね」
チェリシアとペシエラのテンションの差が激しい。
「チェリシアはただの気分転換でしょうけれど、私としては商会の取り扱いを増やせるかどうかの視察という感じね。シアンを連れて来れなかったのは痛いわね」
ロゼリアもやる気であった。
このロゼリアの発言に刺激されたのが、ブラッサである。
「あら、でしたらドール商会としても、負けていられませんね。そう考えると、俄然やる気が出てきましたね」
……商魂逞しい限りである。
さて、まず向かうのはシェリアの街だ。王都から馬車で十日掛かる港街だが、エアリアルボードではその三分の一の三日で着いてしまう。
チェリシアとペシエラの二人が作り出したエアリアルボードに、それぞれに分かれて乗り込む。
「この魔法は……、とても高等な技術ですわね。空気の塊をこの様に安定させて、人が乗れるようにするなんて、簡単にできる事ではございませんわ」
プラティナが目を丸くして驚いている。だが、さすがは公爵令嬢、知見の高さは確かだ。
実に快適な空の旅とあり得ない野営を繰り返し、三日後の日暮れ時にはシェリアの街に到着する。途中で雨が降ったにもかかわらず、濡れる事なく無事にたどり着いた。
シェリアの街は、五年前にチェリシアたちの手によって塩の精製を始めた街だ。それに加え、魚の干物や魚介類を使った料理などで、一躍観光地化しており、コーラル領の経済を支える海辺の街となっている。
ここで二日間滞在して、街の新たな販路を切り開いたり、海で泳いだりする事が目的である。なので、全員が水着を持って来ている。準備に一日空いたのはこのせいだ。
到着日は時間が遅かったので、伯爵邸のシェリア別邸に駆け込んだ。
移動手段が高速なために先触れを出せなかったので、屋敷の使用人たちは大慌てだった。なので、チェリシアとペシエラは使用人たちに謝罪していた。この辺は傲慢な貴族と違うのだ。
翌日となり、午前中は市場へと出向く。
シェリアの市場は、獲れたての魚が並んで活気に満ちていた。鮮魚に紛れて魚の骨や貝殻の加工品も並ぶようになっており、実に多彩な売り物が見られるようになっていた。
これも、チェリシアが相談を受けた結果である。学園に入るまでに、領地に出向いた父親から聞かされており、そこで前世由来の知恵を話したのである。その結果がこれだ。
ドール商会のブラッサと鍛冶屋の娘であるグレイアにはかなり新鮮に映ったようで、なにやら目の色を変えて食い入るように見ている。彼女たちの中では、何かにスイッチが入ったようだ。
シェリアの魚介類は、実はこれだけではない。
チェリシアが教えた干物以外にも、塩漬けや酢漬けといった保存食が増えた他、焼き魚に煮魚などの海鮮料理の種類も豊富になっていた。
そのすべての発端がチェリシアであり、シェリアではチェリシアの事を女神や聖女とするような動きまであるらしい。
本人曰く、「やめて下さい」とのこと。
午前中の視察を終えると、街にある一軒の食堂で昼食。ロゼリアたちは、種類豊富な魚料理を堪能したのだった。
ロゼリアたちは、プラティナやブラッサ、グレイアを誘って、王都の門の外に居た。男たちは知らない。女だけの親睦会である。
「それでは、これから皆さんを、コーラル伯爵領のシェリアとカイスにご案内します。どちらも二泊ずつ、全体で二週間くらいの旅行になります。夏季休暇の最終日に戻ってくる計算ですので、ご安心を」
チェリシアが高らかに宣言する。それにしても、全員のテンションが低い!
ちなみに、お付きの侍女にも今回はご同行頂いている。ただ、シアンは別の要件があるのでお留守番。なので、プラティナとブラッサの侍女とアイリスを加えた、全部で九人という催行人数である。
「合宿から全然気が休まらなかったので、気分転換です。そのついでで、皆さんに生まれ変わったコーラル領を見てもらおうと考えました」
「まぁ、確かに気分転換がしたいですわね」
チェリシアとペシエラのテンションの差が激しい。
「チェリシアはただの気分転換でしょうけれど、私としては商会の取り扱いを増やせるかどうかの視察という感じね。シアンを連れて来れなかったのは痛いわね」
ロゼリアもやる気であった。
このロゼリアの発言に刺激されたのが、ブラッサである。
「あら、でしたらドール商会としても、負けていられませんね。そう考えると、俄然やる気が出てきましたね」
……商魂逞しい限りである。
さて、まず向かうのはシェリアの街だ。王都から馬車で十日掛かる港街だが、エアリアルボードではその三分の一の三日で着いてしまう。
チェリシアとペシエラの二人が作り出したエアリアルボードに、それぞれに分かれて乗り込む。
「この魔法は……、とても高等な技術ですわね。空気の塊をこの様に安定させて、人が乗れるようにするなんて、簡単にできる事ではございませんわ」
プラティナが目を丸くして驚いている。だが、さすがは公爵令嬢、知見の高さは確かだ。
実に快適な空の旅とあり得ない野営を繰り返し、三日後の日暮れ時にはシェリアの街に到着する。途中で雨が降ったにもかかわらず、濡れる事なく無事にたどり着いた。
シェリアの街は、五年前にチェリシアたちの手によって塩の精製を始めた街だ。それに加え、魚の干物や魚介類を使った料理などで、一躍観光地化しており、コーラル領の経済を支える海辺の街となっている。
ここで二日間滞在して、街の新たな販路を切り開いたり、海で泳いだりする事が目的である。なので、全員が水着を持って来ている。準備に一日空いたのはこのせいだ。
到着日は時間が遅かったので、伯爵邸のシェリア別邸に駆け込んだ。
移動手段が高速なために先触れを出せなかったので、屋敷の使用人たちは大慌てだった。なので、チェリシアとペシエラは使用人たちに謝罪していた。この辺は傲慢な貴族と違うのだ。
翌日となり、午前中は市場へと出向く。
シェリアの市場は、獲れたての魚が並んで活気に満ちていた。鮮魚に紛れて魚の骨や貝殻の加工品も並ぶようになっており、実に多彩な売り物が見られるようになっていた。
これも、チェリシアが相談を受けた結果である。学園に入るまでに、領地に出向いた父親から聞かされており、そこで前世由来の知恵を話したのである。その結果がこれだ。
ドール商会のブラッサと鍛冶屋の娘であるグレイアにはかなり新鮮に映ったようで、なにやら目の色を変えて食い入るように見ている。彼女たちの中では、何かにスイッチが入ったようだ。
シェリアの魚介類は、実はこれだけではない。
チェリシアが教えた干物以外にも、塩漬けや酢漬けといった保存食が増えた他、焼き魚に煮魚などの海鮮料理の種類も豊富になっていた。
そのすべての発端がチェリシアであり、シェリアではチェリシアの事を女神や聖女とするような動きまであるらしい。
本人曰く、「やめて下さい」とのこと。
午前中の視察を終えると、街にある一軒の食堂で昼食。ロゼリアたちは、種類豊富な魚料理を堪能したのだった。
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