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第六章 一年次・夏
第103話 急展開
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「大丈夫か!」
現れたのは、攻略対象五人を含めた後続班たちだった。
「なんなんですか、この魔物たちは」
チークウッドが声を荒げる。
「どうやら休憩ポイントに、魔物を召喚する魔法が仕掛けられていたようよ。これは第二波で、もしかしたらまだ残っているかも知れないわ」
肩で息をしつつ、ロゼリアは答える。
「なんだと?!」
「明らかに俺たちを狙ったという事か。実に手の込んだ罠だな」
ペイルたちは剣を構え、魔物たちを見据える。
「チェリシアが防御魔法を張ってますので、多少の攻撃では怪我はしないとは思いますが、無茶はしないように願いますわ」
「分かった。暴れ足りなくて困ってたところだ。どこの馬鹿か知らないが、存分に暴れさせてもらうぞ」
ペイルとオフライトが斬り込み、シルヴァノとチークウッドがシェイディアたちと一緒に討ち漏らしに対処する。見事な連携で魔物たちに立ち向かった。
一方のペシエラ。こちらの魔物はケルピー一匹だけである。幸い、ケルピーはまだこちらに気が付いていない。
しかし、ロゼリアたちの方の状況を感知で察していたペシエラは、ケルピーだけでは済まない可能性を考えていた。そこで、ペシエラはケルピー共々召喚陣も撃破できないか一つの方策を導き出した。
ペシエラは周りの学生を自分の所に集めて、そこから魔力の網を展開していく。自分たち以外の学生に被害が及ばないように感知魔法を併用しながら、慎重に広げていく。
しばらくすると、湖の縁から少し入ったところまで、おおよそ半径五十メートルの範囲に魔力の網を展開し終える。
魔力の網が足元に触れたのかケルピーが反応するが、既に遅い。
「気付くのが遅いですわ……よっ!」
ケルピーが水玉を飛ばすよりも早く、ケルピーを雷が地面から撃ち抜く!
そう、ペシエラが展開した魔力の網は、チェリシアの転生前の知識であるケーブルのようなものなのだ。そして、そこを魔力が走り、触れた者を打ち据えるという、まるで断線した電線に触れて感電するような現象である。
ケルピーは水属性のため、雷が驚く程効いている。そして、あっという間に黒焦げになってその場に倒れた。多くの人間を屠ってきた上位の魔物ですら、ペシエラの前には成す術も無かったのである。
そして、ケルピーを打ち据えたとほぼ同時に、あちこちからボンボンと音が鳴り響く。ペシエラの強力な魔力に、魔物の召喚陣が耐えきれずに破壊されたのだ。音だけでも十数か所に上り、魔物をけしかけた者の執念のようなものが感じられる。
「なんて事なの? 魔物に反応するように網を張ったけれど、まさかこれ程までのものだなんて……」
状況を理解したペシエラの顔から血の気が引く。
「ペ、ペシエラ様、これは一体?」
アイリスが左手を前に出して近付いてくる。ペシエラは振り向いてそれに答えようとしたが、違和感を感じてアイリスに剣を向けた。
「な、何をするのですか?」
「それはこっちのセリフですわ。アイリス様、今あなたは何をなさろうとしたのです?」
ペシエラとアイリスのやり取りに、グレイアたちは理解が追いつかない。ただでさえ魔物の襲撃で頭が混乱しているのだから、無理もない話だ。
「……今回の魔物の襲撃は、明らかに私たち学生を狙ったもの。休憩ポイントに的確に罠を仕掛ける事ができるのは、この合宿を行なっている教官のみですわ。今年は隣国の王子も留学してきていますので、国家転覆を謀る連中にとって、都合がいいというわけですわね」
ペシエラがアイリスを睨むようにしながら、説明している。アイリスはそれを無表情で聞いている。
「なるほど、合点がいきましたわ。今回の魔物の襲撃の片棒を担いだのが、アイリス様だと」
ペシエラの左手から、アイリス目掛けて微弱な雷が走る。
「きゃあああっ!」
電撃に打たれたアイリスから、右手側にナイフ、左手側に謎の宝珠が地面に転がり落ちる。その様子を見ていたグレイアたちは、その身を強ばらせた。
「逆行前のヴィオレス様が仰られてましたわ。『我が家は暗殺術に長けていた』と。それと、『妹の死で心を入れ替えた』とも。敗走中の事で必死でしたので、今まで忘れていましたわ」
体の埃を払いながら、蔑んだ目でこう言い放つ。
「アイリス・パープリア。魔物の襲撃の実行犯として、拘束させて頂きます!」
現れたのは、攻略対象五人を含めた後続班たちだった。
「なんなんですか、この魔物たちは」
チークウッドが声を荒げる。
「どうやら休憩ポイントに、魔物を召喚する魔法が仕掛けられていたようよ。これは第二波で、もしかしたらまだ残っているかも知れないわ」
肩で息をしつつ、ロゼリアは答える。
「なんだと?!」
「明らかに俺たちを狙ったという事か。実に手の込んだ罠だな」
ペイルたちは剣を構え、魔物たちを見据える。
「チェリシアが防御魔法を張ってますので、多少の攻撃では怪我はしないとは思いますが、無茶はしないように願いますわ」
「分かった。暴れ足りなくて困ってたところだ。どこの馬鹿か知らないが、存分に暴れさせてもらうぞ」
ペイルとオフライトが斬り込み、シルヴァノとチークウッドがシェイディアたちと一緒に討ち漏らしに対処する。見事な連携で魔物たちに立ち向かった。
一方のペシエラ。こちらの魔物はケルピー一匹だけである。幸い、ケルピーはまだこちらに気が付いていない。
しかし、ロゼリアたちの方の状況を感知で察していたペシエラは、ケルピーだけでは済まない可能性を考えていた。そこで、ペシエラはケルピー共々召喚陣も撃破できないか一つの方策を導き出した。
ペシエラは周りの学生を自分の所に集めて、そこから魔力の網を展開していく。自分たち以外の学生に被害が及ばないように感知魔法を併用しながら、慎重に広げていく。
しばらくすると、湖の縁から少し入ったところまで、おおよそ半径五十メートルの範囲に魔力の網を展開し終える。
魔力の網が足元に触れたのかケルピーが反応するが、既に遅い。
「気付くのが遅いですわ……よっ!」
ケルピーが水玉を飛ばすよりも早く、ケルピーを雷が地面から撃ち抜く!
そう、ペシエラが展開した魔力の網は、チェリシアの転生前の知識であるケーブルのようなものなのだ。そして、そこを魔力が走り、触れた者を打ち据えるという、まるで断線した電線に触れて感電するような現象である。
ケルピーは水属性のため、雷が驚く程効いている。そして、あっという間に黒焦げになってその場に倒れた。多くの人間を屠ってきた上位の魔物ですら、ペシエラの前には成す術も無かったのである。
そして、ケルピーを打ち据えたとほぼ同時に、あちこちからボンボンと音が鳴り響く。ペシエラの強力な魔力に、魔物の召喚陣が耐えきれずに破壊されたのだ。音だけでも十数か所に上り、魔物をけしかけた者の執念のようなものが感じられる。
「なんて事なの? 魔物に反応するように網を張ったけれど、まさかこれ程までのものだなんて……」
状況を理解したペシエラの顔から血の気が引く。
「ペ、ペシエラ様、これは一体?」
アイリスが左手を前に出して近付いてくる。ペシエラは振り向いてそれに答えようとしたが、違和感を感じてアイリスに剣を向けた。
「な、何をするのですか?」
「それはこっちのセリフですわ。アイリス様、今あなたは何をなさろうとしたのです?」
ペシエラとアイリスのやり取りに、グレイアたちは理解が追いつかない。ただでさえ魔物の襲撃で頭が混乱しているのだから、無理もない話だ。
「……今回の魔物の襲撃は、明らかに私たち学生を狙ったもの。休憩ポイントに的確に罠を仕掛ける事ができるのは、この合宿を行なっている教官のみですわ。今年は隣国の王子も留学してきていますので、国家転覆を謀る連中にとって、都合がいいというわけですわね」
ペシエラがアイリスを睨むようにしながら、説明している。アイリスはそれを無表情で聞いている。
「なるほど、合点がいきましたわ。今回の魔物の襲撃の片棒を担いだのが、アイリス様だと」
ペシエラの左手から、アイリス目掛けて微弱な雷が走る。
「きゃあああっ!」
電撃に打たれたアイリスから、右手側にナイフ、左手側に謎の宝珠が地面に転がり落ちる。その様子を見ていたグレイアたちは、その身を強ばらせた。
「逆行前のヴィオレス様が仰られてましたわ。『我が家は暗殺術に長けていた』と。それと、『妹の死で心を入れ替えた』とも。敗走中の事で必死でしたので、今まで忘れていましたわ」
体の埃を払いながら、蔑んだ目でこう言い放つ。
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