104 / 543
第六章 一年次・夏
第102話 魔物包囲網
しおりを挟む
ペシエラとケルピーが対峙したその時、ロゼリアたちの方は少し離れた休憩ポイントに居た。こちらも数班が合同で行動しており、昼食はとても賑やかになっていた。
ところが、こちらもその様相は一変する。
湖の方から大きな音がすると同時に、ロゼリアとチェリシアの居る休憩ポイントの近くにも魔物が出現したのだ。
「なんで、こんなに魔物が? 感知魔法にも反応は無かったのに……」
チェリシアが慌てる。
「どうやら、この場に召喚されたようね」
ロゼリアは魔物の出現に慌てつつも、冷静に状況を分析していた。魔物が出現した辺りには、何やら黒いモヤが見えたのだ。この事から、ロゼリアはある推測を立てた。
「どうやら、人が集まる休憩ポイントに、魔物を召喚する術式を仕掛けていたようね。それが時間になって発動したという事だと思うわ」
ロゼリアの言葉を聞いて、チェリシアは感知魔法を周囲に展開する。すると、確かに休憩ポイントの近くにだけ集中して魔物の反応があった。
「まったく……、明らかに殺意を持って確実に仕留めにきてる罠だわね」
ロゼリアはきゅっと口を食いしばる。そして、チェリシアを見て言う。
「チェリシア、この辺りの学生を守るように防御魔法を展開できるかしら」
「……うん、やってみるわ」
顔を歪めているロゼリアを見て、チェリシアはすぐに感知魔法から学生の位置を割り出し、個々に防御魔法を掛けていく。この時、近くに居る学生はなるべく自分たちの近くに居るように、ロゼリアは誘導する。
一方で、現れた魔物が戸惑っているのか攻撃してこないため、チェリシアは無事に防御魔法の展開を完了させた。
「チェリシア、魔物の数は?」
「五十くらい。湖の近くに居る魔物が一番強いみたいよ」
「……シアンから聞いた事があるわ。多分それはケルピーよ」
「ケルピー?」
ロゼリアから聞いた聞き慣れない単語に、チェリシアは首を傾げる。
「アクアマリン子爵領で噂されている、馬の姿をした魔物よ。……っと、ゆっくり話している時間は終わりのようね」
周りに現れた魔物たちは、ようやく状況を理解したのか、目の前に居る学生たちを見て咆哮を上げる。
学生たちは、初めて見る魔物に完全に怯えている。そのため、ロゼリアはすぐ行動に移る。
「チェリシア、討ち漏らしを出しちゃったらお願いね」
「分かったわ」
ロゼリアはチェリシアに確認を取ると、
「錬成『土の刃』!」
一つ魔法を使う。すると、ロゼリアの手に土魔法でできた剣が握られた。ちなみに、声に出さなくても地水風の三属性それぞれの、剣を生み出す事ができる。ここはあえて声に出したのだ。
土の剣を握って、ロゼリアは次々と魔物を斬り倒していく。さすが、未開の森で戦闘経験を積んだだけの事はある。
ロゼリアは扱える三属性の魔法で敵の攻撃をいなし、動きを牽制し、一体一体確実に仕留めていく。
しかし、さすがに敵の数が多いので、どうしても捌き切れない。だが、討ち漏らした魔物はチェリシアはもちろん、シェイディアとプラティナも参加して撃退していた。
ある程度数を減らしていったものの、さすがにこうも連戦では、ロゼリアの体力の消耗が激しい。十三歳のお嬢様には、一対多の戦闘は厳しすぎたようだ。
その上、ここで予想外の事態がさらに待ち受けていた。
「なっ! 第二波ですって?!」
そう、新たな召喚陣が出現し、魔物が補充されたのである。その数は第一波と変わらない五十体ほどである。
しかもよく見れば、第一波よりも強力な魔物もちらほらと見受けられる。思ったより第一波で消耗してしまったロゼリアには、持ち堪えられるかどうか分からない状況である。表情に焦りの色が見える。
チェリシアの感知では、休憩ポイント以外には魔物が出現していない。しかし、ここで魔物を討ち漏らしてしまえば、今は安全な学生たちにも危険が及びかねない。
ここで自分が踏ん張るしかないと決意したロゼリアは、剣主体から魔法主体へと戦法を切り替える。動き回る事による体力の消耗を抑えるためだ。近付いてきた魔物のみ、剣で斬り倒す。
しかし、動き回って撹乱する事ができなくなったので、集中攻撃を受ける危険性がある。ロゼリアがそうやって覚悟を決めた時、どこからともなく魔法が飛んできて魔物を蹴散らしたのだ。
ところが、こちらもその様相は一変する。
湖の方から大きな音がすると同時に、ロゼリアとチェリシアの居る休憩ポイントの近くにも魔物が出現したのだ。
「なんで、こんなに魔物が? 感知魔法にも反応は無かったのに……」
チェリシアが慌てる。
「どうやら、この場に召喚されたようね」
ロゼリアは魔物の出現に慌てつつも、冷静に状況を分析していた。魔物が出現した辺りには、何やら黒いモヤが見えたのだ。この事から、ロゼリアはある推測を立てた。
「どうやら、人が集まる休憩ポイントに、魔物を召喚する術式を仕掛けていたようね。それが時間になって発動したという事だと思うわ」
ロゼリアの言葉を聞いて、チェリシアは感知魔法を周囲に展開する。すると、確かに休憩ポイントの近くにだけ集中して魔物の反応があった。
「まったく……、明らかに殺意を持って確実に仕留めにきてる罠だわね」
ロゼリアはきゅっと口を食いしばる。そして、チェリシアを見て言う。
「チェリシア、この辺りの学生を守るように防御魔法を展開できるかしら」
「……うん、やってみるわ」
顔を歪めているロゼリアを見て、チェリシアはすぐに感知魔法から学生の位置を割り出し、個々に防御魔法を掛けていく。この時、近くに居る学生はなるべく自分たちの近くに居るように、ロゼリアは誘導する。
一方で、現れた魔物が戸惑っているのか攻撃してこないため、チェリシアは無事に防御魔法の展開を完了させた。
「チェリシア、魔物の数は?」
「五十くらい。湖の近くに居る魔物が一番強いみたいよ」
「……シアンから聞いた事があるわ。多分それはケルピーよ」
「ケルピー?」
ロゼリアから聞いた聞き慣れない単語に、チェリシアは首を傾げる。
「アクアマリン子爵領で噂されている、馬の姿をした魔物よ。……っと、ゆっくり話している時間は終わりのようね」
周りに現れた魔物たちは、ようやく状況を理解したのか、目の前に居る学生たちを見て咆哮を上げる。
学生たちは、初めて見る魔物に完全に怯えている。そのため、ロゼリアはすぐ行動に移る。
「チェリシア、討ち漏らしを出しちゃったらお願いね」
「分かったわ」
ロゼリアはチェリシアに確認を取ると、
「錬成『土の刃』!」
一つ魔法を使う。すると、ロゼリアの手に土魔法でできた剣が握られた。ちなみに、声に出さなくても地水風の三属性それぞれの、剣を生み出す事ができる。ここはあえて声に出したのだ。
土の剣を握って、ロゼリアは次々と魔物を斬り倒していく。さすが、未開の森で戦闘経験を積んだだけの事はある。
ロゼリアは扱える三属性の魔法で敵の攻撃をいなし、動きを牽制し、一体一体確実に仕留めていく。
しかし、さすがに敵の数が多いので、どうしても捌き切れない。だが、討ち漏らした魔物はチェリシアはもちろん、シェイディアとプラティナも参加して撃退していた。
ある程度数を減らしていったものの、さすがにこうも連戦では、ロゼリアの体力の消耗が激しい。十三歳のお嬢様には、一対多の戦闘は厳しすぎたようだ。
その上、ここで予想外の事態がさらに待ち受けていた。
「なっ! 第二波ですって?!」
そう、新たな召喚陣が出現し、魔物が補充されたのである。その数は第一波と変わらない五十体ほどである。
しかもよく見れば、第一波よりも強力な魔物もちらほらと見受けられる。思ったより第一波で消耗してしまったロゼリアには、持ち堪えられるかどうか分からない状況である。表情に焦りの色が見える。
チェリシアの感知では、休憩ポイント以外には魔物が出現していない。しかし、ここで魔物を討ち漏らしてしまえば、今は安全な学生たちにも危険が及びかねない。
ここで自分が踏ん張るしかないと決意したロゼリアは、剣主体から魔法主体へと戦法を切り替える。動き回る事による体力の消耗を抑えるためだ。近付いてきた魔物のみ、剣で斬り倒す。
しかし、動き回って撹乱する事ができなくなったので、集中攻撃を受ける危険性がある。ロゼリアがそうやって覚悟を決めた時、どこからともなく魔法が飛んできて魔物を蹴散らしたのだ。
1
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-
牛一/冬星明
ファンタジー
神様に気に入られた悪女令嬢が好きな少女は眷属神にされた。
どう見ても人の言う事を聞かなそうな神様の下で働くなって絶対嫌だった。
少女は過労死で死んだ記憶がある。
働くなら絶対にホワイトな職場だ。
神様のスカウトを断った少女だったが、人の話を聞かない神様が許す訳もない。
少女は眷属神の卵として転生を繰り返す。
そいて、ジュリアーナ・マジク・アラルンガルはこの世界に転生された。
だが、神々の加護を貰えないジュリアーナはすぐに捨てられた。
この可哀想な神様の卵に幸はあるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる