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第六章 一年次・夏
第94話 合宿、初野営
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夏の二の月を迎え、一年次生による合宿が始まった。
参加人数はおおよそ四十人ほどと、全体の三分の一くらいである。参加自体は強制ではないので、適当な理由を見繕って辞退する事は可能なので、このくらいの人数なのだろう。
この合宿の参加者には、マゼンダ商会とドール商会の合同製作によるアクセサリーが配られていた。貰った参加者はとても喜んでいたが、実はこれは防御魔法の掛かった魔道具である。付いている宝石は、実は魔石を加工して作った模造品。外部からのあらゆる攻撃に対して、装備者を護るようになっていて、どのような攻撃でも、一度は必ず完全防御できる代物である。
ここには攻略候補五人と、同い年の婚約者も全員揃っているので、その面々にはより強力な防御魔法の掛けられた物を渡すように仕向けておいた。
(さぁ、魔物でもなんでも来いってものよ。必ず全員無事に戻らせるんだから!)
ロゼリアたちの気合いも入っていた。
学生たちと一部の御付きの者は馬車に、護衛と教官たちは、馬に乗ってアクアマリン子爵領へと向かう。
その途中には領境の複雑な地形があり、そこが一番の難所である。そこを通るのは王都を出立後五日目。それまでは街や村に寄りながら、一日だけ野営をする事になる。
多くの学生にとって、野営は初めての経験だ。攻略対象たちも、王子二人は野営経験があるらしいが、それ以外は初めてとあって、準備に手間取っていたようだ。
野営地の防御は、教官たちが持ってきた魔除けの香を使う。だが、野盗相手には効果が無いので、そこは護衛と教官たちが交代で寝ずの番を行う。
今回の合宿にはガレンも参加しており、彼にはこっそりチェリシアの防御魔法を使う事を伝えていた。学生たちの安全のためにガレンはそれを了承しており、他の教官や護衛たちとも共有している。
野営以外の宿泊は宿を事前に予約をしてあったので、これといったトラブルもなく道中は進む。四泊目以降は合宿地まで野営となるので、ここからが問題だ。
まずは食事。ほとんどが王都暮らしなので、野営の食事に慣れていない。念のため、チェリシアは収納魔法に料理を鍋ごと放り込んで来ている。
それ以外にはお風呂に服など、育ちのいい子女たちには厳しい環境が待ち受けている。特に、天幕での地べたに寝転がるなどは厳しいだろう。そういった野営に慣れてもらうのも、この合宿の目的の一つなのだ。
ここまでの三泊でも、宿の質に文句を言う学生は居た。だが、教官は学生を叱った。この程度で文句を言っていては、この後の合宿が思いやられるからだ。なにせ、この野営も成績の評価につながる。座学の時間にも野営の話はしておいたのだが、多くの学生はすっかり忘れているようである。
最初の野営は四泊目の日。アクアマリン領の近くの街道の脇である。
全員で六十名を超える野営は、大規模な商隊レベル、小規模な軍隊レベルだ。しかも、その多くが野営初体験。不安しかない。
まずは木々を見つけて馬を繋ぎ、野営地の四隅に魔物除けの香を焚く。それが終わると天幕を張り、火を起こして夕食の支度を始める。
さすがに教官や護衛、それと使用人は慣れているようで、ちゃっちゃと行動している。
攻略対象の五人は、王族の二人がさっさと天幕を張り、中まで整えていた。できる王族は素晴らしい。
ロゼリアたちは、その婚約者やアイリスたちの天幕をさっさと張り上げてしまう。アイリスたちはその手際の良さに驚いていた。
「お父様たちの視察に同行して慣れていますから」
チェリシアはそう説明する。うん、何も間違ってはいない。意外とコーラル領との間を往復していたので、実際慣れているのだから。
重そうな天幕も、風魔法で浮かせたり、土魔法で倒れないように固めたりと、魔法を駆使して頑丈に仕上げている。チェリシアとペシエラに至っては、光と闇の両方にある身体強化も合わせて使っているので、本当に楽々と作業をしていた。
「魔法って便利なのね」
「使えると便利ですよ。魔法が使えなくても、魔道具があれば似たような効果を受けられますよ」
そう言いながら魔道具である指輪をちらつかせて、さりげなく堂々と販促までしてみせるチェリシア。商売経験も積んだ事で、しれっとやってのけているようだ。
「御三方がいらっしゃると、私たちは何もしなくてもいいような気がします」
シェイディアは、思わずため息をつきながらロゼリアたちの様子を見ていた。
その他の面々も、教官に手伝ってもらいながら、なんとか野営の設営を済ませていたようである。
参加人数はおおよそ四十人ほどと、全体の三分の一くらいである。参加自体は強制ではないので、適当な理由を見繕って辞退する事は可能なので、このくらいの人数なのだろう。
この合宿の参加者には、マゼンダ商会とドール商会の合同製作によるアクセサリーが配られていた。貰った参加者はとても喜んでいたが、実はこれは防御魔法の掛かった魔道具である。付いている宝石は、実は魔石を加工して作った模造品。外部からのあらゆる攻撃に対して、装備者を護るようになっていて、どのような攻撃でも、一度は必ず完全防御できる代物である。
ここには攻略候補五人と、同い年の婚約者も全員揃っているので、その面々にはより強力な防御魔法の掛けられた物を渡すように仕向けておいた。
(さぁ、魔物でもなんでも来いってものよ。必ず全員無事に戻らせるんだから!)
ロゼリアたちの気合いも入っていた。
学生たちと一部の御付きの者は馬車に、護衛と教官たちは、馬に乗ってアクアマリン子爵領へと向かう。
その途中には領境の複雑な地形があり、そこが一番の難所である。そこを通るのは王都を出立後五日目。それまでは街や村に寄りながら、一日だけ野営をする事になる。
多くの学生にとって、野営は初めての経験だ。攻略対象たちも、王子二人は野営経験があるらしいが、それ以外は初めてとあって、準備に手間取っていたようだ。
野営地の防御は、教官たちが持ってきた魔除けの香を使う。だが、野盗相手には効果が無いので、そこは護衛と教官たちが交代で寝ずの番を行う。
今回の合宿にはガレンも参加しており、彼にはこっそりチェリシアの防御魔法を使う事を伝えていた。学生たちの安全のためにガレンはそれを了承しており、他の教官や護衛たちとも共有している。
野営以外の宿泊は宿を事前に予約をしてあったので、これといったトラブルもなく道中は進む。四泊目以降は合宿地まで野営となるので、ここからが問題だ。
まずは食事。ほとんどが王都暮らしなので、野営の食事に慣れていない。念のため、チェリシアは収納魔法に料理を鍋ごと放り込んで来ている。
それ以外にはお風呂に服など、育ちのいい子女たちには厳しい環境が待ち受けている。特に、天幕での地べたに寝転がるなどは厳しいだろう。そういった野営に慣れてもらうのも、この合宿の目的の一つなのだ。
ここまでの三泊でも、宿の質に文句を言う学生は居た。だが、教官は学生を叱った。この程度で文句を言っていては、この後の合宿が思いやられるからだ。なにせ、この野営も成績の評価につながる。座学の時間にも野営の話はしておいたのだが、多くの学生はすっかり忘れているようである。
最初の野営は四泊目の日。アクアマリン領の近くの街道の脇である。
全員で六十名を超える野営は、大規模な商隊レベル、小規模な軍隊レベルだ。しかも、その多くが野営初体験。不安しかない。
まずは木々を見つけて馬を繋ぎ、野営地の四隅に魔物除けの香を焚く。それが終わると天幕を張り、火を起こして夕食の支度を始める。
さすがに教官や護衛、それと使用人は慣れているようで、ちゃっちゃと行動している。
攻略対象の五人は、王族の二人がさっさと天幕を張り、中まで整えていた。できる王族は素晴らしい。
ロゼリアたちは、その婚約者やアイリスたちの天幕をさっさと張り上げてしまう。アイリスたちはその手際の良さに驚いていた。
「お父様たちの視察に同行して慣れていますから」
チェリシアはそう説明する。うん、何も間違ってはいない。意外とコーラル領との間を往復していたので、実際慣れているのだから。
重そうな天幕も、風魔法で浮かせたり、土魔法で倒れないように固めたりと、魔法を駆使して頑丈に仕上げている。チェリシアとペシエラに至っては、光と闇の両方にある身体強化も合わせて使っているので、本当に楽々と作業をしていた。
「魔法って便利なのね」
「使えると便利ですよ。魔法が使えなくても、魔道具があれば似たような効果を受けられますよ」
そう言いながら魔道具である指輪をちらつかせて、さりげなく堂々と販促までしてみせるチェリシア。商売経験も積んだ事で、しれっとやってのけているようだ。
「御三方がいらっしゃると、私たちは何もしなくてもいいような気がします」
シェイディアは、思わずため息をつきながらロゼリアたちの様子を見ていた。
その他の面々も、教官に手伝ってもらいながら、なんとか野営の設営を済ませていたようである。
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