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第五章 学園編
第87話 元ヒロインですもの
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入学式と初日の試験をやり過ごせば、夏の期間までは特にイベントは無い。
そういう事もあり、ロゼリアたちはのんびりと学生生活を過ごしていた。
……と思われたが、試験でペシエラが目立ち過ぎてしまったので、しばらくは大量のストーカーが発生していて大変だった。
そんな中で、ペシエラは新しい魔法を開発してしまう。『ミラージュ』という幻影魔法だった。魔力までは消せないが、姿と気配を消してしまえる優れもの。廊下の曲がり角などで発動すれば、確実にストーカーを撒く事ができた。
「はぁ……、実に面倒ですわね」
半ば自業自得ではあるが、さすがにストーカーの度が過ぎていた。
そこで、ガレンに相談して、商会の商品開発という名目で、しばらくペシエラを休学させる事にした。入学直後の試験でも好成績だったので、意外とあっさりと認められた。その際、
「本当なら飛び級でもよかったのですが、規則は規則ですからね」
と苦笑いをしていた。
とりあえず、定期試験だけは受けてもらって、その成績だけで判定するという事だそうだ。
クラスメイトに説明すれば非常に残念がってはいたが、その原因を作ったのはクラスメイトをはじめとした生徒たちだ。ロゼリアとチェリシアは呆れて物も言えなかった。
その当のペシエラは、商会のある工房で商品への彫刻を行なっていた。現在はマゼンダ商会だけではなく、ドール商会にも赴いて彫刻の指導をしている。
なにぶん、ペシエラの彫刻の腕前は両商会の中でもトップクラスなのだから仕方がない。
ただ、これが編み物とかになると話は別。なので、ペシエラの生み出した彫刻の図案を元に、編み物や染色の職人たちが再現している。そして、そのデザインは、常に上位の売り上げを誇る人気商品ともなっていた。
ところが、ずっと同じ作業をしていると、どうしても飽きてしまうし、そうなると疲れ方が著しくなる。作業が一段落したところで、ペシエラは机に突っ伏した。
「はぁ……、さすがに退屈ですわ」
ストーカー騒ぎのせいで、王都のコーラル伯爵邸と二つの商会の中でしか行動できず、ペシエラは精神的に参り始めていた。
何と言ってもストーカーが一人ではないし、影でコソコソではなく大挙して押し寄せるのだ。それを毎日やられれば、ペシエラでなくても精神的なダメージは計り知れなかった。
「ペシエラ様、失礼致します」
「あら、ロゼリアのところのシアンではありませんか。どうされたのかしら」
ペシエラが休憩を入れていると、シアンがやって来た。いつもながら、元子爵令嬢であるシアンは表情が読めない。
「はい、入学式の後のお茶会の面々の身辺調査の途中経過のまとめをお持ちしたのですが、いかが致しましょうか」
「ロゼリアとお姉様が戻るまで、待ってもらえないかしら。私はまだ十歳ですし、お姉様たちほどの権限はありませんし、判断を仰ぎたいと思いますので」
「畏まりました。では、お嬢様たちが戻られる夕刻にまたお持ち致します」
「ええ、頼みますわ」
シアンが部屋を出ていく。
そして、ペシエラはしばらくしていい事を思いついた。
「そうだわ。写真魔法で新しい魔道具が作れないかしら。ちょうど私は休学で暇な身。時間ならいくらでもあるではありませんの」
バタバタと部屋の片隅から魔石を取り出すペシエラ。
「写真魔法を記憶させて、それを写し出せるように魔術式を組み込めば、誰でも写真を撮って現像できるようになりますわ。あとは光と音を調整できれば、様々な場面で使える魔道具となるはずですわ」
思い立ったが吉日と言わんばかりに、ペシエラは工房へ出向き、作業に取り掛かる。
工房の職人と交流した結果、ある程度の部品製作までできるようになっていたペシエラ。魔石を収める箱や、写真魔法を使う時の手で作る四角の枠など、あっという間に作り上げていく。
さすがは本来のヒロイン枠に生まれた少女。チート能力炸裂である。
昼食の後からロゼリアたちが訪問するまでのたった四時間の間に、写真撮影機の試作品を二つも作り上げてしまった。
「一つは写真魔法と同じように音と光が出る物、もう一つは音も光もほとんど抑えた物。早速動作確認ですわ」
しばらくはうきうきで、写真撮影に熱中するペシエラであった。
そういう事もあり、ロゼリアたちはのんびりと学生生活を過ごしていた。
……と思われたが、試験でペシエラが目立ち過ぎてしまったので、しばらくは大量のストーカーが発生していて大変だった。
そんな中で、ペシエラは新しい魔法を開発してしまう。『ミラージュ』という幻影魔法だった。魔力までは消せないが、姿と気配を消してしまえる優れもの。廊下の曲がり角などで発動すれば、確実にストーカーを撒く事ができた。
「はぁ……、実に面倒ですわね」
半ば自業自得ではあるが、さすがにストーカーの度が過ぎていた。
そこで、ガレンに相談して、商会の商品開発という名目で、しばらくペシエラを休学させる事にした。入学直後の試験でも好成績だったので、意外とあっさりと認められた。その際、
「本当なら飛び級でもよかったのですが、規則は規則ですからね」
と苦笑いをしていた。
とりあえず、定期試験だけは受けてもらって、その成績だけで判定するという事だそうだ。
クラスメイトに説明すれば非常に残念がってはいたが、その原因を作ったのはクラスメイトをはじめとした生徒たちだ。ロゼリアとチェリシアは呆れて物も言えなかった。
その当のペシエラは、商会のある工房で商品への彫刻を行なっていた。現在はマゼンダ商会だけではなく、ドール商会にも赴いて彫刻の指導をしている。
なにぶん、ペシエラの彫刻の腕前は両商会の中でもトップクラスなのだから仕方がない。
ただ、これが編み物とかになると話は別。なので、ペシエラの生み出した彫刻の図案を元に、編み物や染色の職人たちが再現している。そして、そのデザインは、常に上位の売り上げを誇る人気商品ともなっていた。
ところが、ずっと同じ作業をしていると、どうしても飽きてしまうし、そうなると疲れ方が著しくなる。作業が一段落したところで、ペシエラは机に突っ伏した。
「はぁ……、さすがに退屈ですわ」
ストーカー騒ぎのせいで、王都のコーラル伯爵邸と二つの商会の中でしか行動できず、ペシエラは精神的に参り始めていた。
何と言ってもストーカーが一人ではないし、影でコソコソではなく大挙して押し寄せるのだ。それを毎日やられれば、ペシエラでなくても精神的なダメージは計り知れなかった。
「ペシエラ様、失礼致します」
「あら、ロゼリアのところのシアンではありませんか。どうされたのかしら」
ペシエラが休憩を入れていると、シアンがやって来た。いつもながら、元子爵令嬢であるシアンは表情が読めない。
「はい、入学式の後のお茶会の面々の身辺調査の途中経過のまとめをお持ちしたのですが、いかが致しましょうか」
「ロゼリアとお姉様が戻るまで、待ってもらえないかしら。私はまだ十歳ですし、お姉様たちほどの権限はありませんし、判断を仰ぎたいと思いますので」
「畏まりました。では、お嬢様たちが戻られる夕刻にまたお持ち致します」
「ええ、頼みますわ」
シアンが部屋を出ていく。
そして、ペシエラはしばらくしていい事を思いついた。
「そうだわ。写真魔法で新しい魔道具が作れないかしら。ちょうど私は休学で暇な身。時間ならいくらでもあるではありませんの」
バタバタと部屋の片隅から魔石を取り出すペシエラ。
「写真魔法を記憶させて、それを写し出せるように魔術式を組み込めば、誰でも写真を撮って現像できるようになりますわ。あとは光と音を調整できれば、様々な場面で使える魔道具となるはずですわ」
思い立ったが吉日と言わんばかりに、ペシエラは工房へ出向き、作業に取り掛かる。
工房の職人と交流した結果、ある程度の部品製作までできるようになっていたペシエラ。魔石を収める箱や、写真魔法を使う時の手で作る四角の枠など、あっという間に作り上げていく。
さすがは本来のヒロイン枠に生まれた少女。チート能力炸裂である。
昼食の後からロゼリアたちが訪問するまでのたった四時間の間に、写真撮影機の試作品を二つも作り上げてしまった。
「一つは写真魔法と同じように音と光が出る物、もう一つは音も光もほとんど抑えた物。早速動作確認ですわ」
しばらくはうきうきで、写真撮影に熱中するペシエラであった。
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