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第五章 学園編
第84話 豹変
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シルヴァノ王子ルートのイベント『能力試験』。
このイベントではチェリシアが魔法試験に臨み、魔力を暴走させて倒れてしまうというものだった。
そして、医務室で目を覚ましたチェリシアに、シルヴァノ王子が「これからが楽しみだ」と声を掛けるというものである。
ペシエラはチェリシアだし、この言葉が聞けたので、イベントは達成したと見ていいのだろう。チェリシアは慌ててペシエラ、シルヴァノ王子、ペイル王子の三人を写真魔法に収めた。
今日だけでペシエラ関係の写真が四枚増えて、チェリシアはとても満足そうだった。
「……ここまで浮かれたチェリシアは、初めて見るわね」
うきうきの笑顔を見せるチェリシアを見て、ロゼリアは隣で呆れていた。
「よし、これで全員の試験が終わった。結果は明日講義棟に貼り出されるから、各々で確認してくれ。以上、解散」
武術教官の声で、学生たちが帰り始める。……はずだった。
「ペシエラちゃん、凄い!」
「あの剣捌きはどこで覚えたんだ?」
「魔法も凄いらしいね。本当に十歳かな?」
ペシエラが学生たちに囲まれてしまった。あれだけの剣術を見せたのだ、仕方がない。
そこへ、ロゼリアが颯爽と現れる。
「ペシエラ様、ガレン先生がお呼びですので参りましょう」
「そうでしたわね。それではみなさん、ごきげんよう」
差し出されたロゼリアの手を取って、ペシエラは優雅に歩き出す。その美しい光景に、学生たちが見惚れた。
「天使だ……」
「あれで十歳……。天才って存在してますのね」
「こてんぱんにされたい」
何か怪しい言葉も聞こえた気がしたが、ロゼリアとペシエラはチェリシアと合流して、ガレンの待つ職員室へと向かった。
そして、ガレンの待つ職員室へやって来た。扉をノックして中へと入る。
中では教官たちが採点に追われていた。
この日はなにも新入生だけが試験だったわけではない。六年次生まで全学年で試験が行われたのだ。学年によって学生の人数に差があり、全体ではおおよそ八百人といったところだ。そんなわけで、多くの教官が採点に当たっているのだ。
ガレンの席は奥の方にあった。自分の担当した学生の採点は終えているようで、職員室の中では暇にしている教官の一人だった。
「よく来ましたね」
そう言って、ガレンがロゼリアたちの方を見る。
「ここまで来てくれたのに、ここでは話せませんので、場所を変えましょう」
ガレンはそう言って席を立つ。そして、その歩く後ろをついていく。
ガレンに連れられてやって来た場所は、空き教室だった。
中へ入って扉を閉めると、ガレンが早速魔法を展開する。
「防音魔法を掛けました。これで外には話が漏れないでしょう」
防音魔法、音を遮断する魔法であり、声以外にも物音を漏らさないようにする事ができる魔法だ。ちなみにこの音の遮断の方向性は、使う時に指定ができる。つまり、中から外へ、外から中へと、音の伝わりを遮断する方向を決められるのだ。
四人は適当な椅子に座る。
ロゼリアたちはどんな話を聞かされるのか、その事で緊張した面持ちとなっている。
ガレンは静かに口を開く。
「単刀直入に聞こう。君たちは何者かな?」
口調を変え、すごく重い声で尋ねてくるガレン。その雰囲気に、ロゼリアたちは背筋が凍る。
「な、何者って。私たちは普通の侯爵令嬢と伯爵令嬢ですわ」
「……あの魔力量で不思議な魔法まで使って、それでいて普通と言うのか……」
ロゼリアの弁明に、ガレンが重苦しく言う。
先程までの雰囲気と違い過ぎて、ロゼリアたちは飲まれそうになる。
「私はこれでも魔力を見る事ができるのでね。君たちには二人分の魔力が見えるのだよ」
ロゼリアたちは青ざめて、息を飲み込む。
「二人分とは……どういう事なのかしら?」
ロゼリアが完全に引いているため、ペシエラが代わりに質問する。
「通常、一人に見える魔力の層は一つしかない。だが、君たちはその層が二重になっているんだ。一つは一般的な魔力量だ。だが、それとは別に膨大な魔力の層が見える。これはどういう事かなと聞いているんだ」
魔法試験の時からはとても想像できない、激しい口調である。このままでは追及も厳しくなると見て、ペシエラがロゼリアとチェリシアを見て、ぐっと拳を握る。
「分かりましたわ。このままじゃ何されるか分かりませんし、私がお答えしますわ」
ペシエラが、ガレンを見て強い口調で答える。そう、逆行前、無理矢理ではあったが射止めた女王の座を務めた、チェリシア・コーラル・アイヴォリーの時のように。
このイベントではチェリシアが魔法試験に臨み、魔力を暴走させて倒れてしまうというものだった。
そして、医務室で目を覚ましたチェリシアに、シルヴァノ王子が「これからが楽しみだ」と声を掛けるというものである。
ペシエラはチェリシアだし、この言葉が聞けたので、イベントは達成したと見ていいのだろう。チェリシアは慌ててペシエラ、シルヴァノ王子、ペイル王子の三人を写真魔法に収めた。
今日だけでペシエラ関係の写真が四枚増えて、チェリシアはとても満足そうだった。
「……ここまで浮かれたチェリシアは、初めて見るわね」
うきうきの笑顔を見せるチェリシアを見て、ロゼリアは隣で呆れていた。
「よし、これで全員の試験が終わった。結果は明日講義棟に貼り出されるから、各々で確認してくれ。以上、解散」
武術教官の声で、学生たちが帰り始める。……はずだった。
「ペシエラちゃん、凄い!」
「あの剣捌きはどこで覚えたんだ?」
「魔法も凄いらしいね。本当に十歳かな?」
ペシエラが学生たちに囲まれてしまった。あれだけの剣術を見せたのだ、仕方がない。
そこへ、ロゼリアが颯爽と現れる。
「ペシエラ様、ガレン先生がお呼びですので参りましょう」
「そうでしたわね。それではみなさん、ごきげんよう」
差し出されたロゼリアの手を取って、ペシエラは優雅に歩き出す。その美しい光景に、学生たちが見惚れた。
「天使だ……」
「あれで十歳……。天才って存在してますのね」
「こてんぱんにされたい」
何か怪しい言葉も聞こえた気がしたが、ロゼリアとペシエラはチェリシアと合流して、ガレンの待つ職員室へと向かった。
そして、ガレンの待つ職員室へやって来た。扉をノックして中へと入る。
中では教官たちが採点に追われていた。
この日はなにも新入生だけが試験だったわけではない。六年次生まで全学年で試験が行われたのだ。学年によって学生の人数に差があり、全体ではおおよそ八百人といったところだ。そんなわけで、多くの教官が採点に当たっているのだ。
ガレンの席は奥の方にあった。自分の担当した学生の採点は終えているようで、職員室の中では暇にしている教官の一人だった。
「よく来ましたね」
そう言って、ガレンがロゼリアたちの方を見る。
「ここまで来てくれたのに、ここでは話せませんので、場所を変えましょう」
ガレンはそう言って席を立つ。そして、その歩く後ろをついていく。
ガレンに連れられてやって来た場所は、空き教室だった。
中へ入って扉を閉めると、ガレンが早速魔法を展開する。
「防音魔法を掛けました。これで外には話が漏れないでしょう」
防音魔法、音を遮断する魔法であり、声以外にも物音を漏らさないようにする事ができる魔法だ。ちなみにこの音の遮断の方向性は、使う時に指定ができる。つまり、中から外へ、外から中へと、音の伝わりを遮断する方向を決められるのだ。
四人は適当な椅子に座る。
ロゼリアたちはどんな話を聞かされるのか、その事で緊張した面持ちとなっている。
ガレンは静かに口を開く。
「単刀直入に聞こう。君たちは何者かな?」
口調を変え、すごく重い声で尋ねてくるガレン。その雰囲気に、ロゼリアたちは背筋が凍る。
「な、何者って。私たちは普通の侯爵令嬢と伯爵令嬢ですわ」
「……あの魔力量で不思議な魔法まで使って、それでいて普通と言うのか……」
ロゼリアの弁明に、ガレンが重苦しく言う。
先程までの雰囲気と違い過ぎて、ロゼリアたちは飲まれそうになる。
「私はこれでも魔力を見る事ができるのでね。君たちには二人分の魔力が見えるのだよ」
ロゼリアたちは青ざめて、息を飲み込む。
「二人分とは……どういう事なのかしら?」
ロゼリアが完全に引いているため、ペシエラが代わりに質問する。
「通常、一人に見える魔力の層は一つしかない。だが、君たちはその層が二重になっているんだ。一つは一般的な魔力量だ。だが、それとは別に膨大な魔力の層が見える。これはどういう事かなと聞いているんだ」
魔法試験の時からはとても想像できない、激しい口調である。このままでは追及も厳しくなると見て、ペシエラがロゼリアとチェリシアを見て、ぐっと拳を握る。
「分かりましたわ。このままじゃ何されるか分かりませんし、私がお答えしますわ」
ペシエラが、ガレンを見て強い口調で答える。そう、逆行前、無理矢理ではあったが射止めた女王の座を務めた、チェリシア・コーラル・アイヴォリーの時のように。
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