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第五章 学園編
第81話 試験 その3
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波乱の幕開けとなった魔法の試験。
しかしながら、ペシエラのド派手な雷魔法の後では、学生たちの魔法はまるでお遊戯会のように未熟なものだった。
普通なら覚醒から学園に入学するまで、まともな魔法の指導など受ける事が少ないのだから仕方がない。
「チェリシア? 何をしているの?」
他の学生のみんなが魔法を披露しているというのに、チェリシアは紙を取り出していた。
取り出した紙を魔法で浮かべた次の瞬間、パシャという音と共に、雷魔法を落とした瞬間のペシエラの姿が紙に写し出された。
「呆れたわ……。あの瞬間を写真魔法に捉えてたのね」
「ほら、可愛い妹の凛々しい姿だもの。残しておきたくてね」
すっかり姉馬鹿ムーブである。
しかし、そのムーブもすぐに終わりを告げる。
「ほほお、面白い魔法を使っていますね」
「うわっ! ……教官」
後ろから声を掛けられて、チェリシアはすごく驚いている。しかも、淑女らしからぬ悲鳴を上げてだ。
「何なのですかな、この魔法は」
チェリシアは誤魔化そうかと目を泳がせるが、丁寧語の教官の目力が強すぎた。
「あ、あはは……。写真魔法っていう、私が編み出した光魔法です」
チェリシアは圧に耐えきれず、正直に話してしまった。そして、指で四角形を作り、パシャっと丁寧語の教官を撮ると、すぐさま別の紙にその姿を写し出した。
「ほう、これは凄いですね。それにしても、これも光魔法ですか」
教官は顎に手を当てて、何やら考え始めた。試験自体はもう一人の教官が採点をしているので問題はないが、これでいいのだろうか。
「そういえば、そこのペシエラさんは、コーラル伯爵の娘さん……。二人は姉妹ですか」
「は、はい」
教官の問い掛けに、チェリシアは肯定の返事をする。すると、教官はなるほど納得がいったという様な顔をしてみせた。
そして、
「チェリシア・コーラル、ペシエラ・コーラル、それとロゼリア・マゼンダ。以上三名は全ての試験が終わった後に、私の所まで来て下さい」
唐突に呼び出しを食らう事となった。目が点になる三人に対して、教官は言葉を続ける。
「申し遅れましたが、私は魔法学の教官のガレン・クリムゾンといいます。職員室の場所は分かりますね?」
「あっ、はい」
「よろしい。では、お待ちしています」
それだけ言うと、教官は試験の監督に戻った。一体何だったのだろうか。本当に訳が分からない。
そんな事がありもしたが、魔法の試験も終盤になる。ロゼリアたちの出番は最後であり、ロゼリアは風の魔法、チェリシアとペシエラは火の魔法をかなり手加減して使う。しかし、それでも他の学生と比べると威力があり過ぎた。
そして、ガサツな方の教官から他には使えないかと聞かれて、使える属性すべてを披露させられた。
ロゼリアは地水風、チェリシアとペシエラは地水火風光闇と、使える属性の魔法を更に手加減して使ってみせた。
……結論から言えば、全員が絶句。威力は大した事ないのに、使える属性の数で驚かせてしまったようだ。
三人揃って、「失敗した」と呆然としたくらいである。
「はっはっはっ! 今年は飛び抜けた才能の持ち主が入学したな。そっちの学生諸君も安心しろ。魔法科に進めば、卒業の頃にはこの程度は楽勝になるぞ」
ガサツな教官はフォローしたつもりだろうが、学生たちは更に差を広げられる絶望感に襲われていた。……そもそも、ペシエラの雷魔法を見せられた時点で絶望的な差である。
この学生たちの様子を見て、エアリアルボードとか収納魔法とかは、絶対に見せない方がいいと思うロゼリアたちだった。
「それでは、これにて魔法の試験を終了致します。今回の試験の結果は明日には分かりますので、速やかに移動を開始して下さい」
丁寧語の教官ガレンが宣言すると、武術試験に向かう者と帰宅する者とに学生が分かれる。
ロゼリアたちは武術の試験を受けるために、試験会場へと移動する。
しかし、この時の三人はすっかり忘れていた。この魔法の試験こそが、ゲーム内の入学後の二番目のイベントであり、それをスルーしてしまった事を……。
しかしながら、ペシエラのド派手な雷魔法の後では、学生たちの魔法はまるでお遊戯会のように未熟なものだった。
普通なら覚醒から学園に入学するまで、まともな魔法の指導など受ける事が少ないのだから仕方がない。
「チェリシア? 何をしているの?」
他の学生のみんなが魔法を披露しているというのに、チェリシアは紙を取り出していた。
取り出した紙を魔法で浮かべた次の瞬間、パシャという音と共に、雷魔法を落とした瞬間のペシエラの姿が紙に写し出された。
「呆れたわ……。あの瞬間を写真魔法に捉えてたのね」
「ほら、可愛い妹の凛々しい姿だもの。残しておきたくてね」
すっかり姉馬鹿ムーブである。
しかし、そのムーブもすぐに終わりを告げる。
「ほほお、面白い魔法を使っていますね」
「うわっ! ……教官」
後ろから声を掛けられて、チェリシアはすごく驚いている。しかも、淑女らしからぬ悲鳴を上げてだ。
「何なのですかな、この魔法は」
チェリシアは誤魔化そうかと目を泳がせるが、丁寧語の教官の目力が強すぎた。
「あ、あはは……。写真魔法っていう、私が編み出した光魔法です」
チェリシアは圧に耐えきれず、正直に話してしまった。そして、指で四角形を作り、パシャっと丁寧語の教官を撮ると、すぐさま別の紙にその姿を写し出した。
「ほう、これは凄いですね。それにしても、これも光魔法ですか」
教官は顎に手を当てて、何やら考え始めた。試験自体はもう一人の教官が採点をしているので問題はないが、これでいいのだろうか。
「そういえば、そこのペシエラさんは、コーラル伯爵の娘さん……。二人は姉妹ですか」
「は、はい」
教官の問い掛けに、チェリシアは肯定の返事をする。すると、教官はなるほど納得がいったという様な顔をしてみせた。
そして、
「チェリシア・コーラル、ペシエラ・コーラル、それとロゼリア・マゼンダ。以上三名は全ての試験が終わった後に、私の所まで来て下さい」
唐突に呼び出しを食らう事となった。目が点になる三人に対して、教官は言葉を続ける。
「申し遅れましたが、私は魔法学の教官のガレン・クリムゾンといいます。職員室の場所は分かりますね?」
「あっ、はい」
「よろしい。では、お待ちしています」
それだけ言うと、教官は試験の監督に戻った。一体何だったのだろうか。本当に訳が分からない。
そんな事がありもしたが、魔法の試験も終盤になる。ロゼリアたちの出番は最後であり、ロゼリアは風の魔法、チェリシアとペシエラは火の魔法をかなり手加減して使う。しかし、それでも他の学生と比べると威力があり過ぎた。
そして、ガサツな方の教官から他には使えないかと聞かれて、使える属性すべてを披露させられた。
ロゼリアは地水風、チェリシアとペシエラは地水火風光闇と、使える属性の魔法を更に手加減して使ってみせた。
……結論から言えば、全員が絶句。威力は大した事ないのに、使える属性の数で驚かせてしまったようだ。
三人揃って、「失敗した」と呆然としたくらいである。
「はっはっはっ! 今年は飛び抜けた才能の持ち主が入学したな。そっちの学生諸君も安心しろ。魔法科に進めば、卒業の頃にはこの程度は楽勝になるぞ」
ガサツな教官はフォローしたつもりだろうが、学生たちは更に差を広げられる絶望感に襲われていた。……そもそも、ペシエラの雷魔法を見せられた時点で絶望的な差である。
この学生たちの様子を見て、エアリアルボードとか収納魔法とかは、絶対に見せない方がいいと思うロゼリアたちだった。
「それでは、これにて魔法の試験を終了致します。今回の試験の結果は明日には分かりますので、速やかに移動を開始して下さい」
丁寧語の教官ガレンが宣言すると、武術試験に向かう者と帰宅する者とに学生が分かれる。
ロゼリアたちは武術の試験を受けるために、試験会場へと移動する。
しかし、この時の三人はすっかり忘れていた。この魔法の試験こそが、ゲーム内の入学後の二番目のイベントであり、それをスルーしてしまった事を……。
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