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第五章 学園編
第78話 必要な繋がり
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ペイル王子の思惑にまったく気付く事なく、お茶会も無事に終わった。他国の王子が居る場であったので、それほど突っ込んだ話にはならなかったが、一応歓迎するという意味を込めて、万年筆がペイル王子に送られた。
最初は訝しんでいたペイル王子だったが、シルヴァノ殿下が使い方を説明すると、「それは便利だな」と満足そうだった。
お茶会を済ませたロゼリアたちは、早速マゼンダ商会へ出向き、お茶会で会った面々の情報をまとめる。
チェリシアの話では、ゲーム内でライバル令嬢が出てきた記憶は無いとの事。ただ、オフライトルートでのみ、お邪魔虫として双子の妹のシェイディアが出てきたくらいである。
やはり、ゲームと現実では大きく異なってしまうという事だ。という事で、現状フリーの攻略対象は、シルヴァノ殿下とペイル王子、それとロゼリアの兄であるカーマイルの三人という事になる。
こうなれば、三人がそれぞれに当たればいいのだろうが、感情の伴わない恋愛はしたくないものである。
ロゼリアにはシルヴァノ殿下への未練も何もない。王国に寄与できるなら外国でも構わないのだが、ペイル王子の人物像が分からない。
そんなわけで、当面の間は親睦を深めつつ、婚約者の居る攻略対象をくっ付けてしまう作戦で行く事にした。
その上でゲームで起こるイベントをこなしつつ、ロゼリアの断罪イベントを無事に迎える。つまりはゲームをなぞるのだ。
しかし、その断罪イベントも油断はならない。なにせ、ここのロゼリアとペシエラは、マゼンダ侯爵家断絶から王国滅亡という最悪の展開を迎えたからだ。チェリシアとペシエラにその気が無くても、他の人物がそれに向けて暗躍するかも知れない。まったくもって気の抜けない状況なのだ。
ゲームの展開をなぞれば、どんなに悪くても国外追放までで済む。ロゼリアたちはそれを踏まえた上で、今後の行動指針を話し合った。
しかしながら、起こす気は無くても、波風というものはどうしても立ってしまうのだから、それをいかに最小限留めるかという立ち回りが必要なのだ。
先のドール商会に対する処置もその立ち回りの一つである。あれだけの技術があるのに、金属加工や武具の扱いをドール商会に任せたのはそのためだ。
商人というものは、儲けが出せれば技術の出所は目を瞑るのだ。というわけで、ロゼリアたちの持つ技術の一部を、ドール商会の扱う物品の製作に提供している。
敵に借りを作るのは癪ではあろうが、実際のところはドール商会はそれで儲けている。だったら、繋がりを持っていた方が賢明であろう。しかも、ドール商会の人員では、その再現が不可能なのだから尚更である。
「ねえ、身を守ると言うなら、ドール商会を利用しない手はないのでは?」
ペシエラが言う。
「と言うと?」
ロゼリアが聞き返す。
「お姉様の防御壁などを、常に展開するわけにもいきませんわ。魔力は有限ですし、急に意識するというのは難しいのですわ」
優雅に紅茶を飲みながら、ペシエラは熱弁する。前回からは想像できない姿だ。
「そこで、ドール商会の加工職人の力を利用するのです。肌身離さず身に付ける装飾品に、防護の魔法を施した魔石を取り付けるのですわ。私たち誰一人が欠けるわけにも参りませんもの。用心に越した事はありませんわ」
「ペシエラ、凄いわね」
ペシエラの提案に、チェリシアが素直に感心して、ペシエラの抱き寄せて頭を撫でる。ペシエラはすっかり慣れたのか、嬉しそうに撫でられている。
「そうね。それはいい案だわ。ペシエラ、本当に成長したわね」
ロゼリアも感心している。
「シアン、ドール商会に使いを出して頂戴」
「畏まりました」
ロゼリアはすぐに手紙を認めると、シアンへ渡す。シアンはそれを、ドール商会との連絡役に渡した。
連絡役がドール商会へと向かう頃、ロゼリアたちは、暇を見つけては出向いた未開の森で手に入れた魔石を、テーブルの上に並べていた。
その魔石を、地水風の三属性が得意なロゼリアが魔法を使い、アクセサリーに見合う宝石のように加工する。
「こういう細やかな作業は、本当に得意ね、ロゼリア」
ペシエラがちょっと皮肉っぽい言い方をする。
「昔のあなたは、本当にガサツでしたものね。今でこそ淑女として認められる程にはなりましたけど」
ロゼリアもすかさず返す。
「それはどうもですわ」
膨れるペシエラ。
こういう子どもっぽいところはあるが、普段の所作はそれこそ公爵や侯爵の令嬢と見比べても、まったく見劣りはしないくらいにはなっている。ロゼリアは内心喜ばしく思っているが、やはりどことなく、前回の関係性を引き摺っているのだ。
「さあ、チェリシア。この魔石に防護の魔法を施して下さいな」
「了解」
こうして三人は、防護魔法のかかった魔石を作り上げる。
そして、次の段階として、ロゼリアはシアンに命じて、昼の茶会に集まった面々の身辺調査を行う事にしたのだった。
最初は訝しんでいたペイル王子だったが、シルヴァノ殿下が使い方を説明すると、「それは便利だな」と満足そうだった。
お茶会を済ませたロゼリアたちは、早速マゼンダ商会へ出向き、お茶会で会った面々の情報をまとめる。
チェリシアの話では、ゲーム内でライバル令嬢が出てきた記憶は無いとの事。ただ、オフライトルートでのみ、お邪魔虫として双子の妹のシェイディアが出てきたくらいである。
やはり、ゲームと現実では大きく異なってしまうという事だ。という事で、現状フリーの攻略対象は、シルヴァノ殿下とペイル王子、それとロゼリアの兄であるカーマイルの三人という事になる。
こうなれば、三人がそれぞれに当たればいいのだろうが、感情の伴わない恋愛はしたくないものである。
ロゼリアにはシルヴァノ殿下への未練も何もない。王国に寄与できるなら外国でも構わないのだが、ペイル王子の人物像が分からない。
そんなわけで、当面の間は親睦を深めつつ、婚約者の居る攻略対象をくっ付けてしまう作戦で行く事にした。
その上でゲームで起こるイベントをこなしつつ、ロゼリアの断罪イベントを無事に迎える。つまりはゲームをなぞるのだ。
しかし、その断罪イベントも油断はならない。なにせ、ここのロゼリアとペシエラは、マゼンダ侯爵家断絶から王国滅亡という最悪の展開を迎えたからだ。チェリシアとペシエラにその気が無くても、他の人物がそれに向けて暗躍するかも知れない。まったくもって気の抜けない状況なのだ。
ゲームの展開をなぞれば、どんなに悪くても国外追放までで済む。ロゼリアたちはそれを踏まえた上で、今後の行動指針を話し合った。
しかしながら、起こす気は無くても、波風というものはどうしても立ってしまうのだから、それをいかに最小限留めるかという立ち回りが必要なのだ。
先のドール商会に対する処置もその立ち回りの一つである。あれだけの技術があるのに、金属加工や武具の扱いをドール商会に任せたのはそのためだ。
商人というものは、儲けが出せれば技術の出所は目を瞑るのだ。というわけで、ロゼリアたちの持つ技術の一部を、ドール商会の扱う物品の製作に提供している。
敵に借りを作るのは癪ではあろうが、実際のところはドール商会はそれで儲けている。だったら、繋がりを持っていた方が賢明であろう。しかも、ドール商会の人員では、その再現が不可能なのだから尚更である。
「ねえ、身を守ると言うなら、ドール商会を利用しない手はないのでは?」
ペシエラが言う。
「と言うと?」
ロゼリアが聞き返す。
「お姉様の防御壁などを、常に展開するわけにもいきませんわ。魔力は有限ですし、急に意識するというのは難しいのですわ」
優雅に紅茶を飲みながら、ペシエラは熱弁する。前回からは想像できない姿だ。
「そこで、ドール商会の加工職人の力を利用するのです。肌身離さず身に付ける装飾品に、防護の魔法を施した魔石を取り付けるのですわ。私たち誰一人が欠けるわけにも参りませんもの。用心に越した事はありませんわ」
「ペシエラ、凄いわね」
ペシエラの提案に、チェリシアが素直に感心して、ペシエラの抱き寄せて頭を撫でる。ペシエラはすっかり慣れたのか、嬉しそうに撫でられている。
「そうね。それはいい案だわ。ペシエラ、本当に成長したわね」
ロゼリアも感心している。
「シアン、ドール商会に使いを出して頂戴」
「畏まりました」
ロゼリアはすぐに手紙を認めると、シアンへ渡す。シアンはそれを、ドール商会との連絡役に渡した。
連絡役がドール商会へと向かう頃、ロゼリアたちは、暇を見つけては出向いた未開の森で手に入れた魔石を、テーブルの上に並べていた。
その魔石を、地水風の三属性が得意なロゼリアが魔法を使い、アクセサリーに見合う宝石のように加工する。
「こういう細やかな作業は、本当に得意ね、ロゼリア」
ペシエラがちょっと皮肉っぽい言い方をする。
「昔のあなたは、本当にガサツでしたものね。今でこそ淑女として認められる程にはなりましたけど」
ロゼリアもすかさず返す。
「それはどうもですわ」
膨れるペシエラ。
こういう子どもっぽいところはあるが、普段の所作はそれこそ公爵や侯爵の令嬢と見比べても、まったく見劣りはしないくらいにはなっている。ロゼリアは内心喜ばしく思っているが、やはりどことなく、前回の関係性を引き摺っているのだ。
「さあ、チェリシア。この魔石に防護の魔法を施して下さいな」
「了解」
こうして三人は、防護魔法のかかった魔石を作り上げる。
そして、次の段階として、ロゼリアはシアンに命じて、昼の茶会に集まった面々の身辺調査を行う事にしたのだった。
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