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第四章 ロゼリア10歳
第73話 王都への帰還
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レイニの手によって、カイスの村には水路が引かれる事となり、一気に水が豊かな土地となった。いやはや精霊様々である。
ただ、当面は海からの塩を含んだ熱風に晒されるので、やはり防御壁によるビニールハウスもどきは必要だ。これがあれば雪の降る冬場でも作物が育てられるので、いくら環境が改善したとしても必要な物となるだろう。
チェリシアは作物を作る上での注意点を、いくつか村人に教えていた。
同じ物を作り続けると土地が痩せてしまうので、収穫後は違う作物を植えるとか、肥料を与えて土地が痩せるのを防ぐとか、前世の大学と家庭菜園で培ったノウハウを、惜しみなく伝授していた。
村人は最初、領主の娘だという事で渋々聞いていた感じだが、話を聞かされているうちに一部の者が乗り気になっていった。そして、せっかくの場を用意してもらったので、チェリシアの計画に協力してくれる事になった。
結局、夏の一の月の半ばまでカイスで過ごす事となった。日数的には三十日ほどである。その間にカイスにはマゼンダ侯爵も訪れ、その際にロゼリアは特大の雷を落とされていた。王都に戻れば、しばらく王都から出させてもらえないという罰まで受けた。
ついでに、本来ならその時点でロゼリアは連れ戻されるはずだったのだが、チェリシアとペシエラの説得もあって、全員揃って王都へ帰還する運びとなったのだ。
「はあ、必要なイベントだったとはいえ、いろいろありすぎて疲れたわ」
「まったくですわ、お姉様」
マゼンダ侯爵ヴァミリオの手配で、全員馬車に乗っての帰還である。プラウスの乗ってきた馬には、ヴァミリオの部下が乗っている。
プラウスたちの乗る馬車の方は穏やかな雰囲気ではあるが、ロゼリアは馬車の中でヴァミリオから延々と説教をされている。
まあ、王都から黙って居なくなって、魔物氾濫に立ち向かうような危険な真似をすれば、親ならば卒倒しそうなものである。
ヴァミリオの態度は仕方ないと思い、ロゼリアは説教も罰も甘んじて受ける事にしたのだ。その代わり、商会の仕事は手伝わせて欲しいと懇願した。ヴァミリオは渋っていたが、ロゼリアの熱心さと上目遣いにやられて、仕方なく許可した。ただ、危ない事はするなという条件付きである。
こうして、過去スチルイベントの魔物氾濫は終幕を迎えた。
厄災の暗龍が不完全ながら顕現したり、精霊レイニに出会って契約したり、逆行前には無かった出来事をたくさん経験した。
その副産物として、カイスの村には北東の凹地に水源が発生して水路ができた。ついでに精霊が手心を加えて、ビニールハウスもどきは魔石一個で三倍ほどの二十日間持つようになり、村人は農業に精を出すようになった。数年後にはこの時の努力が実を結ぶ事だろう。
商会の方としても、大量の魔石と素材を入手できたので嬉しい限りである。
だが、王都に戻ってからは魔物氾濫の説明を国王と女王から求められ、二人にはロゼリアたちの事が露見してしまった。
王家には厄災の暗龍の魔石を献上する事で、ロゼリアたちの事を黙っていてもらう約束を取り付ける事ができた。これにはロゼリアたちはほっと胸を撫で下ろした。
ただ、その時の魔法を実演してくれとせがまれたのは、予想していたとはいえ驚いた。ちなみにペシエラは七歳なので、実演させられる事はなかった。
結局見せたのは、チェリシアの防御壁とエアリアルボード、それと収納魔法、ロゼリアの風の障壁の四つ。どれもこれも精度と規模に度肝を抜かされていたようだ。いやはや、国王と女王の二人が、大口を開けて驚く様を見られる事になるとは思わなかった。
処刑された未来から舞い戻って二年。ロゼリアを取り巻く環境は前回とは大きく異なっていた。
今回の未来は、最悪な前回とはどう違ったものになるのか、それは誰にも分からない。
第一部 時戻りの令嬢 完
ただ、当面は海からの塩を含んだ熱風に晒されるので、やはり防御壁によるビニールハウスもどきは必要だ。これがあれば雪の降る冬場でも作物が育てられるので、いくら環境が改善したとしても必要な物となるだろう。
チェリシアは作物を作る上での注意点を、いくつか村人に教えていた。
同じ物を作り続けると土地が痩せてしまうので、収穫後は違う作物を植えるとか、肥料を与えて土地が痩せるのを防ぐとか、前世の大学と家庭菜園で培ったノウハウを、惜しみなく伝授していた。
村人は最初、領主の娘だという事で渋々聞いていた感じだが、話を聞かされているうちに一部の者が乗り気になっていった。そして、せっかくの場を用意してもらったので、チェリシアの計画に協力してくれる事になった。
結局、夏の一の月の半ばまでカイスで過ごす事となった。日数的には三十日ほどである。その間にカイスにはマゼンダ侯爵も訪れ、その際にロゼリアは特大の雷を落とされていた。王都に戻れば、しばらく王都から出させてもらえないという罰まで受けた。
ついでに、本来ならその時点でロゼリアは連れ戻されるはずだったのだが、チェリシアとペシエラの説得もあって、全員揃って王都へ帰還する運びとなったのだ。
「はあ、必要なイベントだったとはいえ、いろいろありすぎて疲れたわ」
「まったくですわ、お姉様」
マゼンダ侯爵ヴァミリオの手配で、全員馬車に乗っての帰還である。プラウスの乗ってきた馬には、ヴァミリオの部下が乗っている。
プラウスたちの乗る馬車の方は穏やかな雰囲気ではあるが、ロゼリアは馬車の中でヴァミリオから延々と説教をされている。
まあ、王都から黙って居なくなって、魔物氾濫に立ち向かうような危険な真似をすれば、親ならば卒倒しそうなものである。
ヴァミリオの態度は仕方ないと思い、ロゼリアは説教も罰も甘んじて受ける事にしたのだ。その代わり、商会の仕事は手伝わせて欲しいと懇願した。ヴァミリオは渋っていたが、ロゼリアの熱心さと上目遣いにやられて、仕方なく許可した。ただ、危ない事はするなという条件付きである。
こうして、過去スチルイベントの魔物氾濫は終幕を迎えた。
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その副産物として、カイスの村には北東の凹地に水源が発生して水路ができた。ついでに精霊が手心を加えて、ビニールハウスもどきは魔石一個で三倍ほどの二十日間持つようになり、村人は農業に精を出すようになった。数年後にはこの時の努力が実を結ぶ事だろう。
商会の方としても、大量の魔石と素材を入手できたので嬉しい限りである。
だが、王都に戻ってからは魔物氾濫の説明を国王と女王から求められ、二人にはロゼリアたちの事が露見してしまった。
王家には厄災の暗龍の魔石を献上する事で、ロゼリアたちの事を黙っていてもらう約束を取り付ける事ができた。これにはロゼリアたちはほっと胸を撫で下ろした。
ただ、その時の魔法を実演してくれとせがまれたのは、予想していたとはいえ驚いた。ちなみにペシエラは七歳なので、実演させられる事はなかった。
結局見せたのは、チェリシアの防御壁とエアリアルボード、それと収納魔法、ロゼリアの風の障壁の四つ。どれもこれも精度と規模に度肝を抜かされていたようだ。いやはや、国王と女王の二人が、大口を開けて驚く様を見られる事になるとは思わなかった。
処刑された未来から舞い戻って二年。ロゼリアを取り巻く環境は前回とは大きく異なっていた。
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