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第四章 ロゼリア10歳
第71話 凹地の謎
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話は再びカイスの村。
結局、チェリシアとペシエラの作った光の防御壁は、一週間形を保ち続けた。しかし、一週間経つと魔石が光を失って灰色となり、そのまま砕け散った。
「フォレストバードの魔石で一週間なのね。一年三百日で四十三週間あるから、一棟につき年間四十三個必要って事ね」
ロゼリアとチェリシアはあっという間に計算して、必要数を導き出していた。ペシエラは全体的に勉強はできなかった方なので、まったくもって理解できている様子ではなかった。
それにしても、魔力の尽きた魔石というものは、弾け飛ぶように砕けるものではないようだ。弾けるように砕けるのであれば、安全性としては問題が大ありなのだが、崩れるように砕け散るのなら安全だ。今回の事象を目撃したロゼリアは、今出回っている万年筆の安全性に思考を巡らせていた。
だが、そんな思考も長くは続かなかった。
時期は夏の時期に入り、少しずつカイスの村にも熱波が押し寄せ始めた。
風が流れ込んでくる東側は林すら見当たらない状態で、これでは熱風が村に直撃するのは当たり前の話だ。
「北東の凹地周りにも木が生えている様子はなかったし、この辺りは植物が育ちにくいのかしら」
ロゼリアたちは、どうにも気になる模様。近くに水場らしきものも見受けられない。一応、何ヶ所か井戸があり、地下水はあるようだ。しかし、それで賄うには厳しい状況である。
ロゼリアが気にしていると、ペシエラが何かを思い出したかのように話しかけてきた。
「ふと思い出したけれど、逆行前にあの凹地で魔物氾濫を抑えた時、気を失う前に誰かに呼ばれた気がしましたわ」
ロゼリアとチェリシアが、目を見開いてペシエラを見る。
「そうよ、ペシエラは乙女ゲームのヒロインだったわ。もしかしたら、それは精霊の声かも知れないわ」
「ちょっと、お姉様?!」
チェリシアががっつくように、ペシエラの肩を掴んで前後に揺らす。
「すぐに凹地に向かうわよっ!」
「お、お姉様?!」
「二人とも待ちなさい!」
チェリシアがペシエラの腕を引いて、凄いスピードで駆け出していった。ロゼリアも必死に追いかける。しかし、チェリシアは風魔法を使っているのか、まったく追いつけなかった。
そして、やって来たカイス北東の凹地。ほんの一週間くらい前に魔物氾濫が起きたとは思えないくらい、静かな様子を湛えていた。
「まったく……、お姉様ったら、いきなり、走り出すんですもの……」
ペシエラは七歳の体を思いっきり引っ張られた事で、息が完全に上がっていた。しかし、チェリシアはまったく気にかけていない。魔力を使い果たして寝込んでいたとは思えないくらい、元気一杯に凹地を眺めている。
「お姉様、精霊なんて本当に存在しているの?」
息を整えたペシエラが、チェリシアに質問する。するとチェリシアは、
「ええ、居るわ。ゲームでは攻略対象と精霊の力を借りて、困難に立ち向かっていたんだもの」
と、自信たっぷりに答えた。完全に確信している。
一方で、ペシエラは半信半疑というよりかは、ほとんど信じていなかった。逆行前に精霊を見た覚えがないのだ。記憶に曖昧に残る、声を聞いたかもという程度だった。
「ちょっと……、二人とも……速すぎ」
ロゼリアがようやく追いついてやって来た。
その時だった。
三人が揃ったところで、急に凹地の雰囲気が変わったのだ。
「なに? ピリピリするわ」
魔力が波打つ感覚がして、少し気分が悪くなる。髪はまるで静電気を帯びたかのように浮き上がり、何か強大な力の流れを感じ取った。
「……何か来るわ!」
ロゼリアが叫ぶと、目の前の空間が不意に歪む。
『やぁ、運命に抗いし、導かれし者たち。よく来たね』
頭の中に直接響く声が聞こえる。
「誰? 誰なの?」
取り乱したのは、一番身構えていたロゼリアだった。
『誰かって? 君たちはボクの事を噂していたはずだよ?』
響く声の言葉に、ペシエラがハッとする。
「精霊……?」
『そうだよ。ボクは精霊さ』
その言葉が響くと、チェリシアたち三人の前に、羽の生えた小さな存在が現れた。
「やはりいらしたのですね。あぁ、この目で精霊を見られるなんて……。スマホがあればこの様子を写真に収めたのに」
「チェ、チェリシア?」
うっとりするチェリシアが発した言葉が意味不明すぎて、ロゼリアとペシエラが困惑している。
『ふふっ、君は“世界の渡り子“なのかい? 久しぶりに見たね』
目の前の精霊は驚く単語を言い放ったのだ。
結局、チェリシアとペシエラの作った光の防御壁は、一週間形を保ち続けた。しかし、一週間経つと魔石が光を失って灰色となり、そのまま砕け散った。
「フォレストバードの魔石で一週間なのね。一年三百日で四十三週間あるから、一棟につき年間四十三個必要って事ね」
ロゼリアとチェリシアはあっという間に計算して、必要数を導き出していた。ペシエラは全体的に勉強はできなかった方なので、まったくもって理解できている様子ではなかった。
それにしても、魔力の尽きた魔石というものは、弾け飛ぶように砕けるものではないようだ。弾けるように砕けるのであれば、安全性としては問題が大ありなのだが、崩れるように砕け散るのなら安全だ。今回の事象を目撃したロゼリアは、今出回っている万年筆の安全性に思考を巡らせていた。
だが、そんな思考も長くは続かなかった。
時期は夏の時期に入り、少しずつカイスの村にも熱波が押し寄せ始めた。
風が流れ込んでくる東側は林すら見当たらない状態で、これでは熱風が村に直撃するのは当たり前の話だ。
「北東の凹地周りにも木が生えている様子はなかったし、この辺りは植物が育ちにくいのかしら」
ロゼリアたちは、どうにも気になる模様。近くに水場らしきものも見受けられない。一応、何ヶ所か井戸があり、地下水はあるようだ。しかし、それで賄うには厳しい状況である。
ロゼリアが気にしていると、ペシエラが何かを思い出したかのように話しかけてきた。
「ふと思い出したけれど、逆行前にあの凹地で魔物氾濫を抑えた時、気を失う前に誰かに呼ばれた気がしましたわ」
ロゼリアとチェリシアが、目を見開いてペシエラを見る。
「そうよ、ペシエラは乙女ゲームのヒロインだったわ。もしかしたら、それは精霊の声かも知れないわ」
「ちょっと、お姉様?!」
チェリシアががっつくように、ペシエラの肩を掴んで前後に揺らす。
「すぐに凹地に向かうわよっ!」
「お、お姉様?!」
「二人とも待ちなさい!」
チェリシアがペシエラの腕を引いて、凄いスピードで駆け出していった。ロゼリアも必死に追いかける。しかし、チェリシアは風魔法を使っているのか、まったく追いつけなかった。
そして、やって来たカイス北東の凹地。ほんの一週間くらい前に魔物氾濫が起きたとは思えないくらい、静かな様子を湛えていた。
「まったく……、お姉様ったら、いきなり、走り出すんですもの……」
ペシエラは七歳の体を思いっきり引っ張られた事で、息が完全に上がっていた。しかし、チェリシアはまったく気にかけていない。魔力を使い果たして寝込んでいたとは思えないくらい、元気一杯に凹地を眺めている。
「お姉様、精霊なんて本当に存在しているの?」
息を整えたペシエラが、チェリシアに質問する。するとチェリシアは、
「ええ、居るわ。ゲームでは攻略対象と精霊の力を借りて、困難に立ち向かっていたんだもの」
と、自信たっぷりに答えた。完全に確信している。
一方で、ペシエラは半信半疑というよりかは、ほとんど信じていなかった。逆行前に精霊を見た覚えがないのだ。記憶に曖昧に残る、声を聞いたかもという程度だった。
「ちょっと……、二人とも……速すぎ」
ロゼリアがようやく追いついてやって来た。
その時だった。
三人が揃ったところで、急に凹地の雰囲気が変わったのだ。
「なに? ピリピリするわ」
魔力が波打つ感覚がして、少し気分が悪くなる。髪はまるで静電気を帯びたかのように浮き上がり、何か強大な力の流れを感じ取った。
「……何か来るわ!」
ロゼリアが叫ぶと、目の前の空間が不意に歪む。
『やぁ、運命に抗いし、導かれし者たち。よく来たね』
頭の中に直接響く声が聞こえる。
「誰? 誰なの?」
取り乱したのは、一番身構えていたロゼリアだった。
『誰かって? 君たちはボクの事を噂していたはずだよ?』
響く声の言葉に、ペシエラがハッとする。
「精霊……?」
『そうだよ。ボクは精霊さ』
その言葉が響くと、チェリシアたち三人の前に、羽の生えた小さな存在が現れた。
「やはりいらしたのですね。あぁ、この目で精霊を見られるなんて……。スマホがあればこの様子を写真に収めたのに」
「チェ、チェリシア?」
うっとりするチェリシアが発した言葉が意味不明すぎて、ロゼリアとペシエラが困惑している。
『ふふっ、君は“世界の渡り子“なのかい? 久しぶりに見たね』
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