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第四章 ロゼリア10歳
第69話 発想の展開
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防御壁を展開しつつ、防御壁の形状が四角形になる様に調整していくチェリシア。その横で、散水用の魔石をいくつか用意しているロゼリア。ペシエラは魔法が使えるが、村人たちの前では使えないので、チェリシアの防御壁の形の確認をしている。魔石自体は先の魔物氾濫で手に入れた物が大量にあるので、問題はなかった。
「ヒロインと悪役が手を取り合うと最強とかいうのが、今なら分かる気がするわ」
「ほへ?」
お互いに役割分担していると、チェリシアがロゼリアに意味不明な事を言ってきた。
「だって、厄災の暗龍を倒せちゃったし、それ以外にもあり得ない事を起こしてきたでしょ。逆行前の時は、お互い壁を作った結果、……というかペシエラが一方的に壁を分厚くし過ぎたのが原因でしょう?」
「そうね。素直なはずなのに意固地になるから……ね」
そう言って、ロゼリアとチェリシアは笑い合う。
「お姉様ーっ! いい感じの形になってますわよ」
防御壁の形を確認していたペシエラが叫んでいる。
「了解! それじゃ屋根の部分は少し膨らませるから、見ててちょうだい」
「いいですわよ」
チェリシアは、前世でのビニールハウスを思い浮かべながら、天井部分を曲線へと変えていく。すると、天井はみるみるうちにかまぼこ型へと変形していった。
基本的な形は出来上がった。後はこの状態を魔石を使って維持できるようにするだけだった。
「思うけど、この魔法だって十分とんでもないものよ。一般的な魔法使いじゃ、この規模を作る事すらできないわよ」
「あっ、そうなの?」
「そうですわよ」
チェリシアが分かっていない風なので、ロゼリアとペシエラがツッコミを入れる。
一般的な魔法使いができるのは、食堂のテーブル程度の大きさを一時間維持できればいい方だ。なのにチェリシアは、病み上がりにもかかわらず、家二棟分の大きさを、かれこれ二時間維持している。規格外が過ぎた。
一応の形ができた事で、これを魔石に記憶させて、どれだけ持続できるのか試す事にする。三者三様に、魔石に魔法を込める。魔力量自体に問題は無いので、後は形の再現ができるかどうか。つまりは想像力の問題である。
チェリシアとペシエラは光魔法で、ロゼリアは土魔法での再現を図る。なぜロゼリアは土魔法かといえば、ロゼリアは光に適性はなく、その土魔法でも極めれば水晶のような透明な物質が作れるからだ。
かくして、魔石を作動させてチェリシアが作り上げた物と同等の物が、横並びに三棟建った。棟の中央には同時並行で作られていた魔石を置く台座が置かれ、そこにそれぞれの魔石が据えられた。
ここからは観察が続くだけである。
今回使った魔石は、未開の森で入手したフォレストバードの魔石だ。素早いだけで落ち着いて対処すれば、そこそこの冒険者でも討伐可能な魔物なので、入手難易度はそれほど高くはない。建物がどれだけ持続できるか、そこだけが問題であった。
結果、建物自体は寝ずの番もして見張り続けたが、丸一日は余裕で持ってくれた。規模が大きいので魔力消費も大きいかと思ったのだが、不慣れなロゼリアの作った一棟が、丸二日目にして消え去ったくらいで、チェリシアとペシエラの物はまだ残り続けた。
「残念だわ。私の物が一番最初に消えてしまうなんて……」
「土魔法だと、水晶という状態が原因かも知れないわね。多分、普通の土ならもっと持ったと思うわ。魔力供給無しで長期間持つから」
「そうね。でも、出入り口を付けなければならないから、やっぱり不向きかも知れないわね」
「コストを考えれば、土魔法による建物の方がいいわ。環境維持だけを魔石に任せればいいもの」
ロゼリアとチェリシアが討論している。ペシエラはロゼリアに勝てて満足していたが、二人の会話に入れずに負けた気がして頬を膨らませた。
「ペシエラ、分からない事があれば、遠慮なく聞いていいのよ。分からない事を分からないまま放置するんじゃなくて、分かろうとする事が大切なの。あなたはそれで、前回失敗したのでしょう?」
ペシエラの態度に気が付いたチェリシアが、頭を撫でながらペシエラに諭すように話しかける。心当たりがあるようで、ペシエラは不意に顔を背けた。
「魔石で建物を建てるというのも、面白いものよね。魔石による魔法の展開を止めればその建物は消えるし、魔石に魔力がある限り、持ち運び式の家屋が作れるという事になるわ」
チェリシアがとんでもない事を呟いていた。
「家を……持ち運ぶ?」
「お姉様、それは革命的な案ですわ」
ロゼリアは驚いて思考が固まり、ペシエラは目を輝かせた。
まさか農業の話からこんな事になるとは、誰が想像しただろうか。
プラウスが頭を悩ませたのは、言うまでもない事だった。
「ヒロインと悪役が手を取り合うと最強とかいうのが、今なら分かる気がするわ」
「ほへ?」
お互いに役割分担していると、チェリシアがロゼリアに意味不明な事を言ってきた。
「だって、厄災の暗龍を倒せちゃったし、それ以外にもあり得ない事を起こしてきたでしょ。逆行前の時は、お互い壁を作った結果、……というかペシエラが一方的に壁を分厚くし過ぎたのが原因でしょう?」
「そうね。素直なはずなのに意固地になるから……ね」
そう言って、ロゼリアとチェリシアは笑い合う。
「お姉様ーっ! いい感じの形になってますわよ」
防御壁の形を確認していたペシエラが叫んでいる。
「了解! それじゃ屋根の部分は少し膨らませるから、見ててちょうだい」
「いいですわよ」
チェリシアは、前世でのビニールハウスを思い浮かべながら、天井部分を曲線へと変えていく。すると、天井はみるみるうちにかまぼこ型へと変形していった。
基本的な形は出来上がった。後はこの状態を魔石を使って維持できるようにするだけだった。
「思うけど、この魔法だって十分とんでもないものよ。一般的な魔法使いじゃ、この規模を作る事すらできないわよ」
「あっ、そうなの?」
「そうですわよ」
チェリシアが分かっていない風なので、ロゼリアとペシエラがツッコミを入れる。
一般的な魔法使いができるのは、食堂のテーブル程度の大きさを一時間維持できればいい方だ。なのにチェリシアは、病み上がりにもかかわらず、家二棟分の大きさを、かれこれ二時間維持している。規格外が過ぎた。
一応の形ができた事で、これを魔石に記憶させて、どれだけ持続できるのか試す事にする。三者三様に、魔石に魔法を込める。魔力量自体に問題は無いので、後は形の再現ができるかどうか。つまりは想像力の問題である。
チェリシアとペシエラは光魔法で、ロゼリアは土魔法での再現を図る。なぜロゼリアは土魔法かといえば、ロゼリアは光に適性はなく、その土魔法でも極めれば水晶のような透明な物質が作れるからだ。
かくして、魔石を作動させてチェリシアが作り上げた物と同等の物が、横並びに三棟建った。棟の中央には同時並行で作られていた魔石を置く台座が置かれ、そこにそれぞれの魔石が据えられた。
ここからは観察が続くだけである。
今回使った魔石は、未開の森で入手したフォレストバードの魔石だ。素早いだけで落ち着いて対処すれば、そこそこの冒険者でも討伐可能な魔物なので、入手難易度はそれほど高くはない。建物がどれだけ持続できるか、そこだけが問題であった。
結果、建物自体は寝ずの番もして見張り続けたが、丸一日は余裕で持ってくれた。規模が大きいので魔力消費も大きいかと思ったのだが、不慣れなロゼリアの作った一棟が、丸二日目にして消え去ったくらいで、チェリシアとペシエラの物はまだ残り続けた。
「残念だわ。私の物が一番最初に消えてしまうなんて……」
「土魔法だと、水晶という状態が原因かも知れないわね。多分、普通の土ならもっと持ったと思うわ。魔力供給無しで長期間持つから」
「そうね。でも、出入り口を付けなければならないから、やっぱり不向きかも知れないわね」
「コストを考えれば、土魔法による建物の方がいいわ。環境維持だけを魔石に任せればいいもの」
ロゼリアとチェリシアが討論している。ペシエラはロゼリアに勝てて満足していたが、二人の会話に入れずに負けた気がして頬を膨らませた。
「ペシエラ、分からない事があれば、遠慮なく聞いていいのよ。分からない事を分からないまま放置するんじゃなくて、分かろうとする事が大切なの。あなたはそれで、前回失敗したのでしょう?」
ペシエラの態度に気が付いたチェリシアが、頭を撫でながらペシエラに諭すように話しかける。心当たりがあるようで、ペシエラは不意に顔を背けた。
「魔石で建物を建てるというのも、面白いものよね。魔石による魔法の展開を止めればその建物は消えるし、魔石に魔力がある限り、持ち運び式の家屋が作れるという事になるわ」
チェリシアがとんでもない事を呟いていた。
「家を……持ち運ぶ?」
「お姉様、それは革命的な案ですわ」
ロゼリアは驚いて思考が固まり、ペシエラは目を輝かせた。
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プラウスが頭を悩ませたのは、言うまでもない事だった。
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