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第四章 ロゼリア10歳
第68話 農地整備、開始
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お説教が済んだ後は、チェリシアに一応商会で扱う分の魔石と素材を、収納魔法で確保してもらった。お説教で心が落ち着いたのか、魔法は問題なく使う事ができた。
「チェリシア、大丈夫なの?」
「平気よ。お父様の説教のおかげでね」
本人はそう言っているので間違いなさそうだ。
大きな魔石を含め、大量の戦利品が亜空間に飲み込まれるのを見て、プラウスや村長たちは開いた口が塞がらない様子だった。
翌日になると、チェリシアの状態はすっかり元通りだった。
ロゼリアとペシエラから聞かされたエアリアルボードや防御壁の展開規模も、厄災の暗龍の討伐時と何ら変わりのない大きさで、プラウスは信じられないものを見ている気分だった。
「プラウス様、私はこのチェリシアさんの魔法を、この地の農業改革に使えないかと考えています。防御壁で外気を遮断して、中の環境を一定にすれば、年間を通して農業ができると思うのです」
呆気に取られているプラウスに、ロゼリアは提案をする。その提案を聞いて、プラウスは考え始める。
「確かにそれは可能だな。だが、それを常に維持するとなれば膨大な魔力が必要となるし、水や地力という他の要素も絡んでくる。そううまくいくかな?」
プラウスは問題点をしっかり指摘してきた。本当に頭の切れる貴族である。
「ええ、私もそこが問題だと思っていますわ、お父様」
チェリシアが参戦する。
チェリシアは、前世で一次産業のうち、農畜水産をかなり嗜んできている。その手の知識は豊富である。
「まずは水ですが、これは水の散布を行うための魔石を用意すれば大丈夫です。私の手くらいの魔石であれば、半年は持つでしょう。あらかじめ数を用意しておいて、水の出が悪くなる度に交換すれば良いのです。使い終わった魔石も砕いてしまえば肥料にできます」
前世の知識と今世の知識を織り交ぜて、チェリシアは提案する。
「肥料に関しても、たとえばシェリアで魚を捌いた後に出る骨や内臓、これらを土に混ぜて発酵させれば肥料になります」
それらを聞いて、プラウスは唸り始める。ロゼリアとチェリシアから出された提案は、今までの考えをまったく無視したものだ。環境をどうにかするのではなく、環境から切り離してしまおうという方法は思いつかなかったのだ。
無理もない話だろう。魔法使いがそもそも多くない上に、強力な魔法が使える者ともなれば更に希少だ。魔石にしても、魔法を作用させて効果を付与するなんて事を考えた者など居なかった。つまりは全てが新しい考えなのだ。
プラウスは、目の前の娘を見る。
十歳という年齢にして、柔軟で斬新な発想のできるピンク髪の少女。それでいて魔力の量と魔法の才能にも溢れている。プラウスは、本当に自分の娘か疑いたくなる。
実際のところ、チェリシアはプラウスの娘であるが、ないとも言える。異世界より渡って来た魂が宿っているのだ。しかし、その事はまだ秘匿されているので、プラウスはチェリシアの事を、天から遣わされた子だと思い始めているようだ。……あながち間違いでもないかも知れない。
とりあえずこの日はもう遅い。防御壁の事などはまた翌日へと持ち越しになる。
翌日になると、まずは防御壁を張る候補地の選定にかかる。
「お父様、広さはどのくらいですか?」
「そうだな。試験的なものだから、あの家二棟分ほどで構わない」
チェリシアが質問すれば、プラウスはそう答えた。魔物氾濫で覆った大きさの二十分の一程度の大きさだ。これなら回復し切っていないチェリシアでも、楽に覆える規模だった。
選んだ場所は、村長の家のすぐ近くだった。カイスの村は水場からそもそも遠いので、村長から観察しやすいように家の近くを選んだのだ。
チェリシアは、村人と自分たちだけが中に入れるように防御壁を展開する。その規模たるや、村長をはじめとした村人たちが驚いていた。
中に入れば、周りの空気よりもひんやりとしている。もう夏の時期を迎えるというのに、防御壁の中は、春先のような暖かさだった。
「おお、このような空間を作り出せるとは……。魔法は偉大ですな」
村長は感動している。
しかし、これはまだ準備段階。ロゼリアたちはすぐに準備に取り掛かった。
「チェリシア、大丈夫なの?」
「平気よ。お父様の説教のおかげでね」
本人はそう言っているので間違いなさそうだ。
大きな魔石を含め、大量の戦利品が亜空間に飲み込まれるのを見て、プラウスや村長たちは開いた口が塞がらない様子だった。
翌日になると、チェリシアの状態はすっかり元通りだった。
ロゼリアとペシエラから聞かされたエアリアルボードや防御壁の展開規模も、厄災の暗龍の討伐時と何ら変わりのない大きさで、プラウスは信じられないものを見ている気分だった。
「プラウス様、私はこのチェリシアさんの魔法を、この地の農業改革に使えないかと考えています。防御壁で外気を遮断して、中の環境を一定にすれば、年間を通して農業ができると思うのです」
呆気に取られているプラウスに、ロゼリアは提案をする。その提案を聞いて、プラウスは考え始める。
「確かにそれは可能だな。だが、それを常に維持するとなれば膨大な魔力が必要となるし、水や地力という他の要素も絡んでくる。そううまくいくかな?」
プラウスは問題点をしっかり指摘してきた。本当に頭の切れる貴族である。
「ええ、私もそこが問題だと思っていますわ、お父様」
チェリシアが参戦する。
チェリシアは、前世で一次産業のうち、農畜水産をかなり嗜んできている。その手の知識は豊富である。
「まずは水ですが、これは水の散布を行うための魔石を用意すれば大丈夫です。私の手くらいの魔石であれば、半年は持つでしょう。あらかじめ数を用意しておいて、水の出が悪くなる度に交換すれば良いのです。使い終わった魔石も砕いてしまえば肥料にできます」
前世の知識と今世の知識を織り交ぜて、チェリシアは提案する。
「肥料に関しても、たとえばシェリアで魚を捌いた後に出る骨や内臓、これらを土に混ぜて発酵させれば肥料になります」
それらを聞いて、プラウスは唸り始める。ロゼリアとチェリシアから出された提案は、今までの考えをまったく無視したものだ。環境をどうにかするのではなく、環境から切り離してしまおうという方法は思いつかなかったのだ。
無理もない話だろう。魔法使いがそもそも多くない上に、強力な魔法が使える者ともなれば更に希少だ。魔石にしても、魔法を作用させて効果を付与するなんて事を考えた者など居なかった。つまりは全てが新しい考えなのだ。
プラウスは、目の前の娘を見る。
十歳という年齢にして、柔軟で斬新な発想のできるピンク髪の少女。それでいて魔力の量と魔法の才能にも溢れている。プラウスは、本当に自分の娘か疑いたくなる。
実際のところ、チェリシアはプラウスの娘であるが、ないとも言える。異世界より渡って来た魂が宿っているのだ。しかし、その事はまだ秘匿されているので、プラウスはチェリシアの事を、天から遣わされた子だと思い始めているようだ。……あながち間違いでもないかも知れない。
とりあえずこの日はもう遅い。防御壁の事などはまた翌日へと持ち越しになる。
翌日になると、まずは防御壁を張る候補地の選定にかかる。
「お父様、広さはどのくらいですか?」
「そうだな。試験的なものだから、あの家二棟分ほどで構わない」
チェリシアが質問すれば、プラウスはそう答えた。魔物氾濫で覆った大きさの二十分の一程度の大きさだ。これなら回復し切っていないチェリシアでも、楽に覆える規模だった。
選んだ場所は、村長の家のすぐ近くだった。カイスの村は水場からそもそも遠いので、村長から観察しやすいように家の近くを選んだのだ。
チェリシアは、村人と自分たちだけが中に入れるように防御壁を展開する。その規模たるや、村長をはじめとした村人たちが驚いていた。
中に入れば、周りの空気よりもひんやりとしている。もう夏の時期を迎えるというのに、防御壁の中は、春先のような暖かさだった。
「おお、このような空間を作り出せるとは……。魔法は偉大ですな」
村長は感動している。
しかし、これはまだ準備段階。ロゼリアたちはすぐに準備に取り掛かった。
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