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第四章 ロゼリア10歳
第59話 全力の勝利
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(ブレスが来る!)
チェリシアは咄嗟に光魔法を厄災の暗龍の頭部に放つ。エアリアルボードに二重の防御壁を展開している上で、更に魔法を使っている。どれだけ規格外なんだよと突っ込みたくなる。
ゲームでの厄災の暗龍のブレスは、高確率で開幕にぶち込まれる無属性の防御貫通攻撃である。ただでさえ高火力である上に無属性なので属性対処も意味を成さない。そんな攻撃が戦闘開始直後に高確率で飛んでくるのだ。理不尽この上ない話である。
チェリシアが無茶してでもブレスを潰しにかかったのは、この防御貫通という特性のせいである。
そう、厄災の暗龍のブレスの前には、チェリシアが展開している二重の防御壁が意味を成さないのだ。だからこそ、チェリシアは無茶とも言える四つめの魔法を使っているのだ。だが、さすがに同時に四つの魔法ともなれば十歳の少女への負担が大きく、チェリシアは大粒の汗を流し始めている。
そうして展開されたチェリシアの魔法は、厄災の暗龍の頭部を眩いばかりの光で包み込んでいく。瘴気の収束が阻害される。これで威力を潰す事に成功する。
だが、これで終わりではない。厄災の暗龍はまだブレスを発射できる状態にある。多少強引に口を開けば、この程度の光魔法など無視できてしまうのだ。
チェリシアは次の行動に出る。
「ロゼリア、私の光魔法に風魔法をかぶせて、暗龍の口を塞いで! 早くっ!」
泥を形成したロゼリアの手が空いているのだ。使わない手はない。
「分かったわ」
すぐさまロゼリアは、厄災の暗龍の口を縛り付けるように風魔法で包み込む。これで無理に口を開こうとするなら、光魔法に口内を焼かれる事になる。
厄災の暗龍は頭部を包み込む光魔法と風魔法を振り払おうと、ブレスが発射待機の状態でありながら頭を激しく振る。しかし、頭を激しく振れば振るほど、ブレスに変換された魔力と瘴気が口の中を傷付けていく。
やがて、行き場を失ったブレスは、厄災の暗龍の口の中で炸裂する。防御貫通のブレスは、高い防御力を誇る厄災の暗龍の頭部を吹き飛ばした。
この瞬間、防御壁内に溜め込んだペシエラの光魔法を、素早く内側の防御壁を解除して解き放つ。
次の瞬間、防御壁の内部に光魔法が満たされる。雑魚の魔物は当然ながら、厄災の暗龍も吹き飛んだ頭部と不完全な部分から、全身を余す事なく光魔法に焼かれていく。
頭部の吹き飛んだ厄災の暗龍は、断末魔を上げる事も叶わず、大きな音を立ててその場に崩れ去った。
……十歳と七歳の少女の完全勝利であった。
不完全な状態とはいえ、厄災の暗龍に勝ってしまった。チェリシアたちは腰が抜け、エアリアルボードの上で座り込んだ。
しかし、まだ油断はできない。
使い過ぎたチェリシアの魔力が、いつ切れるか分からない。チェリシアは腰が抜けた状態でありながら、エアリアルボードを素早く慎重に地上へと降ろしていく。
地上にどうにか降りたロゼリアたちは、凹地の方へと目を向ける。防御壁はまだ一つ展開しているが、一部は魔力切れを示すように形が維持できなくなってきている。もし魔物が残っていれば非常に危険な状態だった。
まだ魔力が残っているロゼリアが、凹地に舞う土埃を風魔法で取り除く。土埃は防御壁が欠けた部分から外へと吹き抜けていく。
防御壁の内部がはっきりと見える。
中央部分に厄災の暗龍が、周辺部に無数の(厄災の暗龍に比べれば)小さな魔物が倒れていた。慎重に見ているが、動き出すような魔物は居ないようだった。
「わ、私たちが魔物氾濫を抑えたのね……」
「はは……、厄災の暗龍に勝ってしまいましたわ」
ロゼリアとペシエラが信じられない表情で見ている。呆然とするロゼリアたちの後ろで、チェリシアもまた魔物氾濫を抑えて、疲れ果てながらも笑顔を見せていた。
「えへへ……、良かった……」
「チェリシア!」
魔力を使い果たしたチェリシアは、防御壁が消え去ると同時に、気を失ってその場に倒れ込んでしまうのだった。
チェリシアは咄嗟に光魔法を厄災の暗龍の頭部に放つ。エアリアルボードに二重の防御壁を展開している上で、更に魔法を使っている。どれだけ規格外なんだよと突っ込みたくなる。
ゲームでの厄災の暗龍のブレスは、高確率で開幕にぶち込まれる無属性の防御貫通攻撃である。ただでさえ高火力である上に無属性なので属性対処も意味を成さない。そんな攻撃が戦闘開始直後に高確率で飛んでくるのだ。理不尽この上ない話である。
チェリシアが無茶してでもブレスを潰しにかかったのは、この防御貫通という特性のせいである。
そう、厄災の暗龍のブレスの前には、チェリシアが展開している二重の防御壁が意味を成さないのだ。だからこそ、チェリシアは無茶とも言える四つめの魔法を使っているのだ。だが、さすがに同時に四つの魔法ともなれば十歳の少女への負担が大きく、チェリシアは大粒の汗を流し始めている。
そうして展開されたチェリシアの魔法は、厄災の暗龍の頭部を眩いばかりの光で包み込んでいく。瘴気の収束が阻害される。これで威力を潰す事に成功する。
だが、これで終わりではない。厄災の暗龍はまだブレスを発射できる状態にある。多少強引に口を開けば、この程度の光魔法など無視できてしまうのだ。
チェリシアは次の行動に出る。
「ロゼリア、私の光魔法に風魔法をかぶせて、暗龍の口を塞いで! 早くっ!」
泥を形成したロゼリアの手が空いているのだ。使わない手はない。
「分かったわ」
すぐさまロゼリアは、厄災の暗龍の口を縛り付けるように風魔法で包み込む。これで無理に口を開こうとするなら、光魔法に口内を焼かれる事になる。
厄災の暗龍は頭部を包み込む光魔法と風魔法を振り払おうと、ブレスが発射待機の状態でありながら頭を激しく振る。しかし、頭を激しく振れば振るほど、ブレスに変換された魔力と瘴気が口の中を傷付けていく。
やがて、行き場を失ったブレスは、厄災の暗龍の口の中で炸裂する。防御貫通のブレスは、高い防御力を誇る厄災の暗龍の頭部を吹き飛ばした。
この瞬間、防御壁内に溜め込んだペシエラの光魔法を、素早く内側の防御壁を解除して解き放つ。
次の瞬間、防御壁の内部に光魔法が満たされる。雑魚の魔物は当然ながら、厄災の暗龍も吹き飛んだ頭部と不完全な部分から、全身を余す事なく光魔法に焼かれていく。
頭部の吹き飛んだ厄災の暗龍は、断末魔を上げる事も叶わず、大きな音を立ててその場に崩れ去った。
……十歳と七歳の少女の完全勝利であった。
不完全な状態とはいえ、厄災の暗龍に勝ってしまった。チェリシアたちは腰が抜け、エアリアルボードの上で座り込んだ。
しかし、まだ油断はできない。
使い過ぎたチェリシアの魔力が、いつ切れるか分からない。チェリシアは腰が抜けた状態でありながら、エアリアルボードを素早く慎重に地上へと降ろしていく。
地上にどうにか降りたロゼリアたちは、凹地の方へと目を向ける。防御壁はまだ一つ展開しているが、一部は魔力切れを示すように形が維持できなくなってきている。もし魔物が残っていれば非常に危険な状態だった。
まだ魔力が残っているロゼリアが、凹地に舞う土埃を風魔法で取り除く。土埃は防御壁が欠けた部分から外へと吹き抜けていく。
防御壁の内部がはっきりと見える。
中央部分に厄災の暗龍が、周辺部に無数の(厄災の暗龍に比べれば)小さな魔物が倒れていた。慎重に見ているが、動き出すような魔物は居ないようだった。
「わ、私たちが魔物氾濫を抑えたのね……」
「はは……、厄災の暗龍に勝ってしまいましたわ」
ロゼリアとペシエラが信じられない表情で見ている。呆然とするロゼリアたちの後ろで、チェリシアもまた魔物氾濫を抑えて、疲れ果てながらも笑顔を見せていた。
「えへへ……、良かった……」
「チェリシア!」
魔力を使い果たしたチェリシアは、防御壁が消え去ると同時に、気を失ってその場に倒れ込んでしまうのだった。
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