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第四章 ロゼリア10歳
第50話 初交戦
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チェリシアが張った結界のおかげで、何事もなく翌朝を迎える。ロゼリア、チェリシア、ペシエラは、三人揃って寝床から体を起こして大きく伸びをした。
「おはようございます」
「おはようございますですわ」
「おはよう」
三者三様に挨拶を交わす。
ロゼリアが魔法で水を出して、顔を洗う。三属性しか扱えないとはいっても、その能力は高い。だが、チェリシアの規格外の魔法を見て、ロゼリアの自信は少し揺らいでいた。
朝食を食べて、二日目の移動である。
ちなみに朝食は昨日の昼や夜とも違う料理だった。いや、量はおろか種類もどれほど作ったのだろうか。ロゼリアは聞く気が失せた。
街道の脇にずれた木々の生えた見にくい場所から、チェリシアは今日もエアリアルボードを発動させる。
今日からついにコーラル子爵領に入る。とは言っても、現在居るのは山岳地帯の西の端の森林地帯の南側で、コーラル子爵領ではない。この山が高くなり始めると、いよいよコーラル子爵領である。
「この辺りは来た事はないけど、一応、お父様の領地になりますわ。とは言っても山ばかりですし、海岸側の気候のせいで手が回りませんけど」
ペシエラが説明する。
確かに、眼下に見える景色はどこまで行っても山と森。人の手が入っている気配はどこにもなかった。
「しかも、手付かずのせいで魔物もそこそこ生息していて、冒険者たちの良い狩場にはなってますわ」
ペシエラが説明するが、これは前回の時間軸での知識である。しかし、今回の時間軸でもそれはまったく変わらない。
「じゃあ、うちの商会に持ち込まれる魔石の多くは、ここら一帯の産物というわけね?」
「そうなりますわね」
ロゼリアが確認すると、ペシエラは肯定した。
そう話していると、目の前に何やら鳥が出現した。魔物の生息域の近くを飛んでいるのだ。鳥型の魔物の襲撃のようである。
「あれは?」
「フォレストバードのようですわね。鷲のような姿をしているので間違いありませんわ」
ロゼリアとペシエラが話していると、チェリシアは一人混乱している。
リアルに戦闘経験が無い唯一のメンバーなので、それも仕方のない事だろう。
「風よ!」
チェリシアの後ろで、ロゼリアが魔法を放つ。初歩の魔法のウインドカッターである。だが、十歳とはいえ前回の時間軸の経験があるので、年相応の威力ではなく、あっという間にフォレストバードを真っ二つにしてしまった。
「……」
チェリシアはその光景に少し固まった。
「チェリシア、魔物との遭遇は倒すか倒されるかの世界です。初めのうちは吐きたくなるでしょうが、甘い事は言ってられませんわ。なにせ、これから経験せねばなりませんからね」
ロゼリアは厳しく言った。チェリシアは顔を青くしながらも魔法を維持し、ロゼリアの言葉に反応する。
「そう……ね。ゲームで戦闘はあったんだもの。自分も戦わなきゃいけなくなるのは分かってた、はずなのに……」
チェリシアは少しずつ、声が小さくなっていった。それを見かねたロゼリアは、
「一度休憩を入れましょうか。チェリシア、地上に降りて休むわよ」
チェリシアに声を掛ける。チェリシアはゆっくり振り返り、小さく頷いた。そして、魔物の生息域を少し外れるように、エアリアルボードを操った。
森から少し外れた、街道との中間ほどの位置で、エアリアルボードを着陸させる。
チェリシアは、人生で初めて見る生き物を殺す様を見て、顔が完全に青ざめていた。
「あの程度で気分が悪くなるなんて、チェリシアの前世の世界はよほど平和な世界だったんでしょうね」
「……」
ロゼリアの言葉に、チェリシアは静かに頷いた。
「魔物どもは、テリトリーに入る者を見境なく襲ってくるわ。殺しに来ている相手を無傷で追い返すなんて、ほぼ不可能。相手を殺さないと、こちらが物言わぬものとなってしまうわ」
ロゼリアの厳しい言葉に、チェリシアは黙り込んだままだ。
「そうですわ、お姉様。これから立ち向かう魔物氾濫は、魔物を殺さないと人間側に多くの死傷者を出しますわ。その事をよく理解して下さい」
ペシエラからもきつく言われる。
「……見てられないわね。到着まで余裕もありそうですし、明日は一日ここで魔物討伐をしましょう」
見かねたロゼリアは、チェリシアのために提案するのだった。
「おはようございます」
「おはようございますですわ」
「おはよう」
三者三様に挨拶を交わす。
ロゼリアが魔法で水を出して、顔を洗う。三属性しか扱えないとはいっても、その能力は高い。だが、チェリシアの規格外の魔法を見て、ロゼリアの自信は少し揺らいでいた。
朝食を食べて、二日目の移動である。
ちなみに朝食は昨日の昼や夜とも違う料理だった。いや、量はおろか種類もどれほど作ったのだろうか。ロゼリアは聞く気が失せた。
街道の脇にずれた木々の生えた見にくい場所から、チェリシアは今日もエアリアルボードを発動させる。
今日からついにコーラル子爵領に入る。とは言っても、現在居るのは山岳地帯の西の端の森林地帯の南側で、コーラル子爵領ではない。この山が高くなり始めると、いよいよコーラル子爵領である。
「この辺りは来た事はないけど、一応、お父様の領地になりますわ。とは言っても山ばかりですし、海岸側の気候のせいで手が回りませんけど」
ペシエラが説明する。
確かに、眼下に見える景色はどこまで行っても山と森。人の手が入っている気配はどこにもなかった。
「しかも、手付かずのせいで魔物もそこそこ生息していて、冒険者たちの良い狩場にはなってますわ」
ペシエラが説明するが、これは前回の時間軸での知識である。しかし、今回の時間軸でもそれはまったく変わらない。
「じゃあ、うちの商会に持ち込まれる魔石の多くは、ここら一帯の産物というわけね?」
「そうなりますわね」
ロゼリアが確認すると、ペシエラは肯定した。
そう話していると、目の前に何やら鳥が出現した。魔物の生息域の近くを飛んでいるのだ。鳥型の魔物の襲撃のようである。
「あれは?」
「フォレストバードのようですわね。鷲のような姿をしているので間違いありませんわ」
ロゼリアとペシエラが話していると、チェリシアは一人混乱している。
リアルに戦闘経験が無い唯一のメンバーなので、それも仕方のない事だろう。
「風よ!」
チェリシアの後ろで、ロゼリアが魔法を放つ。初歩の魔法のウインドカッターである。だが、十歳とはいえ前回の時間軸の経験があるので、年相応の威力ではなく、あっという間にフォレストバードを真っ二つにしてしまった。
「……」
チェリシアはその光景に少し固まった。
「チェリシア、魔物との遭遇は倒すか倒されるかの世界です。初めのうちは吐きたくなるでしょうが、甘い事は言ってられませんわ。なにせ、これから経験せねばなりませんからね」
ロゼリアは厳しく言った。チェリシアは顔を青くしながらも魔法を維持し、ロゼリアの言葉に反応する。
「そう……ね。ゲームで戦闘はあったんだもの。自分も戦わなきゃいけなくなるのは分かってた、はずなのに……」
チェリシアは少しずつ、声が小さくなっていった。それを見かねたロゼリアは、
「一度休憩を入れましょうか。チェリシア、地上に降りて休むわよ」
チェリシアに声を掛ける。チェリシアはゆっくり振り返り、小さく頷いた。そして、魔物の生息域を少し外れるように、エアリアルボードを操った。
森から少し外れた、街道との中間ほどの位置で、エアリアルボードを着陸させる。
チェリシアは、人生で初めて見る生き物を殺す様を見て、顔が完全に青ざめていた。
「あの程度で気分が悪くなるなんて、チェリシアの前世の世界はよほど平和な世界だったんでしょうね」
「……」
ロゼリアの言葉に、チェリシアは静かに頷いた。
「魔物どもは、テリトリーに入る者を見境なく襲ってくるわ。殺しに来ている相手を無傷で追い返すなんて、ほぼ不可能。相手を殺さないと、こちらが物言わぬものとなってしまうわ」
ロゼリアの厳しい言葉に、チェリシアは黙り込んだままだ。
「そうですわ、お姉様。これから立ち向かう魔物氾濫は、魔物を殺さないと人間側に多くの死傷者を出しますわ。その事をよく理解して下さい」
ペシエラからもきつく言われる。
「……見てられないわね。到着まで余裕もありそうですし、明日は一日ここで魔物討伐をしましょう」
見かねたロゼリアは、チェリシアのために提案するのだった。
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