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第三章 ロゼリア9歳
第32話 年不相応な少女たち
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ロゼリアたちは父親たちに連れられて、王宮へとやって来た。荷物にはワインやお酢、それに石けんなどたくさんの貢ぎ物が詰め込まれている。
気が付けば、女王陛下に招かれて以来の王宮である。ちなみに、チェリシアが一番緊張している。一年振りともなれば、異世界人には慣れたものではないのだろう。
通されたのはお決まりとなっている謁見の間。国王女王、それにシルヴァノ殿下も居て、王族が勢揃いである。ちなみに前国王陛下と女王陛下は隠居していて城には不在である。
「国王陛下、女王陛下、マゼンダ商会の開業につき、ご報告に上がりました」
マゼンダ侯爵ヴァミリオが、まずは挨拶をする。
「うむ、そなたらの商会の開業、実に喜ばしく思うぞ」
それに応えたのは国王陛下だ。
「それにしても不思議なものよの。魔法をこのように使う事を、今誰も思いつかなかったとは」
女王陛下からもお言葉を頂く。
実は商会の本部の建設において、幾らかの魔法が使われたのだ。これもチェリシアからの提案。こういう急ぎの時には、魔法も併用する事で工期を短縮できると提案したのだった。もちろん、普段は職人や作業員たちの手によって行われるべきだとも付け加えて。
魔法は便利だが、頼り過ぎも問題である。商会ではこの点も解決すべく、職人を招いての技術講習会も行うつもりだという事も、事前に申請していた。技術は継承していかないと廃れてしまう。そして、廃れた時点で蘇らせるのは困難なのだから。
さて、本題だ。
「商会立ち上げにつきまして、事前の取り決めの通り、最初の取引を王家との間で行わせて頂きます」
ヴァミリオが言えば、一行の後ろから大きな荷物が運び込まれる。そこには監視としてロゼリアがついていた。九歳とはいえ魔法が使える相手に下手な事はしないだろうと、ロゼリアからの提案だった。
運び込まれた物は木箱に樽と、大小様々な入れ物が並んでいた。
「こちら、我が領特産のワインをはじめ、コーラル子爵家のチェリシア嬢の発案で作られた酢、それと油と石けんでございます。どうぞご確認下さい」
ヴァミリオが言えば、国王が近衛兵に命じて荷を確認させる。酢を確認した兵士は、ツーンと鼻をつく臭いに顔を顰めたが、変わった反応はそれくらいだった。
「酢の臭いは少々きつかったようですな」
ヴァミリオは兵士の反応に、つい口を出してしまった。
「酢の臭いは独特ですから、仕方ありませんね。ですが、肉を柔らかくしたり、臭みを消したりと思いの外役立つものですよ」
フォローするように、ロゼリアが発言する。まあ、チェリシアの最初の説明の受け売りである。
だが、この世界にとって酢とは見た事もない物であり、当然ながら何の知識も無いのである。それ故に、このロゼリアの言葉は、多くの興味を引いた。
「それに、チェリシアが実際に料理して振舞ってくれましたので、私たちは実体験済みです」
ロゼリアは九歳とは思えぬ堂々とした態度で、しっかりと話をしている。散々見てきたとはいえ、父親であるヴァミリオはとても頼りに思っていた。
だが、次の言葉で青ざめた。それというのも。
「今回運び入れた商品のうち、お酢とソースと使った料理をぜひとも国王陛下と女王陛下にも味わっていただきたく思いまして、王宮の厨房の使用を許可頂けると願います」
自分たちで料理を作ると言い出したのだ。一貴族の令嬢が、王族の食事を作るなど前代未聞である。だが、さらにヴァミリオやプラウスの胃を痛める展開になる。
「ほう、それは興味深いな。よし、ロゼリアならびにチェリシア、作ってみせよ」
国王陛下の戯れにも程がある。九歳の貴族令嬢に料理をさせるのだ。しかも、六歳のペシエラも手伝いに加わる。ヴァミリオたちは気を失いかけている。
そういう親たちの心配をよそに、チェリシアたちは王宮の料理人たちを巻き込みながら、献上品の一部を使った料理を作っていく。その手際の良さは、王宮の料理人たちも目を見張るものがあり、王宮の料理人たちはチェリシアたちに料理の事について、しきりに尋ねていた。
こうして、ロゼリアとペシエラを助手に、チェリシアが作り上げた料理は、無事に昼食として振る舞われる事になったのだった。
気が付けば、女王陛下に招かれて以来の王宮である。ちなみに、チェリシアが一番緊張している。一年振りともなれば、異世界人には慣れたものではないのだろう。
通されたのはお決まりとなっている謁見の間。国王女王、それにシルヴァノ殿下も居て、王族が勢揃いである。ちなみに前国王陛下と女王陛下は隠居していて城には不在である。
「国王陛下、女王陛下、マゼンダ商会の開業につき、ご報告に上がりました」
マゼンダ侯爵ヴァミリオが、まずは挨拶をする。
「うむ、そなたらの商会の開業、実に喜ばしく思うぞ」
それに応えたのは国王陛下だ。
「それにしても不思議なものよの。魔法をこのように使う事を、今誰も思いつかなかったとは」
女王陛下からもお言葉を頂く。
実は商会の本部の建設において、幾らかの魔法が使われたのだ。これもチェリシアからの提案。こういう急ぎの時には、魔法も併用する事で工期を短縮できると提案したのだった。もちろん、普段は職人や作業員たちの手によって行われるべきだとも付け加えて。
魔法は便利だが、頼り過ぎも問題である。商会ではこの点も解決すべく、職人を招いての技術講習会も行うつもりだという事も、事前に申請していた。技術は継承していかないと廃れてしまう。そして、廃れた時点で蘇らせるのは困難なのだから。
さて、本題だ。
「商会立ち上げにつきまして、事前の取り決めの通り、最初の取引を王家との間で行わせて頂きます」
ヴァミリオが言えば、一行の後ろから大きな荷物が運び込まれる。そこには監視としてロゼリアがついていた。九歳とはいえ魔法が使える相手に下手な事はしないだろうと、ロゼリアからの提案だった。
運び込まれた物は木箱に樽と、大小様々な入れ物が並んでいた。
「こちら、我が領特産のワインをはじめ、コーラル子爵家のチェリシア嬢の発案で作られた酢、それと油と石けんでございます。どうぞご確認下さい」
ヴァミリオが言えば、国王が近衛兵に命じて荷を確認させる。酢を確認した兵士は、ツーンと鼻をつく臭いに顔を顰めたが、変わった反応はそれくらいだった。
「酢の臭いは少々きつかったようですな」
ヴァミリオは兵士の反応に、つい口を出してしまった。
「酢の臭いは独特ですから、仕方ありませんね。ですが、肉を柔らかくしたり、臭みを消したりと思いの外役立つものですよ」
フォローするように、ロゼリアが発言する。まあ、チェリシアの最初の説明の受け売りである。
だが、この世界にとって酢とは見た事もない物であり、当然ながら何の知識も無いのである。それ故に、このロゼリアの言葉は、多くの興味を引いた。
「それに、チェリシアが実際に料理して振舞ってくれましたので、私たちは実体験済みです」
ロゼリアは九歳とは思えぬ堂々とした態度で、しっかりと話をしている。散々見てきたとはいえ、父親であるヴァミリオはとても頼りに思っていた。
だが、次の言葉で青ざめた。それというのも。
「今回運び入れた商品のうち、お酢とソースと使った料理をぜひとも国王陛下と女王陛下にも味わっていただきたく思いまして、王宮の厨房の使用を許可頂けると願います」
自分たちで料理を作ると言い出したのだ。一貴族の令嬢が、王族の食事を作るなど前代未聞である。だが、さらにヴァミリオやプラウスの胃を痛める展開になる。
「ほう、それは興味深いな。よし、ロゼリアならびにチェリシア、作ってみせよ」
国王陛下の戯れにも程がある。九歳の貴族令嬢に料理をさせるのだ。しかも、六歳のペシエラも手伝いに加わる。ヴァミリオたちは気を失いかけている。
そういう親たちの心配をよそに、チェリシアたちは王宮の料理人たちを巻き込みながら、献上品の一部を使った料理を作っていく。その手際の良さは、王宮の料理人たちも目を見張るものがあり、王宮の料理人たちはチェリシアたちに料理の事について、しきりに尋ねていた。
こうして、ロゼリアとペシエラを助手に、チェリシアが作り上げた料理は、無事に昼食として振る舞われる事になったのだった。
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