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第二章 ロゼリアとチェリシア
第20話 花園
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子どもの不穏な空気を吹き飛ばしたのは、王宮にある中庭。基本的には王族の憩いの場所として手入れされた庭には、色とりどりの花が咲き乱れている。
(ゲームの一枚絵で見た事がある風景だわ。実物も凄く綺麗……)
チェリシアは、あまりの光景に、さっきまでの緊張が吹き飛んでいた。
一方、この光景に緊張を増しているのがロゼリアだった。正式な婚約者ではないものの、候補となった事で周りからの目が厳しくなるのは見えている。
ゲームでは悪役にされたロゼリアだが、本人はいたって平和に穏便に暮らしたいだけである。ただ、ちょっとお節介が過ぎるだけなのだ。前回はそのお節介が裏目に出ただけなのだ。とはいえ、チェリシアには相当目の敵にされたわけだが……。
「ロゼリア?」
チェリシアからの声で、ふと我に返るロゼリア。
(っと危ない。女王陛下の前で失礼な態度は取れないわね。ここはしっかりしなきゃ……)
席に着く前にチェリシアに呼びかけられた事で、ロゼリアは冷静さを取り戻した。
ロゼリアとチェリシア以外の、ここに居る面々を再確認する。
まずはブランシェード女王陛下とシルヴァノ殿下。宰相夫人マロンシア・マルーンと息子のチークウッド・マルーン。騎士団副団長夫人シャドレア・ノワールと双子の兄オフライトと妹シェイディア。チェリシアの母サルモア・コーラル子爵夫人にチェリシアの妹ペシエラ。そして、ロゼリアの母のレドリス・マゼンダ侯爵夫人と兄のカーマイルである。
この面々を見ると、やはりコーラル子爵家は一段と場違いの空気を醸し出している。いくらチェリシアが婚約者候補になったとはいえ、この場では一番身分の低い子爵家なのだから、サルモア夫人の心境は穏やかではないだろう。
(なんにしても、ここは穏便に済ませたいわ。ご婦人方の視線が痛いもの)
席に着くまで、歩きながらチラチラとロゼリアやチェリシアに向けられる視線。これは明らかに、二人の品定めをしている事が読み取れる。男子が居るなら嫁に、女子が居るならライバルとして見ているという事だ。ロゼリアは死に戻りの前にたくさん経験しているので、こういう事には敏感だった。
庭園の中央にある屋根のあるスペースには、長い楕円形のテーブルと、それを挟むように長方形のテーブルが二脚置かれている。楕円形のテーブルに子どもが、その後ろの長方形のテーブルに母親たちが控えるように座る。
意外な事に、ロゼリアとチェリシアは女王陛下から一番遠い位置に座らされた。しかし、その位置は女王陛下が顔を動かさずとも、二人の様子を一度に目に入れられる位置だった。
(さすが女傑と呼ばれるブランシェード女王陛下。爵位を考えるなら副団長は伯爵家なのだから、私の方が上だわ。でも、王家にとっての重要度からすれば、私は下になる。婚約者候補にしたとはいえ贔屓はしない、そういう事ね)
ロゼリアは冷静に状況を分析する。後ろを見ると母親は少し不機嫌だが、横の兄は冷静だった。
正面に座るチェリシアは、乙女ゲームの影響か、目を輝かせて喜んでいる。その隣のペシエラはチェリシアにドン引きしながら、前に座るロゼリアを睨み付けていた。
(ペシエラさんは、変わらず私を敵視しているわね。知らない間に姉と仲良くなってるものね。仕方ない事だわ)
ロゼリアが苦笑いをしていると、ブランシェード女王陛下がすくりと立ち上がる。それに続くように、ロゼリアたちも立ち上がる。
「本日は妾の呼び掛けに、よく参列してくれた。ここに居る者たちは、妾にとって、そして息子にとって重要な人物と考えておる。だが、今日はただの顔合わせゆえ、楽にして構わぬ」
女王陛下は宣言すると、お付きの侍女たちに茶と菓子を用意させる。侍女たちが離れるのを見ると、女王陛下が椅子に腰を掛ける。その動作が終わると、ロゼリアたちも一斉に腰を下ろした。
「さて早速だが、ロゼリア」
「は、はいっ!」
いきなり名指しされて、ロゼリアの声が上擦った。
「そなたはその年でもう魔法が使えるそうだな。少し見せてもらっても構わぬか?」
いきなり爆弾投下である。使えるのは事実なのだが、実演は避けたいところだったが、正面のチェリシアと宰相の息子が目を輝かせている。これは、実演しないと落胆されそうだ。
宰相の息子はどうでもいいが、チェリシアの落ち込んだ顔は見たくないなと思ったロゼリアは、観念して魔法を使う事にするのだった。
(ゲームの一枚絵で見た事がある風景だわ。実物も凄く綺麗……)
チェリシアは、あまりの光景に、さっきまでの緊張が吹き飛んでいた。
一方、この光景に緊張を増しているのがロゼリアだった。正式な婚約者ではないものの、候補となった事で周りからの目が厳しくなるのは見えている。
ゲームでは悪役にされたロゼリアだが、本人はいたって平和に穏便に暮らしたいだけである。ただ、ちょっとお節介が過ぎるだけなのだ。前回はそのお節介が裏目に出ただけなのだ。とはいえ、チェリシアには相当目の敵にされたわけだが……。
「ロゼリア?」
チェリシアからの声で、ふと我に返るロゼリア。
(っと危ない。女王陛下の前で失礼な態度は取れないわね。ここはしっかりしなきゃ……)
席に着く前にチェリシアに呼びかけられた事で、ロゼリアは冷静さを取り戻した。
ロゼリアとチェリシア以外の、ここに居る面々を再確認する。
まずはブランシェード女王陛下とシルヴァノ殿下。宰相夫人マロンシア・マルーンと息子のチークウッド・マルーン。騎士団副団長夫人シャドレア・ノワールと双子の兄オフライトと妹シェイディア。チェリシアの母サルモア・コーラル子爵夫人にチェリシアの妹ペシエラ。そして、ロゼリアの母のレドリス・マゼンダ侯爵夫人と兄のカーマイルである。
この面々を見ると、やはりコーラル子爵家は一段と場違いの空気を醸し出している。いくらチェリシアが婚約者候補になったとはいえ、この場では一番身分の低い子爵家なのだから、サルモア夫人の心境は穏やかではないだろう。
(なんにしても、ここは穏便に済ませたいわ。ご婦人方の視線が痛いもの)
席に着くまで、歩きながらチラチラとロゼリアやチェリシアに向けられる視線。これは明らかに、二人の品定めをしている事が読み取れる。男子が居るなら嫁に、女子が居るならライバルとして見ているという事だ。ロゼリアは死に戻りの前にたくさん経験しているので、こういう事には敏感だった。
庭園の中央にある屋根のあるスペースには、長い楕円形のテーブルと、それを挟むように長方形のテーブルが二脚置かれている。楕円形のテーブルに子どもが、その後ろの長方形のテーブルに母親たちが控えるように座る。
意外な事に、ロゼリアとチェリシアは女王陛下から一番遠い位置に座らされた。しかし、その位置は女王陛下が顔を動かさずとも、二人の様子を一度に目に入れられる位置だった。
(さすが女傑と呼ばれるブランシェード女王陛下。爵位を考えるなら副団長は伯爵家なのだから、私の方が上だわ。でも、王家にとっての重要度からすれば、私は下になる。婚約者候補にしたとはいえ贔屓はしない、そういう事ね)
ロゼリアは冷静に状況を分析する。後ろを見ると母親は少し不機嫌だが、横の兄は冷静だった。
正面に座るチェリシアは、乙女ゲームの影響か、目を輝かせて喜んでいる。その隣のペシエラはチェリシアにドン引きしながら、前に座るロゼリアを睨み付けていた。
(ペシエラさんは、変わらず私を敵視しているわね。知らない間に姉と仲良くなってるものね。仕方ない事だわ)
ロゼリアが苦笑いをしていると、ブランシェード女王陛下がすくりと立ち上がる。それに続くように、ロゼリアたちも立ち上がる。
「本日は妾の呼び掛けに、よく参列してくれた。ここに居る者たちは、妾にとって、そして息子にとって重要な人物と考えておる。だが、今日はただの顔合わせゆえ、楽にして構わぬ」
女王陛下は宣言すると、お付きの侍女たちに茶と菓子を用意させる。侍女たちが離れるのを見ると、女王陛下が椅子に腰を掛ける。その動作が終わると、ロゼリアたちも一斉に腰を下ろした。
「さて早速だが、ロゼリア」
「は、はいっ!」
いきなり名指しされて、ロゼリアの声が上擦った。
「そなたはその年でもう魔法が使えるそうだな。少し見せてもらっても構わぬか?」
いきなり爆弾投下である。使えるのは事実なのだが、実演は避けたいところだったが、正面のチェリシアと宰相の息子が目を輝かせている。これは、実演しないと落胆されそうだ。
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