14 / 543
第二章 ロゼリアとチェリシア
第14話 視察
しおりを挟む
挨拶を終えたロゼリアたちは、まずは子爵の別邸に荷物を運び込む。ペシエラの事は気になるが、今は後回しだ。
荷物を片付け終われば、もう日が暮れかかっていた。今日のところは夕食を取って寝るだけとなった。
チェリシアは久々の姉妹水入らずらしく、ペシエラと一緒に寝ているらしい。ペシエラの性格は分からないが、姉妹仲が良好なのはいい事だ。
「お嬢様、ペシエラについて探りを入れますか?」
就寝前の世話をしているシアンが尋ねてくる。
「そうね。心なしか、私を見る目が睨んでいたように思うわ。それとなくコーラル子爵の使用人たちに聞いてみて」
「畏まりました」
念には念を。少しの疑念も許せるはずはなかった。
就寝の準備が終わるとシアンは、
「おやすみなさいませ、お嬢様」
と、一礼をして部屋を出ていった。
ロゼリアはベッドに入る。
(あのペシエラの表情、とても見覚えあるのよね。まるで、私が諌めてる時のチェリシアのような……)
そう思ったロゼリアは、勢いよく上体を起こした。
「そうよ、なんで忘れてたのよ。あれはまるで学生時代のチェリシア・コーラル。妹だからっていっても、初対面に対してあんな表情するのはおかし過ぎるわ」
そう考えたロゼリアだったが、眠気には勝てず、そのまま再びベッドの中に入る。そして、そのまま眠りについた。
翌朝、ロゼリアは早めに起きて、軽く視察を兼ねた散歩へと出かける。まだ薄暗く、道行く人もとてもまばらである。一応念のため、シアンを伴ってはいる。
「貧乏子爵の領地ながら、この街はそこそこ外観は整ってるわね」
ロゼリアが歩きながら感想を漏らす。
「海近くの拠点として整備されたようです。気候の変動が小さい事が決め手だったようですね」
シアンが説明する。
「これだけ整っていれば、漁港として機能させられたんじゃないかしら」
それを受けて、ロゼリアはふっと思った事を漏らすと、突然走り出した。
「お嬢様?!」
「釣りをしましょう、シアン」
シアンが慌てて追いかけると、ロゼリアは楽しそうな顔でとんでもない事を言い出した。
ロゼリアは釣りの経験は無い。だが、ここのところコーラル子爵領の事を調べていて、海が近い事から何かないものかと考えていた。そこで辿り着いたのが、よその地域で行われている釣りというもの。それを元に、かなり万能寄りの自分の魔力を応用してとんでもない事を考えついたのだった。
海に突き出た岩場までやって来たロゼリアは、自分の魔力を練り上げて釣り竿と糸を生成したのだ。
そして、餌すらも魔法生成して、釣りを始める侯爵令嬢。優雅な服装で岩場で釣りを始める少女の姿は、さぞ滑稽であったろう。知らず知らずに周りには人が溢れてきていた。
釣りを始めて数十分後、ロゼリアの手にただならぬ感触があった。
「シアン、支えて!」
咄嗟にシアンは、ロゼリアの体を支える。ぐぎぎと唸るロゼリアだったが、八歳でありながらも魔法を駆使して一気に引き上げる。
「うわぁ!」
驚きの声と共に海から現れたのは、なんとも大きな魚だった。その光景に、知らない間に増えていた野次馬からも驚きの声が漏れ出ていた。
その後は、危うく魚に逃げられそうになるが、シアンが無事に捕獲。ロゼリアが魔法の網を生成して、その中へとしまい込んだ。
その魚を街で見てもらえば、どうやら食べられる魚だったようで、早速処理して市場へと流された。
こうした一連の出来事は、昼には既に街中に広がっており、昼に視察に回ったヴァミリオの頭を大いに悩ませたらしい。なにせ、魔法を使うわ、大物を釣り上げるわで、八歳とは思えない事をしでかしてくれたのだから、まったくもって仕方がない。当然ながら、視察から戻ったヴァミリオに、思いっきりお小言を食らったのは言うまでもない。
だが、この事によって、シェリアには漁業という新しい産業が生まれる事になったのだった。
荷物を片付け終われば、もう日が暮れかかっていた。今日のところは夕食を取って寝るだけとなった。
チェリシアは久々の姉妹水入らずらしく、ペシエラと一緒に寝ているらしい。ペシエラの性格は分からないが、姉妹仲が良好なのはいい事だ。
「お嬢様、ペシエラについて探りを入れますか?」
就寝前の世話をしているシアンが尋ねてくる。
「そうね。心なしか、私を見る目が睨んでいたように思うわ。それとなくコーラル子爵の使用人たちに聞いてみて」
「畏まりました」
念には念を。少しの疑念も許せるはずはなかった。
就寝の準備が終わるとシアンは、
「おやすみなさいませ、お嬢様」
と、一礼をして部屋を出ていった。
ロゼリアはベッドに入る。
(あのペシエラの表情、とても見覚えあるのよね。まるで、私が諌めてる時のチェリシアのような……)
そう思ったロゼリアは、勢いよく上体を起こした。
「そうよ、なんで忘れてたのよ。あれはまるで学生時代のチェリシア・コーラル。妹だからっていっても、初対面に対してあんな表情するのはおかし過ぎるわ」
そう考えたロゼリアだったが、眠気には勝てず、そのまま再びベッドの中に入る。そして、そのまま眠りについた。
翌朝、ロゼリアは早めに起きて、軽く視察を兼ねた散歩へと出かける。まだ薄暗く、道行く人もとてもまばらである。一応念のため、シアンを伴ってはいる。
「貧乏子爵の領地ながら、この街はそこそこ外観は整ってるわね」
ロゼリアが歩きながら感想を漏らす。
「海近くの拠点として整備されたようです。気候の変動が小さい事が決め手だったようですね」
シアンが説明する。
「これだけ整っていれば、漁港として機能させられたんじゃないかしら」
それを受けて、ロゼリアはふっと思った事を漏らすと、突然走り出した。
「お嬢様?!」
「釣りをしましょう、シアン」
シアンが慌てて追いかけると、ロゼリアは楽しそうな顔でとんでもない事を言い出した。
ロゼリアは釣りの経験は無い。だが、ここのところコーラル子爵領の事を調べていて、海が近い事から何かないものかと考えていた。そこで辿り着いたのが、よその地域で行われている釣りというもの。それを元に、かなり万能寄りの自分の魔力を応用してとんでもない事を考えついたのだった。
海に突き出た岩場までやって来たロゼリアは、自分の魔力を練り上げて釣り竿と糸を生成したのだ。
そして、餌すらも魔法生成して、釣りを始める侯爵令嬢。優雅な服装で岩場で釣りを始める少女の姿は、さぞ滑稽であったろう。知らず知らずに周りには人が溢れてきていた。
釣りを始めて数十分後、ロゼリアの手にただならぬ感触があった。
「シアン、支えて!」
咄嗟にシアンは、ロゼリアの体を支える。ぐぎぎと唸るロゼリアだったが、八歳でありながらも魔法を駆使して一気に引き上げる。
「うわぁ!」
驚きの声と共に海から現れたのは、なんとも大きな魚だった。その光景に、知らない間に増えていた野次馬からも驚きの声が漏れ出ていた。
その後は、危うく魚に逃げられそうになるが、シアンが無事に捕獲。ロゼリアが魔法の網を生成して、その中へとしまい込んだ。
その魚を街で見てもらえば、どうやら食べられる魚だったようで、早速処理して市場へと流された。
こうした一連の出来事は、昼には既に街中に広がっており、昼に視察に回ったヴァミリオの頭を大いに悩ませたらしい。なにせ、魔法を使うわ、大物を釣り上げるわで、八歳とは思えない事をしでかしてくれたのだから、まったくもって仕方がない。当然ながら、視察から戻ったヴァミリオに、思いっきりお小言を食らったのは言うまでもない。
だが、この事によって、シェリアには漁業という新しい産業が生まれる事になったのだった。
1
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-
牛一/冬星明
ファンタジー
神様に気に入られた悪女令嬢が好きな少女は眷属神にされた。
どう見ても人の言う事を聞かなそうな神様の下で働くなって絶対嫌だった。
少女は過労死で死んだ記憶がある。
働くなら絶対にホワイトな職場だ。
神様のスカウトを断った少女だったが、人の話を聞かない神様が許す訳もない。
少女は眷属神の卵として転生を繰り返す。
そいて、ジュリアーナ・マジク・アラルンガルはこの世界に転生された。
だが、神々の加護を貰えないジュリアーナはすぐに捨てられた。
この可哀想な神様の卵に幸はあるのだろうか?

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる