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第97話 転生者、デジャヴュを見る
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距離的には最後になる宿場町。魔王領は広いために、直線的に結んでもこれくらいに宿が必要になる。
なにせ俺たちが魔王と討伐した時は20日くらいはかけて向かったくらいだからな、魔王領に入ってから。
その広さを直線的にぶち抜いてたったの3日でたどり着ける距離になったんだから、街道を整備したかいがあるというものだ。
「魔王様、間もなく三つ目の宿場町に到着致します」
「おお、そうか。どんな場所か楽しみだぜ」
バフォメットから声を掛けられて、俺はうきうきとした様子で外を眺めている。
ようやく見えてきた宿場町は、両脇を森に挟まれた場所のようだった。
「森がある場所か。よくここを通せたな」
「現地に住む魔族たちからの許可は、魔王様の命令といえばあっさり取れましたからな。その代わりに、街の業務には彼らが積極的に関わっております。まあ、交換条件ですな」
俺の呟きに、バフォメットがきっちりと説明してくれた。
そのくらいの交換条件なら、仕方ないな。俺は再び窓の外に視線を向けて、街への到着を楽しみに待った。
到着した宿場町は、他の二つとはさすがにまた様相がはっきりと違っていた。
「街にいるのは……アルラウネか?」
「そうですね。ウネが話していた通り、頭に花が咲いておりますのでアルラウネで間違いございません」
俺が叫ぶと、カスミが淡々と反応している。
ドライアドとアルラウネは基本的に外見がとても似ている。ただ、頭に葉っぱがあるか花があるかで区別をしているのである。前者がドライアド、後者がアルラウネってわけだ。
今までドライアドしか見たことはなかったが、アルラウネも種族としてはかなり数が多いんだな。
俺たちの乗った馬車は、町長の屋敷へと向かう。
案内されて町長と面会するのだが、この街の町長も案内役の使用人もやっぱりアルラウネだった。
「これはこれは魔王様。遠いところをよくお越し下さいました。わたくし、この宿場町の町長を務めますアルラウネのハナと申します」
立ち上がって丁寧に挨拶をするハナ。
アルラウネはドライアドと同じようにチュニック風の服装にドロワーズかと思ったのだが、ハナは意外とドレス風の衣装を着ていた。
「これは丁寧にどうも。俺は魔王でセイという。早速街の状況を聞かせてもらっても構わないか?」
「はい、もちろんでございます。ペタル、すぐに資料を持ってきて下さい」
「畏まりました、ハナ様」
俺たちを案内してきたアルラウネが部屋を出ていく。
ドライアドを見て思ったが、アルラウネたちも一体一体固体名を持ってるんだな。魔族って名持ちが少ないイメージだったから、意外だった。
「ふふっ、わたくしたちほどともなれば、固体名を有しているものですよ。でなければ、このような要職に就くことはできませんからね」
ハナはそのように説明している。バフォメットにも確認したが、魔族にとっての固体名というのは、やはり特別な意味を持っているらしい。
名を持つことで強力な能力を得ることができるので、族長だとか参謀だとか、そのような重要な地位に就くことができるのだそうだ。
名持ちとそうでない魔族の能力差は、それこそ大人と赤ん坊くらいの違いが出るのだとか。
それはそれとして、ひとまずは宿場町の現状について話を聞く。
「そうですね。街としてはほぼ完成しております。ここは人間たちの領域から最も近い場所ですから、それも考慮して街づくりをさせて頂いておりますわ」
ハナはそのように語っている。キリエを通して要望は出しておいたのだが、きちんと考えてくれていたらしい。魔族たちって思ったより優秀だな?!
「なにより、わたくしたちアルラウネは自然を愛する種族。人間たちにも受け入れられる植物を中心に、街に植えさせて頂きましたわ」
これを聞いた俺は、耳と鼻がぴくりと動く。なんだか嫌な予感がしたからだ。
そこで、俺はおそるおそるハナに確認をしてみることにした。
「それってまさか、『緑精の広葉』とか『赤霊草』とは混ざってないだろうな」
「あら、ご存じなのですか。その通りでございますよ」
がくーっと肩を落とす俺。ウネの事があったせいでピンときたが、まさかその通りだとはなぁ……。
「うん、ハナ、悪いんだけどさ……」
「なんですか、魔王様」
「今言った二種類はさ、街の目立たないところに移動させてくれ。できれば森の方に」
「どうしてですの?」
俺が弱々しく苦言を呈していると、首を傾げて理由を尋ねてくる。
「魔王城でも大騒ぎになったんだよ、それ。人間が見たらこぞって刈り取っていくだろうから、うん、治安のために、な……」
「分かりましたわ。仕方ありません、わたくしたちの食事用にこっそり栽培させて頂きます」
「うん、頼む」
残念そうにしながら、戻ってきたペタルに俺が言った二種類の植物を回収するように伝えるハナ。すると、ペタルはどちらかといえば安心した表情を浮かべて出ていった。
もしかして、ペタルも同じ心配を持っていたのだろうか。町長相手なので意見できなかったということなのだろうか。
何にしても、宿場町が正式に機能する前に問題を潰せてよかったぜ。
なにせ俺たちが魔王と討伐した時は20日くらいはかけて向かったくらいだからな、魔王領に入ってから。
その広さを直線的にぶち抜いてたったの3日でたどり着ける距離になったんだから、街道を整備したかいがあるというものだ。
「魔王様、間もなく三つ目の宿場町に到着致します」
「おお、そうか。どんな場所か楽しみだぜ」
バフォメットから声を掛けられて、俺はうきうきとした様子で外を眺めている。
ようやく見えてきた宿場町は、両脇を森に挟まれた場所のようだった。
「森がある場所か。よくここを通せたな」
「現地に住む魔族たちからの許可は、魔王様の命令といえばあっさり取れましたからな。その代わりに、街の業務には彼らが積極的に関わっております。まあ、交換条件ですな」
俺の呟きに、バフォメットがきっちりと説明してくれた。
そのくらいの交換条件なら、仕方ないな。俺は再び窓の外に視線を向けて、街への到着を楽しみに待った。
到着した宿場町は、他の二つとはさすがにまた様相がはっきりと違っていた。
「街にいるのは……アルラウネか?」
「そうですね。ウネが話していた通り、頭に花が咲いておりますのでアルラウネで間違いございません」
俺が叫ぶと、カスミが淡々と反応している。
ドライアドとアルラウネは基本的に外見がとても似ている。ただ、頭に葉っぱがあるか花があるかで区別をしているのである。前者がドライアド、後者がアルラウネってわけだ。
今までドライアドしか見たことはなかったが、アルラウネも種族としてはかなり数が多いんだな。
俺たちの乗った馬車は、町長の屋敷へと向かう。
案内されて町長と面会するのだが、この街の町長も案内役の使用人もやっぱりアルラウネだった。
「これはこれは魔王様。遠いところをよくお越し下さいました。わたくし、この宿場町の町長を務めますアルラウネのハナと申します」
立ち上がって丁寧に挨拶をするハナ。
アルラウネはドライアドと同じようにチュニック風の服装にドロワーズかと思ったのだが、ハナは意外とドレス風の衣装を着ていた。
「これは丁寧にどうも。俺は魔王でセイという。早速街の状況を聞かせてもらっても構わないか?」
「はい、もちろんでございます。ペタル、すぐに資料を持ってきて下さい」
「畏まりました、ハナ様」
俺たちを案内してきたアルラウネが部屋を出ていく。
ドライアドを見て思ったが、アルラウネたちも一体一体固体名を持ってるんだな。魔族って名持ちが少ないイメージだったから、意外だった。
「ふふっ、わたくしたちほどともなれば、固体名を有しているものですよ。でなければ、このような要職に就くことはできませんからね」
ハナはそのように説明している。バフォメットにも確認したが、魔族にとっての固体名というのは、やはり特別な意味を持っているらしい。
名を持つことで強力な能力を得ることができるので、族長だとか参謀だとか、そのような重要な地位に就くことができるのだそうだ。
名持ちとそうでない魔族の能力差は、それこそ大人と赤ん坊くらいの違いが出るのだとか。
それはそれとして、ひとまずは宿場町の現状について話を聞く。
「そうですね。街としてはほぼ完成しております。ここは人間たちの領域から最も近い場所ですから、それも考慮して街づくりをさせて頂いておりますわ」
ハナはそのように語っている。キリエを通して要望は出しておいたのだが、きちんと考えてくれていたらしい。魔族たちって思ったより優秀だな?!
「なにより、わたくしたちアルラウネは自然を愛する種族。人間たちにも受け入れられる植物を中心に、街に植えさせて頂きましたわ」
これを聞いた俺は、耳と鼻がぴくりと動く。なんだか嫌な予感がしたからだ。
そこで、俺はおそるおそるハナに確認をしてみることにした。
「それってまさか、『緑精の広葉』とか『赤霊草』とは混ざってないだろうな」
「あら、ご存じなのですか。その通りでございますよ」
がくーっと肩を落とす俺。ウネの事があったせいでピンときたが、まさかその通りだとはなぁ……。
「うん、ハナ、悪いんだけどさ……」
「なんですか、魔王様」
「今言った二種類はさ、街の目立たないところに移動させてくれ。できれば森の方に」
「どうしてですの?」
俺が弱々しく苦言を呈していると、首を傾げて理由を尋ねてくる。
「魔王城でも大騒ぎになったんだよ、それ。人間が見たらこぞって刈り取っていくだろうから、うん、治安のために、な……」
「分かりましたわ。仕方ありません、わたくしたちの食事用にこっそり栽培させて頂きます」
「うん、頼む」
残念そうにしながら、戻ってきたペタルに俺が言った二種類の植物を回収するように伝えるハナ。すると、ペタルはどちらかといえば安心した表情を浮かべて出ていった。
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