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第48話 転生者、再びライネスと会う
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そんなわけで再びやって来た獣人たちの集落。
急な話だった事もあって、先触れも無し。俺たちの到着に獣人たちは慌てふためいていた。
「ら、ライネス様のところに案内致します」
怯えながら集落を守る門番が反応している。
要望書を出したのはつい先日の事だ。これほどまで早く反応があるとは思っていなかったのだろう。
「急な訪問で悪いな。でも、できるだけ早い方がいいだろうと急いできたんだ。案内を頼むよ」
「はっ!」
俺が苦笑いを浮かべて事情を説明すると、門番は背筋を伸ばして大きな声で返事をしていた。
俺たちは門番の案内でライネスの屋敷へとやって来た。
そして、中へ入るとライネスは立ち上がって俺たちを出迎えてくれた。
「これは魔王様。今日はどうなさったのでしょうか」
「要望書が届いたのでね、早速対応にあたりに来ただけだ」
ライネスの質問に答える俺。ひとまずは要求に素早く対応した事で、相手からの好感度を上げておくわけだ。
「それにしても、ずいぶんとたくさんの要望を送ってくれたようだな。俺とピエラの二人で手分けして全部読ませてもらったよ」
「おお、それはありがたい限りです。それで、どれどれ対応頂けるのでしょうか」
ライネスは口元を緩めながら話し掛けてくる。言葉からするに、最初から全部を聞いてもらえるとは思っていなかったようだ。まったく大した策士だな。
俺はライネスの反応を見ながら答える。
「俺たちが下した判断では2つだけだな」
「2つ……。たったのそれだけでございますか」
ライネスは周りの不安を煽るためか、ずいぶんと大げさに反応している。
だが、こちらとしてそれを予想していなかったわけではない。なんといっても参謀たるキリエが居るのだ。そんな反応は予想の範疇だった。
「あんなにたくさん要望が送られてきたからな。2つ実現させられるだけでも感謝してもらいたいものだ」
俺は腕を組んで椅子にもたれ掛かりながら喋る。
「まったくですよ、ライネス殿。魔王様たちに確認したところ、100を超える要望を出されたようですね。お二方はそのすべて目を通されたのです」
それに続くようにして、キリエは厳しい視線をライネスに向けていた。
「おかげで思うように休めませんでしたよ。魔王城に向かう間からずっと目を通しっぱなしで、思わず肩が凝りましたね」
ピエラも遠慮なく続いていた。
「内容ですが、セイの手を煩わせるほどのものではありませんでした。魔王様へと仰るから持っていきましたけれどね」
ピエラは険しい表情で苦言を呈していた。
「というわけだ。だからこそ、俺の裁量が本当に必要な2つだけを対応しに来たというわけだ」
前のめりになりながら、俺ははっきりとライネスに伝える。同時に、暗にあれこれ俺を頼るんじゃねえというメッセージを含ませていた。
俺の言葉を聞いたライネスは少し考え込んでいた。おそらくは俺の言葉の裏に隠したメッセージ気が付いたのだろう。
「では、その2つというのをお聞かせ願いますでしょうか」
分かりやすいくらい態度が変わる。なので、俺はその問い掛けに答えることにした。
「ひとつは領地の件だ。確かに、ここに住む獣人の数からして手狭になっている事は感じていたからな。空白地帯のうち、ここに接している部分を新たに獣人たちに与えることにした」
「おお、それは助かります。どのくらいの広さなのですか?」
ものすごい食いつきようのライネス。だが、ここではあえてすぐには明かさなかった。
「それは、ピエラから聞いてくれ。ここにいるウネも手伝ってすぐに開拓はするから、おおよその範囲はそこで分かるだろうがな」
「おお、ドライアド族ですか。これは頼もしいですな」
どうやらライネスはドライアド族を知っていたようだ。ウネは褒められて嬉しそうに胸を張っている。
「もう一つは獣人たちの雇用の件だ。今の俺と同族だからといって優遇するわけじゃないが、魔王城での採用枠を少しばかり他の種族と差の無いようにしようと思う」
「おお、ありがとうございます」
俺の話を聞いて、ライネスは感激のあまり頭を下げていた。
だが、話はこれで終わりではない。俺はまだ言葉を続ける。
「他の要望も却下にはしたが、対応しないというわけじゃない」
「と、申されますと?」
顔を上げるライネス。
「この獣人たちの集落を共に治めることになるピエラと一緒に、自分たちでやってくれってことだ。分かったか?」
「なんと! 魔王様は我々に自治を認めて下さると仰るのですか」
俺が説明を終えると、ライネスは立ち上がって叫んでいた。そこまで反応する事なのだろうかと、俺はちょっとばかり面食らっていた。
俺はキリエに説明を求めたが、ここでは答えてくれなかった。
「とりあえず、さっさと開拓を始めてしまいましょう。説明はその時にでも行います」
キリエは淡々と話している。まあ、さっさと済ましてしまいたいと思った俺は、そのキリエの言葉を受け入れた。
話し合いが終わった俺たちは、早速拡大される領地へ向かうことにしたのだった。これで少しでも獣人たちの問題が解決するといいんだけどな。
急な話だった事もあって、先触れも無し。俺たちの到着に獣人たちは慌てふためいていた。
「ら、ライネス様のところに案内致します」
怯えながら集落を守る門番が反応している。
要望書を出したのはつい先日の事だ。これほどまで早く反応があるとは思っていなかったのだろう。
「急な訪問で悪いな。でも、できるだけ早い方がいいだろうと急いできたんだ。案内を頼むよ」
「はっ!」
俺が苦笑いを浮かべて事情を説明すると、門番は背筋を伸ばして大きな声で返事をしていた。
俺たちは門番の案内でライネスの屋敷へとやって来た。
そして、中へ入るとライネスは立ち上がって俺たちを出迎えてくれた。
「これは魔王様。今日はどうなさったのでしょうか」
「要望書が届いたのでね、早速対応にあたりに来ただけだ」
ライネスの質問に答える俺。ひとまずは要求に素早く対応した事で、相手からの好感度を上げておくわけだ。
「それにしても、ずいぶんとたくさんの要望を送ってくれたようだな。俺とピエラの二人で手分けして全部読ませてもらったよ」
「おお、それはありがたい限りです。それで、どれどれ対応頂けるのでしょうか」
ライネスは口元を緩めながら話し掛けてくる。言葉からするに、最初から全部を聞いてもらえるとは思っていなかったようだ。まったく大した策士だな。
俺はライネスの反応を見ながら答える。
「俺たちが下した判断では2つだけだな」
「2つ……。たったのそれだけでございますか」
ライネスは周りの不安を煽るためか、ずいぶんと大げさに反応している。
だが、こちらとしてそれを予想していなかったわけではない。なんといっても参謀たるキリエが居るのだ。そんな反応は予想の範疇だった。
「あんなにたくさん要望が送られてきたからな。2つ実現させられるだけでも感謝してもらいたいものだ」
俺は腕を組んで椅子にもたれ掛かりながら喋る。
「まったくですよ、ライネス殿。魔王様たちに確認したところ、100を超える要望を出されたようですね。お二方はそのすべて目を通されたのです」
それに続くようにして、キリエは厳しい視線をライネスに向けていた。
「おかげで思うように休めませんでしたよ。魔王城に向かう間からずっと目を通しっぱなしで、思わず肩が凝りましたね」
ピエラも遠慮なく続いていた。
「内容ですが、セイの手を煩わせるほどのものではありませんでした。魔王様へと仰るから持っていきましたけれどね」
ピエラは険しい表情で苦言を呈していた。
「というわけだ。だからこそ、俺の裁量が本当に必要な2つだけを対応しに来たというわけだ」
前のめりになりながら、俺ははっきりとライネスに伝える。同時に、暗にあれこれ俺を頼るんじゃねえというメッセージを含ませていた。
俺の言葉を聞いたライネスは少し考え込んでいた。おそらくは俺の言葉の裏に隠したメッセージ気が付いたのだろう。
「では、その2つというのをお聞かせ願いますでしょうか」
分かりやすいくらい態度が変わる。なので、俺はその問い掛けに答えることにした。
「ひとつは領地の件だ。確かに、ここに住む獣人の数からして手狭になっている事は感じていたからな。空白地帯のうち、ここに接している部分を新たに獣人たちに与えることにした」
「おお、それは助かります。どのくらいの広さなのですか?」
ものすごい食いつきようのライネス。だが、ここではあえてすぐには明かさなかった。
「それは、ピエラから聞いてくれ。ここにいるウネも手伝ってすぐに開拓はするから、おおよその範囲はそこで分かるだろうがな」
「おお、ドライアド族ですか。これは頼もしいですな」
どうやらライネスはドライアド族を知っていたようだ。ウネは褒められて嬉しそうに胸を張っている。
「もう一つは獣人たちの雇用の件だ。今の俺と同族だからといって優遇するわけじゃないが、魔王城での採用枠を少しばかり他の種族と差の無いようにしようと思う」
「おお、ありがとうございます」
俺の話を聞いて、ライネスは感激のあまり頭を下げていた。
だが、話はこれで終わりではない。俺はまだ言葉を続ける。
「他の要望も却下にはしたが、対応しないというわけじゃない」
「と、申されますと?」
顔を上げるライネス。
「この獣人たちの集落を共に治めることになるピエラと一緒に、自分たちでやってくれってことだ。分かったか?」
「なんと! 魔王様は我々に自治を認めて下さると仰るのですか」
俺が説明を終えると、ライネスは立ち上がって叫んでいた。そこまで反応する事なのだろうかと、俺はちょっとばかり面食らっていた。
俺はキリエに説明を求めたが、ここでは答えてくれなかった。
「とりあえず、さっさと開拓を始めてしまいましょう。説明はその時にでも行います」
キリエは淡々と話している。まあ、さっさと済ましてしまいたいと思った俺は、そのキリエの言葉を受け入れた。
話し合いが終わった俺たちは、早速拡大される領地へ向かうことにしたのだった。これで少しでも獣人たちの問題が解決するといいんだけどな。
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