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第94話 遺跡の違和感
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翌日、兵士たちが遺跡の中を調査しているために、ステラたちはこの日も足止めを食らっていた。
仕方がないので、安全が確保されている地上部分を見て回ることになる。
ほとんどが焼け落ちてしまっていて、最も高いところでも地上3階までしかない。そのために詳細を探ろうにもかなり厳しい状態となっていた。
「ううむ、城というのならもっと大きかっただろうにな。ましてやエルミタージュの城であるならかなり大きかっただろうに」
崩れ去った城を見ながら、アンペラトリスが哀愁たっぷりに呟いている。
ただ、この石造りの建物がエルミタージュの城であった確証はないのだが、アンペラトリスの中ではなぜかそう思えているのだ。
「残っている部分は特に保護もない状態であったため、我々の魔法隊がしっかりと強化をしております。飛び跳ねて頂いても崩れることはございません」
「ささっ、ご案内致しますので、こちらへどうぞ」
兵士たちはアンペラトリスとステラを案内し始める。
石畳の建物を歩いていると、ステラにも不思議な感覚が宿り始める。それこそアンペラトリスと同じように、ここが城であったかのような感覚が体を包み始めていた。
ただ、500年という時間を経てしまったがために、ここがエルミタージュの城だったという確証は、ステラの中にもない。あくまでもそうだったのではないかという憶測なのである。
兵士の案内で階段を上っていく。
すると、ステラの中にはますます不思議な感覚が強まっていく。
(何でしょうか。とても懐かしい感じがします)
確証はどこにもないのに、ますますそんな気持ちだけが膨らんでいくために、ステラの困惑も強まっていく。
石造りの建物をひと通り見終わったものの、これといってここが何かということを具体的に示すものは何も残っていなかった。残っていても完全に高熱のあまりに変形してしまった金属類ばかりで、原形をとどめていないのだ。
結局、ステラもアンペラトリスも、何も分からないまま探索を終えることとなってしまった。
昼食を済ませると、ステラたちのところに兵士たちが駆け寄ってくる。
そして、アンペラトリスに向かって敬礼をしていた。
「ご報告申し上げます」
「なんだ、申してみよ」
「はっ、例の地下空間の調査が終わり、安全が確認されました。陛下の命令があれば、ご案内する手はずが整っております」
どうやら、先日発見された地下空間へ入るための準備が整ったようだった。それを聞いて、アンペラトリスは不敵に笑っている。
「そうか。ならば昼からはそちらに向かうことにしよう。案内を頼むぞ」
「承知致しました。陛下並びにステラ嬢の身の安全はしかと守らせて頂きます」
アンペラトリスの返事に、兵士はびしっと背筋を伸ばしていた。
食事が終わると、早速先程の地下空間の入口へと向かう。とはいえ、天井部分が崩落して露出している状態なので、縄ばしごを下ろして一人ずつ進入するという形になる。
最初に二人ほど兵士が下へと降りて、安全を再確認する。それを待ってステラたちも降りていく。上には二人ほど見張りが残る。
地下の空間も、周囲は石造りとなっている。地上部分に比べれば損傷は少ないようだが、激しく火が回ったらしく、あちこちがすすで汚れていた。
「ふむ、隠し通路といったところだろうかな。先ほど見た地上部分よりもさらにしっかりとした造りになっているようだな」
構造を見たアンペラトリスは、そのような印象を抱いたようだった。
その後ろでは、ステラがなんだか落ち着かない様子になっている。アンペラトリスはこの異変に気が付いているのか、時折ステラに視線を向けている。
ところが、ステラの方はその視線にはまったく気が付いていなかった。別の事に意識が完全に奪われていたのだ。
(地上の探索をしていた時に比べて、はっきりと言っていいくらいに何かを感じます。一体これは何なのでしょうか……)
ステラは不思議な感覚に包まれており、そのためにまったく落ち着かなくなっていたのである。何が一体ステラを狂わせるのだろうか。
「待て」
しばらく進んでいると、突然アンペラトリスが全員を制止する。
「どうなさいましたか、陛下」
あまりに突然だったために、兵士が疑問に思って声を掛けている。
「何か感じぬか?」
「いえ、何も……」
違和感に眼光鋭くなるアンペラトリスだが、兵士たちは何も感じていない。
ところが、アンペラトリスと同じ状態に陥っている人物がいた。
いわずもがな、ステラである。
懐かしいような怖いような、なんともいえない感情が入り混じり、ステラの顔色が優れない。その様子に気が付いたアンペラトリスだが、そのアンペラトリスも同じように複雑な感情を抱いていた。
さすがに二人揃ってこんな状態では、兵士たちは困惑してしまう。
「陛下、一度戻られますか?」
「いや、このまま続けよう。この違和感の正体が知りたいのだ」
心配そうに声を掛ける兵士に、アンペラトリスは強行を指示する。
「さあ、行くぞ」
気をしっかり持って歩き始めるアンペラトリス。
その進む先には一体何が待っているというのだろうか。
仕方がないので、安全が確保されている地上部分を見て回ることになる。
ほとんどが焼け落ちてしまっていて、最も高いところでも地上3階までしかない。そのために詳細を探ろうにもかなり厳しい状態となっていた。
「ううむ、城というのならもっと大きかっただろうにな。ましてやエルミタージュの城であるならかなり大きかっただろうに」
崩れ去った城を見ながら、アンペラトリスが哀愁たっぷりに呟いている。
ただ、この石造りの建物がエルミタージュの城であった確証はないのだが、アンペラトリスの中ではなぜかそう思えているのだ。
「残っている部分は特に保護もない状態であったため、我々の魔法隊がしっかりと強化をしております。飛び跳ねて頂いても崩れることはございません」
「ささっ、ご案内致しますので、こちらへどうぞ」
兵士たちはアンペラトリスとステラを案内し始める。
石畳の建物を歩いていると、ステラにも不思議な感覚が宿り始める。それこそアンペラトリスと同じように、ここが城であったかのような感覚が体を包み始めていた。
ただ、500年という時間を経てしまったがために、ここがエルミタージュの城だったという確証は、ステラの中にもない。あくまでもそうだったのではないかという憶測なのである。
兵士の案内で階段を上っていく。
すると、ステラの中にはますます不思議な感覚が強まっていく。
(何でしょうか。とても懐かしい感じがします)
確証はどこにもないのに、ますますそんな気持ちだけが膨らんでいくために、ステラの困惑も強まっていく。
石造りの建物をひと通り見終わったものの、これといってここが何かということを具体的に示すものは何も残っていなかった。残っていても完全に高熱のあまりに変形してしまった金属類ばかりで、原形をとどめていないのだ。
結局、ステラもアンペラトリスも、何も分からないまま探索を終えることとなってしまった。
昼食を済ませると、ステラたちのところに兵士たちが駆け寄ってくる。
そして、アンペラトリスに向かって敬礼をしていた。
「ご報告申し上げます」
「なんだ、申してみよ」
「はっ、例の地下空間の調査が終わり、安全が確認されました。陛下の命令があれば、ご案内する手はずが整っております」
どうやら、先日発見された地下空間へ入るための準備が整ったようだった。それを聞いて、アンペラトリスは不敵に笑っている。
「そうか。ならば昼からはそちらに向かうことにしよう。案内を頼むぞ」
「承知致しました。陛下並びにステラ嬢の身の安全はしかと守らせて頂きます」
アンペラトリスの返事に、兵士はびしっと背筋を伸ばしていた。
食事が終わると、早速先程の地下空間の入口へと向かう。とはいえ、天井部分が崩落して露出している状態なので、縄ばしごを下ろして一人ずつ進入するという形になる。
最初に二人ほど兵士が下へと降りて、安全を再確認する。それを待ってステラたちも降りていく。上には二人ほど見張りが残る。
地下の空間も、周囲は石造りとなっている。地上部分に比べれば損傷は少ないようだが、激しく火が回ったらしく、あちこちがすすで汚れていた。
「ふむ、隠し通路といったところだろうかな。先ほど見た地上部分よりもさらにしっかりとした造りになっているようだな」
構造を見たアンペラトリスは、そのような印象を抱いたようだった。
その後ろでは、ステラがなんだか落ち着かない様子になっている。アンペラトリスはこの異変に気が付いているのか、時折ステラに視線を向けている。
ところが、ステラの方はその視線にはまったく気が付いていなかった。別の事に意識が完全に奪われていたのだ。
(地上の探索をしていた時に比べて、はっきりと言っていいくらいに何かを感じます。一体これは何なのでしょうか……)
ステラは不思議な感覚に包まれており、そのためにまったく落ち着かなくなっていたのである。何が一体ステラを狂わせるのだろうか。
「待て」
しばらく進んでいると、突然アンペラトリスが全員を制止する。
「どうなさいましたか、陛下」
あまりに突然だったために、兵士が疑問に思って声を掛けている。
「何か感じぬか?」
「いえ、何も……」
違和感に眼光鋭くなるアンペラトリスだが、兵士たちは何も感じていない。
ところが、アンペラトリスと同じ状態に陥っている人物がいた。
いわずもがな、ステラである。
懐かしいような怖いような、なんともいえない感情が入り混じり、ステラの顔色が優れない。その様子に気が付いたアンペラトリスだが、そのアンペラトリスも同じように複雑な感情を抱いていた。
さすがに二人揃ってこんな状態では、兵士たちは困惑してしまう。
「陛下、一度戻られますか?」
「いや、このまま続けよう。この違和感の正体が知りたいのだ」
心配そうに声を掛ける兵士に、アンペラトリスは強行を指示する。
「さあ、行くぞ」
気をしっかり持って歩き始めるアンペラトリス。
その進む先には一体何が待っているというのだろうか。
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