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第60話 ベルオムのお使い
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ベルオムに言われてお使いに出向くステラ。一人ではあるものの、さすがに前回の事もあるのでスムーズに国境を通り抜けていく。
ベルオムに持たされたのは一通の手紙。これを持ってパント連国のタクティクへと出向いている最中である。
(何なんですかね、あの人は。中身は絶対見るなと言い聞かせてきますし、何をやらされているのか気になってしまうではありませんか)
詳しい事情をまったく聞かされないまま向かうステラは、不満しか持っていなかった。
師匠と弟子という立場を利用して、うまく使われているようである。長らく世話になった上に、双剣や魔法の師匠である以上、ベルオムには頭が上がらないステラなのだった。
ひとまずは普通に徒歩でタクティクへと向かうステラである。
ボワ王国からリヴィエール王国を経由し、高台にある国パント連国へと向かっていく。
さすがに一度通った道なので迷うことはない。ステラのお使いは順調だった。
ただ、マントを羽織り、仮面を着けて歩く少女の姿は目立つために、すれ違う人たちからはちらちらと視線を向けられていた。とはいえ、いつものことなのでステラもあまり気にしていなかった。
(さすがに目立ちますよね。とはいえ、どこを気にして見ているのやら……)
視線の向け方、逸らし方がまちまちなので、どうでもいい事が気になってしまうステラである。
なんだかんだといううちに、パント連国へと再び入るステラ。
ここからは山を登っていけば、そのうちタクティクへと到着する。
不死者たる特徴を活かしながらここまでやって来たステラ。通常よりも何日も短縮して到着しているのである。
両親から掛けられた呪いのような祝福ではあるものの、ステラはそれをうまく利用していたのだ。
(こんな生活をしていたら、万一元に戻った時にやらかしそうで怖いですね……)
パント連国の入口であるオーベルジュの街で宿泊するステラは、そんな事を考えていた。
実際これまでも、休まずにすむ事を利用して強行軍をしてみたり、蘇生することを前提として戦ったりというのを何度かやらかしていたのだ。
普通の人間なら休憩を入れなければいけないし、死ねばそこで終わりなのだ。ここ最近でそれを思い出したステラなのである。
ベルオムにお使いを頼まれてイラついたとはいえど、今は素直に反省しているのであった。
オーベルジュを発ち、あっという間にタクティクに到着したステラは、ベルオムに言われた通りに商業組合へとやって来る。そこで思わぬ再会をする事となった。
「おや、ステラさんではありませんかな」
商業組合で、思わず声を掛けられてしまうステラ。反応して振り返ると、そこにはコメルスとトレルの親子が立っていた。
「えーっと確か……」
「はははっ、無理に思い出そうとしなくてもよろしいですよ。コメルスでございます。それで、こちらは娘のトレルでございます」
コメルスが改めて自己紹介をしながら頭を下げてくる。
「本当に先日はお世話になりました。あれからというもの、私たちの商売は順調というものですよ」
「そうですか。それはよかったですね」
コメルスがにこやかに話してくるものだから、ステラもにこやかにしながら返しておく。
「それよりもどうされたのですか? コリーヌ帝国に向かわれたはずでは?」
「その件はもう終わりました。今回は別件で来ております」
コメルスの質問にすらすらと答えるステラである。
ステラの答えに思わず驚いてしまうコメルスとトレルである。
「では、一体どのような用事なのですかな?」
「ええっとですね。師匠であるベルオムさんのお使いで組合に手紙を届けに来たんですよ」
「手紙ですか?」
コメルスが疑うような態度を見せるので、ステラは鞄から1通の手紙を取り出した。
「これをタクティクの商業組合に持っていくように言われたんです。コメルスさん宛てではありませんので、お見せできませんのでご了承下さい」
ステラは頭を下げて謝罪していた。
さすがのコメルスもそこまで物分かりの悪い人物ではないので、ステラの話に納得していたようだった。
「では、立ち会うことは構いませんかね。私もちょうど用事があって来たところですし」
「それは構いませんね。組合に持っていけばいいと言われただけで、誰に見せろとは言われていませんから」
ベルオムからの伝言を逆手に取るステラである。指定されていないのなら組合の中でなら誰でも見せていいと、そう判断したのである。
そんなわけで、コメルスとトレルと一緒に組合長の部屋へと向かうステラ。
「おお、コメルスか。うん? そっちの嬢ちゃんは誰だ?」
組合長室にいた男性から声を掛けられる。当然ながら容姿の怪しいステラは、ものすごく怪訝な表情を向けられている。
「こちらの仮面の少女はステラさんです。以前、道中で助けられた恩人ですよ」
「おお、そうか。ならば安心しても大丈夫だな。仮面を取れとか言わないから安心してくれ」
男性は笑いながらそんな事を言い放っていた。怪しければ取れって言ったというわけだ。
「とりあえず座ってくれ。名前とかはそれからだな」
男性が取り仕切り、ステラたちはとりあえず机を囲んで座ったのだった。
ベルオムに持たされたのは一通の手紙。これを持ってパント連国のタクティクへと出向いている最中である。
(何なんですかね、あの人は。中身は絶対見るなと言い聞かせてきますし、何をやらされているのか気になってしまうではありませんか)
詳しい事情をまったく聞かされないまま向かうステラは、不満しか持っていなかった。
師匠と弟子という立場を利用して、うまく使われているようである。長らく世話になった上に、双剣や魔法の師匠である以上、ベルオムには頭が上がらないステラなのだった。
ひとまずは普通に徒歩でタクティクへと向かうステラである。
ボワ王国からリヴィエール王国を経由し、高台にある国パント連国へと向かっていく。
さすがに一度通った道なので迷うことはない。ステラのお使いは順調だった。
ただ、マントを羽織り、仮面を着けて歩く少女の姿は目立つために、すれ違う人たちからはちらちらと視線を向けられていた。とはいえ、いつものことなのでステラもあまり気にしていなかった。
(さすがに目立ちますよね。とはいえ、どこを気にして見ているのやら……)
視線の向け方、逸らし方がまちまちなので、どうでもいい事が気になってしまうステラである。
なんだかんだといううちに、パント連国へと再び入るステラ。
ここからは山を登っていけば、そのうちタクティクへと到着する。
不死者たる特徴を活かしながらここまでやって来たステラ。通常よりも何日も短縮して到着しているのである。
両親から掛けられた呪いのような祝福ではあるものの、ステラはそれをうまく利用していたのだ。
(こんな生活をしていたら、万一元に戻った時にやらかしそうで怖いですね……)
パント連国の入口であるオーベルジュの街で宿泊するステラは、そんな事を考えていた。
実際これまでも、休まずにすむ事を利用して強行軍をしてみたり、蘇生することを前提として戦ったりというのを何度かやらかしていたのだ。
普通の人間なら休憩を入れなければいけないし、死ねばそこで終わりなのだ。ここ最近でそれを思い出したステラなのである。
ベルオムにお使いを頼まれてイラついたとはいえど、今は素直に反省しているのであった。
オーベルジュを発ち、あっという間にタクティクに到着したステラは、ベルオムに言われた通りに商業組合へとやって来る。そこで思わぬ再会をする事となった。
「おや、ステラさんではありませんかな」
商業組合で、思わず声を掛けられてしまうステラ。反応して振り返ると、そこにはコメルスとトレルの親子が立っていた。
「えーっと確か……」
「はははっ、無理に思い出そうとしなくてもよろしいですよ。コメルスでございます。それで、こちらは娘のトレルでございます」
コメルスが改めて自己紹介をしながら頭を下げてくる。
「本当に先日はお世話になりました。あれからというもの、私たちの商売は順調というものですよ」
「そうですか。それはよかったですね」
コメルスがにこやかに話してくるものだから、ステラもにこやかにしながら返しておく。
「それよりもどうされたのですか? コリーヌ帝国に向かわれたはずでは?」
「その件はもう終わりました。今回は別件で来ております」
コメルスの質問にすらすらと答えるステラである。
ステラの答えに思わず驚いてしまうコメルスとトレルである。
「では、一体どのような用事なのですかな?」
「ええっとですね。師匠であるベルオムさんのお使いで組合に手紙を届けに来たんですよ」
「手紙ですか?」
コメルスが疑うような態度を見せるので、ステラは鞄から1通の手紙を取り出した。
「これをタクティクの商業組合に持っていくように言われたんです。コメルスさん宛てではありませんので、お見せできませんのでご了承下さい」
ステラは頭を下げて謝罪していた。
さすがのコメルスもそこまで物分かりの悪い人物ではないので、ステラの話に納得していたようだった。
「では、立ち会うことは構いませんかね。私もちょうど用事があって来たところですし」
「それは構いませんね。組合に持っていけばいいと言われただけで、誰に見せろとは言われていませんから」
ベルオムからの伝言を逆手に取るステラである。指定されていないのなら組合の中でなら誰でも見せていいと、そう判断したのである。
そんなわけで、コメルスとトレルと一緒に組合長の部屋へと向かうステラ。
「おお、コメルスか。うん? そっちの嬢ちゃんは誰だ?」
組合長室にいた男性から声を掛けられる。当然ながら容姿の怪しいステラは、ものすごく怪訝な表情を向けられている。
「こちらの仮面の少女はステラさんです。以前、道中で助けられた恩人ですよ」
「おお、そうか。ならば安心しても大丈夫だな。仮面を取れとか言わないから安心してくれ」
男性は笑いながらそんな事を言い放っていた。怪しければ取れって言ったというわけだ。
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