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第55話 地上に戻って
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ステラたちが地下で話をしている頃、外で一人待ちぼうけるベルオムはというと……。
「うーむ、トカゲたちは近付こうとしなければ何もしないのか。しかし、一体どうしたものだろうかな」
遺跡を取り囲むようにしながら、ベルオムをじっと監視し続けるトカゲたち。すっかりこう着状態に陥ってしまっていたのだ。
どうしたものかと悩んでいると、そこに思わぬ来訪者がやって来た。
「おーい、大丈夫かーい?」
(この声はさっきの冒険者たちか)
声に気が付いたベルオム。その時だった。
「ゲ、ゲゲゲ!」
石碑の周りで待機していたトカゲたちが動き始めたのだった。
(まずい、このままでは冒険者たちが襲われるな)
ベルオムも同時に動き始める。そして、冒険者たちへと呼び掛けた。
「来てはならない。すぐにここを離れるんだ!」
「えっ?!」
ベルオムの声に驚く冒険者たち。それと同時にトカゲたちが冒険者たちに襲い掛かる。
「戦うな。ここを離れればそいつらは攻撃をやめる。おとなしく離れるんだ」
「わ、分かった」
ベルオムに呼び掛けに、冒険者たちは素直に応じている。表情を見る限り、さっきもかなり苦戦したのだろう。もう戦いたくないというのがじわじわと伝わってくる表情だった。
見た目は大きいだけのトカゲなのだが、さすがにここを守護するように言われて育ってきただけあって、その執念たるはすさまじいものだったのだ。その執念が、冒険者たちを退けているのである。
「さて、どうにかさっきの冒険者たちを追い払ったわけだし、私はステラたちが戻ってくるまで休ませてもらおうかね」
ベルオムはトカゲがじっと見つめてくる間、石碑から少し離れた場所で腰を下ろしてステラたちを待ったのだった。
冒険者たちを追い払ってからしばらく待っていると、目の前の石碑が音を立ててずれていく。
その石碑のあった場所を眺めていると、中からステラとリューンの二人が姿を見せたのだった。
「おお、戻ってきたか」
思わず立ってステラたちに駆け寄ろうとするベルオムだったが、すぐさまトカゲたちが立ちふさがった。
「っと、忘れていたね。それにしても、実に機敏な動きだ」
トカゲたちの素早い動きに、立ち止まったベルオムは苦笑するしかなかった。
そんなわけで、どうしても石碑に近付けないベルオムは、ステラたちが自分のところにやって来るのをひたすら待つしかなかった。
無事にステラたちが地上に出て石碑から離れると、石碑はゴゴゴと音を立てながら元の位置へと戻っていった。
それを確認したステラは、スカートやマントを叩いて埃を落とす。そして、ベルオムの方へと視線を向けた。
「ただいま戻りました、師匠」
「うむ、待ちくたびれたぞ」
ベルオムの反応を聞いて、ステラはリューンの手を引いてベルオムのところまで駆けよった。
「どうだったかな、中の様子は」
「実に興味深かったですよ。ですが、ここでお話するのはやめておきます」
「ステラさん?」
ベルオムの質問に対するステラの答えに、思わず疑問を感じるリューンである。
「無関係ない人が近くに居ますからね。さすがにこの話を誰かに聞かれるわけにはいきませんよ」
「なるほどな。大体中の様子は分かった。となると、どこか建物の中で人払いの魔法でも使った状態で話すのがいいか」
さすがはステラの師匠であるベルオムである。具体的に何を言ったわけでもないが、事情はあらかた察したようである。
「周りの気配にも気が付いているとはな。先程私に声を掛けてきた、トカゲと戦っていた冒険者たちがまだ近くに居るようだから、実に賢明な判断だよ」
「ええ?! あの人たちが近くに居るんですか?」
リューンが驚いている。
「うむ、どうにかトカゲとの戦いを終わらせて、私たちの後を追ってきたようだよ。まったく、冒険者というのは好奇心が旺盛だな」
ベルオムは感心しているようだが、その表情はどちらかといえば呆れている。
「好奇心が旺盛というのはいいのだが、時にその身を滅ぼしかねないというのを彼らも知るべきだな。私たちエルフも……いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」
ベルオムは何かを言いかけて口をつぐんだ。ステラもリューンも思わずどうしたのだろうかとベルオムを見ていた。
どうやら、ベルオムにも言えない事情というものがあるようだった。自分の方も秘密にしている事が多いので、あえてそれには踏み込まないステラである。
「さて、ちょうど日も暮れてきましたので、一度戻りましょうか?」
「ええ、そうした方がいいかと思います。周りが信用できないとはいえ、まだ拠点の方が安全でしょうから」
ステラとベルオムの判断に、リューンもおとなしく従う。
何かといろいろあった1日ではあったものの、ひとまずディス遺跡の拠点へと戻るステラたちである。
その途中、ベルオムに迫ってきた冒険者たちに会うかと警戒はしていたのだが、何人かの別の冒険者とすれ違うだけで接触することはなかった。
そして、この日の探索内容を拠点で報告したステラたちは、疲れを癒すために拠点で休んだのだった。グランの語った内容を胸に抱きながら。
「うーむ、トカゲたちは近付こうとしなければ何もしないのか。しかし、一体どうしたものだろうかな」
遺跡を取り囲むようにしながら、ベルオムをじっと監視し続けるトカゲたち。すっかりこう着状態に陥ってしまっていたのだ。
どうしたものかと悩んでいると、そこに思わぬ来訪者がやって来た。
「おーい、大丈夫かーい?」
(この声はさっきの冒険者たちか)
声に気が付いたベルオム。その時だった。
「ゲ、ゲゲゲ!」
石碑の周りで待機していたトカゲたちが動き始めたのだった。
(まずい、このままでは冒険者たちが襲われるな)
ベルオムも同時に動き始める。そして、冒険者たちへと呼び掛けた。
「来てはならない。すぐにここを離れるんだ!」
「えっ?!」
ベルオムの声に驚く冒険者たち。それと同時にトカゲたちが冒険者たちに襲い掛かる。
「戦うな。ここを離れればそいつらは攻撃をやめる。おとなしく離れるんだ」
「わ、分かった」
ベルオムに呼び掛けに、冒険者たちは素直に応じている。表情を見る限り、さっきもかなり苦戦したのだろう。もう戦いたくないというのがじわじわと伝わってくる表情だった。
見た目は大きいだけのトカゲなのだが、さすがにここを守護するように言われて育ってきただけあって、その執念たるはすさまじいものだったのだ。その執念が、冒険者たちを退けているのである。
「さて、どうにかさっきの冒険者たちを追い払ったわけだし、私はステラたちが戻ってくるまで休ませてもらおうかね」
ベルオムはトカゲがじっと見つめてくる間、石碑から少し離れた場所で腰を下ろしてステラたちを待ったのだった。
冒険者たちを追い払ってからしばらく待っていると、目の前の石碑が音を立ててずれていく。
その石碑のあった場所を眺めていると、中からステラとリューンの二人が姿を見せたのだった。
「おお、戻ってきたか」
思わず立ってステラたちに駆け寄ろうとするベルオムだったが、すぐさまトカゲたちが立ちふさがった。
「っと、忘れていたね。それにしても、実に機敏な動きだ」
トカゲたちの素早い動きに、立ち止まったベルオムは苦笑するしかなかった。
そんなわけで、どうしても石碑に近付けないベルオムは、ステラたちが自分のところにやって来るのをひたすら待つしかなかった。
無事にステラたちが地上に出て石碑から離れると、石碑はゴゴゴと音を立てながら元の位置へと戻っていった。
それを確認したステラは、スカートやマントを叩いて埃を落とす。そして、ベルオムの方へと視線を向けた。
「ただいま戻りました、師匠」
「うむ、待ちくたびれたぞ」
ベルオムの反応を聞いて、ステラはリューンの手を引いてベルオムのところまで駆けよった。
「どうだったかな、中の様子は」
「実に興味深かったですよ。ですが、ここでお話するのはやめておきます」
「ステラさん?」
ベルオムの質問に対するステラの答えに、思わず疑問を感じるリューンである。
「無関係ない人が近くに居ますからね。さすがにこの話を誰かに聞かれるわけにはいきませんよ」
「なるほどな。大体中の様子は分かった。となると、どこか建物の中で人払いの魔法でも使った状態で話すのがいいか」
さすがはステラの師匠であるベルオムである。具体的に何を言ったわけでもないが、事情はあらかた察したようである。
「周りの気配にも気が付いているとはな。先程私に声を掛けてきた、トカゲと戦っていた冒険者たちがまだ近くに居るようだから、実に賢明な判断だよ」
「ええ?! あの人たちが近くに居るんですか?」
リューンが驚いている。
「うむ、どうにかトカゲとの戦いを終わらせて、私たちの後を追ってきたようだよ。まったく、冒険者というのは好奇心が旺盛だな」
ベルオムは感心しているようだが、その表情はどちらかといえば呆れている。
「好奇心が旺盛というのはいいのだが、時にその身を滅ぼしかねないというのを彼らも知るべきだな。私たちエルフも……いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」
ベルオムは何かを言いかけて口をつぐんだ。ステラもリューンも思わずどうしたのだろうかとベルオムを見ていた。
どうやら、ベルオムにも言えない事情というものがあるようだった。自分の方も秘密にしている事が多いので、あえてそれには踏み込まないステラである。
「さて、ちょうど日も暮れてきましたので、一度戻りましょうか?」
「ええ、そうした方がいいかと思います。周りが信用できないとはいえ、まだ拠点の方が安全でしょうから」
ステラとベルオムの判断に、リューンもおとなしく従う。
何かといろいろあった1日ではあったものの、ひとまずディス遺跡の拠点へと戻るステラたちである。
その途中、ベルオムに迫ってきた冒険者たちに会うかと警戒はしていたのだが、何人かの別の冒険者とすれ違うだけで接触することはなかった。
そして、この日の探索内容を拠点で報告したステラたちは、疲れを癒すために拠点で休んだのだった。グランの語った内容を胸に抱きながら。
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