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第51話 謎の地下空間
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光が収まったかと思うと、紋章の刻まれた石碑のようなものが動き出す。
そこにあったのは円形の穴。そこには垂直に降りるための梯子が取り付けられていた。
「地下に降りられるようになっているようですね。ここへ入れというのですか?」
「ゲ、ゲゲ、ゲ」
何を言っているのかは相変わらずさっぱりではあるが、頭の動きからして「そうだ」といっているようだ。
ステラとリューンは顔を見合わせたのち、ステラがベルオムの方へと顔を向ける。
「師匠、私たちは潜ってきます。しばらくそのまま待っていて下さい」
「分かった。私も行きたいところだが、どうやらこのトカゲがそれを許可してくれないようだ」
「ゲゲ、ゲ」
ベルオムが返事をしてトカゲを見ると、ギロリと睨み返されてしまった。ただ、近付くなという素振りを見せるだけで襲い掛かってくるような様子はない。しかし、やむを得ないのでベルオムはそのままその場で待機するしかなかったのだ。
動けないベルオムが見守る中、ステラが下となって縦穴の中へと降りていく。下の方は真っ暗であり、一体何があるのかも分からない。そのためにステラが先に降りていったのだ。不死状態であるステラなら、何かがあってもリューンを庇えるのである。
どのくらい穴の中を降りただろうか。
ようやく床が見えてきた。外から隔絶されていたとあって、思ったより深い場所にあったようだ。
「あたっ」
最後には腕が痺れたせいか、リューンが落っこちて尻餅をついていた。そのくらいには深さがあったのだ。
「大丈夫ですか、リューン」
「は、はい。大丈夫です」
ステラが手を伸ばすが、リューンは腕が痺れてその手を取れなかった。
仕方ないので、そのまま少し休憩をするステラ。辺りが真っ暗なので、光をともす魔法を使う。
すると、そこには明らかに異様な光景が広がっていた。
「……これは驚きましたね。周りは……石でしょうか。つるつるとした壁面ですね」
そう、これまでに見てきた建造物とは明らかに違った内装をしているのだ。
床も壁も天井もつるつるするほどにきれいに磨かれており、でこぼこが存在しないのだ。それでありながらも、床は滑るような状態にはなっておらず、しっかりと踏み込める。
これは、ステラがまだエルミタージュ王城で暮らしていた頃も含めても、見た事のないものだった。
(こんなものを作れる技術を持った者が存在していたのですか……。一体どこの誰がこのようなものを作ったのでしょうか)
ステラは訝しんで首を傾げていた。
今現在のエルミタージュ大陸のどこと見比べても違和感しかない場所に、ある種の恐怖を感じるステラだった。
しばらく休んでいると、リューンの腕も回復してきたようだ。なので、改めて中を進んでいくことにする。
歩いていると、今居る場所は一本道のようで迷いようがない感じだ。念のために罠も警戒しながら進んでいくものの、それらしい反応もなかった。
「一体、ここは何なのでしょうかね。エルミタージュ王家を示す紋章が刻まれているところを見ると、私に関係した場所なのでしょうが……」
ステラは顎に手を当てながら考え込んでいる。
ところが、進んでいた二人は行き止まりにぶつかってしまう。
ここまでに脇道があったような様子もない。ただ、目の前の壁には不自然な切れ目らしきものが見当たるので、おそらく入口がここにあるのだろう。
「リューン、この辺りを見て下さい」
「えっと、分かりました」
ステラに言われて、壁に近付いていくリューン。すると、リューンもその切れ目に気が付いたようだ。
「これは、ここに入口があるという事なのでしょうかね」
「おそらくはそうでしょう。ただ、開け方は分かりませんけれどね」
「えぇ……」
どうやら、二人揃って開け方が分からないらしい。
「ですが、おそらくはエルミタージュ王国に関する何かで開くはずです。まずは石碑と同じように紋章をかざしてみましょう」
「分かりました」
ステラとリューンがそれぞれの武器に施された紋章を掲げてみる。
ところが、ここでは何も起こらなかった。
「困りましたね……」
顎に手を添えるステラ。すると、
「ヌフ遺跡の時と同じで、ステラさんの何かが必要なのでしょうかね」
リューンが思わぬ事を呟いた。それを聞いたステラは、思わず手を打っていた。
「なるほど。でも、これだけ近付いても何もないという事は、魔力というわけではなさそうです。ならば……」
ステラは思い当たるものがあったのか、仮面を脱いでいた。
そう、顔認証というわけだ。
『……一致しません』
するとどうした事だろうか。ヌフ遺跡と同じような声が響いてきたのだ。
だが、この声が聞こえてきたという事は、リューンの指摘は正解だったという事である。
「となると、この体に掛けた変装魔法を解くしかないでしょうかね」
「へ、変装?」
ステラの言葉に驚くリューンである。
「言いましたでしょう? 私はステラリア・エルミタージュと知られるわけにはいかないのです。そのために、正体を隠すためのいろいろな手段を取ったのですよ。変装魔法もその一つです」
にこりと笑って答えたステラは、自分に対して魔法を使う。
次の瞬間、ステラの姿にみるみると変化が現れたのだった。
そこにあったのは円形の穴。そこには垂直に降りるための梯子が取り付けられていた。
「地下に降りられるようになっているようですね。ここへ入れというのですか?」
「ゲ、ゲゲ、ゲ」
何を言っているのかは相変わらずさっぱりではあるが、頭の動きからして「そうだ」といっているようだ。
ステラとリューンは顔を見合わせたのち、ステラがベルオムの方へと顔を向ける。
「師匠、私たちは潜ってきます。しばらくそのまま待っていて下さい」
「分かった。私も行きたいところだが、どうやらこのトカゲがそれを許可してくれないようだ」
「ゲゲ、ゲ」
ベルオムが返事をしてトカゲを見ると、ギロリと睨み返されてしまった。ただ、近付くなという素振りを見せるだけで襲い掛かってくるような様子はない。しかし、やむを得ないのでベルオムはそのままその場で待機するしかなかったのだ。
動けないベルオムが見守る中、ステラが下となって縦穴の中へと降りていく。下の方は真っ暗であり、一体何があるのかも分からない。そのためにステラが先に降りていったのだ。不死状態であるステラなら、何かがあってもリューンを庇えるのである。
どのくらい穴の中を降りただろうか。
ようやく床が見えてきた。外から隔絶されていたとあって、思ったより深い場所にあったようだ。
「あたっ」
最後には腕が痺れたせいか、リューンが落っこちて尻餅をついていた。そのくらいには深さがあったのだ。
「大丈夫ですか、リューン」
「は、はい。大丈夫です」
ステラが手を伸ばすが、リューンは腕が痺れてその手を取れなかった。
仕方ないので、そのまま少し休憩をするステラ。辺りが真っ暗なので、光をともす魔法を使う。
すると、そこには明らかに異様な光景が広がっていた。
「……これは驚きましたね。周りは……石でしょうか。つるつるとした壁面ですね」
そう、これまでに見てきた建造物とは明らかに違った内装をしているのだ。
床も壁も天井もつるつるするほどにきれいに磨かれており、でこぼこが存在しないのだ。それでありながらも、床は滑るような状態にはなっておらず、しっかりと踏み込める。
これは、ステラがまだエルミタージュ王城で暮らしていた頃も含めても、見た事のないものだった。
(こんなものを作れる技術を持った者が存在していたのですか……。一体どこの誰がこのようなものを作ったのでしょうか)
ステラは訝しんで首を傾げていた。
今現在のエルミタージュ大陸のどこと見比べても違和感しかない場所に、ある種の恐怖を感じるステラだった。
しばらく休んでいると、リューンの腕も回復してきたようだ。なので、改めて中を進んでいくことにする。
歩いていると、今居る場所は一本道のようで迷いようがない感じだ。念のために罠も警戒しながら進んでいくものの、それらしい反応もなかった。
「一体、ここは何なのでしょうかね。エルミタージュ王家を示す紋章が刻まれているところを見ると、私に関係した場所なのでしょうが……」
ステラは顎に手を当てながら考え込んでいる。
ところが、進んでいた二人は行き止まりにぶつかってしまう。
ここまでに脇道があったような様子もない。ただ、目の前の壁には不自然な切れ目らしきものが見当たるので、おそらく入口がここにあるのだろう。
「リューン、この辺りを見て下さい」
「えっと、分かりました」
ステラに言われて、壁に近付いていくリューン。すると、リューンもその切れ目に気が付いたようだ。
「これは、ここに入口があるという事なのでしょうかね」
「おそらくはそうでしょう。ただ、開け方は分かりませんけれどね」
「えぇ……」
どうやら、二人揃って開け方が分からないらしい。
「ですが、おそらくはエルミタージュ王国に関する何かで開くはずです。まずは石碑と同じように紋章をかざしてみましょう」
「分かりました」
ステラとリューンがそれぞれの武器に施された紋章を掲げてみる。
ところが、ここでは何も起こらなかった。
「困りましたね……」
顎に手を添えるステラ。すると、
「ヌフ遺跡の時と同じで、ステラさんの何かが必要なのでしょうかね」
リューンが思わぬ事を呟いた。それを聞いたステラは、思わず手を打っていた。
「なるほど。でも、これだけ近付いても何もないという事は、魔力というわけではなさそうです。ならば……」
ステラは思い当たるものがあったのか、仮面を脱いでいた。
そう、顔認証というわけだ。
『……一致しません』
するとどうした事だろうか。ヌフ遺跡と同じような声が響いてきたのだ。
だが、この声が聞こえてきたという事は、リューンの指摘は正解だったという事である。
「となると、この体に掛けた変装魔法を解くしかないでしょうかね」
「へ、変装?」
ステラの言葉に驚くリューンである。
「言いましたでしょう? 私はステラリア・エルミタージュと知られるわけにはいかないのです。そのために、正体を隠すためのいろいろな手段を取ったのですよ。変装魔法もその一つです」
にこりと笑って答えたステラは、自分に対して魔法を使う。
次の瞬間、ステラの姿にみるみると変化が現れたのだった。
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