不死の少女は王女様

未羊

文字の大きさ
上 下
51 / 92

第51話 謎の地下空間

しおりを挟む
 光が収まったかと思うと、紋章の刻まれた石碑のようなものが動き出す。
 そこにあったのは円形の穴。そこには垂直に降りるための梯子が取り付けられていた。

「地下に降りられるようになっているようですね。ここへ入れというのですか?」

「ゲ、ゲゲ、ゲ」

 何を言っているのかは相変わらずさっぱりではあるが、頭の動きからして「そうだ」といっているようだ。
 ステラとリューンは顔を見合わせたのち、ステラがベルオムの方へと顔を向ける。

「師匠、私たちは潜ってきます。しばらくそのまま待っていて下さい」

「分かった。私も行きたいところだが、どうやらこのトカゲがそれを許可してくれないようだ」

「ゲゲ、ゲ」

 ベルオムが返事をしてトカゲを見ると、ギロリと睨み返されてしまった。ただ、近付くなという素振りを見せるだけで襲い掛かってくるような様子はない。しかし、やむを得ないのでベルオムはそのままその場で待機するしかなかったのだ。
 動けないベルオムが見守る中、ステラが下となって縦穴の中へと降りていく。下の方は真っ暗であり、一体何があるのかも分からない。そのためにステラが先に降りていったのだ。不死状態であるステラなら、何かがあってもリューンを庇えるのである。

 どのくらい穴の中を降りただろうか。
 ようやく床が見えてきた。外から隔絶されていたとあって、思ったより深い場所にあったようだ。

「あたっ」

 最後には腕が痺れたせいか、リューンが落っこちて尻餅をついていた。そのくらいには深さがあったのだ。

「大丈夫ですか、リューン」

「は、はい。大丈夫です」

 ステラが手を伸ばすが、リューンは腕が痺れてその手を取れなかった。
 仕方ないので、そのまま少し休憩をするステラ。辺りが真っ暗なので、光をともす魔法を使う。
 すると、そこには明らかに異様な光景が広がっていた。

「……これは驚きましたね。周りは……石でしょうか。つるつるとした壁面ですね」

 そう、これまでに見てきた建造物とは明らかに違った内装をしているのだ。
 床も壁も天井もつるつるするほどにきれいに磨かれており、でこぼこが存在しないのだ。それでありながらも、床は滑るような状態にはなっておらず、しっかりと踏み込める。
 これは、ステラがまだエルミタージュ王城で暮らしていた頃も含めても、見た事のないものだった。

(こんなものを作れる技術を持った者が存在していたのですか……。一体どこの誰がこのようなものを作ったのでしょうか)

 ステラは訝しんで首を傾げていた。
 今現在のエルミタージュ大陸のどこと見比べても違和感しかない場所に、ある種の恐怖を感じるステラだった。
 しばらく休んでいると、リューンの腕も回復してきたようだ。なので、改めて中を進んでいくことにする。
 歩いていると、今居る場所は一本道のようで迷いようがない感じだ。念のために罠も警戒しながら進んでいくものの、それらしい反応もなかった。

「一体、ここは何なのでしょうかね。エルミタージュ王家を示す紋章が刻まれているところを見ると、私に関係した場所なのでしょうが……」

 ステラは顎に手を当てながら考え込んでいる。
 ところが、進んでいた二人は行き止まりにぶつかってしまう。
 ここまでに脇道があったような様子もない。ただ、目の前の壁には不自然な切れ目らしきものが見当たるので、おそらく入口がここにあるのだろう。

「リューン、この辺りを見て下さい」

「えっと、分かりました」

 ステラに言われて、壁に近付いていくリューン。すると、リューンもその切れ目に気が付いたようだ。

「これは、ここに入口があるという事なのでしょうかね」

「おそらくはそうでしょう。ただ、開け方は分かりませんけれどね」

「えぇ……」

 どうやら、二人揃って開け方が分からないらしい。

「ですが、おそらくはエルミタージュ王国に関する何かで開くはずです。まずは石碑と同じように紋章をかざしてみましょう」

「分かりました」

 ステラとリューンがそれぞれの武器に施された紋章を掲げてみる。
 ところが、ここでは何も起こらなかった。

「困りましたね……」

 顎に手を添えるステラ。すると、

「ヌフ遺跡の時と同じで、ステラさんの何かが必要なのでしょうかね」

 リューンが思わぬ事を呟いた。それを聞いたステラは、思わず手を打っていた。

「なるほど。でも、これだけ近付いても何もないという事は、魔力というわけではなさそうです。ならば……」

 ステラは思い当たるものがあったのか、仮面を脱いでいた。
 そう、顔認証というわけだ。

『……一致しません』

 するとどうした事だろうか。ヌフ遺跡と同じような声が響いてきたのだ。
 だが、この声が聞こえてきたという事は、リューンの指摘は正解だったという事である。

「となると、この体に掛けた変装魔法を解くしかないでしょうかね」

「へ、変装?」

 ステラの言葉に驚くリューンである。

「言いましたでしょう? 私はステラリア・エルミタージュと知られるわけにはいかないのです。そのために、正体を隠すためのいろいろな手段を取ったのですよ。変装魔法もその一つです」

 にこりと笑って答えたステラは、自分に対して魔法を使う。
 次の瞬間、ステラの姿にみるみると変化が現れたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。

風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。 噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。 そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。 生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし── 「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」 一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。 そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...