47 / 92
第47話 調査完了
しおりを挟む
魔道具の確認が終わったステラたちだが、ひとつ問題があった。それが何かというと……。
「さて、どうやってここを出ましょうか」
そう、脱出方法だった。地下室も結局は行き止まり。となると、思いつく方法はほぼ限られていた。
「そこの扉から出るしかないだろう。ここまでの通りなら、ステラが近付けばいいはずだ」
「まぁそうでしょうね。確認してみた限り、ここにはまた入れそうですしね」
ステラは持ち出す事にした魔道具を手にしながら、しょうがないという顔をしていた。
「ステラさん、ここから出るなら、仮面は着けておいた方がいいんじゃ。素顔を見たら通報される可能性がありますよ、似顔絵と似ているといって」
その姿を見ながら、リューンが慌てて指摘していた。
するとステラは慌てたかのように仮面を取り出して着け直していた。
「確かにそうですね。ありがとうございます、リューン」
ステラはお礼を言っておく。
ようやく役に立てたリューンは満足げである。
「とりあえず、持っていくのはこのくらいでいいかな、ステラ」
「ええ。私たちエルミタージュ王家のためにいろいろと用意して下さったみたいですけれど、今の私ではとても扱えそうにありませんからね」
ベルオムの質問に、ステラは困った表情をしながら答えていた。
「とりあえず、それがあればいつでもここに戻ってこれますからね。……転移装置とは、またとんでもないものを作っていたものですよ」
「ええ、まったくだ。分解して調べてみたいが、直せなくなっては困る。実にもどかしい気分だよ」
ベルオムは実に残念そうに笑っていた。
「まあ、必要が無くなればいくらでも調べればいいんですよ。設計図でもあれば違ったのでしょうけれどね」
ステラは地下室の方へ視線を落としながら、ため息まじりに話している。
ひと通り調べ終わったので、ステラたちは名残惜しそうにしながらも、ヌフ遺跡を出ていく事にする。
(ありがとうございます、ウティ商会長。その力が必要な時には、また頼りにさせて頂きます)
ステラは心の中でそう思いながら、扉の前に立つ。
『ステラリア・エルミタージュの魔力を感知。扉を開けますので、お気をつけてお帰り下さいませ。またのお越しをお待ちしております』
魔法音声がそう告げると、部屋の扉が開く。そして、ステラたちが部屋から全員退出すると、静かにその扉は閉まったのだった。
ステラたちはそのままヌフ遺跡から脱出する。
「結局、魔物とかは居ませんでしたね」
「不人気とはいえど、魔物を倒すくらいの人員は居るのだろうね。こちらとしてスムーズに調査が行えて助かったというものだ」
リューンが話し掛けると、ベルオムは実に満足げな表情をして呟いていた。あれだけの魔道具が見つかったのだ。魔法の研究者であり、魔道具に興味があるベルオムからしたら、まるで天国のようだっただろう。
「あまり喜びを表に出していると、いろいろ聞かれて面倒です。師匠は感情を抑えて頂けませんか?」
「ああ、そうだね。すまないな」
ステラに指摘されて、ベルオムはいつも通りにスンとした無表情な顔になる。
こういうのも無理もない。ステラたちが赴いたのは調査し尽くされたヌフ遺跡なのだから、喜びに満ちているのは確かにおかしな話なのである。
それにだ。新たな発見があれば組合に報告しなければならない。喜んでいればそれを果たさねばならないので、面倒になるのは想像に難くないのである。
隠していたウティ・マシーヌの遺志を汲めば、報告する事態は避けねばならないのだ。
「とりあえず、何もなかったと報告しておきましょう。正直いいまして虚偽の報告は心苦しいのですが、状況が状況ですからね」
「分かりました。僕も従います」
「それがいいな」
三人とも意見が一致したのだった。
そして、ついでと言わんばかりに、ヌフ遺跡の周辺の調査を行う三人である。
しばらく調査を行ったのだったが、こちらの成果は芳しくないようだった。
「魔物の姿が思ったほどありませんね」
「そうだな。かすかにだが生息していたことを思わせるような痕跡は見られる。となると、やはり居場所を追われた可能性が考えられるな」
ステラとベルオムが話し込んでいる。だが、リューンは二人の会話についていけなかった。一緒のものを見たはずなのに、何も分からなかったからである。
(うう、僕だけ何も分からなかっただなんて……)
ついつい凹んでしまうリューン。その姿に気が付いたステラは、リューンに声を掛ける。
「大丈夫ですよ、リューン。私だって最初の頃はまったく分からなかったんですから。経験を積めば、リューンだって分かるようになりますよ」
ステラの優しい声に、リューンはこくりと無言で頷くのだった。
「それでは、フイエに戻るとしようか。あまり時間をかけると、そっちでも疑われる可能性があるだろうからね」
「そうですね。では、戻りましょう」
驚く事はあったもののひと通りの調査を終えたステラたちは、遺跡の調査依頼を受けたフイエへと戻っていったのだった。
「さて、どうやってここを出ましょうか」
そう、脱出方法だった。地下室も結局は行き止まり。となると、思いつく方法はほぼ限られていた。
「そこの扉から出るしかないだろう。ここまでの通りなら、ステラが近付けばいいはずだ」
「まぁそうでしょうね。確認してみた限り、ここにはまた入れそうですしね」
ステラは持ち出す事にした魔道具を手にしながら、しょうがないという顔をしていた。
「ステラさん、ここから出るなら、仮面は着けておいた方がいいんじゃ。素顔を見たら通報される可能性がありますよ、似顔絵と似ているといって」
その姿を見ながら、リューンが慌てて指摘していた。
するとステラは慌てたかのように仮面を取り出して着け直していた。
「確かにそうですね。ありがとうございます、リューン」
ステラはお礼を言っておく。
ようやく役に立てたリューンは満足げである。
「とりあえず、持っていくのはこのくらいでいいかな、ステラ」
「ええ。私たちエルミタージュ王家のためにいろいろと用意して下さったみたいですけれど、今の私ではとても扱えそうにありませんからね」
ベルオムの質問に、ステラは困った表情をしながら答えていた。
「とりあえず、それがあればいつでもここに戻ってこれますからね。……転移装置とは、またとんでもないものを作っていたものですよ」
「ええ、まったくだ。分解して調べてみたいが、直せなくなっては困る。実にもどかしい気分だよ」
ベルオムは実に残念そうに笑っていた。
「まあ、必要が無くなればいくらでも調べればいいんですよ。設計図でもあれば違ったのでしょうけれどね」
ステラは地下室の方へ視線を落としながら、ため息まじりに話している。
ひと通り調べ終わったので、ステラたちは名残惜しそうにしながらも、ヌフ遺跡を出ていく事にする。
(ありがとうございます、ウティ商会長。その力が必要な時には、また頼りにさせて頂きます)
ステラは心の中でそう思いながら、扉の前に立つ。
『ステラリア・エルミタージュの魔力を感知。扉を開けますので、お気をつけてお帰り下さいませ。またのお越しをお待ちしております』
魔法音声がそう告げると、部屋の扉が開く。そして、ステラたちが部屋から全員退出すると、静かにその扉は閉まったのだった。
ステラたちはそのままヌフ遺跡から脱出する。
「結局、魔物とかは居ませんでしたね」
「不人気とはいえど、魔物を倒すくらいの人員は居るのだろうね。こちらとしてスムーズに調査が行えて助かったというものだ」
リューンが話し掛けると、ベルオムは実に満足げな表情をして呟いていた。あれだけの魔道具が見つかったのだ。魔法の研究者であり、魔道具に興味があるベルオムからしたら、まるで天国のようだっただろう。
「あまり喜びを表に出していると、いろいろ聞かれて面倒です。師匠は感情を抑えて頂けませんか?」
「ああ、そうだね。すまないな」
ステラに指摘されて、ベルオムはいつも通りにスンとした無表情な顔になる。
こういうのも無理もない。ステラたちが赴いたのは調査し尽くされたヌフ遺跡なのだから、喜びに満ちているのは確かにおかしな話なのである。
それにだ。新たな発見があれば組合に報告しなければならない。喜んでいればそれを果たさねばならないので、面倒になるのは想像に難くないのである。
隠していたウティ・マシーヌの遺志を汲めば、報告する事態は避けねばならないのだ。
「とりあえず、何もなかったと報告しておきましょう。正直いいまして虚偽の報告は心苦しいのですが、状況が状況ですからね」
「分かりました。僕も従います」
「それがいいな」
三人とも意見が一致したのだった。
そして、ついでと言わんばかりに、ヌフ遺跡の周辺の調査を行う三人である。
しばらく調査を行ったのだったが、こちらの成果は芳しくないようだった。
「魔物の姿が思ったほどありませんね」
「そうだな。かすかにだが生息していたことを思わせるような痕跡は見られる。となると、やはり居場所を追われた可能性が考えられるな」
ステラとベルオムが話し込んでいる。だが、リューンは二人の会話についていけなかった。一緒のものを見たはずなのに、何も分からなかったからである。
(うう、僕だけ何も分からなかっただなんて……)
ついつい凹んでしまうリューン。その姿に気が付いたステラは、リューンに声を掛ける。
「大丈夫ですよ、リューン。私だって最初の頃はまったく分からなかったんですから。経験を積めば、リューンだって分かるようになりますよ」
ステラの優しい声に、リューンはこくりと無言で頷くのだった。
「それでは、フイエに戻るとしようか。あまり時間をかけると、そっちでも疑われる可能性があるだろうからね」
「そうですね。では、戻りましょう」
驚く事はあったもののひと通りの調査を終えたステラたちは、遺跡の調査依頼を受けたフイエへと戻っていったのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。
風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。
噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。
そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。
生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし──
「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」
一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。
そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる