不死の少女は王女様

未羊

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第47話 調査完了

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 魔道具の確認が終わったステラたちだが、ひとつ問題があった。それが何かというと……。

「さて、どうやってここを出ましょうか」

 そう、脱出方法だった。地下室も結局は行き止まり。となると、思いつく方法はほぼ限られていた。

「そこの扉から出るしかないだろう。ここまでの通りなら、ステラが近付けばいいはずだ」

「まぁそうでしょうね。確認してみた限り、ここにはまた入れそうですしね」

 ステラは持ち出す事にした魔道具を手にしながら、しょうがないという顔をしていた。

「ステラさん、ここから出るなら、仮面は着けておいた方がいいんじゃ。素顔を見たら通報される可能性がありますよ、似顔絵と似ているといって」

 その姿を見ながら、リューンが慌てて指摘していた。
 するとステラは慌てたかのように仮面を取り出して着け直していた。

「確かにそうですね。ありがとうございます、リューン」

 ステラはお礼を言っておく。
 ようやく役に立てたリューンは満足げである。

「とりあえず、持っていくのはこのくらいでいいかな、ステラ」

「ええ。私たちエルミタージュ王家のためにいろいろと用意して下さったみたいですけれど、今の私ではとても扱えそうにありませんからね」

 ベルオムの質問に、ステラは困った表情をしながら答えていた。

「とりあえず、それがあればいつでもここに戻ってこれますからね。……転移装置とは、またとんでもないものを作っていたものですよ」

「ええ、まったくだ。分解して調べてみたいが、直せなくなっては困る。実にもどかしい気分だよ」

 ベルオムは実に残念そうに笑っていた。

「まあ、必要が無くなればいくらでも調べればいいんですよ。設計図でもあれば違ったのでしょうけれどね」

 ステラは地下室の方へ視線を落としながら、ため息まじりに話している。
 ひと通り調べ終わったので、ステラたちは名残惜しそうにしながらも、ヌフ遺跡を出ていく事にする。

(ありがとうございます、ウティ商会長。その力が必要な時には、また頼りにさせて頂きます)

 ステラは心の中でそう思いながら、扉の前に立つ。

『ステラリア・エルミタージュの魔力を感知。扉を開けますので、お気をつけてお帰り下さいませ。またのお越しをお待ちしております』

 魔法音声がそう告げると、部屋の扉が開く。そして、ステラたちが部屋から全員退出すると、静かにその扉は閉まったのだった。
 ステラたちはそのままヌフ遺跡から脱出する。

「結局、魔物とかは居ませんでしたね」

「不人気とはいえど、魔物を倒すくらいの人員は居るのだろうね。こちらとしてスムーズに調査が行えて助かったというものだ」

 リューンが話し掛けると、ベルオムは実に満足げな表情をして呟いていた。あれだけの魔道具が見つかったのだ。魔法の研究者であり、魔道具に興味があるベルオムからしたら、まるで天国のようだっただろう。

「あまり喜びを表に出していると、いろいろ聞かれて面倒です。師匠は感情を抑えて頂けませんか?」

「ああ、そうだね。すまないな」

 ステラに指摘されて、ベルオムはいつも通りにスンとした無表情な顔になる。
 こういうのも無理もない。ステラたちが赴いたのは調査し尽くされたヌフ遺跡なのだから、喜びに満ちているのは確かにおかしな話なのである。
 それにだ。新たな発見があれば組合に報告しなければならない。喜んでいればそれを果たさねばならないので、面倒になるのは想像に難くないのである。
 隠していたウティ・マシーヌの遺志を汲めば、報告する事態は避けねばならないのだ。

「とりあえず、何もなかったと報告しておきましょう。正直いいまして虚偽の報告は心苦しいのですが、状況が状況ですからね」

「分かりました。僕も従います」

「それがいいな」

 三人とも意見が一致したのだった。
 そして、ついでと言わんばかりに、ヌフ遺跡の周辺の調査を行う三人である。
 しばらく調査を行ったのだったが、こちらの成果は芳しくないようだった。

「魔物の姿が思ったほどありませんね」

「そうだな。かすかにだが生息していたことを思わせるような痕跡は見られる。となると、やはり居場所を追われた可能性が考えられるな」

 ステラとベルオムが話し込んでいる。だが、リューンは二人の会話についていけなかった。一緒のものを見たはずなのに、何も分からなかったからである。

(うう、僕だけ何も分からなかっただなんて……)

 ついつい凹んでしまうリューン。その姿に気が付いたステラは、リューンに声を掛ける。

「大丈夫ですよ、リューン。私だって最初の頃はまったく分からなかったんですから。経験を積めば、リューンだって分かるようになりますよ」

 ステラの優しい声に、リューンはこくりと無言で頷くのだった。

「それでは、フイエに戻るとしようか。あまり時間をかけると、そっちでも疑われる可能性があるだろうからね」

「そうですね。では、戻りましょう」

 驚く事はあったもののひと通りの調査を終えたステラたちは、遺跡の調査依頼を受けたフイエへと戻っていったのだった。
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