38 / 77
第38話 戦いの後の休息
しおりを挟む
どうにか馬車を襲っていた魔物たちを撃破した。
冒険者たちも、馬車に乗っていた人物たちもようやく安心といったところである。
「いや~助かったよ。すごいな、まだ幼いのに魔物たちを一掃してしまうなんてな」
冒険者たちは素直に感心しているようだ。
ステラは双剣をしまうと、埃を払って冒険者たちと向かい合う。
「いえいえ。困っている時はお互い様ですよ。それに、目の前で死なれてしまっては目覚めも悪くなりますしね」
「ははっ、それは言えてる」
笑い合うステラたちである。
「まぁ及第点といったところかな。さすがにまだ無駄があるな、ステラ」
「ははっ、師匠は手厳しいですね」
追いついてきたベルオムに言われて、ステラは肩を落としている。
「ステラさんはすごいのに、それでもまだまだなんですね……」
リューンも驚くしかなかった。
「でもまぁ、今回は人命救助があったから、それが達成できただけよかったぞ」
「はい、師匠」
今度は頭の後ろを擦りながら照れるステラ。まったく忙しいものだ。
ひとまず、倒した魔物の解体処理を行う。冒険者たちはロックバードにジャイアントベアを頑張って解体しているが、その横でステラはリューンにジャイアントベアの解体を教えている。
そのステラの教えを、真横でじっくり眺めるリューン。その表情は実に真剣だった。さすが、ステラを師匠と仰いでいるだけある。
その解体をしているさなか、馬車から商人たちが降りてくる。
「これはこれは、危ないところを助けて頂きありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
その商人たちの姿を見て、冒険者たちは何かを思い出したようだった。
「あっ、すみませんでした。安全になったのに、声を掛けるのを忘れていました」
どうやら、報告義務のようなものを果たしていなかったようだった。
「そういえば、護衛ですとそのような義務がありましたね」
ステラも思い出したかのように首を捻っていた。
「でもまぁ、彼らを責めないで頂けないでしょうか。なにせ予想外の魔物が出現して気が動転していましたからね」
「ええ、どうもそのようですね。今回の事は私どもからは何も言いますまい」
冒険者たちが解体している魔物を見て、商人たちは納得したようだった。
そして、商人たちはステラに向き合う。
「そちらの方はボワ王国の宮廷魔術師のベルオム様でございますね。お初にお目にかかります。わたくし、エルミタージュ大陸の広域で商いをしていますコメルスと申します。こちらは娘のトレルと申します。ささ、ご挨拶なさい」
「は、初めまして。トレルと申します」
挨拶をしてくるコメルス。ベルオムは自分の名前が知られている事に驚いている。
「おや、私はそんなに有名なのかな。引きこもりのエルフなど、知名度はないと思っていたのだけどね」
わずかながらだが、ベルオムはどことなくにやけているようだった。
エルフなせいであまり気にはしていないみたいだが、宮廷魔術師の肩書というのは、かなりの重職なのである。そんな役職の人が居たら、貴族にしろ商人にしろ取り入ろうとする。それゆえにコメルスもその名と姿を知っていたというわけである。なにせ、ベルオム自身は忘れているものの、城には肖像画が掲げられているのだから。
「それにしても、ベルオム様はどちらまで行かれるのですか?」
「私たちかい?」
コメルスに尋ねられたベルオムは、ステラの方へと視線を向けた。喋ってもいいのかと聞いているのである。
それに気が付いたステラは、解体の手を一度止めて頷く。ベルオムが確認したのを見ると、再び解体へと戻っていた。
解体が落ち着くと、ようやく少し休憩を取る。というのも冒険者たちが少し疲弊してしまっていたからだ。
ジャイアントベアとロックバードという、この場所にはイレギュラーな魔物に襲われたのだから、やむを得ないといった感じである。
「しっかし、あんな魔物が出るとはな……」
「ええ、ホントに。あの魔物って丘陵地帯から山岳地帯にかけての魔物ですよね?」
冒険者たちが戸惑っている。
「やっぱり、丘陵地帯で何かが起きていると見て間違いないでしょうね」
「そうだね。ブラックウルフにいたってはプレヌ王国まで到達したようだからね。早急に原因を解明する必要がある」
「ええっ、ブラックウルフもですか?!」
ステラとベルオムの会話が聞こえたために、冒険者たちが驚いている。
「ボワ王国内でも3体に襲われましたからね。本当に何が起きているのやら……」
「そんなわけで、私たちはその原因を探るべく、丘陵地帯へ向かっているというわけなのだよ」
ベルオムたちの話を聞いて、コメルスや冒険者たちは顔を見合っている。
そして、ステラたちの方を向いて、突然頭を下げて来た。
「ちょうどいい。俺たちの目的地も丘陵地帯方面なんだ。恥を忍んで、同行してもらいたい」
「ええ、私からもお願いします。ベルオム様ほどの方がおられるのなら、私たちは安心して旅ができますからね」
商人親子、冒険者、御者たち全員から頭を下げられてしまうステラたち。これにはさすがに驚くしかなかった。
少々悩んだものの、方向が一緒ならと申し出を了承する事にしたステラたちだった。
これで一気に同行者が七人も増えて、一気に道中が賑やかになる事になったのだった。
冒険者たちも、馬車に乗っていた人物たちもようやく安心といったところである。
「いや~助かったよ。すごいな、まだ幼いのに魔物たちを一掃してしまうなんてな」
冒険者たちは素直に感心しているようだ。
ステラは双剣をしまうと、埃を払って冒険者たちと向かい合う。
「いえいえ。困っている時はお互い様ですよ。それに、目の前で死なれてしまっては目覚めも悪くなりますしね」
「ははっ、それは言えてる」
笑い合うステラたちである。
「まぁ及第点といったところかな。さすがにまだ無駄があるな、ステラ」
「ははっ、師匠は手厳しいですね」
追いついてきたベルオムに言われて、ステラは肩を落としている。
「ステラさんはすごいのに、それでもまだまだなんですね……」
リューンも驚くしかなかった。
「でもまぁ、今回は人命救助があったから、それが達成できただけよかったぞ」
「はい、師匠」
今度は頭の後ろを擦りながら照れるステラ。まったく忙しいものだ。
ひとまず、倒した魔物の解体処理を行う。冒険者たちはロックバードにジャイアントベアを頑張って解体しているが、その横でステラはリューンにジャイアントベアの解体を教えている。
そのステラの教えを、真横でじっくり眺めるリューン。その表情は実に真剣だった。さすが、ステラを師匠と仰いでいるだけある。
その解体をしているさなか、馬車から商人たちが降りてくる。
「これはこれは、危ないところを助けて頂きありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
その商人たちの姿を見て、冒険者たちは何かを思い出したようだった。
「あっ、すみませんでした。安全になったのに、声を掛けるのを忘れていました」
どうやら、報告義務のようなものを果たしていなかったようだった。
「そういえば、護衛ですとそのような義務がありましたね」
ステラも思い出したかのように首を捻っていた。
「でもまぁ、彼らを責めないで頂けないでしょうか。なにせ予想外の魔物が出現して気が動転していましたからね」
「ええ、どうもそのようですね。今回の事は私どもからは何も言いますまい」
冒険者たちが解体している魔物を見て、商人たちは納得したようだった。
そして、商人たちはステラに向き合う。
「そちらの方はボワ王国の宮廷魔術師のベルオム様でございますね。お初にお目にかかります。わたくし、エルミタージュ大陸の広域で商いをしていますコメルスと申します。こちらは娘のトレルと申します。ささ、ご挨拶なさい」
「は、初めまして。トレルと申します」
挨拶をしてくるコメルス。ベルオムは自分の名前が知られている事に驚いている。
「おや、私はそんなに有名なのかな。引きこもりのエルフなど、知名度はないと思っていたのだけどね」
わずかながらだが、ベルオムはどことなくにやけているようだった。
エルフなせいであまり気にはしていないみたいだが、宮廷魔術師の肩書というのは、かなりの重職なのである。そんな役職の人が居たら、貴族にしろ商人にしろ取り入ろうとする。それゆえにコメルスもその名と姿を知っていたというわけである。なにせ、ベルオム自身は忘れているものの、城には肖像画が掲げられているのだから。
「それにしても、ベルオム様はどちらまで行かれるのですか?」
「私たちかい?」
コメルスに尋ねられたベルオムは、ステラの方へと視線を向けた。喋ってもいいのかと聞いているのである。
それに気が付いたステラは、解体の手を一度止めて頷く。ベルオムが確認したのを見ると、再び解体へと戻っていた。
解体が落ち着くと、ようやく少し休憩を取る。というのも冒険者たちが少し疲弊してしまっていたからだ。
ジャイアントベアとロックバードという、この場所にはイレギュラーな魔物に襲われたのだから、やむを得ないといった感じである。
「しっかし、あんな魔物が出るとはな……」
「ええ、ホントに。あの魔物って丘陵地帯から山岳地帯にかけての魔物ですよね?」
冒険者たちが戸惑っている。
「やっぱり、丘陵地帯で何かが起きていると見て間違いないでしょうね」
「そうだね。ブラックウルフにいたってはプレヌ王国まで到達したようだからね。早急に原因を解明する必要がある」
「ええっ、ブラックウルフもですか?!」
ステラとベルオムの会話が聞こえたために、冒険者たちが驚いている。
「ボワ王国内でも3体に襲われましたからね。本当に何が起きているのやら……」
「そんなわけで、私たちはその原因を探るべく、丘陵地帯へ向かっているというわけなのだよ」
ベルオムたちの話を聞いて、コメルスや冒険者たちは顔を見合っている。
そして、ステラたちの方を向いて、突然頭を下げて来た。
「ちょうどいい。俺たちの目的地も丘陵地帯方面なんだ。恥を忍んで、同行してもらいたい」
「ええ、私からもお願いします。ベルオム様ほどの方がおられるのなら、私たちは安心して旅ができますからね」
商人親子、冒険者、御者たち全員から頭を下げられてしまうステラたち。これにはさすがに驚くしかなかった。
少々悩んだものの、方向が一緒ならと申し出を了承する事にしたステラたちだった。
これで一気に同行者が七人も増えて、一気に道中が賑やかになる事になったのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる