不死の少女は王女様

未羊

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第38話 戦いの後の休息

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 どうにか馬車を襲っていた魔物たちを撃破した。
 冒険者たちも、馬車に乗っていた人物たちもようやく安心といったところである。

「いや~助かったよ。すごいな、まだ幼いのに魔物たちを一掃してしまうなんてな」

 冒険者たちは素直に感心しているようだ。
 ステラは双剣をしまうと、埃を払って冒険者たちと向かい合う。

「いえいえ。困っている時はお互い様ですよ。それに、目の前で死なれてしまっては目覚めも悪くなりますしね」

「ははっ、それは言えてる」

 笑い合うステラたちである。

「まぁ及第点といったところかな。さすがにまだ無駄があるな、ステラ」

「ははっ、師匠は手厳しいですね」

 追いついてきたベルオムに言われて、ステラは肩を落としている。

「ステラさんはすごいのに、それでもまだまだなんですね……」

 リューンも驚くしかなかった。

「でもまぁ、今回は人命救助があったから、それが達成できただけよかったぞ」

「はい、師匠」

 今度は頭の後ろを擦りながら照れるステラ。まったく忙しいものだ。
 ひとまず、倒した魔物の解体処理を行う。冒険者たちはロックバードにジャイアントベアを頑張って解体しているが、その横でステラはリューンにジャイアントベアの解体を教えている。
 そのステラの教えを、真横でじっくり眺めるリューン。その表情は実に真剣だった。さすが、ステラを師匠と仰いでいるだけある。
 その解体をしているさなか、馬車から商人たちが降りてくる。

「これはこれは、危ないところを助けて頂きありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

 その商人たちの姿を見て、冒険者たちは何かを思い出したようだった。

「あっ、すみませんでした。安全になったのに、声を掛けるのを忘れていました」

 どうやら、報告義務のようなものを果たしていなかったようだった。

「そういえば、護衛ですとそのような義務がありましたね」

 ステラも思い出したかのように首を捻っていた。

「でもまぁ、彼らを責めないで頂けないでしょうか。なにせ予想外の魔物が出現して気が動転していましたからね」

「ええ、どうもそのようですね。今回の事は私どもからは何も言いますまい」

 冒険者たちが解体している魔物を見て、商人たちは納得したようだった。
 そして、商人たちはステラに向き合う。

「そちらの方はボワ王国の宮廷魔術師のベルオム様でございますね。お初にお目にかかります。わたくし、エルミタージュ大陸の広域で商いをしていますコメルスと申します。こちらは娘のトレルと申します。ささ、ご挨拶なさい」

「は、初めまして。トレルと申します」

 挨拶をしてくるコメルス。ベルオムは自分の名前が知られている事に驚いている。

「おや、私はそんなに有名なのかな。引きこもりのエルフなど、知名度はないと思っていたのだけどね」

 わずかながらだが、ベルオムはどことなくにやけているようだった。
 エルフなせいであまり気にはしていないみたいだが、宮廷魔術師の肩書というのは、かなりの重職なのである。そんな役職の人が居たら、貴族にしろ商人にしろ取り入ろうとする。それゆえにコメルスもその名と姿を知っていたというわけである。なにせ、ベルオム自身は忘れているものの、城には肖像画が掲げられているのだから。

「それにしても、ベルオム様はどちらまで行かれるのですか?」

「私たちかい?」

 コメルスに尋ねられたベルオムは、ステラの方へと視線を向けた。喋ってもいいのかと聞いているのである。
 それに気が付いたステラは、解体の手を一度止めて頷く。ベルオムが確認したのを見ると、再び解体へと戻っていた。

 解体が落ち着くと、ようやく少し休憩を取る。というのも冒険者たちが少し疲弊してしまっていたからだ。
 ジャイアントベアとロックバードという、この場所にはイレギュラーな魔物に襲われたのだから、やむを得ないといった感じである。

「しっかし、あんな魔物が出るとはな……」

「ええ、ホントに。あの魔物って丘陵地帯から山岳地帯にかけての魔物ですよね?」

 冒険者たちが戸惑っている。

「やっぱり、丘陵地帯で何かが起きていると見て間違いないでしょうね」

「そうだね。ブラックウルフにいたってはプレヌ王国まで到達したようだからね。早急に原因を解明する必要がある」

「ええっ、ブラックウルフもですか?!」

 ステラとベルオムの会話が聞こえたために、冒険者たちが驚いている。

「ボワ王国内でも3体に襲われましたからね。本当に何が起きているのやら……」

「そんなわけで、私たちはその原因を探るべく、丘陵地帯へ向かっているというわけなのだよ」

 ベルオムたちの話を聞いて、コメルスや冒険者たちは顔を見合っている。
 そして、ステラたちの方を向いて、突然頭を下げて来た。

「ちょうどいい。俺たちの目的地も丘陵地帯方面なんだ。恥を忍んで、同行してもらいたい」

「ええ、私からもお願いします。ベルオム様ほどの方がおられるのなら、私たちは安心して旅ができますからね」

 商人親子、冒険者、御者たち全員から頭を下げられてしまうステラたち。これにはさすがに驚くしかなかった。
 少々悩んだものの、方向が一緒ならと申し出を了承する事にしたステラたちだった。
 これで一気に同行者が七人も増えて、一気に道中が賑やかになる事になったのだった。
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