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第31話 新たな土地を目指して
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翌日、ステラとリューンは隣国である森林地帯を治めるボワ王国を目指して歩いていた。
先日のグレイウルフの討伐で訪れた国境から進んだ先がボワ王国である。
「おお、金級と銅級かい。だったら進んでいいぞ」
国境もこんな感じで簡単に越えられてしまった。
呆気にとられながらも、二人はボワ王国へと入国する。目指すは王都フォレである。
「うーん、知らない間にだいぶ地形が変わっていますね。昔の記憶では、森林地帯から丘陵地帯へは川が間にあって向かえなかったはずなのですけれどね」
冒険者組合で渡された地図を見ながら、ステラは記憶とすり合わせながら進んでいく。
しかし、ステラはやっぱりどうしても納得がいかないようで、地図にじっと顔を近付けては離すという行動を繰り返していた。
「私の記憶にあるのは、プレヌ王国からセシェ国を回って、リヴィエール王国を通って到着するんです。こちらの経路でもリヴィエール王国は通りますが、川があるので渡れなかったはずなんですよね」
「へえ、そうなんですか。ずいぶんと詳しいですね、ステラさんって」
リューンがあまり興味がないような物言いをすると、ステラは振り返って腰に手を当てながら怒っている。
「リューン? ついて来ると言った割には、ずいぶんと興味がないみたいな反応をしますね。そんな事じゃ道に迷って死にますよ。冒険者たる者、あらゆるものを頭に叩き込んでおきませんとね」
再び地図を確認しながらぶつぶつと言うステラ。
「それに私は500年以上も生きてるんです。その間に変わっちゃったこともありますけれど、それだけ生きてれば詳しくもなりますよ」
そう言いながらどんどんとボワ王国の王都フォレを目指して進んでいく。
二人が歩いている場所は森林の地帯の国とあって、街道とはいえども両脇にはほぼ森がある。魔物や盗賊たちが姿を隠すにはもってこいの地形なのである。
リューンは実際子どもで、ステラも見た目が子どもである。そういった事もあってか、時折盗賊に襲われては近くの街で引き渡すという状況を繰り返しながら進むはめになってしまった。
「まったく、私が金級冒険者だと聞いたら、盗賊たちは震え上がっていましたね。人を見た目で判断し過ぎですよ」
あまりに襲われるものだから、さすがのステラもちょっとご立腹のようである。
それにしても、さすがは森林国家ボワ王国である。行けども行けども森、森、森……。同じ景色の繰り返しに、リューンが少々参りかけていた。
「リューン、疲れているようですね。これだけ景色が変わらないと、初めての冒険としては精神的にきついでしょうね。……少々休憩と致しましょうか」
「だ、大丈夫ですってば……」
ステラは気を遣って休もうとするが、リューンの方は気を遣って先を急ごうとする。しかし、リューンの疲労は火を見るよりも明らかで、ここは無理に進むよりも休んだ方がいいと判断して、無理にでもリューンを休ませることにした。
「ごめんなさい……」
リューンがしょんぼりするが、むしろ申し訳ないと思っているのはステラの方だった。
「いいんですよ。私の無理に付き合ってもらっているんですから。何かあったら遠慮なく言って下さいね」
「はい……」
リューンをどうにか休ませたところで、ステラは現状を振り返る。
(さて、街道に沿って進んでいるはずですが、王都フォレにたどり着くような気配がありませんね。地図が間違っているわけではないはずなんですけどね)
リューンが見える位置で木にもたれ掛かりながら、ステラはバナルでもらった地図を確認している。国境の門からフォレまでの道のりは、迷いようのない一本道だった。
(国境から4日で着くと聞いたのですがね……。これはちょっと確認をしてみましょうか)
ステラは空を見上げて魔法を使う。長い放浪生活の間に身に付けた魔法だ。
「バーディー!」
ステラが魔法を使うと、その視点が上空からのものに切り替わる。
この魔法は、空を飛ぶ鳥のように意識を上空に飛ばして周囲を確認するためのものなのだ。
360度周囲を確認したステラは、すっと意識を体へと戻す。
「ふむ、フォレには確かに近付いていますね。しかし、おかしいですね……」
「何がですか?」
ステラの呟きに、リューンが反応する。
「あ、声に出てしまってましたか」
リューンの反応に慌てるステラである。
「何かあったのですか?」
リューンの問い掛けに、ステラはしばらく黙り込む。そして、迷ったかのような仕草を見せる。
「そうですね。リューンに理解できるか分かりませんが、何やら変なんですよ」
ステラの言葉に、首を傾げるリューン。この言葉だけで理解できるわけがないので、ステラは説明を続ける。
「先程魔法で周囲を確認したのですが、王都フォレまではもう近い場所に来ているはずなんです。ですが、おかしいんですよね」
「何がですか?」
「私たちの視界の先に、王都が見えないんですよ。空から確認したら、かなり大きな街で城もありますから、現在地からすると見えていないとおかしいんですよ」
「ええっ? それってどういう……」
ステラの話に混乱するリューン。
「どうやら、この地上付近には、怪しい魔法がかけられているようですね」
見えているはずのものが見えない。その不可解な事態にそう結論付けるステラ。一体何が起きているというのだろうか。
先日のグレイウルフの討伐で訪れた国境から進んだ先がボワ王国である。
「おお、金級と銅級かい。だったら進んでいいぞ」
国境もこんな感じで簡単に越えられてしまった。
呆気にとられながらも、二人はボワ王国へと入国する。目指すは王都フォレである。
「うーん、知らない間にだいぶ地形が変わっていますね。昔の記憶では、森林地帯から丘陵地帯へは川が間にあって向かえなかったはずなのですけれどね」
冒険者組合で渡された地図を見ながら、ステラは記憶とすり合わせながら進んでいく。
しかし、ステラはやっぱりどうしても納得がいかないようで、地図にじっと顔を近付けては離すという行動を繰り返していた。
「私の記憶にあるのは、プレヌ王国からセシェ国を回って、リヴィエール王国を通って到着するんです。こちらの経路でもリヴィエール王国は通りますが、川があるので渡れなかったはずなんですよね」
「へえ、そうなんですか。ずいぶんと詳しいですね、ステラさんって」
リューンがあまり興味がないような物言いをすると、ステラは振り返って腰に手を当てながら怒っている。
「リューン? ついて来ると言った割には、ずいぶんと興味がないみたいな反応をしますね。そんな事じゃ道に迷って死にますよ。冒険者たる者、あらゆるものを頭に叩き込んでおきませんとね」
再び地図を確認しながらぶつぶつと言うステラ。
「それに私は500年以上も生きてるんです。その間に変わっちゃったこともありますけれど、それだけ生きてれば詳しくもなりますよ」
そう言いながらどんどんとボワ王国の王都フォレを目指して進んでいく。
二人が歩いている場所は森林の地帯の国とあって、街道とはいえども両脇にはほぼ森がある。魔物や盗賊たちが姿を隠すにはもってこいの地形なのである。
リューンは実際子どもで、ステラも見た目が子どもである。そういった事もあってか、時折盗賊に襲われては近くの街で引き渡すという状況を繰り返しながら進むはめになってしまった。
「まったく、私が金級冒険者だと聞いたら、盗賊たちは震え上がっていましたね。人を見た目で判断し過ぎですよ」
あまりに襲われるものだから、さすがのステラもちょっとご立腹のようである。
それにしても、さすがは森林国家ボワ王国である。行けども行けども森、森、森……。同じ景色の繰り返しに、リューンが少々参りかけていた。
「リューン、疲れているようですね。これだけ景色が変わらないと、初めての冒険としては精神的にきついでしょうね。……少々休憩と致しましょうか」
「だ、大丈夫ですってば……」
ステラは気を遣って休もうとするが、リューンの方は気を遣って先を急ごうとする。しかし、リューンの疲労は火を見るよりも明らかで、ここは無理に進むよりも休んだ方がいいと判断して、無理にでもリューンを休ませることにした。
「ごめんなさい……」
リューンがしょんぼりするが、むしろ申し訳ないと思っているのはステラの方だった。
「いいんですよ。私の無理に付き合ってもらっているんですから。何かあったら遠慮なく言って下さいね」
「はい……」
リューンをどうにか休ませたところで、ステラは現状を振り返る。
(さて、街道に沿って進んでいるはずですが、王都フォレにたどり着くような気配がありませんね。地図が間違っているわけではないはずなんですけどね)
リューンが見える位置で木にもたれ掛かりながら、ステラはバナルでもらった地図を確認している。国境の門からフォレまでの道のりは、迷いようのない一本道だった。
(国境から4日で着くと聞いたのですがね……。これはちょっと確認をしてみましょうか)
ステラは空を見上げて魔法を使う。長い放浪生活の間に身に付けた魔法だ。
「バーディー!」
ステラが魔法を使うと、その視点が上空からのものに切り替わる。
この魔法は、空を飛ぶ鳥のように意識を上空に飛ばして周囲を確認するためのものなのだ。
360度周囲を確認したステラは、すっと意識を体へと戻す。
「ふむ、フォレには確かに近付いていますね。しかし、おかしいですね……」
「何がですか?」
ステラの呟きに、リューンが反応する。
「あ、声に出てしまってましたか」
リューンの反応に慌てるステラである。
「何かあったのですか?」
リューンの問い掛けに、ステラはしばらく黙り込む。そして、迷ったかのような仕草を見せる。
「そうですね。リューンに理解できるか分かりませんが、何やら変なんですよ」
ステラの言葉に、首を傾げるリューン。この言葉だけで理解できるわけがないので、ステラは説明を続ける。
「先程魔法で周囲を確認したのですが、王都フォレまではもう近い場所に来ているはずなんです。ですが、おかしいんですよね」
「何がですか?」
「私たちの視界の先に、王都が見えないんですよ。空から確認したら、かなり大きな街で城もありますから、現在地からすると見えていないとおかしいんですよ」
「ええっ? それってどういう……」
ステラの話に混乱するリューン。
「どうやら、この地上付近には、怪しい魔法がかけられているようですね」
見えているはずのものが見えない。その不可解な事態にそう結論付けるステラ。一体何が起きているというのだろうか。
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