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第18話 成長と停滞
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それからしばらくというもの、リューンはステラと一緒に冒険者組合の依頼をこなし、家に帰れば父親から読み書きを教えてもらっていた。
忙しい毎日となったものの、一人前の冒険者になるためだと、リューンは張り切ってすべてをこなしている。
ステラの方も、そのリューンの努力を見て満足そうにしている。
(驚きましたね、ここ数日であっという間に動きが見違えるほどになりました。一体何があったのでしょうか)
最初の頃は魔物を怖がってへっぴり腰だった。しかし、今はちゃんと相手を見ながらしっかり剣を握って対応している。
その日の依頼を終えて、ステラはリューンに声を掛けていた。
「素晴らしいですね。今日は私の出番がありませんでしたよ。この調子で頑張って下さい」
ステラが褒めると、リューンは照れたように頭の後ろを擦っている。その姿ににっこりと微笑むステラだが、仮面のせいでその表情は誰にも分からなかった。
「それにしても、ずいぶんと変わりましたね。きっかけをお聞きしてもよろしいでしょうか」
ステラはリューンに近付いていく。それに対してリューンはちょっと驚いたような態度を示したものの、手に持っている剣をしまいながらステラの方を見る。
「実は、お父さんに『ステラさんを守れるようになれ』と言われたんです」
リューンから飛び出した答えに、ステラは思わず驚いてしまう。仮面を着けているので表情は見えないとはいえど、急に動きを止めたので相当に動揺しているのが分かる。
「そうですか、お父様がその様な事を……」
思わず言葉を詰まらせてしまうステラである。
(まったく、あんな状態になってまで私の事を……)
ステラはふとバナルの街の方へと視線を移してしまう。
「ステラさん?」
よそ見をしているステラに気が付いたリューンが、不思議そうな顔をしながらステラに声を掛けている。
「はい、どうされましたか、リューン」
声に気が付いて反応するステラ。
「いえ、急によそを見ていたので気になっただけです」
「そうですか。念のために周囲を警戒していただけですよ。さっ、早く解体しないと腐ってしまいますよ」
リューンが答えた理由に、ステラはごまかしつつはぐらかている。
ステラに指摘されたリューンは、思い出したかのように討伐した魔物の解体を再開させていた。
それにしても、リューンの解体の腕前もだいぶ上がってきているようだった。最初は魔物にびびっていたために、全部ステラか組合任せだったのだ。それを思えば本当に成長しているのがよく分かる。
その姿を見て、ステラはつい考え込んでしまう。
(私は……、このままでいいのでしょうかね。この身に受けた呪いに甘んじて、このまま何もしないで気ままに過ごす事が、本当にいいのでしょうか……)
あまりに一生懸命なリューンの姿が、ステラの気持ちに変化をもたらしていた。
「終わりました。どうでしょうか」
解体を終えたリューンがステラに確認をお願いしてくる。まだまだ未熟なので、こうやってベテラン冒険者であるステラが確認をしているというわけだ。
ステラは解体された魔物の状態を見る。
さすがに何度か経験したおかげで、リューンの解体の腕は間違いなく上がっているようだ。それでもまだまだ荒いところが見える。
「毛皮の状態がまだまだですね。薄く削ぐ事に気を向けすぎていて穴が開いています。それ以外はまぁ、及第点っていうところですかね」
「うぐっ、できたと思っていたのに、これじゃだめかなぁ……」
ステラの指摘を受けて毛皮を確認するリューン。すると、確かに毛皮の思わぬところに穴が開いていた。しかも、それがいつ開いてしまったものかリューンにはまったく分からなかった。
「小さい方ですから、使うには問題ないと思いますよ。ただ、査定では確実に見つかりますから、買取価格がかなり落ちるのは間違いないでしょうね」
「そんな……」
思わず両手をついて悔しがるリューンである。
「ほら、落ち込んでいないで戻りますよ。買取に回すものは魔法鞄にしまって、それ以外は地面に埋めておきましょう」
「はい」
ステラが急かしてくるので、リューンはひとまず気持ちを切り替えて解体後の処理をしたのだった。
バナルに戻ったステラとリューンは、依頼報告と買取のために冒険者組合に顔を出す。
そして、買取査定をしてもらうと、ステラの指摘通り、ちゃっかり毛皮の穴の分だけ査定価格が下がってしまっていた。
「うう、ステラさんが言われた通りに値下がりしてました……」
「私も経験がありますから。まあ、次から気を付けましょう」
「はい」
落ち込むリューンの背中を叩いて、ステラは精一杯の励ましをするのだった。
「それでは、また明日ですね。今日はゆっくり休みなさい」
「はい。お疲れ様でした」
リューンと別れて家へと帰っていくステラ。その道中の足取りが、いつもより少し軽いように感じられる。
目に掛けている冒険者が順調に成長しているのが嬉しいのである。
だが、そのリューンの成長という光が、ステラの中の大きな影を浮かび上がらせていたのだった。
忙しい毎日となったものの、一人前の冒険者になるためだと、リューンは張り切ってすべてをこなしている。
ステラの方も、そのリューンの努力を見て満足そうにしている。
(驚きましたね、ここ数日であっという間に動きが見違えるほどになりました。一体何があったのでしょうか)
最初の頃は魔物を怖がってへっぴり腰だった。しかし、今はちゃんと相手を見ながらしっかり剣を握って対応している。
その日の依頼を終えて、ステラはリューンに声を掛けていた。
「素晴らしいですね。今日は私の出番がありませんでしたよ。この調子で頑張って下さい」
ステラが褒めると、リューンは照れたように頭の後ろを擦っている。その姿ににっこりと微笑むステラだが、仮面のせいでその表情は誰にも分からなかった。
「それにしても、ずいぶんと変わりましたね。きっかけをお聞きしてもよろしいでしょうか」
ステラはリューンに近付いていく。それに対してリューンはちょっと驚いたような態度を示したものの、手に持っている剣をしまいながらステラの方を見る。
「実は、お父さんに『ステラさんを守れるようになれ』と言われたんです」
リューンから飛び出した答えに、ステラは思わず驚いてしまう。仮面を着けているので表情は見えないとはいえど、急に動きを止めたので相当に動揺しているのが分かる。
「そうですか、お父様がその様な事を……」
思わず言葉を詰まらせてしまうステラである。
(まったく、あんな状態になってまで私の事を……)
ステラはふとバナルの街の方へと視線を移してしまう。
「ステラさん?」
よそ見をしているステラに気が付いたリューンが、不思議そうな顔をしながらステラに声を掛けている。
「はい、どうされましたか、リューン」
声に気が付いて反応するステラ。
「いえ、急によそを見ていたので気になっただけです」
「そうですか。念のために周囲を警戒していただけですよ。さっ、早く解体しないと腐ってしまいますよ」
リューンが答えた理由に、ステラはごまかしつつはぐらかている。
ステラに指摘されたリューンは、思い出したかのように討伐した魔物の解体を再開させていた。
それにしても、リューンの解体の腕前もだいぶ上がってきているようだった。最初は魔物にびびっていたために、全部ステラか組合任せだったのだ。それを思えば本当に成長しているのがよく分かる。
その姿を見て、ステラはつい考え込んでしまう。
(私は……、このままでいいのでしょうかね。この身に受けた呪いに甘んじて、このまま何もしないで気ままに過ごす事が、本当にいいのでしょうか……)
あまりに一生懸命なリューンの姿が、ステラの気持ちに変化をもたらしていた。
「終わりました。どうでしょうか」
解体を終えたリューンがステラに確認をお願いしてくる。まだまだ未熟なので、こうやってベテラン冒険者であるステラが確認をしているというわけだ。
ステラは解体された魔物の状態を見る。
さすがに何度か経験したおかげで、リューンの解体の腕は間違いなく上がっているようだ。それでもまだまだ荒いところが見える。
「毛皮の状態がまだまだですね。薄く削ぐ事に気を向けすぎていて穴が開いています。それ以外はまぁ、及第点っていうところですかね」
「うぐっ、できたと思っていたのに、これじゃだめかなぁ……」
ステラの指摘を受けて毛皮を確認するリューン。すると、確かに毛皮の思わぬところに穴が開いていた。しかも、それがいつ開いてしまったものかリューンにはまったく分からなかった。
「小さい方ですから、使うには問題ないと思いますよ。ただ、査定では確実に見つかりますから、買取価格がかなり落ちるのは間違いないでしょうね」
「そんな……」
思わず両手をついて悔しがるリューンである。
「ほら、落ち込んでいないで戻りますよ。買取に回すものは魔法鞄にしまって、それ以外は地面に埋めておきましょう」
「はい」
ステラが急かしてくるので、リューンはひとまず気持ちを切り替えて解体後の処理をしたのだった。
バナルに戻ったステラとリューンは、依頼報告と買取のために冒険者組合に顔を出す。
そして、買取査定をしてもらうと、ステラの指摘通り、ちゃっかり毛皮の穴の分だけ査定価格が下がってしまっていた。
「うう、ステラさんが言われた通りに値下がりしてました……」
「私も経験がありますから。まあ、次から気を付けましょう」
「はい」
落ち込むリューンの背中を叩いて、ステラは精一杯の励ましをするのだった。
「それでは、また明日ですね。今日はゆっくり休みなさい」
「はい。お疲れ様でした」
リューンと別れて家へと帰っていくステラ。その道中の足取りが、いつもより少し軽いように感じられる。
目に掛けている冒険者が順調に成長しているのが嬉しいのである。
だが、そのリューンの成長という光が、ステラの中の大きな影を浮かび上がらせていたのだった。
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